古村治彦です。

 

 トランプ新政権の人事ですが、ホワイトハウスの幹部スタッフに、共和党全国委員長レインス・プリーバス、トランプ選対の運営責任者スティーヴ・バノンが起用されることが発表されました。プリーバスが大統領首席補佐官、バノンが首席ストラティジスト兼上級顧問にそれぞれ起用されることになりました。

 

 バノンについては、選挙期間中にこのブログでも再三ご紹介しましたが、ロサンゼルスを本拠とするオルト・ライト系のニュースサイト「ブライトバート・ニュース」を人気サイトに躍進させた人物です。ハーヴァード大学卒、海軍将校やウォール街で金融に従事したという多彩な経歴です。バノンは、共和党内で、トランプの「政敵」となった、ポール・ライアン連邦下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)を攻撃するために、ブライトバート社の記者をライアンの選挙区に貼りつかせたこともありました。

 

 プリーバスは連邦議員ではありませんが、現在共和党全国委員長の要職に就いています。そして、トランプを支援してきました。また、プリーバスは、ウィスコンシン州出身で地盤にしています。当然、ウィスコンシン州選出のポール・ライアンとは友人関係です。ライアンはこのニュースが出た後、祝福する内容のツイートをしています。

 

 ウィスコンシン州は大統領選挙で民主党が強いと言われてきた州でしたが、今回の大統領選挙ではトランプが制し、トランプに勝利をもたらす原動力となりました。ポール・ライアンはトランプを支持せずに、連邦議会選挙に集中しました。選挙後は、トランプ支持者からは総攻撃で、「あいつだけは赦免・特赦(アムネスティ)の対象外だ」と言われています。

 

 今回の人事は、ウィスコンシン州共和党に対する論功行賞であると同時に、プリーバスをライアンに対する対抗馬にするという意味もあるように思います。プリーバスの知名度や政治的実力が上がることで、ライアンに対する強力な対抗馬となり得る人材を作り、ライアンをけん制するという狙いがあると思います。また、ワシントンに慣れているが共和党のエスタブリッシュメントとつながりを持っているプリーバスと、トランプ選対を取り仕切ったバノンを、競合させることで、トランプに対する忠誠心を確保するという狙いもあるように思います。

 

 今回の人事で、同じようなポジションに、「ワシントンに慣れている実務系」と「トランプ側近」を並列して配置するということがトランプの人事の柱となる考えであろうということが分かりました。さすがに巧妙な人事です。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプはプリーバス、バノンをホワイトハウスの幹部スタッフに起用(Trump names Priebus, Bannon to WH staff

 

本誌スタッフ筆

2016年11月13日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news-campaigns/305796-priebus-to-be-trumps-chief-of-staff-report

 

ドナルド・トランプ次期大統領は日曜日、レインス・プリーバスを大統領首席補佐官に、スティーヴ・バノンを首席ストラティジスト兼上級顧問に起用すると発表した。

 

プリーバスは現在、共和党全国委員会委員長を務めている。一方、バノンはトランプ選対の運営責任者を務めた。

 

バノンは、トランプを支持した「オルト右翼」のニュースサイトである「ブライトバート・ニュース」社の会長を務めた。

 

トランプは声明の中で次のように語った。「スティーヴとレインスは、私たちの選挙運動において協力し合い、歴史的な勝利をもたらした。彼らはホワイトハウスの幹部スタッフに適した能力を持つ。私は、ホワイトハウスで彼らを自分の近くに置く。そして共にアメリカを再び偉大にするための仕事を行う」。

 

選挙終了後から、プリーバスとバノンは、ホワイトハウスの幹部スタッフとして名前が出ていた。

 

バノンは、選挙の勝利に続いて、プリーバスと協力できることを楽しみにしていると語った。

 

バノンは声明の中で次のように述べた。「私たちは選挙運動において協力し合い、成功を収めた。私たちは勝利を収めた。私たちは、トランプ次期大統領が彼の政策を実行するための手助けをするために引き続き協力していく」。

 

プリーバスは、トランプ次期大統領に仕えることは、「大変に名誉なこと」だと述べた。

 

プリーバスは次のように語った。「私は次期大統領が私に彼とアメリカに仕える機会を与えてくれたことに感謝している。私たちは、全ての人々のために経済を創造する、国境を守る、オバマケアを廃棄し新たな計画を実施する、急進的イスラム主義テロリズムを消滅させるといった仕事に従事する。トランプ氏は全てのアメリカ国民にとって偉大な大統領になるだろう」。

 

ブライトバート・ニュースは日曜日の夜にこのニュースをツイートした。

 

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トランプが政権以降ティームの再編のためにペンスを議長に(Pence takes lead as Trump reshapes transition team

 

ジョナサン・スワン筆

2016年11月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/305596-pence-takes-over-trump-transition-team-report

 

ドナルド・トランプ次期大統領は、政権以降ティームを再編している。マイク・ペンス次期副大統領は、政権移行ティームにトランプ支持者たちを加えながら、政権移行を行おうとしている。

 

新人事によって、トランプ政権移行ティームがトランプ選対と似た運営になることが明らかになった。支持者の多くが政権以降ティームの共同議長となる。共同議長には、ベン・カーソン、ニュージャージー州知事クリス・クリスティ、ニュート・ギングリッジ、退役陸軍中将マイケル・フリン、ルディ・ジュリアーニ、ジェフ・セッションズ連邦上院議員(アラバマ州選出、共和党)が名前を連ねている。これらの人々は、既にトランプ新政権の閣僚として名前が出ている。

 

上記の人々以外にも、共和党全国委員会委員長レインス・プリーバス、大口献金者レベカ・マーサー、トランプ選対委員長のスティーヴ・バノンも政権移行に正式に入ることになる。

 

政権移行ティームの内部事情に詳しいある人物は、本誌に対して、バノンは大統領首席補佐官に起用されると語った。別のメディアは、プリーバスが大統領首席補佐官の最有力候補であると報じされている。

 

トランプは政権移行ティームに関して声明の中で次のように語っている。「マイク・ペンス次期副大統領マイク・ペンスが率いるこの素晴らしいアドヴァイザーたちは、ニュージャージー州知事クリス・クリスティの指導の下で行われた初期の仕事の上に、政権発足1日目から政府の仕事を始め、変化をもたらすことになる」。

 

トランプは続けて次のように語っている。「政権移行ティームの目的は明確だ。ワシントンにおいて私たちの掲げる変化を実行することができる、これまでに成功を収めた、資格を持つ人々を集めることだ。私たちは狭量して、この国を再建するという緊急の義務に取り組むことになる。特に、雇用、安全、機会を生み出すことが緊急の課題だ。このティームは、“アメリカを再び偉大に”するために、すぐに仕事に取り掛かる」。

 

マイク・ペンスは連邦下院議員を6期務めたので、ワシントン内部で、強力な人脈を持っている。そして、ペンスはニュージャージー州知事クリス・クリスティに代わって政権移行ティームの主導権を握ることになった。

 

クリスティと彼の側近たちがこれまでの数カ月、政権移行を主導してきた。同時期、クリスティは自分自身のブリッジゲイト・スキャンダルを巡り裁判に対処せねばならず、騒がしい日々を過ごした。

 

政権以降ティームにはトランプの熱心な支持者たちが入っている。ルー・バーレッタ連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出)、マーサ・ブラックバーン連邦下院議員(テネシー州選出)、フロリダ州検事総長パン・ボンディ、クリス・コリンズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出)、トランプの義理の息子ジャレッド・クシュナー、トム・マリーノ連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出)、選対財務委員長スティーヴン・ムヌキン、デヴィン・ヌヌス連邦下院議員(カリフォルニア州選出)、選対財務委員会メンバーのアンソニー・スクラムッチ、技術関連投資専門家ピーター・シールが政権以降ティーム入りをしている。

 

トランプの年長の子供たち3人、ドナルド、エリック、イヴァンカもティームに参加している。

 

政権以降ティームのスタッフはトランプ選対も参加している。選挙責任者ケリアン・コンウェイ、副責任者デイヴィッド・ボシー、コミュニケーション担当責任者ジェイソン・ミラー、広報担当ホープ・ヒックス、首席政策アドヴァイザーのスティーヴン・ミラー、ソーシャル・メディア責任者ダン・スカヴィノ、選対事務長ドン・マガーンといった人々は、選対の時と同じような仕事をすることになる。共和党全国委員会首席スタッフのケイティ・ウォルシュは政権以降ティームの顧問をすることになる。

 

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クリスティとトランプの義理の息子の衝突が政権移行ティームの再編に発展(Christie feud with Trump's son-in-law led to transition team shakeup: report

 

マロリー・シェルボーン筆

2016年11月12日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/305705-christie-feud-with-trumps-son-in-law-led-to-transition

 

ニュージャージー州知事クリス・クリスティがドナルド・トランプ次期大統領の政権移行ティームの議長から降格させられたのは、トランプの義理の息子と衝突したからだ、と金曜の夜に『ポリティコ』誌が報じた。

 

金曜日、トランプは、政権移行ティームの議長をクリスティから、マイク・ペンス次期大統領に交代させると発表した。

 

トランプは更に、トランプの3人の子供たちと娘イヴァンカ・トランプの夫ジャレッド・クシュナーが政権移行ティームに入ると発表した。

 

ポリティコ誌は、クシュナーとクリスティとの間はぎくしゃくしていること、トランプの家族の中で卓越した存在感を持っていることが、今回のクリスティの降格につながったと報じた。

 

今年の6月には、クシュナーは、トランプの副大統領候補にクリスティを選ぶことに反対したと報じられた。クリスティはこの時、クシュなーと対立してはいないと報道を否定した。

 

クリスティはニュージャージー地区連邦検事時代に、クシュナーの父チャールズ・クシュナーを起訴した。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「貪欲、権力、過剰に絡む犯罪」で有罪判決を受けたと報じた。

 

ポリティコ誌の取材に対して、「クリスティの側近たちとクシュナーが最近衝突した」と複数の人々が語った。

 

ある人物は次のように語っている。「クリスティの側近たちはニュージャージーからきている。彼らは自分たちに力があるように振る舞う。ジャレッド・クシュナーは、“お前らに力などない”と言わんばかりに振る舞う」。

 

トランプのコミュニケーション担当アドヴァイザーのジェイソン・ミラーはポリティコ誌に対して、政権移行ティームに関わる変化は、ティームがアメリカ国民のために働くこととワシントンに変化をもたらすことを目的としていることを反映していると語った。

 

ミラーは次のように語った。「マイク・ペンス次期大統領が政権移行ティームを運営することになったというニュースを目にした人は誰であれ、ドナルド・J・トランプ次期大統領が、ワシントンにいる人々が受け入れようが受け入れまいが関係なく、ワシントンを変化させることを真剣に考えているのだということを認識するでしょう」

 

ミラーは更に次のように語った。「トランプ大統領は、ワシントンの金持ちたちの微妙なバランスをめちゃくちゃにするでしょう。彼らのこれまでの生活を脅かしかねませんよね。

しかし、トランプ次期大統領はワシントンのインサイダーの人々にために戦うのではないのです。トランプはワシントンに何の関係もない、汗水を垂らして懸命に働く人々のために戦うのです。そんな人たちは政権移行ティーム内部の争いになど関心を持ちませんよ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)