古村治彦です。

 

 2005年にトランプが女性に関して卑猥な言葉で話していたという録音が出て、一気にトランプ叩きにまで発展しています。彼を大統領選挙候補者に選んだ共和党内部からも、トランプ支持の撤回や大統領選挙の事態を求める声が出ています。共和党内部がパニックになっています。

 

 今年の大統領選挙の投開票日には、連邦下院議員全員と連邦上院議員の3分の1の選挙も同時に行われます。現在のところ、上下両院で共和党が過半数を確保しているのですが、今回の連邦議会選挙では共和党がやや劣勢となっていました。そうした状況の中で、トランプの卑猥な発言が出て、議会選挙に大きな影響を与えるのではないかということになり、共和党の議員たちがパニックに陥ってしまったのです。トランプ支持をそのままにしていると、民主党側からの格好の標的となってしまいます。また、女性票や無党派からの支持も見込めなくなります。

 

 また、今回、トランプを支持している人たちは、「エスタブリッシュメントは嫌い」「トランプは俺たちの考えていることを代弁してくれる」ということで、トランプ支持をしているので、連邦議会選挙で共和党の候補者を積極的に応援することはありません。ですから、トランプ支持を表明したところで、トランプ支持者たちから応援されないとなれば、トランプを支持することは全く意味のないことになります。

 

 更に言うと、連邦上院議員というくくりで考えると、共和党所属の連邦上院議員たち、特にヴェテラン議員たちにとってみれば、ヒラリーは元同僚、トランプは全くのヨソモノ(元は民主党員)ということになって、潜在的には、「元仲間のヒラリーの方がやりやすい、応援したい」ということになります。それでも党派の違いがありますから、ヒラリーを公然と応援することはさすがにできません。嫌々でもトランプを応援しなければなりませんでした。しかし、今回のトランプの発言が出たことで、党派に関係なく、女性蔑視は許せないとなり、そうした「縛り」がなくなったことで、一気にトランプ叩き、トランプ降ろしの動きが加速し、拡大したのです。

 トランプが嫌で嫌でしょうがなかった共和党幹部たちにとってはトランプのスキャンダルは「免罪符」となりました。

 

 第2回目の討論会がいよいよ明日行われますが、トランプがどのように劣勢を挽回するのか、という点に注目が集まります。

 

(貼り付けはじめ)

 

共和党内部の混乱:トランプの選挙からの撤退を求める声が高まる(Chaos in GOP: Calls grow for Trump to drop out of race

 

ハーパー・ニーディグ、ジョナサン・イースリー筆

2016年10月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/300005-chaos-in-gop-calls-grow-for-trump-to-drop-out-of-race

 

ドナルド・トランプの選挙運動は、トランプが女性について行った卑猥な性的発言を巡り、内部崩壊の危機に瀕している。トランプに対しては、共和党の連邦議員たちが選挙からの撤退を求めている。これは前代未聞のことだ。

 

深夜に行われたトランプによる発言についての謝罪では、嵐を鎮めることが出来なかった。2005年に彼が行った発言がテープに録音されており、その中には、女性の「女性器(p---y)」を掴んでやるというものも含まれていた。

 

土曜日、トランプに対する政治的な影響は雪玉のようにどんどん膨らんでいった。日曜日には民主党のヒラリー・クリントンとの間で第2回目の討論会が開かれるという重要な時期に騒動が起きた。第2回目の討論会は前回よりもさらに多くの人々の関心を集めるだろうと予想されている。

 

連邦上下両院の共和党所属の議員たちは大挙してトランプを見限りつつある。彼らの多くがトランプ支持を撤回し、党のためにトランプの選挙からの撤退を決断するよう求めている。

 

ジョン・サーン連邦上院議員(サウスダコタ州選出、共和党)は連邦上院共和党のナンバー3である。サーンは土曜日、共和党幹部としてトランプの撤退を求めた最新の人物となった。

 

サーンは「マイク・ペンスが出来るだけ速やかに共和党の大統領選挙候補者になるべきだ」とツイートした。

 

激しい論争が共和党内部をひっくり返し、混乱を招いている。そして、投開票日まで1カ月という段階で、連邦上院での過半数維持が絶望的な状況になっている。

 

ネヴァダ州の連邦上院議員選挙で接戦を展開している現職の連邦下院議員ジョー・ヘック(ネヴァダ州選出、共和党)は土曜日にミット・ロムニーと共に選挙集会に登場した。ヘックは次のように語った。「ドナルド・トランプのこの種の過去の行動と不適切な発言をこれ以上見たくも、聞きたくもない。私の妻、娘たち、母、姉、その他全ての女性たちが彼の発言のように扱われるべきではない。全てのアメリカ国民がそのように扱われるべきではない」。

 

選挙からの撤退を求める声が大きくなる中で、トランプは開き直って、選挙から撤退する可能性は「全くのゼロ」だと発言した。

 

『ワシントン・ポスト』紙とのインタヴューで「私は決して撤退しない。私は人生において逃げたことなどない。私は選挙戦を止めない。私には大きな支持がある」と語った。

 

トランプはヒラリーに対する攻撃を強め、ビル・クリントンと不倫関係を持った女性に対するヒラリーの取り扱いやビル・クリントンの性的な暴行に関して非難するという行動に出た。共和党側はそうした攻撃はなしようにトランプに求めていたが無駄だった。

 

この激しい論争の中で、副大統領候補のマイク・ペンスは難しい立場に立たされている。

 

土曜日、副大統領候補ペンスは大統領候補トランプを叱責した。そして、トランプと彼の家族が困難な時間を過ごしていることに対して、それが和らぐように祈っていると語った。

 

ペンスは声明の中で次のように述べた。「夫として父として、昨日発表された11年前のヴィデオの中に収められたドナルド・トランプの発言と行動に、私は大変気分を害した。私は彼の発言を許すことはできないし、擁護することもできない」。

 

ペンスは、トランプが日曜日の夜の討論会の場で「彼が考えていること」をすべて明らかにできることを願っていると述べた。

 

一時的にトランプに代わってインディアナ州知事のマイク・ペンスがポール・ライアン連邦下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)が土曜日に開く選挙集会に出席するという話が進んでいたが、最後の最後でご破算になった。

 

ライアンは、自分の選挙集会にトランプと一緒に登場することで、土曜日に党の団結を見せようとしていたのだが、今回の騒動で、トランプの招待を取り止めた。

 

ライアンをはじめとする共和党幹部たちはトランプに対して怒り狂っている。それは、彼の発言とその影響に対する対処の仕方についてである。

 

トランプの発言に関する速報が出て数時間後、共和党幹部たちは、トランプが適切に謝罪したとは考えないとする内容の激しい声明を発表した。

 

ライアン議長に近いある人物は、ライアンがトランプの謝罪を受け入れたかどうかと質問され、「それは有権者が判断することだ」と答えた。

 

「トランプ氏は今回の件について討論会で話すつもりだと述べている。私たちは彼がそれ以上のことを語ることを目撃するだろう」とその人物は語った。

 

マーク・カーク連邦上院議員(イリノイ州選出、共和党)のような一部の人々は、そうするのには遅すぎることは分かっているが、トランプを強制的に選挙から撤退させろと主張している。

 

共和党全国委員会に対しては、トランプに対する支援を引き上げ、上下両院での過半数を守るために議会選挙にてこ入れをするよう求める声が強まっている。

 

共和党全国委員会は現在のところ、トランプ陣営から資金と人員を引き上げるのではないかという噂を否定している。

 

トランプ陣営は、共和党全国委員会から派遣されたスタッフたちに依存した、最低限の資金と労力を使った選挙戦を展開している。こうした状況で、資金と労力を連邦議会選挙の報に振り向けるとなると、トランプの選挙戦は破綻してしまう。

 

共和党の連邦議会選挙の候補者たちは、彼らはトランプとは無関係だとして選挙を展開するという意思を明らかにし始めている。トランプは投開票日まで残り1カ月の時期に、共和党を厳しい状況に追い込んだと彼らは述べている。

 

選挙で劣勢が伝えられている共和党所属の連邦上院議員たち、その中には、ケリー・アヨーテ(ニューハンプシャー州選出、共和党)、リチャード・バー(ノースカロライナ州選出、共和党)、マーク・カーク(イリノイ州選出、共和党)が含まれているが、トランプに対して早々に嫌悪感を表明した。

 

アイダホ州選出連邦上院議員のマイク・カプソは声明の中で、「私はドナルド・トランプを支持しないという結論に達した」と述べた。

 

カプソは更に「ドナルド・トランプには選挙から外れてもらい、共和党がマイク・ペンスのような保守的な人物を立てて選挙が戦えるように求める。ペンスであればヒラリー・クリントンを打ち破ることが出来る」と述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)