古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙も残り30日ほどとなりました。1年以上も続いた選挙も最後の最後、追い込み、ラストスパートとなります。残された討論会はあと2回です。

 

 アメリカ大統領選挙では、10月に入って、全く予期しなかった出来事が起きて、選挙戦の行方が変わるということがあり、これを「オクトーバー・サプライズ(October’s Surprise)」と呼びます。

 

 現職大統領だと政策でオクトーバー・サプライズを起こせますし、現職大統領を持っている側が有利である場合があります。しかし、スキャンダルや国際的な事件となると、政府がコントロールすることはできません。

 

 私が考える今回の選挙のオクトーバー・サプライズは、ジュリアン・アサンジ率いるウィキリークスがヒラリーの国務長官時代のEメールか、民主党全国委員会のEメールを更に公開することではないかと思います。既にお知らせしている通り、アサンジは何か情報をリークしようとしましたが、安全上の懸念からそれを中止しました。ドローンを飛ばしたり、銃撃をしたりして彼を殺すという計画があったという話も出ています。

 

 ヒラリーの健康問題もオクトーバー・サプライズの有力な候補となります。討論会中に倒れてしまうということになれば、ヒラリーにとっては致命的な出来事となります。もちろん、トランプは70歳ですから、トランプだって健康不安がない訳ではありません。歴代でも最重量の大統領になるのではないかと言われている体重とファストフードを良く食べていることは健康不安の材料となります。

 

 どんなことが起きるか分からないので、「サプライズ」となるのですから、私がいくら想像をたくましくしても仕方がありません。残り20日余り、何かが起きるかもしれないと思いながら、見ていきたいと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

オクトーバー・サプライズはどんなものになるだろうか?(What will be October’s surprise?

 

ベン・カミサール筆

2016年10月1日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/298761-what-will-be-octobers-surprise

 

 

21世紀における最大の政治的なサプライズは、怒鳴ると・トランプの政界における大成功である。

 

全く先が読めない選挙戦において、オクトーバー・サプライズはどんなものとなるだろうか?

 

過去の選挙では、10月のサプライズのニュースで情勢が逆転することも多かった。その中には、選対が仕掛けて成功したものもあるし、人間の力ではコントロールできないものもあった。

 

最近の選挙を見てみる。2008年の選挙では、投開票日の数週間前に失業率が上昇し。2004年の場合は投開票日直前にオサマ・ビン・ラディンがヴィデオを公開した。2000年の場合はジョージ・W・ブッシュが数十年前に飲酒運転で逮捕されたというニュースが出た。

 

10月になってトランプ、ヒラリー、有権者を驚かせる可能性がある分野を取り上げていく。

 

●ジュリアン・アサンジと民主党全国委員会のEメール(Julian Assange and the DNC emails

 

ウィキリークスのジュリアン・アサンジは、民主党全国委員会から大量にハッキングしたEメールを更に公開すると約束した。

 

民主党全国大会の開催直前、民主党全国委員会は激震に見舞われた。それは、民主党全国委員会の幹部と職員が民主党予備選でヒラリー・クリントンを勝たせたいために、バーニー・サンダース連邦上院議員を貶めようというやり取りをしていたEメールがリークされたからだ。

 

この恥ずべき内容のEメールの暴露によって、民主党全国委員会委員長のデビー・ワッサーマン=シュルツは委員長の座からの辞任を余儀なくされた。

 

アサンジは更なるEメールの暴露を約束し、トランプ選対はそれを煽ることに忙しい。

 

トランプの非公式のアドヴァイザー、ロジャー・ストーンは今週、インフォウォーズの「ジ・アレックス・ジョーンズ・ショー」に出演し、彼の友人がロンドンまで行き、アサンジと接触していると語った。

 

Eメールを巡るサプライズは、国務省によるヒラリー・クリントンの国務長官の職務に関わるEメール公開によっても起きる可能性がある。

 

共和党側は今までハッカーたちからの攻撃を受けていない。トランプ側にもハッキングの心配がある。ハッキング専門誌「2600マガジン」は、トランプの税務申告書を持ってきた人に1万ドルを与えると宣伝している。

 

民主党のストラティジストであるリス・スミスは「オクトーバー・サプライズ中のオクトーバー・サプライズこそは、ドナルド・トランプの税務申告書を見ることでしょうね。それが内部からのリークか、ハッキングかに関わらず、ね」と語る。

 

スミスは更に「彼の税務申告書に何が書かれているか分かりません。これは大きな謎と言えるでしょう。そして、それに対する興味関心が増していきます。この税務申告書の内容が出たら、マスコミは狂喜乱舞でしょう」とも述べた。

 

●テロリズム(Terrorism

 

アメリカ国内におけるテロ攻撃の可能性は、大統領選挙の行方を分からなくさせている。

 

トランプはアメリカに対する攻撃が起きていることを自分の選挙運動の柱に据えている。彼は、オバマ大統領とヒラリー・クリントンが難民をあまりに簡単に受け入れていると批判している。彼に言わせると、難民の受け入れはアメリカにとって脅威となる。

 

トランプは外国との関係を経済面から捉えているが、それ以外にも安全保障の面からとも捉えている。

 

予備選挙期間中、サンベルナルディーノとパリでテロ攻撃が起きた。これらの攻撃の結果、トランプに更なる支持が集まった。

 

共和党系の対立候補者分析機関である「アメリカ・ライジング」のコミュニケーション部門の部長を務めているジェフ・べクデルは、ヒラリーの主要なセールスポイントに傷がつくと語った。彼女のセールスポイント、それは外交政策分野における豊富な経験である。

 

べクデルは次のように語った。「国際的な大事件、テロリズム、その他世界の主要大国に関する出来事が選挙戦終盤に発生したら、ヒラリー・クリントンに対してはマイナスの影響を与えることになると思います」。

 

彼は更に次のように語った。「ヒラリーの選対はオバマの政策の継続性を訴えています。そうなると、オバマ政権の外交政策の負の遺産も彼女が継承すること言うことになります」。

 

同時に、ヒラリーの主要な主張に、自分は大統領になる準備ができているが、トランプはそうではないというものがある。ヒラリーは更に、トランプの資質はアメリカ大統領にふさわしくないとも主張している。

 

ある民主党所属のストラティジストは、「攻撃や恐怖が起きるたびに、それはヒラリーを助けるように思われます。なぜなら、彼女は強く、堅実だからです」と語った。

 

この人物は続けて「大きな変化はない年かもしれないし、ヒラリー・クリントン前長官の堅実さが際立つ都市になるかもしれません」と述べた。

 

●スタミナと健康(Stamina and health

 

両候補の平均年齢は69.5歳となり、今年の大統領選挙はアメリカ史上もっとも最高齢同士の戦いとなっている。

 

70歳になるトランプは、繰り返し、ヒラリー・クリントンの「スタミナ」に疑問を呈してきた。ヒラリー選対は、こうした主張は保守派の中で長年語られてきた陰謀論の一種だと切り捨てている。ヒラリーは投開票日までに69歳になる。

 

ヒラリーが911事件の追悼式典で昏倒したのは後に脱水症状が原因であると明らかにされた。そして、その前に肺炎の診断を受けていることも分かった。これによって選挙戦の関心は候補者2人の健康に集まり、2人の健康診断記録は虫眼鏡で調べられるように、人々の精査を受けた。

 

ヒラリーの健康について重大な事実が発覚すれば選挙戦に大きな影響を与えることになるだろう。

 

ある共和党のストラティジストは次のように語った。「投開票日が近づいた今、どちらも倒れるようなことがあれば選挙は負けということになるでしょう。これからこの前のようなことが起きるかどうかは分かりませんが、少なくとも911事件の式典でのヒラリーの昏倒映像は忘れられることはないでしょう」。

 

トランプの健康不安もある。彼はファストフードを好み、選挙期間中、運動する時間も限られてしまっている。もし健康不安が出れば、それはヒラリーに与えたような影響力を持つ。しかし、トランプは、ヒラリーのような健康に関する懸念を人々が持つということはない。

 

●財団を巡るサプライズ(A Foundation surprise

 

トランプ、ヒラリー両候補共に彼らが創設した慈善財団を巡る疑義に直面している。

 

ヒラリーの場合、ヒラリーが国務長官在任中に、クリントン財団に献金を行った外国の大口献金者たちが国務長官ヒラリーとの会談に便宜を図ってもらったのではないかという疑問がある。

 

トランプに関しては、ワシントン・ポスト紙がトランプ財団に関する一連の記事を掲載した。これらの記事の内容はトランプのイメージを下げるものであった。

 

これらの記事によって、トランプが財団の資金をフロリダ州検事総長に寄付したことが明らかにされた。この検事総長はトランプ大学を巡る捜査を主張していたが、後に取り止めた。また、トランプは財団の資金を自身の負債返済に使用したり、自画像などの購入費用に充てたりしていたことが明らかになった。

 

情報が零れ落ちていくのは投開票日まで止まらないだろう。問題は、爆発的な力を持つ情報が出てくるのかどうかということだ。

 

●結局、分からない(Who knows?

 

サプライズについて言えることは、それはサプライズであるということだ。そして、今月に起きる可能性がある事件を挙げていったら切りがない。

 

候補者たちが全くコントロールできない出来事が起きる可能性もある。例えば、非武装の黒人を警察官が殺害する事件や逆に警察官が殺害される事件は今年頻発しているくらい事件である。

 

国際市場において予期されない不安定性が発生した場合には、経済も選挙戦に影響を与えることになるだろう。

 

新たな争いや新しいスキャンダルがサプライズになることもある。

 

9月の最終日、記者たちはサプライズによって目を開かされた。トランプは元ミスユニヴァースと言い争いを行っていたが、それがエスカレートし、トランプがこの女性のセックステープがあるとまで言い出したのだ。

 

サプライズがどれほどのものになるのかは、全体として予想外の展開となった2016年の大統領選挙がどれほど衝撃的なものとなるかにかかっている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)