古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙は第3回の討論会が近づいてきました。現在のところ、トランプの女性に対する発言がスキャンダルとなり、ヒラリーが大きくリードしている状況です。ヒラリーが共和党が優位の州でも支持率を上げているという状況で、現在のままで選挙をやれば、ヒラリーが538名の選挙人のうち、3分の2、360名近くを獲得して、地滑り的(ランドスライド)勝利という可能性が高まっています。

 

 トランプも最後は少し盛り返すでしょうが、現在の退勢を挽回し、逆転することは難しいでしょう。彼が支持を得ようと目標とした黒人やヒスパニックからの支持は広がらず、無党派や女性票も期待薄です。彼の支持者は白人、大学を教育を受けていない、低所得、男性という特徴を持っていますが、この人たち以外には支持は広がらないということになります。

 

 今回は興味深い内容の記事に基づいて書きたいと思います。アメリカの政治専門誌『ポリティコ』誌が行った世論調査によると、アメリカの有権者の4割がアメリカの選挙システムは「歪められている」と考えているという結果が出ました。共和党支持者の7割、民主党支持者の2割弱がそのように考えているということが分かりました。

 

 民主党の予備選挙では、民主党全国委員会の幹部たちがヒラリーを勝たせるために、バーニー・サンダースを何とか貶められないかという話をしていたことがEメールの暴露で明らかにされましたし、そもそも特別代議員(スーパー・デレゲイツ)という制度も民主的であったのかどうかといわれると疑問が残ります。

 

 現在の状況では、ヒラリー勝利が濃厚ですから、具体的な不正選挙(投票妨害や投票の集計を故意に間違うこと)ということはないでしょう。しかし、4割とは言わなくても、かなりの数の人々が選挙制度が捻じ曲げられていると考えることは、アメリカの根幹にかかわる問題です。

 

 アメリカがデモクラシーの家元だと威張ってみても、その足元がぐらついていては話になりませんし、そんな国が世界に民主政治体制を拡散するなどと言ってもそれはお笑いでしかありません。

 

 また、選挙が終わった後のことを考えると、選挙結果に疑問を持つ人々が多くいるという状態は健全ではありません。その結果として、過度の政治無関心に向かうか、過度の政治へのかかわりから暴力へと向かうか、ということになります。また、ヒラリー・クリントンが勝利し、大統領になった後でも、Eメール問題や選挙結果で火種がくすぶり続ければ、弾劾への動きが加速するでしょうし、ヒラリーが抱える健康問題が悪化すれば、4年間の任期を全うすることも難しくなることもあるでしょう。

 

 アメリカの終わりの始まりがこの大統領選挙だったということになる、そのような気がしています。

 

(貼り付けはじめ)

 

世論調査:有権者の41%が選挙はトランプから「盗まれる」だろうと答える(Poll: 41 percent of voters say election could be ‘stolen’ from Trump

 

ジェイク・シャーマン、スティーヴン・シェパード筆

2016年10月17日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/story/2016/10/poll-41-percent-of-voters-say-the-election-could-be-stolen-from-trump-229871

 

アメリカの有権者はアメリカの選挙に関する機構に対して大変懐疑的になっている。広範囲にわたる有権者に対する詐欺行為のために、ドナルド・トランプから11月の選挙が「盗まれる」だろうと考えている有権者が41%いることが分かった。

 

『ポリティコ』誌とモーニング・カウンシルの最新の共同世論調査(2016年10月13日から15日にかけて有権者登録した1999名に対して実施)の結果によると、トランプが繰り返し選挙が「捻じ曲げられている」と警告を発することが効果をあげていることが明らかになった。共和党員の73%が選挙はトランプから盗まれるだろうと考え、一方、投票において巨大な詐欺行為がなされるという見通しに合意する民主党員は17%に留まった。

 

こうした人々の気持ちはトランプ選対のメッセージを反映し始めている。先週、共和党候補者のトランプはアメリカの選挙システムに対する批判を激化させている。先週、トランプはアメリカの選挙システムについて批判した。特に共和党所属の連邦議員たちに対しての批判を強めた。彼らはトランプの主張が平和的な権力移譲に脅威を与えると考えている。

 

トランプの選挙過程に対する疑念について、連邦下院議長ポール・ライアンは穏やかな批判を行った。ライアン下院議長の報道担当は土曜日にあたりさわりのない声明を発表した。「我が国の民主政治体制(デモクラシー)は選挙結果に対する信頼を基盤としている。ライアン下院議長は各州が今回の選挙を公正に実施するだろうと確信している」。

 

(図1)

 

しかし、有権者たちはトランプの主張を概ね受け入れている。世論調査に答えた有権者の約60%が選挙結果の正確性について疑問を持たざるを得ないと答えた。その理由として、選挙は有権者に対する詐欺行為や外国政府の介入によって捻じ曲げられる可能性があるということを挙げている。特に共和党員の7割がそのように答えている。

 

有権者たちは自分たちの投票がきちんと集計されるとも確信している。有権者登録をした人たちの8割が11月の選挙では自分たちの投票が集計されることについて、大変に信頼している、もしくは歩いて井戸信頼していると答えている。30%は投票が集計されることについて疑念を持っていると答えた。

 

モーニング・コンサルタント社の共同設立者であり研究部門の最高責任者カイル・ドロップ“は次のように語っている。「今回の世論調査の結果が示しているのは、投開票日に自分たちの投票が正確に集計されるだろうという信頼感を喪失しつつある、ということです。この考えはトランプの支持者たちの間では特に真実だと思われています。そして、有権者の半分が“捻じ曲げられた選挙”について懸念を持っていることになります」。

 

しかし、投票は既に期日前投票を認めている30州以上で順調に行われている。有権者の43%が仕事などのための不在者投票、もしくは個人的な理由での期日前投票を行う予定だと答えている。

 

投開票日まで残り22日となった。信頼に足るほぼ全ての全国世論調査で、ヒラリーがトランプを5ポイントから11ポイントの間でリードしているという結果が出ている。全体として、33%の人々が世論調査はヒラリーに有利な結果が出るように偏っていると確信している。共和党員の60%が世論調査はトランプに敵対する形になっていると答えた。

 

(図2)

 

ここ数日、共和党内部では血で血を洗う激しい戦いが起きている。ライアン下院議長はこれ以上、トランプを擁護しないし、彼のために働くこともないだろうと述べた。それに対して、トランプはライアンを無能な指導者と呼んだ。このメッセージは共和党支持の有権者の考えを正確に反映していない。共和党員の44%が下院議長としてのライアンを評価している。一方、37%が新しい人物がリーダーシップを取ることを望んでいる。

 

これまで全国規模の世論調査において1つ確かなそして明確なことがある。それは、トランプは常にヒラリーの後塵を拝しているということだ。ポリティコ誌とモーニング・コンサルタントの共同世論調査(投票に行くと答えた有権者1737名を対象にした面接方式)では、ヒラリーとトランプの一対一の場合には、46%対41%でヒラリーがトランプを5ポイントリードしているという結果が出た。4人を対象にした場合には、ヒラリーが42%、トランプが36%、リバータリアン党のゲーリー・ジョンソンが10%、緑の党のジル・スタインが3%という結果が出た。

 

連邦議員選挙に関しては、有権者は民主党の勝利を望んでいる。連邦議員選挙については、民主党支持が45%、共和党支持が38%という結果が出た。

 

モーニング・コンサルタントは超党派のメディアと技術に関する会社で、データを重視した調査と政治、政策、ビジネスの分析を行っている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)