古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ次期大統領は、アメリカ国内の各分野のリーティング・カンパニーの経営者たちを集めて、「戦略・政策フォーラム(Strategic and Policy Forum)」を作るようです。このフォーラムは、トランプ大統領に対して、経済政策を実施するに当たり、参加者たちの知識と経験に基づいて提言を行うことを目的としています。


 以下の記事にもありますが、「ブレイントラスト」とも言うべき存在です。戦前のフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領がブレイントラストを重用し、それを真似て、日本でも近衛文麿が有識者たちを集めたのが昭和研究会です。近いところでは、中曽根康弘元首相は有識者たちを重用し、内閣に次々と審議会を設置し、彼らを登用しました。その結果、「審議会政治」と揶揄されました。

 

 トランプは幅広い人材をこのフォーラムに結集しようとしています。トランプを支持しなかった、IT系の新進気鋭の創業者、経営者たちとも会談し、この戦略・政策フォーラムに参加してもらうことになっているようです。

 

 トランプはアメリカ国内に雇用を生み出し、自分を支持した人々に職を与えようとしています。そのために、アメリカの各企業と協力しようとしています。IT系企業は大統領選挙期間中、全体としてヒラリー支持、反トランプ姿勢を示してきましたが、いつまでも対決姿勢を取っていても仕方がありません。トランプが行おうとしているポピュリズムにおいては、雇用を作れる企業が必要ですから、彼らと協力していく姿勢を示しているのに、それをむげに断ることはできないでしょう。

 

そして、トランプは、ポピュリズムを体現し、「人民の友(プブリコラ、Publicola)」になろうとしています。そのために、幅広い人々を結集させようとしています。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプが、エロン・マスクとウーバー社最高経営責任者を顧問ティームに指名(Trump names Elon Musk, Uber CEO to advisory team

 

アリ・ブレランド筆

2016年12月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/technology/310321-trump-names-elon-musk-uber-ceo-to-advisory-team

 

トランプの政権移行ティームは水曜日、テスラ社・スペースX社の最高経営責任者エロン・マスクは、ドナルド・トランプ次期大統領の顧問ティームに参加することになると発表した。

 

ウーバー社最高経営責任者トラヴィス・カラニックとペプシ社最高経営責任者インドラ・ヌーイもまたトランプ次期大統領の戦略・政策フォーラムに参加することになるだろう。

 

トランプは水曜日にマスクを含むIT業界の指導者たちとトランプ・タワーで会談を持ったがそれに先立って、上記の発表がトランプの政権移行ティームからなされた。

 

会談にはその他にも重要な人々の参加が予想された。フェイスブックのシェリル・サンドバーグ、グーグル社の親会社アルファベット社のエリック・シュミット、ラリー・ペイジ、アマゾン社創業者で『ワシントン・ポスト』紙を所有しているジェフ・ベゾスが出席する予定だ。ウーバー社の代表は会談に参加しない見通しだ。

 

ウーバー社のカラニックは声明の中で、「私は次期大統領と協力できることを楽しみにしている。フォーラムは、私たちの乗客、ドライヴァー、私たちがビジネスを展開している450以上の都市に影響を与える諸問題に関わることになる」と述べた。

 

マスク、カラニック、ヌーイはトランプ次期大統領の戦略・政策フォーラムに参加するが、このフォーラムには、既に13名のメンバーが参加することになっている。フォーラムのメンバーは、「大統領と頻繁に会談し、大統領が彼の経済政策を実行する際に彼らの特別な経験と知識を共有する」ことになる。

 

戦略・政策フォーラムの議長はブラックストーン社の最高経営責任者であり、共同創業者であるスティーヴン・A・シュワーツマンだ。ブラックストーン社は、世界最大の投資ファンド運用会社である。

 

トランプは声明の中で、「アメリカには、世界の中で最も創造性と活力を持つ企業が存在する。本日、フォーラムに参加する創業者でもある最高経営責任者は、それぞれの分野でトップを走る人々だ」と述べた。

 

トランプは続けて、「私の政権は民間部門と協力し、ビジネス環境を改善し、シリコンヴァレーからアメリカの中西部まで新たな雇用を生み出すために、ビジネス環境を魅力的なものとする」とも述べた。

 

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トランプの戦略ブレイントラストはオバマ政権の政策と親和性を持ち、中道派の人々が集まっている(Trump’s Strategic Braintrust Sounds Sort of Obama-Friendly and Centrist

 

エミリー・タムキン筆

2016年12月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/12/02/trumps-strategic-braintrust-sounds-sort-of-obama-friendly-and-centrist/

 

金曜日、トランプ政権移行ティームは、世界各国の権威主義的な独裁者たちからの電話が相次いでいるという発表の合間に、大統領戦略・政策フォーラムの創設を発表した。このフォーラムは「大統領と頻繁に面会し、参加者の特別な経験と知識を共有し、大統領が、雇用を回復し、“アメリカを再び偉大にする”ための計画に活かすために召集されることになる」ものだ。

 

一見したところ、白人の超富豪たちの集まりを創設することは、大富豪たちが数多く登用される政権と同様に、トランプがポピュリズムにのっとった主張を維持し続けるためには最善の方法のように思われる。

 

このフォーラムには、ジェネラル・モータース社の会長兼最高経営責任者メアリー・バラが参加している。GMは、エリート層が好む電気自動車開発に多額の予算と人材を投じてきた。

 

クリーヴランド・クリニック会長のトビー・コスグローヴも参加している。コスグローヴはオバマケアを撤回する必要を認めないと発言したことがある人物だ。

 

ウォルマート社の会長兼最高経営責任者ダグ・マクミロンもフォーラムに参加している。ウォルマートはエネルギー効率向上と気候変動でオバマ政権を支援し協力してきたし、大企業の中で最も環境対策を進めている存在だ。

 

ボーイング社会長、社長、最高経営責任者を歴任したW・ジェイムズ・(ジム)・マクナーニーも参加している。ボーイングは、イランとの間で航空機売却契約を結んだ。オバマ政権下でのイランとの核開発に関する合意から利益を受けた企業である。このイランとの合意が変更されることを望まないだろう。ボーイングは、世界規模の資材調達網を邪魔されないこと、アジア向けの輸出を促進することを求めている。これは、オバマ大統領が主張してきたが、今や実現は厳しいものとなっている環太平洋経済協力協定(TPP)を下支えするものだ。

 

石油とエネルギー分野の専門家ダニエル・ヤーギンも参加している。ヤーギンはイラクに侵攻しても石油を手に入れることはできないということ、シェールガス採掘のための「水圧破砕採掘」革命(フラッキング・レヴォリューション)は、石炭産出地域を再びよみがえらせることはできないということを主張している。

 

このフォーラムが実際にどんな役割を果たすのか、そして本稿で取り上げた人々が次期大統領を中道に引っ張るかどうか(気候変動のような問題では左派の方向に引っ張るかどうか)、これからも注目していかねばならない。しかし、このフォーラムの参加者がオバマ大統領主催のホワイトハウスの夕食会に出席していても違和感を感じないのは確かなことだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)