古村治彦です。

 

 2016年9月26日(日本時間では27日)にアメリカ大統領選挙の第1回討論会が開催されました。民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプが初めて一対一で対決しました。

 

トランプが青いネクタイ、ヒラリーが赤いスーツと自分の所属政党のシンボルカラーと逆の色(トランプの共和党は赤、ヒラリーの民主党は青)で登場しました。トランプは抑制、ヒラリーは攻勢を意識したものでしょう。

 

討論会ではトランプが自分のペースに持ち込もうと何度もヒラリーの発言を遮って自分の話にしようとしたが、ヒラリーは我慢して切り返しもまぁ上手でした。どちらも大きなミスをしないでうまくまとめた感じで、やや凡戦気味ではあった。

 

ヒラリー側は月曜日にブログで紹介した記事に書かれていることをおおむね守っていたように思われます。9月26日の記事を是非ご参照ください。

 

大統領選挙は両方がこう戦うという意図通りになったが、やはり乱戦に持ち込んだトランプの方がややうまくやったのではないかと思います。討論という点では、ヒラリーが優勢だったことは認めます。しかし、トランプは自分らしさを出していたように思います。

今週の世論調査には討論会についての印象を質問するでしょうが、ヒラリーの時間だと言っているのに、それを無視して自分の言いたい事を話すトランプを有権者がどうとらえるか、具体的には、やり手ととらえるか、傍若無人で嫌悪感を持たれるかを知りたいと思います。

 

司会者のレスター・ホルトは少しビビッていたように思います。最初にトランプとヒラリーから色々と言われて萎縮してしまった感がありました。トランプ側からは、口を挟むなと言われ(これでは司会者の役割を果たせません)、ヒラリー側からは、トランプの発言の真偽をその場で指摘せよと言われました(討論会中にそれを個人の力では不可能です)。それでも大変な事だったと思います。全くかみ合わない二人の討論会の司会者なんて誰もやりたがらないのですから。全体としては、うまくまとめていたと思います。

 

トランプは日本とサウジアラビアを防衛する負担について言及しました。もっと金を払えと言うことのようです。日本のことを考えると、トランプ:アメリカ軍の駐留経費負担の増額、ヒラリー:日米同盟強化(自衛隊の米軍下請化)、ということになるでしょうが、トランプの方が実態を余すところなく伝え、交渉することが出来るでしょう。ただ、日米同盟の実態を知れば、日本側はたまなし野郎ばっかりだったんだなとか言われてしまいそうですが。しかし、そうした動きを許さない勢力に邪魔されるでしょう。

 

私は、トランプが負けた、致命的なミスを犯したとまでは思えませんでした。ヘアスタイルもお互いにきちんとセットされていましたが、最後、トランプは少し乱れており、その点で守勢だったという印象にもなるのかなと思います。

 

それでも次回までにトランプが勢いを挽回するためには、トランプは税金申告書を公開するべきだと思います。そうすれば情勢は変化すると思います。トランプが公開しなければ、第2回目の討論会でもつつかれるでしょう。今までの選挙ではどの候補者もやってきたということでもあります。そうすれば、ヒラリーのEメール問題はFBIと国務省の捜査と調査が入っている以上、ヒラリーは追い詰められます。あと、気になっているのは、今月初めにアサンジがテレビに出演して、ヒラリーに関するリークをすると言っていたことも気になります。いつ出すのか、何が出るのか、これによってトランプが一気に挽回する可能性もあります。

 

アメリカ大統領選挙は、これからも目が離せなくなっていきます。次回は10月9日にセントルイスのワシントン大学(日本ではあまり有名ではありませんが、名門です)で開催されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

第1回目の討論会の勝者と敗者(Winners and Losers from the 1st presidential debate

 

クリス・シリーザ筆

2016年9月26日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/09/26/winners-and-losers-from-the-1st-presidential-debate/?hpid=hp_hp-top-table-main_winnerslosers-1115pm%3Ahomepage%2Fstory

 

ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプとの間で大統領選挙の第1回討論会が行われ、この様子は本紙でも取り上げられている。私はツイートをし、ノートを取り、そして、勝者と敗者を決めた。それらについて以下に書く。

 

●勝者たち(Winners

 

・ヒラリー・クリントン:ヒラリーはこの討論会で完璧ではなかった。討論会の中で何回か、彼女は準備をしていることがバレバレで、ロボット的な対応になった。人種関係に関する彼女の答えは、余りにも理性的過ぎて、心がこもっていないように感じた。しかし、ヒラリーは、トランプよりもうまくやった。当然のことだが、ヒラリーはよく準備しており、事実と数字を駆使して、自分の業績を強調し、トランプを叩きのめした。彼女は税金に関してトランプをうまく攻撃した。ヒラリーは、トランプから彼女の資質について攻撃されたことを受けて、対応したがそれはうまかった。彼女の「オバマ大統領はアメリカ生まれではない」という主張に対する答えは、そんなに難しいものではなかったが、うまいものだった。そして、彼女の最大の弱点、国務省で私的なサーヴァーを利用するという決定について、うまく避けることが出来た。彼女は完全なそして率直な謝罪を行った。なんてうまくやったんだ!その後、討論は荒れることなく進んだ。ほぼ全ての面で彼女が勝利したことは明らかだ。

 

・2分割されたスクリーン:討論会中にトランプとヒラリーを一緒に映すことを決めたのは誰か分からない。しかし、誰が決めたのかは問題ではない。とにかく素晴らしい仕事だった!討論会は、政策についての考えだけでなく、性格と資質を明らかにするものだ。2分割されたスクリーンによって、彼ら2人がどんな人間かを明確にし、攻撃されたり、攻撃したりするときに、彼らが神経質になり、攻められている時にどんなふるまいをするかで人柄までわかる。トランプはヒラリーに比べて、2分割されたスクリーンをうまく使えなかった。トランプは大袈裟にため息をつき、大統領にふさわしくない表情を作った。

 

・レスター・ホルト:「ナイトリー・ニュース」のキャスターであるホルトは批判されることになるだろう。その時の批判は、(A)トランプの発言の事実確認が不十分だった、(B)討論会中に気配を消していた、というものになるだろう。(A)のポイントについて言うと、討論会が7時間も続くのなら別だが、討論会のその場で、トランプが言うことの全ての事実確認をすることは不可能だ。(B)のポイントについて言うと、私は討論中にホルトが自分の存在を消したことに拍手を送った。素晴らしい司会者とは人々の記憶に残らないものだ。この点で、彼らは審判のようなものだ。ホルトは、2人の候補者たちが何度も何度も叩き合うのをそのままにしていた。ホルトは、討論会の形式を彼らに強制しようとはしなかったし、彼らが不一致点について議論している時に話題を変えようとしなかった。これこそ彼がやりたかったことに違いない!ホルトがどれほどうまくやったかを示す証拠が欲しいって?明日になれば誰もホルトについて語っていないだろうということを保証する。それこそがホルトにとっての勝利だ。

 

・ツイッター: 私はツイッターを前にしてどのようにして討論会を見ていたのかを覚えていない。そう、確かに私は何度か混乱した。恥ずかしいことだが。そして酷いことだった。だけど、私は、どれほどツイッターを愛しているかを示した。

 

・「大きい・不遜(bigly)」対「大きなリーグ(big league)」論争:私は、トランプは「大きなリーグ(大リーグ)」と言ったと思う。他の人たちには「大きい・不遜」と言ったと言っている。月曜日の夜に、トランプはこのようなことを幾つも言っていた。メリアム・ウェブスターのツイッターは良い仕事をした!

 

●敗者たち(Losers

 

・ドナルド・トランプ:トランプは今回の討論会のために十分な準備をしなかった。トランプは聞かれるだろうと分かっているはずの質問の答えに汲々としていた。これまでの5年間でオバマ大統領がアメリカ生まれではないという子を証明しようとしてきた試みに関する回答は、自動車事故をスローモーションで見ているようだった。どうして税務申告を公開しないのかという質問に対する彼の答えはうまくなかった。イラク戦争に対する立場に関するトランプの説明は事実に反するだけでなく、全く説明になっていなかった。大統領になるための資質に関しては、この点でトランプはヒラリーを打ちのめすチャンスがあったのかもしれない。トランプは自分には大統領になるための最高の資質を持っていると繰り返した。この言葉は終末にヒラリーが演説の中で使ったことだ。(捕捉:自分が最高の資質を持つと自分で言わなければならないのなら、それは最高の資質を持っていないことを意味するのだ。)ヒラリーが使わなかったことでトランプも使わなかったというのが真実だ。彼は「たくさんのろくでなしな人々」というフレーズを使わなかった。彼は、ヒラリーのEメール問題にあまり触れなかった。彼は、「誠実」「信頼に足る」という言葉さえつかなかった。討論が進むにつれて、トランプは自身の最悪の本能を出すようになったように見えた。ヒラリーが話している時に、彼女の言葉を遮り、「正しくない」と叫び続けたが、彼の発言を裏付けるような内容の話をほとんどしなかった。トランプにとっては良い夜という訳にはいかなかった。

 

・ドナルド・トランプのウェブサイト:トランプ陣営の方々にはこのことについてメモを取って欲しいと思う。討論会中にトランプが自分のウェブサイトに言及すれば、それは8000万人の人々をそこに集中させることになるのだから、「交通整理」をして、ウェブサイトがいつでも見られるように準備しておくべきだ。

 

・討論会のステージの背景:2人の候補者たちの後ろに様々な単語を掲載するのが良いアイディアだと考えたのは誰だ?たくさんの筆記体の単語が書かれていた。私は、背景に憲法の文言を掲げることは理論上では良いアイディアと思ったのだと思う。しかし、私たちにとっての最高の哲学者であるホーマー・シンプソン(訳者註:アニメ「ザ・シンプソンズ」の主人公)の言葉を借りると次のようになる。「理論上では、共産主義はうまくいく!」。私にとってはこの背景は見にくかったと思うので、次の討論会では止めてもらいと思う。

 

・聴衆:聴衆を入れるのなら、どうして彼らに対して繰り返し、討論会中に何も言わないようにと呼びかけたのか?私は、大統領選挙の討論会に聴衆を入れるべきかどうか分からない。しかし、聴衆を入れるのであれば、音を立てないようになどと言うべきではない。少しの声援と反応によって、討論会全体が見やすくなるし、より楽しく、より真実味を持つようになる。もし聴衆に対して全く反応させないようにするのなら、何もしゃべらない人を入れるべきだが、そんな人はいないから不可能だ。

 

・400パウンドのハッカーたち:ロシアが民主党全国委員会にハッキングしたという主張に対してトランプは反論した。トランプは、400パウンド(約180キロ)の太ったハッカーがベッドに座ってハッキングをしたのだと主張した。うーん。本当にそうかな?もしそれが本当だとすると、そのハッカーはこんな姿に違いない。

 
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(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22