古村治彦です。
トランプ政権内部の勢力争いが報じられています。そうした中で、そうした争いに関与せずに、自分の責務をこなしているのが、マイク・ペンス副大統領です。
今月中旬からアジア各国を歴訪しています。日本では安倍晋三首相、麻生太郎財務相健副総理と会談を持ちました。麻生大臣とは「経済対話」、economic dialogueという枠組みで、日米間の経済連携を進めるための話し合いをこれからも行っていくと確認しました。ペンス副大統領の訪日には、ウィルバー・ロス商務長官も同行しました。ウィルバー・ロスは、アメリカがシリアに対してミサイル攻撃を行った際に、シチュエーションルームで、トランプの右隣に座っていました。左隣はレックス・ティラーソン国務長官でした。ロスもまた重要な人物です。
ペンス副大統領の堅実さは、トランプ政権にとっての財産である、下に紹介している記事では述べています。ホワイトハウスのレインス・プリーバス大統領首席補佐官と共に連邦議会対策に力を発揮しています。その成果は出ていませんが、連邦議会とのパイプを持っている人物が少ないトランプ政権では大変重要な役割を担っています。
ペンスが次の大党選挙で有力な候補者となる可能性は大変高いと言えます。
(貼りつけはじめ)
トランプ大統領のホワイトハウスの中でペン副大統領の力が増大している(Vice
President Pence’s power grows in Trump’s White House)
ナイオール・スタネイジ筆
2017年2月16日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/homenews/administration/319801-vice-president-pences-power-grows-in-trumps-white-house
大統領国家安全保障問題担当補佐官マイケル・フリンが今週、職を辞した。これは、トランプ政権内におけるペンス副大統領の力が増大していることを背景としている。
政権関係者は、ペンスの影響力はメディアではあまり取り上げられていないと述べる。メディアは、個性が強いトランプのアドヴァイザーたちに注目している。
しかし、フリンの更迭は、フリンがペンスに対して、駐米ロシア大使との電話会談の内容について事実ではない報告をしたことで起きた。この出来事によって、前インディアナ州知事ペンスの影響力は大きいのだということを人々に印象付けることになった。
ある政権関係者は匿名を条件に次のように赤裸々に語った。「フリンの更迭によってペンスはその力を見せつけました。副大統領、そして、マイク・ペンスに嘘をつくことはできない、もし、嘘をついたら政権内で生き残ることはできないのだ、ということをはっきり示しました」。
フリンはペンスに対して、アメリカの対ロ経済制裁についてセルゲイ・キスリヤクと議論したことはないと明確に否定した。これは真実ではなかった。報道では、この件についてペンスは激怒したということだ。
ペンスは嘘をつかれていた。それに加えて、司法省がフリンのロシア側との会見についてトランプ大統領に報告してから数週間も経ってから、ペンスはこのことを聞かされたと報道されている。
ペンスに何も知らされていなかったことで、ペンスはトランプ政権内でどれくらいの力を持っているのかという疑問が生じた。
しかし、ペンス副大統領をよく知っている人々は、彼とトランプ大統領とのつながりは切れていないと述べている。ペンスはトランプが大塔選挙で苦境に陥った時も忠誠心を持ち続けた。そのために2人の関係は強固なのだ、ということだ。
両者はトランプがペンスを副大統領候補に指名するまでお互いのことをよく知らなかった。
ペンスは敬虔なキリスト教徒だ。トランプが女性を侮辱する発言が録音されたテープが公開されたときに、大きなショックを受けたと報道された。しかし、公の場で、ペンスは穏やかな姿勢を崩さなかった。しかし、この問題の中でも、そしてその他の様々な問題に直面しても、トランプを熱烈に支持し続けた。
ホワイトハウスに入らなかったトランプの支持者のひとりは、ペンスについて、「まったくぐらつかない」と評価した。
現在のホワイトハウスはリーク合戦に苦しみ、エゴとエゴのぶつかり合いのために揺れている。ペンスはこうしたことから距離を置いている。
ペンス副大統領と、トランプ大統領の首席ストラティジストであるスティーヴン・バノンや、メディアに頻繁に登場するケリアン・コンウェイとの間は、表立って悪化していない。また、大統領首席補佐官レインス・プリーバスとホワイトハウス報道官シーン・スパイサーに対しては政権内部からも細かい批判がなされていているが、ペンスはそうした批判を受けていない。それだけ責務をうまくこなしているのだ。
前述のトランプの支持者は、ペンス副大統領が「大きな影響力」を持っている理由として、「ペンスが周囲から認められたいと思っていない」からだと述べている。ペンスは人々の噂話の対象になろうとしてはいないのだ。
ホワイトハウス関係者も同じように語っている。
この関係者は次のように語る。「大統領執務室にいる人間は全て、スティーヴ・バノン、ケリアン・コンウェイ、ジャレッド・クシュナー(トランプの義理の息子、大統領上級顧問)が何をしているかばかりを気にしている。しかし、ペンスは何も言わずに副大統領としての仕事に取り組み、連邦議会との関係を構築し、ホワイトハンス内部の確固とした基盤となろうとしている」。
ニュースマック社CEOでトランプの友人でもあるクリス・ラディは、「トランプの演説や発言から読み取れるのは、トランプが副大統領を大変に尊敬し、政権にとって重要な人物だと考えているということだ」と述べた。
ラディは続けて、「もちろん、トランプはそんなことを表立って言わない」と語った。
ペンスの副大統領の仕事で重要なものは、連邦議会内で、トランプの政策を進めることだ。ペンスは月曜日に連邦下院の共和党側控室に入り、保守的なハウス・フリーダム・コーカス(連邦下院自由議連)と会談を持った。翌日にはより中道的なチューズデー・グループと会談を持った。
一方、長年にわたりペンスの側近を務めたマーク・ショートは、トランプ政権の立法問題部長に就任している。
トランプと議会共和党との間では表面上は緊張関係が高まっている。こうした中で、ペンスの役割は両者の間を円滑にすることである。
共和党政策委員会委員長ルーク・メッサー連邦下院議員(インディアナ州選出、共和党)は、ペンス副大統領が出馬していた選挙区から連邦下院議員となっている。メッサーはペンス副大統領について、「正直な仲介者だと考えられており、これまでに連邦議会との間で良好な関係を築いている。その人物がどういう人物かを知ることは、長期的に見て、信頼の醸成に役立つ」と述べている。
メッサーは更に、「築き上げてきた信頼によって影響力が生まれる」と述べている。
大統領選挙でトランプを支持した連邦下院議員リチャード・ハドソン(ノースカロライナ州選出、共和党)もメッサーの主張に同意している。
ハドソンは次のように語る。「私たちは彼が影響力を発揮してくれることを希望しています。当然のことですが、最終決定は大統領がします。しかし、私はトランプ大統領がペンス副大統領に助言を求めるようであってほしいと願っています。それは、ペンス大統領がいつも公平だからです。彼は嵐の中でも冷静さを保つ人物です。また、連邦議会ではどのような過程で物事が進められるのかを理解しています。ペンス副大統領はトランプ大統領に、彼の政策を進めるためのより良い助言を与え続けることができます」。
オバマケアの代替計画の同意を取り付けるという共和党の立法上の問題をペンスひとりで解決することはできない。トランプの短気さと行き当りばったりは政権と議会を周章狼狽させることになるだろう。
しかし、副大統領が安定して堅実に仕事をこなしているという認識を持たれることは、ホワイトハウス内と外において、重要な利点となっている。
ペンスはトランプ政権の中で変わっている人物である。彼にはホワイトハウス内ではっきりした敵対者を持たない。これが特異な点だ。取材に答えた人々は、トランプ自身はペンス副大統領の仕事に満足しているようだと異口同音に答えている。また、インディアナ州前知事ペンスは、トランプとショート以外にも、ホワイトハウス法律顧問ドン・マガーンといった政権内の重要な人物たちと深い関係を持っている。
ペンスはトランプを上司としているがこれもまた利点なのだ、とあるホワイトハウス関係者は語る。
この人物は次のように語っている。「ペンスは副大統領らしい副大統領だ。トランプの世界では、これだけで素晴らしいことだ」。
(貼りつけ終わり)
(終わり)
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