古村治彦です。

 

 今回はイギリスの雑誌『ジ・エコノミスト(The Economist)』誌に掲載された、森友学園・塚本幼稚園に関する記事をご紹介します。短い記事ですが、論調は大変に厳しいものです。

 

 まず、ウルトラナショナリスト(ultranationalist)という言葉が重要です。この言葉は以前にもご紹介した『ザ・ガーディアン』紙でも使われています。ナショナリストというと、国家主義者、国家主義的ですが、これにウルトラがつくと、超という言葉をつけることになります。これは、排外主義的、好戦主義的という意味合いが強くなり、大変危険な考えであり、存在だということになります。イギリスのメディアが使っている点も見逃せません。イギリスはインドシナ半島やマレー半島、シンガポールで日本軍と戦いました。そして、多数のイギリス軍将兵が捕虜となり、虐待を受けました。この時のイメージを呼び起させるのが、日本の超国家主義という言葉です。

 

 今回の記事では、このような戦前の軍国主義への回帰を「政府が奨励しているかのように見えることに日本国民は驚いている」と書いています。森友学園に対する超破格値での土地売却は、政府が超国家主義的な考えを広めることを奨励しているという捉え方をしています。そして、この政府を率いているのは、安倍晋三首相なのです。

 

 今回の記事では、稲田朋美氏の名前にも言及されています。安倍首相(と安倍昭恵夫人)と稲田氏は、揃って危険な人物なのだということが言われているのです。

 

 安倍首相とその周辺に向けられる目は厳しいものとなっています。危険人物が率いる日本、というイメージになっていますが、これを払拭することはほぼ不可能ですが、唯一の方法は、安倍首相が退陣することです。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「衝撃の学校:日本に存在する超国家主義的な幼稚園(School of shock An ultranationalist kindergarten in Japan)」

 

当惑を覚えるほどに大変驚かされるのは、この幼稚園は総理大臣とのつながりを持っていることだ

 

2017年3月4日 東京発

http://www.economist.com/news/asia/21717996-embarrassingly-it-has-links-prime-minister-ultranationalist-kindergarten-japan?fsrc=scn/tw/te/rfd/pe

 

塚本幼稚園に通う子供たちは毎朝、軍歌に合わせて小さな足を踏み鳴らしながら行進し、天皇の写真に向かって頭を下げ、国家を守るために自分自身を捧げることを力強く誓う。様々な学校行事では、3歳、4歳、5歳の子供たちが、見守っている保護者たちに対して、大きな声で外国の脅威から日本を守るように強く求める。

 

塚本幼稚園の園児の曽祖父母たちが子供時代、同じような教育を受けた。しかし、第二次世界大戦後、公立学校では国家主義的な要素は減少させられた。つい最近まで、私立学校でこのような過度な愛国主義と好戦主義が教えられていたことを認識している日本人は少なった。日本政府がそのような動きを奨励していたかのように考えられることに気付かされ、日本国民は更に驚いた。

 

昨年、塚本幼稚園を運営する学校法人である森友学園は、大阪市内(訳者註:大阪府豊中市内)の公的な土地を破格の値段で購入した。その価格は土地の持つ価値の14%に過ぎないものだった。森友学園は、塚本幼稚園と同じく、超国家主義的な考えを広め、教え込むための小学校を建設し始めた。学校建設の寄付を集める時には日本の首相である安倍晋三氏の名前を前面に押し出した。 安倍首相の昭恵夫人は、塚本幼稚園で講演を行い、名誉校長に任命された。防衛大臣である稲田朋美氏は、籠池氏が戦艦の帰還を歓迎するために、園児たちを港にまで派遣し、自衛隊員の士気向上に貢献したことに対して感謝状を贈った。

 

安倍氏は土地取引に関与したことはないと否定した。そして、もし誰かが関与を証明出来たら辞職するだろうとも述べた。安倍首相は、自分たち夫婦は塚本幼稚園を支援してくれるようにという、籠池泰典園長からの依頼に悩まされていた、籠池氏は、「自分(安倍首相)は何度もそんなことはできない」と言っているのに、自分の名前を使って金を集めていたのだ、と述べている。

 

しかしながら、安倍氏は以前、籠池氏を賞賛していた。安倍首相は、籠池氏について、教育に対する「素晴らしい情熱」を持ち、自分とは「同じようなイデオロギー」を共有していると述べた。追及が進むにつれて、安倍夫人と稲田氏両方に関する見直しが行われる兆候が見られるようになった。稲田氏と安倍夫人に関する記述の一切が塚本幼稚園のウェブサイトから消されたのだ。

 

塚本幼稚園は、ヘイトスピーチ関連の法律違反の疑いで捜査を受けている最中だ。塚本幼稚園は保護者に文書を配ったが、その中で中国人と書くべきところを「支那人(shinajin)」と書いた。この言葉は、「チンク(chink、訳者註:中国人に対する蔑称)」に相当する言葉である。副園長である籠池夫人は、韓国系の園児の保護者に手紙を送り、その中で、自分は差別をしないが、「韓国人と中国人を憎んでいる」と書いている。

 

森友学園は、安倍氏と同様に、苦しみに悶えている。大阪府の職員たちは、工事が完成しても小学校に認可はおりない可能性があると述べている。小学校には、予想よりも少ない入学希望者しか集まっていない。そして、小学校は、予定していた「安倍晋三内閣総理大臣記念小學院(Prime Minister Shinzo Abe memorial school)」というより壮大な名前から、「瑞穂の國記念小學院(Land of Rice memorial school)」に変更することを余儀なくされた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)