古村治彦です。
月曜日(日本時間では火曜日)に行われたドナルド・トランプとヒラリー・クリントンとの間の第1回目の大統領選挙討論会の評価についての記事をご紹介します。
アメリカのメディアではおおむね、ヒラリーがトランプを上回ったという評価を下しています。CNNによると、62%の視聴者がヒラリーが勝ったという判断を下したということです。しかし、この調査はインターネット上のものであって、有権者の意向を必ずしも正しく反映したものとは言い切れません。
昨日も書きましたが、両候補共にそれぞれの「らしさ」を出しましたが、トランプの方がやや抑制的であったと思います。ですから、どうしてもトランプに対する評価が低くなってしまうものと思われます。
ヒラリーはおそらく、何度も何度もリハーサルを繰り返したことでしょう。そこにはいくつものパターンがあって、トランプの発言が何パターンも想定され、それに対する切り返しが自然な形で出るようになるまで練習したものと思われます。ですから、見ていた人たちには「準備しすぎじゃないのか」と思われるほどでした。
トランプは乱戦に持ち込むと力を発揮することは既に証明されていますが、一対一の討論会は初めての経験で、あまりうまくできなかったということもあるでしょう。ここからは推論ですが、側近たちはヒラリーの発言傾向を分析し、様々なパターンを作って、それに対する切り返しを練習するように進言したのでしょうが、トランプはその場での当意即妙さに絶対の自信を持っていますからそれを断ったのでしょう。ですが、あまりうまくいかなかったようです。
トランプはこれまでも何度も修正をしてきてそのたびに結果を出してきていますから、今回の討論会の反省点を次に活かしてくると思います。
トランプは討論会の中で、日本について何度も、「守ってやっているのだからもっと駐留経費を支払え」と述べています。これは、ビジネスマンの感覚としては当然のことで、そして、私たちは、これもビジネスのやり方として、実情を話しつつ、負担を値切る、もしくは駐留米軍の規模を縮小することを交渉することが出来ます。しかし、トランプ政権ができても、こうした動きが日米両国内の様々な勢力によって妨害されてしまうことでしょう。
トランプは日本を守ってやっているということを述べていますが、「誰から」「どんな脅威」からとは具体的に言っていません。日本を外敵の侵入から守ってやっていると述べている訳ですが、その外敵が何なのかを具体的に述べていません。
私たちはもっと賢いやり方として、この「外敵」になる脅威をなくすことが必要です。ご近所づきあいでトラブルは起きても、引っ越すのが難しい以上、それを何とかうまく解決して、大きなトラブル、器物損壊や傷害、殺人までエスカレートしないようにすること、その枠組みを作ることが重要です。そのためには、相互の理解を深め、交流を促進するための地域機構の設立が重要なのだろうと思います。
(貼りつけはじめ)
討論会で放たれた鋭い言葉5選(Top five zingers of the
debate)
メラニー・ザノナ筆
2016年9月27日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/briefingroom-blogroll/297964-top-five-zingers-of-the-debate
ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプはこれまでの数か月、ジャブの応酬を行ってきた。
ニューヨーク州ヘンプステッドにあるホフストラ大学で月曜日の夜に90分にわたって行われた大統領選挙の討論会が、有名なビジネスマンと元大統領夫人が一対一で対面する初めての機会となった。
討論会は、現代の大統領選挙の歴史の中で、最も期待され、重要な大統領選挙討論会であり、静かな始まりの後に、複数の素晴らしい、そして白熱したやり取りが行われた。
重量級のぶつかり合いから生まれた5つの鋭い言葉をこれから見ていく。
●スタミナが注目を浴びた(Stamina gets the spotlight)
聴衆は反応しないようにと言われていたが、討論会で最も大きな歓声が上がったのは討論会の終盤、トランプがヒラリーのスタミナについて大統領に相応しいかどうか疑問を発したときだった。
共和党大統領選挙候補者トランプは、ヒラリーには大統領らしさはないというコメントについて賭けに出た。
「そうですね、112か国を巡り、世界各国で平和協定、停戦合意、新しい機会を開くための交渉をしたり、連邦議会の委員会で11時間にもわたる証言を行ったりしたら、彼も私にスタミナについて何か言うことが出来ますね」とヒラリーは発言し、聴衆から歓声が上がった。
民主党大統領選挙候補者ヒラリーは、トランプが過去に女性の外見について語った内容を取り上げた。大富豪トランプは、あるビューティーコンテストに参加したヒスパニックの女性を「ミス・ピギー(子豚)」や「ミス・ハウスキーピング(家政婦)」と呼んだ。
●黄金の基準(The gold standard)
討論会において激しいやり取りはいくつかあったが、その中で、トランプは、TPPに対するヒラリーの一貫性のなさを非難した。
「あなたは完全に支持していましたね。そして、私が述べたこと、TPPが如何に悪いものかを聞いて、“これでは討論に勝てないわ”と言ったんですよ」とトランプは述べた。
ヒラリーは、態度を変えたことについて、「私は、交渉が終了して、協定の条件がはっきりしたので、それを見て反対に回ったのです」と語り、正当化した。
しかし、トランプは「あなたはそれを黄金の基準と呼んだでしょう」と切り返した。
「いいかしら、ドナルド、あなたは自分自身の現実世界の中に生きていることは知っています。事実はね、私が言ったのは、それが素晴らしい協定になればよい、ということです」。
●非難合戦(Blame game)
トランプは、アメリカには指導者不在で、ヒラリーがその原因であると述べた。
トランプは、「私たちには指導者がいません。そして率直に言って、このことはクリントン国務長官から始まっているのです」と述べた。
ヒラリーは、「討論会の終わりまで、これまでに起こったこと全てが私のせいにされてしまうように感じています」と切り返し、会場から笑いが起きた。
トランプは、聴衆の笑いを誘おうとして、「だってそうじゃないですか?」と言葉を挟んだ。
元大統領夫人ヒラリーは続けて、「もっとクレージーなことを言って討論に参加して」と言った。
トランプは再びヒラリーの言葉をさえぎって、「我が国の企業がアメリカにおカネを持って帰ってくるようにさせることは何らクレージーなことではないですよ」と述べた。
●お金、お金、お金(Money, money, money)
トランプは討論会で繰り返し、ヒラリーが「数百万ドル」を投じて、自分を攻撃するコマーシャルを放映していることを非難した。
不動産の賃貸で差別的な取り扱いをしたことに関しての訴訟に関して、トランプは弁明をしなくてはならなかったが、トランプは、ヒラリー陣営が放映しているコマーシャルについて非難し、自分はヒラリーに対するネガティヴな内容のコマーシャルを放映していないと述べた。
トランプは次のように語った。「あなたが私を攻撃するために酷い内容のコマーシャルを放映していることは知っています。私はあなたにそんなことをしていません。まぁそれは、お金を節約するためでもあるのですがね」。
●「核兵器のボタン」を巡るやり取りが再び(‘Nuclear codes’ line
makes a comeback)
ヒラリーは、核兵器のボタンに関する批判を集めた発言を行ったが、それが月曜日の夜に再び取り上げられたが、新しい展開を見せた。
トランプは「勝利し続ける」資質を持っていると主張し、それに対してヒラリーは、トランプが核兵器について「トラブルを起こしやすく」、「騎士」のように単純な態度を取っていると反論した。
ヒラリーは「ひとつのツイートだけで激怒してしまうある男性がいますが、核兵器のボタンの近くに彼の指を置かないようにしてもらうべきですよね」と述べ、民主党全国大会の指名受諾演説の一節を繰り返した。
「これはまた古いことをおっしゃるものだと申し上げねば」とトランプは応じた。
「しかし、面白いでしょう」とヒラリーは切り返した。
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荒れた討論会の5つのポイント(Five takeaways from wild
debate)
ジョナサン・イースリー、エイミー・パルネス筆
2016年9月27日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/297966-five-takeaways-from-wild-debate
侮辱、割り込み、鼻すすり、ルールを守らなかった聴衆。
月曜日の夜に行われたドナルド・トランプとヒラリー・クリントンとの間の討論会は期待通りだった。政治の世界で数日間はあれやこれや語られ続ける瞬間をいくつも生み出した。
歴史的な衝突の5つのポイントを挙げていく。
●ヒラリーは準備をしていた(Clinton came prepared)
ヒラリーは、数週間かけて、第1回目の討論会の準備をした。何冊もの報告書を読み、側近たちと激しい討論の練習を行った。その中には、長年にわたり、ヒラリーの報道担当と上級顧問を務めたフィリップ・レインズがいた。
トランプは、作り込まれていない自分らしさと本能的な対処に自信を持っていた。そして、ヒラリーとは違う形で討論会に備えた。彼はヒラリーの過去の討論会での様子を収めた映像を研究することに力を入れたと報じられている。
ヒラリーの準備は引き合ったように見える。彼女は慎重に振る舞った。いささか準備をしすぎていることが分かる場面もあったが、ステージ上をうまく支配し、トランプが場を争うとするときにうまく彼をあしらうことが出来た。
あるコメントでは、トランプは討論会前の数日間、準備をするために家にこもったことについて、トランプは馬鹿にしようとした。
トランプの話をよく聞き、ノートを取っていたヒラリーは反撃した。「あなたは、今回の討論会に準備をしたことについて私を批判するんですね。そうですね、私は準備をしましたよ。私が何について準備をしたか分かりますか?私は大統領になるための準備もしたのです」。
●貿易問題でヒラリーが守勢に(Trade knocked Clinton off
her game)
討論会の最初の30分間、討論は最も盛り上がった。トランプは、貿易問題について語りはじめ、ヒラリーはすぐに守勢に回った。
最初の激しいやり取りの中で、トランプはヒラリーに対して、貿易協定を支持したことについて説明を求め、北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)を攻撃するときに、夫ビル・クリントン元大統領の名前まで出した。
「あなたの夫がNAFTAに署名しました。これはアメリカの製造業にとって最悪の協定です」とトランプは述べた。
「それはあなたのご意見ですね。ご自身のね」とヒラリーは答えた。
トランプの攻撃のために、ヒラリーは、夫を擁護し、そこからラストベルトでは不人気の貿易協定を擁護するという難しい立場に立たされた。ヒラリーは、夫ビル・クリントンは各種の貿易協定で「素晴らしい業績を残した」と語った。
ヒラリーは、「NAFTAがどれくらい機能したか、そして、もう一度機能するようにさせる方法について深く考えています」と述べた。
トランプはこのやり取りの後半で、オハイオ州やペンシルヴァニア州の名前を挙げて、「NAFTAによって製造業は30、40、50%も減少してしまいました。NAFTAはこれまでで最悪の貿易協定なのです」と語った。
この後、元国務長官ヒラリーは、練習してきたであろう言葉を述べた。「ドナルド、あなたがご自身の作った現実世界の中で生きるのは良いですよ。しかし、それは事実じゃないのです」。
トランプは圧力をかけ続け、ヒラリーが最初にTPPを支持していたことを攻撃した。彼は、ヒラリーは後退しただけのことで、TPPについては、もともと「黄金の基準」を呼んだではないかと述べた。この問題はトランプにとって圧倒的に優位に立てる問題だとヒラリーは認識していた。
このやり取りはトランプが優位に立った。トランプは選挙戦の最終盤で、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルヴァニア州のような伝統的に民主党が強い各州をひっくり返そうとしている。
●出生地に関する陰謀論がトランプにつきまとう(Birtherism will
haunt Trump)
トランプは、最近になってオバマ大統領がアメリカ市民であることを受け入れると明言した。このことで、出生地に関する陰謀論が再燃した。
討論会の司会者レスター・ホルトは、なぜ今になってオバマ大統領がアメリカ市民であるという結論を受け入れたのか、昨年まではオバマ大統領の出生地について疑問を提示してきたが、と質問した。トランプは、ヒラリー選対の幹部たちがこの論争を始めたのだとして、ヒラリーに矛先を向けようとした。
ヒラリーは、トランプが「人種差別的な出生地に関する虚偽」を述べていたことを批判した。ヒラリーは、彼の発言や行為は、オバマ大統領と、オバマ大統領が大統領に就任したことでプライドを持った数百万のアフリカ系アメリカ人を「傷つける」ことになったと批判した。
専門家たちのほとんどは、このやり取りでトランプは失敗したことに同意した。出生地に関する陰謀論は、これから投開票日まで、トランプの弱点となるであろう。
●トランプの最後の主張は変化だ(Trump’s closing argument
is change)
これまでの大統領選挙候補者の中で最も常識から外れた候補者であるトランプは、変化の候補者であることに賭けた。
月曜日の討論会で話された諸問題で、トランプは政策に関する質問をヒラリーに対する告発に切り替え、ヒラリーの「政治的な失敗」は繰り返されると主張した。
貿易問題に関して、トランプは、労働者階級を破壊したNAFTAのような悪い貿易協定に彼女もサインすることになると述べた。
人種問題に関して、トランプは、インナーシティは、100年間民主党がコントロールしてきたが、そのために、戦争状態になっていると語った。
テロリズムに関して、トランプはヒラリーがISISを創設し、この10年間、ISISを封じ込めようと無駄な努力をしてきたと述べた。
怒りを募らせたトランプは、貿易問題でヒラリーを攻撃している最中に、「あなたは、30年間にわたりこんなことをやってきました。それなのになぜ今になって解決策について考えているのですか?」と述べた。
選挙戦は接戦で、多くのアメリカ人はトランプが主張を変えていると考えている。
一方、ヒラリーは、テレビのリアリティー番組でスターになったトランプは、アメリカに必要な変革をもたらすには、あまりに突飛すぎると主張した。
ヒラリーは、「ツイッターの誘惑に負けてしまうような男性には、指を核兵器のボタンから遠ざけておいてもらうべきですよね」と語った。
●候補者2人の戦いは熱を帯びていく(They’re just getting
warmed up)
常識で言えば、第1回目の討論会が最も重要なものとなる。しかし、トランプとヒラリーは、10月9日のセントルイス、10月19日のラスヴェガスでの討論会で、更に本気を出して戦うことを示している。
候補者2人は、月曜日の夜に数回にわたって激しく渡り合った。トランプはヒラリーに対して貿易で攻撃し、ヒラリーはトランプに対して「出生地に関する陰謀論」で対抗した。しかし、両者はお互いにノックアウトが出来る攻撃を出さなかった。
ヒラリーはとても慎重に動き、そのためにトランプが喚き散らすことを許してしまったが、そのために逆に、トランプは長々とした弁明をして自分自身を傷つけることにもなった。トランプはより攻撃的であったが、しかし彼のエネルギーのほとんどは、自身の苦しい弁明と、ヒラリーとホルトの発言を遮ることに費やされた。
選挙戦が月曜日に発表された世論調査の結果のまま、つまり接戦のまま続くとすると、候補者たちはより激しく、攻撃的になっていくだろう。
トランプは次の討論会では激しい攻撃を行うと既に予告している。
討論会の後にCNNの番組で、トランプはビル・クリントンの過去の不倫について質問された。
トランプは「次の討論会でお話ししますよ」と語った。
(貼りつけ終わり)
(終わり)
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