古村治彦です。

 

 いよいよ米中首脳会談が始まります。北朝鮮のミサイル発射もあり、米中間でどのような話になるのか注目されます。トランプ政権内部には対中強硬派と対中交渉優先派があり、その内部対立が激しくなっているという報道もあります。そして、その流れで、トランプ大統領の側近スティーヴ・バノンが国家安全保障会議から外されるということがニュースとなりました。バノンは前からトランプの義理の息子ジャレッド・クシュナーと関係が悪いと言われていて、今回のことではクシュナーが勝利したという報じられ方もしています。

 

 前回のブログ記事でもご紹介しましたが、クシュナーがトランプ政権内の対中交渉優先派で、ヘンリー・キッシンジャーの斡旋を受けて中国側と交渉をしています。バノンは対中強硬派ということで、今回の件は中国に対して、対中融和路線に進むということを示したということができます。

 

 しかし、同時に大統領首席ストラティジストであるバノンが国家安全保障会議に出席していたことは異例中の異例で、これはマイケル・フリン前大統領国家安全保障問題担当補佐官(2月に辞任)のアレンジであったのですが、後任のマクマスター補佐官が通常に戻したということになります。ちなみに大統領国家安全保障問題担当補佐官が国家安全保障会議を主催します。バノンはフリンを監視監督するために会議に出席していたので、その必要がなくなったという主張もあるようです。

 

 スティーヴ・バノンの影響力はこれくらいのことでは低下しない、彼はトランプ大統領と一対一で議論できる立場に変わりはないという意見もあります。

 

 こうして考えると、バノンが国家安全保障会議から排除されたことは大きな事件ではなく、中国に対してのアピールなのではないかと考えることができます。

 

(貼り付けはじめ)

 

大逆転で、トランプはバノンを国家安全保障会議から追放(In Reversal, Trump Banishes Bannon from National Security Council

 

ダン・デルース筆

2017年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/04/05/in-reversal-trump-banishes-bannon-from-national-security-council/

 

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、首席ストラティジストであるスティーヴン・バノンを国家安全保障会議(NSC)に出席させないことに決定した。これは、政策形成機関である国家安全保障会議の再構成の一環であり、情報・諜報と軍事面の指導者たちの伝統的な役割を復活させることになった。

 

今回の動きは、トランプ大統領の国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスター中将が、NSCのこれまでとは異なる形態を終わらせることで自身の権威を増大させようとしたということを示している。トランプ政権におけるNSCの構成に対して、民主、共和両党の連邦議員たちや外交政策専門家たちは懸念を表明してきた。

 

トランプに批判的な人々は、政権発足からすぐにバノンがNSCの常任出席者に引き上げられたことを、ホワイトハウスが、軍事行動と外交政策に関する重要な考慮に関して党派政治とイデオロギーを持ち込もうとしている徴候だと考えた。元政府高官たちは、バノンが出席するというNSCの構造は、大統領のために国家安全保障に関する決断を形成する責任が誰にあるのかを巡って、内部抗争と混乱をもたらすだろうと警告を発していた。

 

NSCの再編成は火曜日に出されたメモランダムでまとめられ、水曜日に発表された。ホワイトハウスは今回の命令についてコメントを拒否した。

 

マクマスターの前任者である退役陸軍中将マイク・フリンは、中米ロシア大使との会話についてマイク・ペンス副大統領に誤った情報を伝えたことを受けて、2月に辞任した。フリンが今回のNSCの通常とは異なる構成を始めたのだ。つまり、白人優越主義的で国家主義的なブライトバート社の元会長をNSCに引き入れたのはフリンだ。NSC最高会議は通常は閣僚レヴェルで構成される。トランプ政権下でのNSCでは、情報諜報と軍事部門のトップが外されていた。彼らは最高会議の議題が彼らに関わる時のみ出席することになっていた。

 

メモランダムでは、新しい構成では、ダン・コーツ国家情報長官と統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将はNSC最高会議の定例出席者となると書かれていた。新たな大統領令で、NSC最高会議にはCIA長官、エネルギー長官、米国連大使も出席者に加えられることになった。

 

2月に補佐官に就任したマクマスターは、前任者のフリンと違い、トランプの選挙対策本部とは何の関係も持っていなかった。マクマスターは今回のNSCの再編でもう一つの官僚機構における勝利を収めた。国土安全保障会議は、これまでの別組織として独立してきた形から、マクマスターの権威の下に置かれることになった。

 

ホワイトハウスのある高官はマスコミの取材に対して、バノンがNSCに出席するようになったのは、フリンを監督し、NSCを合理化し、より効率的に運営されるようにすることが目的であったと述べた。この高官は、この目的は達成されたので、バノンはNSCに居続ける必要はなくなったのだと語った。

 

ヤフー・ニュースはこの政府高官の次のような発言を引用した。「スティーヴはマクマスターを補佐官に就任させることを主導した。マクマスターは基本的にスティーヴの考えを共有しているので、スティーヴがNSCに留まる理由は存在しない」。

 

バノンは外交政策や統治に関する経験を持っていない。更には移民反対の唱道者であり、ヨーロッパ各国の極右政党と関係を持っている。NSCにおけるバノンの存在は、元政府高官に警戒心を持たせ、連邦議会民主党から激しい批判を巻き起こした。

 

NSCの再編が行われた。しかし、バノンはホワイトハウスでの有力な立場を維持している。彼はトランプの選挙運動の最後の数カ月を取り仕切り、勝利をもたらした。そのために、大統領執務室に何の許可も要らずに入ることができる。NSC内の席の入れ替えをしてもバノンの影響力はほぼ変わらない可能性が高い。

 

オバマ政権下で駐ロシア米大使とホワイトハウス顧問を務めた経験を持つマイケル・マクフォールは、次のようにツイートした。バノンはNSC内部の高官たちの意見に従う必要はない。彼は大統領執務室で「トランプと差向い」で様々な問題を討論することができる。

 

政治顧問がNSCで公的な役割を果たすことは珍しい。レーガン政権で大統領顧問を務めたエドウィン・メッセがNSCに出席した例はある。

 

民主党所属の連邦議員は今回のトランプの決定を受けて安心感を表明したが、「バノンはホワイトハウスにいるべき人物ではない」とも述べた。

 

バーバラ・リー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は次のように語った。「スティーヴ・バノンの病んだイデオロギーがこれ以上、国家安全保障会議に悪い影響を与えることはないということで安心しました。しかし、バノンが引き続き政権内に留まることはアメリカ国民にとって脅威となります。私はトランプ大統領に対して、スティーヴ・バノンにドアを指さして、危険な過激主義者たちで構成されている政権から出ていくように指示することを求めます」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22