古村治彦です。

 

 2017年4月28日に副島隆彦先生の最新刊『アメリカに食い潰される日本経済』(徳間書店、2017年4月)が発売されます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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アメリカに食い潰される日本経済

 

(貼り付けはじめ)

 

まえがき

 

 世界は戦争に向かって急激に変化した(4月6日。米トランプ政権によるシリア爆撃)。戦争の陣(じん)(だい)()が聞こえる。このミサイル攻撃はトランプと習(しゅう)(きん)(ぺい)のフロリダでの晩餐会(ディナーパーティ)のさ中(なか)に決定された。

 

 私はこの問題について本書の終わりに自分の予測(予言(プレディクト))を書いた。

 

 トランプの出現が、世界を揺さぶっている。どうしても彼を中心にして、世界経済を見なければ済()まない。そしてその余波(アフターマス)を必ず受ける日本経済を見なければいけない。

 

 トランプは日本からお金(かね)を毟(むし)り取りにくるのである。まさに、「アメリカに食()い潰(つぶ)される日本経済」である。

 

 ドナルド・トランプという男は、多くの日本人からは、金髪ゴリラの恐ろしいおじさんで、何をしだすか分からないという恐怖感がある。日本の政治指導者たちも、金持ち層や投資家たちもそう思っている。金融市場にいる人たち自身がトランプの言動「一(ひと)(こと)のつぶやき(ツウィッター)」で動揺するものだから、これまでのような自信たっぷりの市場予測(景気動向の先(さき)()み)ができなくなっている。なかなかおもしろい状況である。いわゆる金融市場の専門家、アナリスト、ストラテジストたちが言葉を失っている。

 

 私はトランプ当選を予言して当てた男だ。『トランプ大統領とアメリカの真実』(日本文芸社、2016年6月刊)を出した。だから、トランプが何を考えているのか、が分かる。トランプの頭の中身が、おそらく日本では一番よく分かっている人間である。この観点から話をしてゆく。

 

 トランプというのは、どういう人間なのかもこの本の後(うし)ろの方で書く。それはそのままアメリカの政界(首都(キャピトル)ワシントンと金融都市(マネーシティ)ニューヨーク)の動きである。一番大きく言うと、アメリカはもうカネがない。世界を助ける余裕なんかないんだ。このことが、トランプ(たち)の根本のところにある。トランプの本音は、「オレは大変な大借金状態の国(くに)を引き継いだ経営者だ。再建屋だ」というものだ。だから大ナタを振るって自国を立て直すゾという考えだ。このことを分かってください。

 

 トランプは、3月2日のザ・ステイト・オブ・ユニオン(施()(せい)方針演説と訳す。本当は「国民(ステイト)の団結(ユニオン)」演説)の前の1月20日の就任式(イノギュレイション)(その直後から仕事を始めてT(ティー)(ピー)(ピー)から離脱した)の演説で、「私は世界の代表ではない。私はアメリカの代表である」とはっきり言い切った。このことについても後で説明する。これが反(アンチ)グローバリズムだ。すなわち、アメリカはもう世界の面倒を見る力はないんだ、国(こく)(りょく)が落ちて今も衰退が続いている。このことを死ぬほどよく分かっているのがトランプだ。だから、トランプ魔術(マジック)で、手品のようなインチキ経営の手法で、なんとかアメリカを立て直して経済復興、景気回復させようとしているのだ。さあ、これがうまく行くか、だ。

 

 この反(アンチ)グローバリズム(反(はん)地球支配主義)はアイソレーショニズムでもある。アメリカ・ファースト!でもある。こういうことを書くと訳(わけ)が分からないだろう。日本では私だけがこれらの政治(学)用語(ポリティカル・ターム)についても正確に精密に分かっている。と書くと、またしても鼻(はな)(じろ)まれる。

 

 だが、私の書くことを「そうだ、そうだ」と支持してくださる人も大(だい)()増えてきた。アメリカ・ファースト!を、「アメリカ第一主義」とか、「アメリカ国益第一主義」と新聞・テレビが訳すようになった。それでもまだダメだ。アイソレーショニズムは、正しく「アメリカ国内問題優(ゆう)(せん)主義」だ。

 

 アメリカ・ファースト!(国内問題優先主義)とは、「アメリカ国内が第1(ファースト)、外国のことは第2(セカンド)」ということだ。まさしくこれがトランプたちの本心、本音での考えだ。外国のことになるべく関わりたくない。これが今のアメリカ国民の本(ほん)()だ。このことを日本人が分からないから、うろたえてしまう。だから、シリアや北朝鮮に向けてミサイルぐらいは撃つ。が、これは小さな戦争(スモール・ウォー)だ。だけれども大きな戦争(ラージ・ウォー)、すなわち、第3次世界大戦(ザ・サード・ワールド・ウォー)(WW3)はしない。トランプは施政方針演説(ザ・ステイト・オブ・ユニオン)で、「アメリカの子供たちのために。将来のアメリカのために」と言っているわけで、日本を含めた外国のことなんか考える余裕がない。これをまず分かるべきだ。

 

 アメリカはカネがない。本当にカネ(国家の財(ざい)(せい)資金)がもうない。

 

 もうひとつ大きな出来事があった。この人物が“実質の世界皇帝”である、と私がこの30年間書き続けた人が逝(せい)(きょ)した。3月20日に、ニューヨーク郊外のポカンティコヒルの邸宅でデイヴィッド・ロックフェラーDavid Rockefeller(101歳)が死去した。記事を載せる。

 

「デビッド・ロックフェラー氏死去 101歳、親日家の銀行家」

 

 米巨大石油会社スタンダード・オイルを興した大富豪ロックフェラー家のデビッド・ロックフェラー氏が、3月20日、ニューヨーク郊外の自宅で心不全のため死去した。101歳だった。同氏のスポークスマンよると、自宅で睡眠中に安らかに亡くなったという。

 デビッド氏は、石油会社の創業者ジョン・ロックフェラー氏の孫で、大手米銀チェース・マンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)の最高経営責任者(CEO)などを務めた。

 

 1915年、ニューヨーク市で6人兄弟の末っ子として生まれた。36年ハーバード大学卒、40年シカゴ大学で経済学博士号取得。ラガーディア・ニューヨーク市長の秘書を経て、46年に、旧チェース・ナショナル銀行入行、69年にチェース・マンハッタン銀行の会長兼CEOに就任した。

 

 銀行経営者として海外事業を拡大し、世界の政界や経済界に広い人脈を築き、民間外交に活躍した。芸術や文化などを通じた慈善事業にも力を入れ、母親が設立に関わったニューヨーク近代美術館(MoMA(モマ))の理事として長く運営に関与した。

 親日家としても知られ、9 4年の天皇陛下のニューヨーク訪問時には、ロックフェラー家の邸宅に招いた。ニューヨークの日米親睦団体、ジャパン・ソサエティはデビッド氏の兄で故ジョン・ロックフェラー3世が会長を務めた。

 

 デビッド氏の父、ジョン・ロックフェラーJr.(2世)氏が建てたニューヨークのランドマーク、ロックフェラーセンターを、一族が89年に三菱地所に売却した際には、デビッド氏が米国民からの批判の矢面に立った。

 

              (日本経済新聞、伴(ばん)(もも)()記者、2017年3月21日、傍点引用者) 

 

 デイヴィッドが死去して私は、ただただ感慨深い。この本は金融・経済の本だから多くのことを書くことができない。私がこれまでに書いた他の本たちを読んでほしい。私は、1987年に(34歳だった)自分の初期の本で、「この人が、実質の世界皇帝である」と書いて以来、ずっと書いてきたから、ちょうど30年になる。

 

 この人、David Rockefellerを、日本の支配階級(エスタブリッシュメント)の人たちは、隠語で「ダビデ大王」と呼ぶ。この慣例に倣(なら)って私も10年ぐらい前から、そう呼ぶようになった。

 

 昨年5月に、まだ、とても大統領に当選するとは、ほとんどの日本人から思われていなかったドナルド・トランプが、「ドナルド。ちょっと私の家に来てくれ」と、ヘンリー・キッシンジャー(94歳)に呼ばれた。この時に、私はピンと来た。世界の外交の超(ちょう)大物であるヘンリー・キッシンジャーは誰も否定できない事実として、デイヴィッド・ロックフェラーの直(じき)(しん)である。ということは、ロックフェラーは、それまで自分の後継者(跡(あと)()ぎ)だと認めていたヒラリーとビル・クリントンを見捨てて(切り捨てて、乗り換えて)、「トランプで行く」と決めたのだ。そのように私は読んだ。そしてトランプ大統領が誕生したのである。トランプ時代(おそらく2024年までの8年間)が始まった。私たち日本人も覚悟を決めなければいけない。

 

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アメリカに食()い潰(つぶ)される日本経済──[目次]

 

まえがき─1

 

どぎたない秘密経済政策で株価吊り上げをやった

やってるフリだけの秘密経済政策で株価を吊り上げた─20

トランプ当選で株価がドカーンと上がってよかった─22

トランプ大統領の“ご祝儀相場〟は終わった─27

すべては交渉ごと。トランプはどんな問題でも真ん中で落として合意する─31

日本の裁判も真ん中で落として和解の判決が出る─34

アメリカにはもう本当にカネがない─38

軍人を増やすといっているが、実は軍人をリストラする─46

アメリカの「双子の赤字」をトランプは半分にする─54

下から膨らんでいくイメージの「グラウンド・スウェル」で活性化する─56

「有事の金(きん)」で金価格が上がり始めた─66

「チョップショップ」の経済思想でアメリカを再生させる

ムニューシン財務長官は「チョップショップ」の経済思想で動いている─72

給料は半分でもなんとか食わせてやるという経営者の思想─82

やっとこさ年1回の利上げをしたイエレンFRB議長─89

FRBを議会の監視下に置いて、弱体化させる─94

財政ファイナンスはヘリコプター・マネーと同じだ─102

やっぱり日本のおカネがアメリカにもっていかれる

命の次に大切なおカネをアメリカが日本から召し上げる─108

安倍はアメリカに51兆円も貢ぎ金をもっていった─112

アメリカに日本の新幹線を通勤新線としてつくらされる─122

「統合政府」という妖怪が日本を徘徊している─132

シムズの財政理論はケインズとは異なるトンデモ理論─148

すべてはインフレが解決してくれるから、いいじゃないか政策─150

悪魔のささやきの経済政策が次々と日本に持ち込まれる─155

孫正義の親分はシュワルツマンだとついに分かった─157

これでは日本国民が先に死んでしまう─164

トランプ・タワーで東京のお台場カジノを約束させられた─166

アデルソンとクシュナーが組んでカジノをやる─172

実物経済への回帰が始まった

ティラーソンがロシアと組んで北極圏の天然ガスを開発する─180

トランプはプーチン、習近平の世界3巨頭会談で連携していくだろう─185

アメリカの対中貿易赤字を削減させる─189

ラストベルトの石炭と鉄鋼産業をまず再生させる─194

アイン・ランドの大作『肩をすくめるアトラス』の本当の真実─198

アメリカの鉄鋼はもう中国には勝てない─199

エネルギー政策を決めた重要会議─200

アップルもグーグルもトランプの軍門に下った─203

レーガン政権の再来だが、ネオコンに要注意─204

基本に戻ってアメリカという国家を再生させる─206

中国共産党の幹部が大資本家になった─209

イスラエル問題も見事に真ん中で落とした─210

NATOはちゃんと守るからお金を出せ─217

キューバに対する態度もコロリと変えた─222

国境線を厳しく管理するのは人種差別ではない─223

「ドレイン・ザ・スワンプ」でワシントンの官僚どもが日干しにされる─227

北朝鮮の核ミサイルは日本には飛んで来ない

安心せよ。北朝鮮の核兵器は日本には飛んで来ない─234

日本は軽挙妄動せずに局外中立の立場を貫くべきだ─242

アメリカのシリア攻撃はアサドではなく北朝鮮の金正恩に対する警告だった─244

「核戦争コワイ、コワイ」のパニックになってはいけない─248

2018年の4月に中国軍が北朝鮮に進軍する─252

米中会談とシリア爆撃をお膳立てしたのはやはりキッシンジャーだった─255

 

 

あとがき─265

 

巻末付録 トランプ暴落にも耐えられる11銘柄─268

 

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あとがき

 

 世界が急激に変化しつつある。どうもこの4月6日から、大きくは戦争の時代に突入したようだ。「東京に核攻撃がある。だから、私は、田舎の実家に帰る」という女性たちが、出始めているようです。 人一倍の、恐怖心を持っている人間たちが、すでに、動き出しているようです。

 

 それでも、日本は大丈夫だ。日本には、北朝鮮の核兵器は飛んで来ません。その諸理由を、私はこの本の最終章に詳しく書いた。

 

 経済評論というコトバが死んでしまったのではないか。金融評論というジャンル(分類)の本が書店になくなった。店頭に並ばなくなった。ビジネス書という分類はまだ残っている。

 

 金融・経済の評論家たちが、みんないなくなってしまった。そういう職業が滅んだようだ。それなのに私は、ひとりでこうして金融本を書いて出している。妙な感じである。

 

 私の専門、本領、本籍は、もともと政治分析、政治思想研究、政治評論だった。私は、「大きく政治の方向から」経済、金融を見てきた。だから、私はこうして出版業界で生き残っている。このことの強味を自覚している。

 

 この本も苦心して書いた。しかし、それなりの達成感はある。内容は充実している。現在の最先端の金融現象や、政権寄り(体制派)の政策実行者(ポリシー・エクスキューター)の経済学者たちの内心の狼(ろう)(ばい)ぶりもよく分かった。私は決して時代に遅れていない。今も最先頭を走っている、という自覚がある。

 

 私は何のために本を書き続けているのか。それは、第1は、自分が、真実の暴(あば)きの言論人である、といういつもの自己原理と強い信念に依るものだ。そして第2(2つ目)は、書きながら自分が勉強するからだ。自分が勉強して、ハッと気づいて、新たに発見したことの喜びを、他の人々にも伝えてお裾(すそ)()けしようと思うからだ。

 

 この本も、書き上げ、完成までずっと同伴してくれた徳間書店学芸編集部、力石幸一編集委員に深くお礼を申し上げます。

 

  2017年4月

              副島隆彦 

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)