古村治彦です。

 

 ヒラリーのEメール問題で新たなEメール発見というFBIの発表はアメリカ政界に激震させました。「このまま何もなければヒラリー勝利(私もそう思っていました)」という雰囲気が一変しました。まさにオクトーバー・サプライズです。

 

 複数の報道によると、今回の発表に関して、司法省のロレッタ・リンチ長官は、ジェイムズ・コミーFBI長官に対して、発表を控えるようにと助言したということです。しかし、コミー長官は連邦議会に対して、報告の書簡を送り、その書簡がメディアによってすっぱ抜かれた形になりました。

 

 共和党側や保守系のグループはこのタイミングに便乗してヒラリー側への批判を強めています。トランプ支持を撤回もしくは表明しない共和党議員たちもこの発表に関しては、一致団結してヒラリーを攻撃できるということで、ありがたがっているでしょう。しかも、Eメールが見つかったのが、わいせつな事件を立て続けに起こしたアンソニー・ウェイナー元連邦下院議員(ヒラリーの側近フーマ・アベディンの別居中の夫)のパソコンからということで、これもまた攻撃し甲斐があるポイントです。

 

 しかし、コミー長官の連邦議会への書簡の内容は曖昧過ぎて、内容がよく分かりません。機密情報を含むと思われるEメールが、全く別の事件の証拠物から発見されたということですが、それがどのように事件化されていくのかは分かりません。FBIは今年7月にヒラリーのEメール問題について、「機密情報の取り扱いについてきわめて杜撰で注意不足であったが意図的に間違った取扱いをしたという証拠がなかった」として司法省に対して、ヒラリーの刑事訴追を行わないように勧告し、ヒラリーのEメール問題は事件化しませんでした。これが再び事件化されるのか、それともウェイナー・アベディン事件として、この2人を中心として、最悪この2人の逮捕まで行く形で事件化するのかは分かりません。

 

 しかし、選挙の最後の最後、マラソンで言えばトラック勝負の残り100メートルで、ヒラリーはつまずく形になりました。トランプは元気に追い上げています。ゲティスバーグでの政策演説で、彼は「変化をもたらす候補者」であるとアピールすることに成功し、支持率を回復させていっている途上で、ヒラリーが転んだのです。

 

 繰り返しになりますが、私は、今回の大統領選挙はヒラリーの支持率の急落の可能性も含めて、五分五分の勝負、トランプにしてみれば、土壇場で逆転ホームランが出た分、トランプに有利になったのではないかと考えています。

 

(貼り付けはじめ)

 

オクトーバー・サプライズ:FBIはヒラリー私的Eメールサーヴァー事件に関して新たなEメールの調査を開始(October surprise: FBI reviewing new emails in Clinton server case

 

ケイティ・ボー・ウィリアムズ筆

2016年10月28日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/national-security/303300-fbi-reopening-clinton-email-investigation

 

金曜日、FBIは、ヒラリー・クリントンの私的Eメールサーヴァー使用に関する捜査に「関連する」新たなEメールを分析評価していると発表した。この発表は大統領選挙の投開票日まで1週間以上前に起きた驚くべきそして予測不可能な動きとなった。

 

連邦議会に送られた書簡の中で、FBI長官ジェイムズ・コミーは、FBIは「捜査に関連することが明らかな」新たなEメールが存在することを発見したと述べた。このEメールは、「無関係な事件の関連で」発見されたとコミーは書いているが、それ以上の説明をしていない。

 

法執行機関FBIの幹部職員たちは、『ニューヨーク・タイムズ』紙に対して、次のように語った。「FBIがヒラリー・クリントンの側近フーマ・アベディンと別居中の配偶者アンソニー・ウェイナーが所有しているコンピューターを押収し、それからEメールが発見された。ウェイナーは現在、未成年の女性に対してわいせつな内容のメッセージを送った容疑で捜査を受けている」。

 

FBIの捜査ティームからの情報提供を受けた後、コミーは、「Eメールが機密情報を含んでいるのかどうかを決定し、我々の捜査にとっての重要性を評価するために、FBIが適切な操作手順を踏むことに同意」した。

 

コミーは、新しいEメールが「重要」であるかどうかをFBIが分析するのにどれくらいの期間が必要かを予測することはできないと述べた。これは、捜査が11月8日の投開票までヒラリーの頭の中を占めることになることを意味する。

 

FBIの驚くべき発表は大統領選挙に影響を与えた。ヒラリーの私的なEメールシステムを政府の業務のために使った問題を選挙の投開票日11日前に政治のスポットライトの前に引きずり出すことになった。

 

共和党の大統領選挙候補者ドナルド・トランプは、私的Eメールサーヴァー使用に関して、ヒラリーを非難してきた。トランプはこの問題を取り上げて、「彼女は大統領に不適格だ」と主張してきた。トランプは、金曜日午後の選挙集会でFBIの決定を取り上げた。彼は世論調査で再び盛り返そうとしている。

 

トランプはニューハンプシャー州マンチェスターで開いた選挙集会で「ヒラリー・クリントンの腐敗は私たちがこれまで見たことがないほどに大規模だ」と語った。数千の参加者たちは「彼女を逮捕せよ(ロック・ハー・アップ)」と叫んだ。

 

トランプは続けて次のように語った。「私たちはヒラリーが大統領執務室に犯罪行為を持ち込むことを許してはならない。私はFBIと司法省に対して心からの敬意を表する。彼らは自分たちが犯した大きな過ちを正そうとする勇気を持っている」。

 

共和党とヒラリーに対する批判者たちは今回の発表のタイミングに便乗した。今回の発表は、「FBIは、ヒラリーとヒラリーの側近たちが罪を犯したことを示す重要な証拠を見つけた」ことを示しているのだと人々は考えている。

 

連邦下院法務委員会ボブ・グッドラテ委員長(ヴァージニア州選出、共和党)は声明の中で次のように述べている。「FBIがクリントン元国務長官に対する捜査を再開するという決定を下した。このことは、連邦下院法務委員会がここ数カ月主張してきたことを強化するものだ。私たちの主張は、クリントン元国務長官の私的Eメールサーヴァー使用について知れば知るほど、彼女と彼女の側近たちが間違った行動をし、国家安全保障を危機に晒してきたのは明白になっていく、というものだ」。

 

リバータリアン党の大統領選挙候補者ゲーリー・ジョンソンはCNNに対して、「何か重要なことがあるのだろう」と述べた。

 

連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)は声明の中で、ヒラリー・クリントンは大統領選挙候補者に対して行われる国家機密情報の伝達から除外されるべきだと述べた。

 

ライアンは声明の中で次のように述べた。「繰り返しになるが、ヒラリー・クリントンは、誰でもない、彼女自身をこそ非難すべきだ。彼女は信頼を受けて我が国の最重要の機密を任されていた。彼女は高度の機密情報を不注意に間違って取り扱うことでこの信頼を裏切った」。

 

ライアンは続けて次のように述べた。「今回の決定は長年待ち望まれたものである。そして、これは、クリントン前国務長官の乱脈な私的なEメールサーヴァー使用と連邦捜査官に対する更なる協力の口説が招いた結果である。私は、今回の問題が完全に解決されるまで、クリントン前国務長官に対しての全ての機密情報伝達を停止するように国家情報局長官に再び求めるものである」。

 

しかしながら、金曜日のコミーの書簡では回答が与えられていない点も多い。その中でもとくに重要なのは、誰がEメールを送ったかという疑問だ。

 

法執行機関FBIのある幹部職員は、NBCニュースに対して、連邦議会に送られた書簡は、「詳細が書かれないよう用心深く」書かれていると述べている。

 

今回の発表のタイミングに疑義を呈したり、FBIは有権者に対してより完全な説明を行うように求めたりしている人々もいる。

 

オハイオ州知事ジョン・ケーシック(共和党)の大統領選挙の選対に参加したジョン・ウィ―ヴァーはツイッター上で次のように書いている。「コミー長官はより完全な説明をする必要がある。これは新たに発見されたEメールを調査分析しているというものなのか?それとも捜査再開ということなのか?問題が多過ぎてよく分からない」。

 

2016年7月、FBIはクリントン前国務長官が私的なEメールサーヴァーを通じて機密情報を誤って取り扱っていたのかという問題に関する1年に及ぶ捜査を終了したと発表した。この捜査は行政的な観点から正式には終了してはいなかった。

 

この時、コミーはヒラリーを「過度の注意不足」と激しく批判したが、司法省に対して刑事訴追をしないように勧告した。これによって、ヒラリーは訴追されるべきだと主張していた共和党側は激怒した。

 

コミーFBI長官は、繰り返し、ヒラリーの私的なサーヴァー使用は刑事事件に相当しないと述べた。その理由として、捜査官たちは、ヒラリーが機密情報について意図的に間違った取扱いをしていたことを証明する証拠を集められなかったことを挙げている。それでもヒラリーに対する捜査で、機密と付いた情報がヒラリーのサーヴァーを通過していたことは明らかにされた。

 

ヒラリーは、私的Eメールサーヴァー使用について謝罪し、「間違い」であったと述べた。

 

FBIの捜査は、連邦議員たち、トランプと保守系の諸グループからの厳しい精査の下にある。これらの人々や団体は、ヒラリーがオバマ政権下の司法省から有利になる取り扱いを受けたと確信している。

 

ヒラリーの私的Eメール使用事件に関連して数百ページの文書がFBIによって公開された。その中には、捜査官による聴取の公的な記録(要約)が含まれていた。また、国務省は現在、捜査期間中に発見された大量のEメールを公開しつつある。

 

ヒラリーを刑事告訴しないという司法省の決定に対する批判者たちは、これらの文書が次々と明らかにされることを受けて、「こうしたことは捜査が間違っていたことを示す」証拠だと主張してきた。

 

金曜日の早朝、保守系の監視団体ジュディシャル・ウォッチはFBIに対して裁判を起こしたことを発表した。ジュディシャル・ウォッチは、FBIは「腐敗の雰囲気」に満ちていると主張し、FBIの捜査に関連する記録の公開を求めている。

 

コミーは捜査結果の正しさについて弁明を行った。

 

2016年9月の連邦下院法務委員会の公聴会でコミーは次のように述べた。「私たちが間違っていると仰ることは理解できます。しかし、卑怯者だと呼ばれるのは心外です。私たちは誠実に職務を遂行しています。捜査の結果に同意されるかどうかは別として、私たちは皆さんが望まれる形で捜査を行っています」。

 

金曜日、コミーの書簡の存在を最初に報道したのはNBCニュースだ。

 

コミーの書簡の全文は以下の通り。

 

「以前の連邦議会での証言の中で、私は、連邦捜査局(FBI)はクリントン前国務長官の私的なEメールサーヴァーの捜査は終了したと述べた。私は前回の議会証言に補足したいことがあり本書簡を書く。

 

クリントン前国務長官とは関係のない事件に関連して、FBIは、クリントン前国務長官の事件と明らかに該当するEメールが存在することを発見した。捜査ティームがこのことを私に報告したのは昨日であったことを表明する。そして、FBIが捜査官たちに対して、発見されたEメールの中に機密情報が含まれているのかどうかを検証し、捜査にとっての重要性を評価することが出来るように適切な捜査手順を踏むことに同意する。

 

現在のところ、FBIは今回発見された材料が重要なのかどうかを評価できない。また、私は追加的な捜査がいつまで続くものかを予測することはできない。以前の私の証言を考慮して、FBIの捜査について貴委員会に最新情報を提供することが重要だと確信している」。

 

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●「FBI、クリントン氏メール問題の調査再開 選挙戦に打撃」

 

AFP=時事 10/29() 3:56配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161029-00000000-jij_afp-int

 

AFP=時事】(更新)米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏が国務長官時代に私用電子メールサーバーを使っていた問題で、連邦捜査局(FBI)は28日、「関連すると思われる」新たなメールが見つかったことを受け、調査を再開したことを明らかにした。選挙戦をリードする同氏への大きな打撃となる。

 

 FBIのジェームズ・コミー(James Comey)長官は上下両院の各委員会委員長に宛てた書簡で、一連の新たなメールに機密情報が含まれていたかを判断する「適切な調査」をFBIが行うと説明。さらに、これらのメールが「調査に対して持つ重要性を評価」する意向を示した。

 

 FBIは以前にもクリントン氏の私用メール問題を調査していたが、今年7月、違法行為の証拠はないとして、調査の終了を発表していた。コミー長官は新たなメールについて、前回の調査とは「無関係の事案と関連して」見つかったと説明している。

 

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、新たなメールの存在は、クリントン氏の側近であるフーマ・アベディン(Huma Abedin)氏とその夫のアンソニー・ウィーナー(Anthony Weiner)元下院議員が所有していた電子機器が押収されたことにより明らかになった。

 

 民主党所属のウィーナー氏は、インターネット上で女性とみだらな写真を交換していた事実が発覚したことにより下院議員を辞職。現在、15歳の少女と性的なメッセージを交わした疑いで、FBIの捜査対象となっている。

 

 大統領選をクリントン氏と争う共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は今回の発表にすぐさま反応。ニューハンプシャー(New Hampshire)州マンチェスター(Manchester)で開いた集会での演説で、国務長官在任中に私用メールサーバーを使用したクリントン氏には大統領の資格はないと批判した。

 

 一方、クリントン陣営の選対部長を務めているジョン・ポデスタ(John Podesta)氏は、コミー長官の書簡に激しく反発し、調査に関する詳細な情報の公表を要求した。【翻訳編集】 AFPBB News

 

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