古村治彦です。

 

 今回は、イギリスのザ・ガーディアン紙に掲載された、森友学園・塚本幼稚園に関する記事をご紹介します。

 

 前回のニューヨーク・タイムズ紙の記事に比べて短い記事ですが、こちらもよくまとまっています。こちらの記事は、昭恵夫人にスポットライトを当てた内容に担っています。ポイントとしては、昭恵夫人が2015年に塚本幼稚園を訪問して、「夫もこの学園の教育方針を素晴らしいと考えています」と発言したことを紹介している点、そして、昭恵さんがこれまでリベラルな考えを支持する姿勢を示してきたことを紹介している点です。

 

 リベラルなことを発言する人なのに、超国家主義的な教育を行う教育機関を賞賛する、ということに、「変な人」だという印象を読者は持つでしょう。そして、この人は自分の確固とした考えを持つ人ではないということになるでしょう。

 

 戦後70年以上経ちましたが、今でも、第二次世界大戦を扱う番組になると、日本に関する映像は、皇居前で全員が深々とお辞儀するものなどが流されます。欧米の人々にしてみればこの映像はある種の恐怖と怒りの対象となります。ガーディアン紙を読む層は教育が高いそうですから、歴史にも詳しいでしょうし、この記事を「またぞろ、あんなものが蠢動しているのか」という思いを強くすることでしょう。

 

 私たちが選んだと言え、ああいう人を首相にいただいているということはなかなか大変なことです。

 

(貼り付けはじめ)

 

安倍晋三首相と妻が超国家主義的学校との関係で追及を受けている(Shinzo Abe and wife under pressure over ties to ultra-nationalist school

―幼稚園が格安の値段で国有地を購入したという報道の後、安倍昭恵夫人と幼稚園のつながりが追及を受けている

 

ジャスティン・マッカリー(東京)

ザ・ガーディアン

2017年2月24日

https://www.theguardian.com/world/2017/feb/24/shinzo-abe-wife-akie-under-pressure-ties-ultra-nationalist-school-japan?CMP=share_btn_tw

 

日本の首相安倍晋三と妻昭恵は、超国家主義的な教育機関から距離を置こうと努めている。この教育機関は現在、人種差別と好意的な取り扱いを含む土地取引のために多くの批判の声を集めている。

 

安倍昭恵夫人と大阪にある私立の幼稚園である森友学園とのつながりが追及されるようになったのは、この幼稚園が4月に開校させようとしている小学校の敷地となる国有地を評価額の7分の1の値段で購入したとメディアが報じてからだ。明恵夫人は、小学校のウェブサイトから彼女の支援のメッセージが消去された直後、金曜日に小学校の名誉校長を辞任した。

 

メッセージの中で、昭恵夫人は、小学校の「道徳教育を通じての国民としての誇りを醸成する」試みを支持した。この試みは、戦前の軍国主義に戻ろうとするものだ。更に、昭恵夫人は、森友学園の籠池泰典理事長の情熱に感銘を受けたとも述べている。

 

この問題は今週の国会での議論でも中心の議題となった。野党議員たちは、この小学校が大変低い値段で土地を購入することが許可された理由を説明するように要求した。

 

安倍晋三首相は、森友学園が小学校の名前を彼の名前を祈念して「安倍晋三記念小学校」にしようとしたが、自分の名前を使うことに反対した、と述べた。それ以降、森友学園は、小学校の名前を「瑞穂の國(“land of rice”)記念小學院」とすると決定した。

 

安倍首相は、議論が起きた後で、昭恵夫人は名誉校長から退くと決めたと述べた。また、夫人は、保護者たちの前で自分の名誉校長の就任が発表された後で、それを受け入れるしかなかった、他に選択肢はなかったとも述べた。

 

安倍首相は国会の委員会で次のように述べた。「このような経緯ではあったが、名誉校長を続けることで生徒と保護者の方々にご迷惑をかけることになるかもしれないと考え、妻は、学園側に辞任すると伝えました。妻が名誉校長としてウェブサイトに掲載されていたことは事実ですが、妻の求めによって、削除されました」

 

安倍首相は自分と妻は、森友学園が評価額よりも低い価格で国有地を購入する許可を得ることに関して、いかなる役割もはたしていないと、疑惑を否定した。首相は、もし関与を証明されたら、辞任するとも述べた。

 

森友学園のカリキュラムは園児たちに愛国心を教え込むように作られている。園児たちは皇族たちの写真の前でお辞儀をすること、軍事基地に遠足に行くことが必ず求められる。3歳から5歳の子供たちが毎朝国家を歌い、1890年に出された教育勅語を暗記する。 教育勅語は、天皇への忠誠と国家に対する犠牲を求めている。アメリカの占領当局は、教育勅語が戦前の軍国主義を醸成したと考え、禁止した。

 

籠池氏は日本会議の大阪支部の指導者だ。日本会議は、超保守主義的なロビー団体であり、安倍晋三首相と彼の内閣の大臣10名以上が会員となっている。日本会議は、日本軍の再建を求め、「戦時中、日本は西洋の植民地主義から東アジアを“解放”した」、もしくは、アメリカが作った戦後憲法は、日本という国家の「真の、元々の特性」を弱めるものだと主張している。

 

日本のメディアは最近になって、森友学園が8770平方メートルの国有地を1億3400万円(95万ポンド)で購入したことを報じた。この価格は評価額の14%だ。政府は、値引きの理由として、敷地内の産業廃棄物の除去のコスト分を引いたと主張している。

 

今月初め、塚本幼稚園は、日本に住む中国人、韓国人を誹謗中傷する内容に手紙を保護者に配った。大阪府は、この件で籠池氏に質問を行った。学園側は後に謝罪を行った。

 

籠池氏は土地購入で何も間違ったことはしていないと疑惑を否定した。ラジオ番組に出演しインタヴューを受け、その中で「私は何も悪いことはしていません」と述べた。そして、「非保守的なメディアが、歴史と伝統を大事にする学校を建設するという私たちの計画の破壊を企てているのです」とも述べた。

 

昭恵夫人は短期間名誉校長であったが、彼女と森友学園の関係はそれよりも深いものである。2015年に塚本幼稚園を訪問した際に彼女は保護者に向かって、「私の夫も個々の教育方針は大変に素晴らしいと考えています」と述べた。

 

昭恵夫人は、リベラルな主張を支持する姿勢を見せてきたことで、賞賛を受けてきた。2014年には東京レインボープライドのイヴェントに出席したり、韓国文化が好きだと発言したりしてきた。

 

昭恵夫人は、津波から守るためのコンクリートの堤防を海岸線に建設するという政府の決定にも疑問を呈している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22