古村治彦です。

 

 ヒラリーが9月11日の911事件追悼式典で途中退席し、卒倒する様子が撮影されました。その後、ヒラリー選対がその2日前にヒラリーが肺炎だと診断されていたことを発表しました。これ以降、アメリカ大統領選挙の最大の関心事がヒラリーとトランプの健康状態になっています。

 

 9月11日までも、ヒラリーには健康問題が付きまとってきました。年齢を見て、トランプが70歳、ヒラリーが68歳、日本で言えば、後期高齢者ということになりますから、病気や体の不調が出てくるのは当然ですが、アメリカ大統領という激職では不健康ですから休み休みやりますということは通りません。

 

 考えてみると、1980年代までの大統領は70歳代ということもありました。しかし、1992年にビル・クリントンが当選して以来、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマと3代続けて若い人たちが大統領になってきました。それに合わせて、それぞれの子供たちが成長し、入学や結婚ということを一緒に体験してきました。アメリカ大統領が若くなったことで、健康問題については選挙戦のテーマにはなりませんでした。

 

このアメリカ大統領の「若者路線」がヒラリーの夫ビル・クリントンから始まったというところが興味深いところです。世代論的に言えば、ベイビーブーマーの最後の輝きということでしょうか。

 

 トランプはこの健康問題をうまく利用しようとしています。テレビの健康番組に出演し、そこで、自分の健康診断書を司会者でもある医師に手渡したということです。その内容は明らかにされていませんし、テレビ番組の中で明らかにされることはないということです。

 

 この診断書を手渡すというパフォーマンスはトランプが自分で考えた演出で、選対としては驚いたことでしょう。しかし、ここまでやれば、診断書が公表されなくても、トランプはオープンで健康だという印象付けが出来ます。

 

 一方、ヒラリーはより詳しい健康診断書を公開するということです。かかりつけ医であるバーダック医師もマスコミ向けに書簡を送り、その中で、「肺炎以外」はとても元気であると書いています。血圧やコレステロール値も発表しました。

 

 こうした動きを受けて、アメリカの有権者がどのような判断を下すのか注目です。

 

(貼りつけはじめ)

 

ヒラリー・クリントンが医療記録を公開(Clinton releases medical records

 

リサ・へーゲン筆

2016年9月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/295977-clinton-to-release-medical-records-this-hour-report

 

民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは水曜日、医療記録からより詳しい情報を公開した。彼女の医療記録には、かかりつけ医の「彼女は素晴らしい精神状態にある」とする発言も含まれている。

 

リサ・バーダック医学博士は、先週の金曜日にヒラリーを肺炎と診断し、その後今週になって数回にわたりヒラリーを診察し、「肺炎以外は彼女の肉体は完全に通常状態にある」と発言した。

 

ヒラリーのかかりつけ医師バーダック博士は、「深刻ではない、伝染性のない細菌性の肺炎」があることを発見したと述べた。

 

バーダック医師はマスコミ向けの書簡の中で、「それ以外の診察では、肉体の健康状態は通常通りであり、精神状態は大変素晴らしい」と書いている。書簡は下の部分に掲載している。

 

バーダック医師は「私の全体から受ける印象は、クリントン夫人は健康であり、鼻炎と耳感染症、最近診断した肺炎以外には今年に入って新たに発症した病気は存在しない」と書いている。

 

バーダック医師は「ヒラリー・クリントンは健康であり続けており、アメリカ合衆国大統領として公務に就くことに適している」とも書いている。

 

バーダックは、ヒラリーの最新の健康に関する数値について、「ヒラリー・クリントンンの血圧は最高血圧100、最低血圧70で、脈拍数は70(1分間)、コレステロールは189だった」と語った。

 

バーダックは、ヒラリーの肺炎治療のために処方箋医薬品であるレヴァクインを処方している。

 

ヒラリーの医療記録が出される数時間前、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプは、テレビ番組の「ザ・ドクター・オズ・ショー」の収録中に自身の最新の医療検査の結果を公表した。この番組は木曜日に放送される。

 

ヒラリーが週末に健康に関する事件を起こすまで肺炎という診断を発表しなかったことについて多くの批判や疑問が寄せられるようになっている。それを受けて、トランプは68歳のヒラリーにプレッシャーをかけようとしている。

 

先週日曜日に911事件追悼式典の際に、ヒラリーはふらつき、ヴァンに乗り込むのに苦労した。

 

ヒラリー選対は、卒倒の様子が表面化した後になってようやく、ヒラリーが卒倒した日曜日の2日前に肺炎と診断されたことを発表した。

 

肺炎から回復中のヒラリーは、トランプが大統領職に耐えられるスタミナがあるのかという疑問を呈する中で、より詳細な医療記録報告書を公開すると発言してきた。ヒラリーは木曜日に選挙戦に復帰予定だ。

 

ヒラリーは2013年に医師からの診断書を公表している。これには、2012年の脳震盪から完全に回復していること、血液の凝固についての検査でも陰性だったことが書かれていた。

 

トランプが疑念を呈したことで、ヒラリーの健康に関する様々な噂話が飛び交うようになったが、トランプ自身も彼自身の健康について人々の関心を集める結果になった。

 

公開されたトランプの健康情報は少ない。トランプのかかりつけ医が「彼は最も健康な大統領になるだろう」と書いた書簡だけしかなく、それも多くの批判を浴びた。

 

ハロルド・ボーンスタイン博士は先月、彼は5分で書簡を書き上げたことを認めた。

 

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トランプは「ザ・ドクター・オズ・ショー」で健康診断の結果を公表(Trump shares physical exam results on 'The Dr. Oz Show'

 

マーク・ヘンシュ筆

2016年9月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/295915-trump-gives-dr-oz-physical-results

 

水曜日、トランプはテレビ番組「ザ・ドクター・オズ・ショー」の収録に参加し、その中で自身の最新の健康診断の結果を公表した。しかし、それから数時間後、トランプ選対は、健康診断結果はテレビでは詳しく発表されない予定だと発表した。

 

共和党大統領選挙候補者トランプは、テレビ司会者のメウメット・オズに1ページの自身が先週享けた健康診断結果の要約を手渡した、とCNNは報じた。トランプはオズと彼の健康について話した。

 

この様子は木曜日に放送される予定だ。トランプの健康診断結果の要約は公表されなかった。また、マスコミ関係者は番組収録に立ち会うことを許可されなかった。

 

トランプの健康診断の結果は日中のテレビ番組の中で明らかにされることになるだろう。しかし、水曜日の午前中の段階ではトランプ選対はこうした予想を打ち消そうと必死になっている様であった。

 

トランプ選対の幹部たちは水曜日の朝の段階で、「ドクター・オズとの話ではトランプの健康状態について直接話すことはないだろう。話では、活動的な生活様式やポジティヴな考え方の重要性など一般的な健康問題と健康に関する政治問題に限られるだろう」と語っていた。

 

「ザ・ドクター・オズ・ショー」は、トランプを診察した医師は、ハロルド・ボーンスタイン医学博士だと発表した。

 

ボーンスタイン医師は長年にわたりトランプを診察してきた。昨年、短い書簡を発表し、その中で「トランプはこれまでで最も健康な大統領になるだろう」と書いて物議をかもした。ボーンスタインは、この書簡について、自身のオフィスの外にリムジンを待たせて、5分で書き上げたものだと暴露した。

 

トランプの娘イヴァンカも番組に出演し、トランプが発表した6週間の有給の産休について言及した。

 

「ザ・ドクター・オズ・ショー」への出演は、女性有権者向けのアピールのためのトランプ選対の戦略の一環だ。各種世論調査では、女性有権者の過半数がヒラリーを支持しているという結果が出ている。

 

番組の広報によると、ドクター・オズは1時間以上の対話の中で、トランプを「詳しく問診した」ということだ。

 

ドクター・オズは、トランプに対して、神経の健康、頭と首、ホルモンのレヴェル、循環器の健康維持について話した。

 

ドクター・オズは共和党員で、2008年の大統領選挙ではジョン・マケイン連邦上院議員(アリゾナ州選出、共和党)を支持した。

 

トランプの周囲の人々は、ヒラリーが肺炎の診断を受けたことに関してあまりにも秘密主義的だと批判している。それに合わせて、トランプは自身の健康情報を公開し、それを透明性を証明する手段にしようとしている。

 

日曜日にヒラリーがよろけて、ヴァンに乗り込むのに苦労している様子が撮影されたヴィデオ映像が拡散されてからやっと、ヒラリー選対は、その2日前の金曜日にヒラリーが肺炎の診断を受けていたことを公表した。日曜日の出来事以降、ヒラリーは選挙戦を数日休み、木曜日から復帰することになっている。

 

ヒラリーが卒倒し、その後にその前に肺炎の診断を受けていたというニュースが出る前、トランプは先週、健康診断を受けていた。

 

トランプはこれまで繰り返し、大統領職の厳しさを乗り切るための強さとスタミナに欠けていると批判してきた。

 

トランプに近い人々の中には、ヒラリーの健康についての陰謀論に与している人たちがいる。

 

トランプの報道担当カタリナ・ピアソンは先月、ヒラリーは脳の障害が原因で珍しい病気にかかっていると発言した。

 

ヒラリーに近い人々は、最近になって、トランプの健康状態について疑問を呈することでやり返している。

 

オバマ大統領の選対責任者を務めたデイヴィッド・プロウフは火曜日、トランプの体重が有権者にとっての懸念となるかもしれないと発言した。

 

MSNBCの番組に出演したプロウフは「彼は70歳です。彼は、ウィリアム・タフト以来、歴代で最も重い大統領、候補者です。これは言いがかりではありません」と述べた。

 

(貼りつけ終わり)