古村治彦です。

 

 先週のトランプ大統領のシリアに対するミサイル攻撃から、世界は緊張状態に入りました。日本関連で言えば、アメリカが北朝鮮に対して軍事行動を起こすのではないかという懸念が広がっています。アメリカが瞬時に北朝鮮を屈服させることが出来なければ、反撃はアメリカではなく、中国や韓国、日本に対してなされますが、そうなれば世界経済は立ち直れないほどの大ダメージを負うでしょうし、アメリカは日韓に関しては「防衛する」という幻想を持たせていた訳ですから、アメリカへの信頼は失墜し、アメリカは世界で唯一の超大国である地位を失うでしょう。北朝鮮問題は対応を誤ると、アメリカも道連れで世界秩序が変化することになるので、アメリカとしては、先制攻撃はできません。

 

 先週のシリア攻撃に関しては、化学兵器を使った攻撃を行った戦闘機が離発着した空軍基地に59発のトマホークが撃ち込まれたものですが、これは花火大会に毛の生えた程度の効果しかないものです。もちろん、警告であって、次はもっと大規模にやるぞ、というメッセージを伝えたということになるのですが、シリア軍を屈服させるには数日を要しますが、シリア軍を捨て鉢の状態に追い込んだ場合に、何をやるのか、戦闘訓練を積んだ正規軍をゲリラ化させる可能性も高く、すぐに事態が収拾されることは考えにくく、イラクと同じ無秩序と混乱を引き起こし、アメリカが掲げているIS打倒も遠のくことになります。アメリカはロシアが責任を果たしていないと非難していますが、元々、問題を作り出したのはアメリカですから、アメリカの身勝手さばかりが浮き彫りにされてしまう形になっています。

 

 ただ、ヤクザも含む、交渉の上手なやり方というのは、脅したりすかしたりを両面でうまく使うということです。表では派手に喧嘩をしながら、裏で落としどころを探るということは交渉がうまくいくやり方です。今回のシリア攻撃も中国の習近平国家主席の訪米に合わせて行われた訳ですが、ロシアとフランスに事前通告済みで、そうなると、シリアと中国にも事前に分かっていたということになります。ですから、表ではワーワー、ニッキー・ヘイリー国連大使が女優気取りで国連で三文芝居をやっている間(彼女は真剣にやっているでしょう、ネオコンですから)、裏で取引がなされているでしょう。

 

 トランプ大統領はシリアへの地上軍派遣を否定しましたし、国務省のナンバー2である副長官にネオコンのエリオット・エイブラムスの登用を拒否しました。この点で、トランプ大統領はまだ「レッドライン(超えてはならない最後の一線)」を越えないという姿勢が明示されていると思います。

 

 ネオコン系、人道的介入主義派に外交政策と軍事政策で悪さをされるとあっさりとレッドラインを越えさせられてしまいます。ですから、トランプ政権でこれらの勢力が増大しないことを願うばかりです。

 

(貼りつけはじめ)

 

トランプは国務省ナンバー2のポストにジョン・サリヴァンを指名(Trump to nominate John Sullivan as No. 2 at State Dept.

 

ジェシー・バイルネス筆

2017年4月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/328406-white-house-announces-pick-for-no-2-at-state-dept

 

トランプ大統領は、弁護士のジョン・サリヴァンを国務省ナンバー2のポストに指名する予定であると木曜日夜にホワイトハウスが発表した。

 

ホワイトハウスの発表によると、サリヴァンは、国務副長官と国務副長官(運営管理・資源担当)の両方を兼任することになる。サリヴァンの俸給は1つのポスト分だけ支払われることになる。

 

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は先月、トランプ大統領とレックス・ティラーソン国務長官の間でサリヴァンをナンバー2のポストに就けることで合意ができたと報じた。同紙は、サリヴァンはもともとトランプ政権では国防総省の法律顧問に起用される予定であったとも報じている。

 

サリヴァンはワシントンDCにあるメイヤー・ブラウン法律事務所の共同経営者で、この法律事務所の国家安全保障問題担当部門の共同委員長を務めている。

 

サリヴァンは、政府の諮問委員会である「アメリカ・イラクビジネス対話」の委員長を務めた。また、司法省、国防総省、商務省に勤務した経験を持つ。ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領時代には商務副長官を務めた。

 

ティラーソンは、レーガン政権、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権に勤務した経験を持つヴェテランのエリオット・エイブラムスを副長官に指名したいと考えていた。しかし、トランプ大統領は、昨年の選挙期間中にエイブラムスが自身を批判していたことを知り、難色を示した。

 

火曜日、ホワイトハウスは、財務次官補(テロ資金対策担当)にマーシャル・ビリングスリー、商務次官(国際貿易担当)にギルバート・カプラン、国土安全保障省法律顧問にジョン・マーシャル・ミトニックを指名すると発表した。

 

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トランプ:「私たちはシリアに地上軍を送らない」(Trump: 'We're not going into Syria'

 

ジョーダン・ファビアン筆

2017年4月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/328383-trump-were-not-going-into-syria

 

トランプ大統領は火曜日、アメリカはシリアにおいて全面的な戦争をすることはないだろうと述べた。先週のミサイル攻撃によってシリア内戦にアメリカが関与する可能性が高まったという懸念を和らげようとしての発言であった。

 

「フォックス・ビジネス・ネットワーク」とのインタヴューの中で、トランプは「私たちはシリアには行かない」と述べた。

 

トランプは、サリンガス攻撃を行ったシリア国内の航空基地に対して59発の巡航ミサイルを撃ち込んだ。この決定について、シリアの指導者バシャール・アサドが自国民に対して再び化学兵器を使用しないようにするためのものであったとその意図を示唆した。

 

「しかし、私は人々が憎むべき、凄惨な化学兵器を使用するのを目撃した。オバマ政権下で、化学兵器を使用しないという合意を結んだのに、彼らはこの合意を破ったのだ」とトランプ大統領は述べた。

 

トランプは次のように発言した。「私がやるずっと前に、オバマ政権が今回の行動をやるべきだったのだ。そうしておけば、現在の状況はずっと良いものであったことだろう。シリアのこれまでの状況はずっとましなものとなっていただろう」

 

トランプ大統領は民間人であった時に、オバマ大統領はシリアに軍事介入しないように繰り返し求めていたという事実には言及しなかった。トランプ大統領は、最近のシリア国内でのガス攻撃による死傷者の姿を見て気持ちが変わったと述べた。

 

トランプの発言は、シリアに対するトランプの戦略の方向性についての疑問が渦巻く中で出された。

 

米国連大使ニッキー・ヘイリーを含む政権幹部たちは、アサドを大統領の座から追い落とすためにアメリカは武力を含む様々な試みを行うと主張している。

 

レックス・ティラーソン国務長官をはじめとする政府高官たちはもともと、シリア国民がアサド大統領の運命を決めるだろうと述べた。彼らはシリア国内で優先されるべきは、イラク・シリアイスラム国(ISIS)の武装勢力の打倒にあると強調していた。

 

ホワイトハウスは、ロシアに対してアサド大統領に対する支援を打ち切るように圧力をかけ始めている。

 

アメリカ政府高官たちはロシア政府が、化学兵器を使った攻撃へのシリア政府の関与を「隠蔽」しようとしていると非難した。アメリカ政府は、4ページの情報レポートを公開した。その中で、アメリカ政府は、化学兵器攻撃の裏にアサド政権の存在があったことに「確信」を持っていると述べている。

 

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、アメリカが証拠もなく、偽りの化学兵器攻撃情報に基づいて、シリアに対して更なる軍事行動を行うのではないかと示唆した。この直後に、上記の発言は行われた。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22