古村治彦です。

 

 トランプ政権内における内部抗争に関する記事を2本ご紹介します。1つ目はバノン対プリーバス、2つ目はバノン対クシュナーという構図のものです。1つ目では、トランプの最側近であるスティーヴン・バノン(大統領首席ストラティジスト)と共和党エスタブリッシュメントに近いレインス・プリーバス(大統領首席補佐官)の争いがあり、トランプは両者を更迭するのではないかという内容の記事です。

 

 2つ目はクシュナー(トランプの義理の息子、大統領上級顧問)とバノンが対立しており、対立解消のために2人で会談を持ったという内容の記事です。バノンが過激な政治観、クシュナーは穏健な政治観を持っており、そのために対立していると言われています。

 

 このブログでもご紹介しましたが、クシュナーはヘンリー・キッシンジャーの支援を受けて、中国側と穏健に話し合いをする路線ですが、バノンは強硬な姿勢を取っています。

 

 トランプ政権内には、過激で強硬な政治姿勢を主張する勢力を代表するバノンと、穏健でエスタブリッシュメントとも仲良くやっていこうという勢力を代表するプリーバスとクシュナーがおり、この2つの路線が対立しているということになります。

 

 クシュナーとプリーバスの関係がどうなのかは不明ですが、少なくともお互いのバノンとの関係よりは良好であると考えられます。

 

 大統領選挙でトランプを当選させた人々とそれ以外の人々の争いという言い方もできると思いますが、トランプ政権は、2つの路線のバランスの上に成り立っていて、大統領であるトランプが最終的にどちらの考えを採用するのかという形になっていますが、どちらかに肩入れしているという感じは受けません。最後のところはトランプが決断をしますが、ある時は穏健派の考えを、別の時には強硬派の考えを採用しているという感じです。

 

 スティーヴン・バノンが最も影響力を与えていると考えられますが、義理の息子であるクシュナーを重用しています。どちらも通常の政権ではそこまで影響力が大きくない役職である首席ストラティジスト、上級顧問という個人スタッフ程度の役職で、そうした役職の人々が大きな役割を果たしているということについて、公的な立場であるプリーバスには面白くないかもしれません。

 

 これからトランプ政権内部のバランスがどのように変化していくかを注目していかねばなりません。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプはプリーバスとバノンの排除を検討している(Report: Trump considering ousting Priebus, Bannon

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年4月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/327757-report-trump-considering-ousting-priebus-bannon

 

トランプ大統領は大統領首席補佐官のレインス・プリーバスと大統領首席ストラティジストのスティーヴン・バノンの両方を解任しようと考えていると、金曜日、『アクシオス』誌が報じた。

 

複数の大統領の側近や補佐官たちは『アクシオス』誌に対して、「トランプ大統領は大統領執務室の退勢の大幅な再編を考慮しているが、プリーバスとバノンの解任をいつやるのか、解任をするのかどうかは明確ではない」と語った。

 

ある側近は「差し迫った状況にあるが、大統領が2人の更迭という手段を取ろうと思っているのかは明確ではない」と語った。

 

バノンは、トランプの大統領選挙当選前から、トランプに最も近い、そして最も人々の批判を浴びる側近として注目を浴びてきた。政権発足直後、トランプはバノンを国家安全保障会議の最高会議の常任出席者に引き上げた。『ブライトバート』誌の元最高経営責任者バノンはトランプ大統領に大きな影響を与えていると言われてきた。

 

しかし、今週初め、バノンは国家安全保障会議から排除された。この措置は、ホワイトハウスのスタッフの多くにとって、政権におけるバノンの影響力の低下を示す兆候として捉えられている。「経済ナショナリスト」と自称しているバノンは、自分自身が影響力を巡って、トランプの義理の息子であり、上級顧問であるジャレッド・クシュナーとの間で争っていることを認識しており、そうした中で、国家安全保障会議の再編が行われた。

 

バノンとプリーバスはトランプ政権内の異なる勢力を代表している。プリーバスは共和党全国委員会委員長を務め、政治の素人ばかりのホワイトハウスの中でエスタブリッシュメント側の主張を伝える立場となっている。

 

両者の更迭は発足して間もないトランプ政権に深刻な影響を与えるだろう。トランプ政権は発足してまだ100日も経過していないのだ。

 

アクシオス誌はバノンの後任の首席ストラティジストが誰になるかを報じていないが、首席補佐官プリーバスの後任候補には、連邦下院共和党院内総務ケヴィン・マッカーシー(カリフォルニア州選出、共和党)と大統領経済顧問ゲイリー・コーンの名前が挙がっていると報じた。

 

=====

 

クシュなーとバノンは物事を穏やかにしようとしている(Report: Kushner and Bannon attempt to smooth things over

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2017年4月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/327932-report-kushner-and-bannon-attempt-to-smooth-things-over

 

『ポリティコ』誌は金曜日、大統領顧問であるジャレッド・クシュナーとスティーヴ・バノンは、2人の間にある緊張関係をほぐすために、今週、大統領に随行してマーアラゴに到着した後に会談を持ったと報じた。

 

『ニューヨーク・タイムズ』紙は更に2名の別々の取材源(クシュナーとバノンの会談の内容を教えられている)の証言によると、トランプ大統領は側近たちに2人の会談は「うまくいった」と述べた、と報じている。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、バノン、クシュナー、大統領経済顧問ゲイリー・D・コーン、大統領首席補佐官レインス・プリーバスが政権内部で争いが起き、その解決のためにトランプから指示が出された、と報じた。

 

ポリティコ誌によると、バノンとクシュナーとの間での不同意の原因は、政策の違いである。

 

バノンはトランプの義理の息子クシュナーの穏健な政治観を批判し、クシュナーはバノンの大統領に対する影響力と彼のぎらぎらしたスタイルに就いて懸念を表明している、と報じられている。

 

ポリティコ誌によると、バノンとクシュナーはお互いのマイナスの話をメディアにリークすることでお互いを攻撃し合っている、ということだ。

 

今週初め、トランプはバノンの国家安全保障会議での役割を外す決定を下した。

 

ホワイトハウスは政権内部の争いについての報道内容を否定した。

 

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して次のように語った。「繰り返しますが、この種の内部争いの葉梨は完全に間違いです。この種の話を出しているのは、この政権がもたらしている成功から人々の目を逸らさせたいと思っている人々です。大統領の最高裁判事の指名(この決定は長期間にわたり影響を残す)が本日、承認されました。今週、多くの外国の指導者をお迎えしました。そして、昨晩、大統領はシリアに対して決定的な軍事行動を取りました。私たちが人々を狼狽させているのは、トランプ大統領の積極的な政策を進める際に採用している手法のためであると言えます」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22