古村治彦です。
アメリカのシリアに対するミサイル攻撃と同時に、アメリカのマスコミで報道されているのは、国家安全保障会議(National Security Council、NSC)の再編成です。大統領首席ストラティジストのスティーヴン・バノンが最高会議の出席者から外され、大統領国家安全保障問題担当次席補佐官のK・T・マクファーランドが辞任を求められ、シンガポール大使へ転出という報道がなされています。
国家安全保障会議は、アメリカの外交政策や軍事政策を決定する大統領直属の機関で、省庁間の縦割りを排する目的で創設されました。この会議を主宰する大統領国家安全保障問題担当補佐官は、補佐官(advisor)という肩書ですが、閣僚級の影響力を持っていて、大統領の側近中の側近ということになります。トランプ政権発足時には、マイク・フリンが補佐官でしたが、ロシアとの不適切な関係が指弾され、政権発足早々に辞任に追いこまれました。その後、現役の陸軍中将で米軍再編事業のトップであったH・R・マクマスターが補佐官に就任しました。
マクマスターは「居抜き」で補佐官に就任したわけですが、少しずつ独自色を出しつつあるようです。NSCの再編もその一環で、フリン時代(ほぼありませんでしたが)の人々を転出させて、自分の影響力下にある人々をスタッフに登用するということになりそうです。
マクマスターはバノンのNSCからの排除に関して自分の関与をしていますが、おそらくマクマスターの進言もあり、NSC再編の一環で排除が決定されたものと思います。
K・T・マクファーランドの転出は、重要な出来事になると思います。マクファーランドは、これまでの共和党政権でアナリストとして力を発揮してきましたし、ヘンリー・キッシンジャーの側近、片腕としても知られています。マクファーランドを政権中枢から排除するというのは、キッシンジャーの影響力を減少させることになります。
すでにご紹介していますが、先週の米中首脳会談の根回しは昨年12月から始められ、トランプ大統領の上級顧問である、義理の息子ジャレッド・クシュナーがキッシンジャーの支援と助言を受けて中国側と人脈作りを行い、首脳会談にまで漕ぎ着けました。
クシュナーが穏健派を代表し、キッシンジャーの助言を受けながら政権内で行動するということになると、マクファーランドまではいらない、キッシンジャー系が多過ぎるということになって、それで転出という話になっているのもかもしれません。
政権内部の再編成で、マクマスターの顔を立てつつ、バランスを取る作業をしているということになるのではないかと考えます。
(貼りつけはじめ)
マクマスターは国家安全保障会議からのバノンの排除を否定(McMaster
downplays removal of Bannon from role on NSC)
レベッカ・サヴランスキー筆
2017年4月9日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/homenews/administration/328026-mcmaster-downplays-removal-of-bannon-from-role-on-nsc
大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスターは日曜日にテレビ番組に出演し、マクマスター自身が大統領首席ストラティジストであるスティーヴン・バノンの国家安全保障会議(NSC)における役割を奪ったということを否定した。
マクマスターは、「フォックス・ニュース・サンデー」に出演した。その中で、バノンのNSCにおける役割を剥奪したのはどうしてかと質問され、「今回のことは言われているほど重大なことではないのですよ」と答えた。
マクマスターは「大統領がやったことは、NSCの常任出席者の件について言いますと、NSCの全ての会議に出席する常任出席者を明確にして、アメリカ国民の長期的な利益に基づいて助言を与える人を明確にすることであったと思いますよ」と述べた。
マクマスターは、「大統領は望む相手ならどんな人からでも助言を得ることができる」と述べた。
マクマスターは「大統領は実際にそうしていますしね」と語った。
マクマスターは更に次のように語った。「大統領は政策決定や政策決定を行った際のリスクや機会について、信頼する様々な人々に質問しています。その中にはスティーヴ・バノンも含まれています。こうしたやり方は何も変わっていないんですよ」。
NSCの中で一介の政治顧問が重要な役割を果たすのは不適切だと考えるかどうかと質問され、マクマスターは「大統領がそうした役割を果たしてほしいと思う人が誰でもそうした役割を果たすこと」は適切だと答えた。
マクマスターは「スティーヴ・バノンは様々な問題について大統領に助言を与えていますし、これからもそれは続くでしょう」と発言した。
トランプ大統領は先週、NSCにおけるバノンの役割を剥奪した。マクマスターがこの決定を行い、トランプが承認したという報道がなされた。
バノンは今年1月、NSC最高会議の常任出席者に昇格させられたが、この措置は多くの批判を浴びた。
土曜日の各紙の報道では、バノンは政権内で孤立を深めており、彼自身が協力的なアプローチを取ることができないので、首席ストラティジストから更迭される可能性もあるということであった。
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大統領国家安全保障問題担当次席補佐官K・T・マクファーランドが辞任(Deputy
national security adviser K.T. McFarland to leave post: report)
ポーリナ・フィロジ筆
2017年4月9日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/homenews/administration/328009-deputy-national-security-adviser-kt-mcfarland-asked-to-step-down
大統領国家安全保障問題担当次席補佐官K・T・マクファーランドは、トランプ政権の再編成の過程で、辞任を要請されている、と報じられている。
マクファーランドは、国家安全保障会議での仕事を始めて3カ月もしないで、駐シンガポール米国大使への就任が予定することになる、と日曜日に『ブルームバーグ』誌が初めて報じた。
マクファーランドは、これから2週間は今の地位に留まるだろうとも報じられた。
先週、大統領首席ストラティジストであるスティーヴン・バノンが国家安全保障会議の常任出席者から外されたが、これに続いて、マクファーランドへの辞任要請の動きが続くことになった。
マクファーランドはフォックス・ニュースの国家安全保障問題担当アナリストを務め、これまで3つの共和党政権でもアナリストを務めた。そして、トランプによって大統領国家安全保障問題担当次席補佐官に起用された。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は2月、大統領国家安全保障問題担当補佐官マイケル・フリンの辞任を受けて、マクファーランドも辞任するだろうと報じた。
しかし、マクファーランドは本誌に対して、大統領の要請を受けて、政権内に留まると答えていた。
「私は大統領に会ったばかりで、政権内に留まるように言われました。私はとても興奮しています」と2月に語っていた。
(貼りつけ終わり)
(終わり)
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