古村治彦です。

 

 憲法記念日に日本会議が開催した集会に安倍晋三首相が自民党総裁の肩書でビデオメッセージを寄せました。この中で安倍首相は変更した日本国憲法を2020年に施行したいと述べました。

 

2019年に国民投票を行うことになるでしょう。そのためには、前段階として、国会の発議が必要となります。国会発議から国民投票までは3カ月から6カ月を必要とし、その間に賛成、反対の投票運動が行われます。国会の発議には衆議院、参議院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要となります。国会の発議のための真偽も必要となると、2018年の間に国会で改憲の発議の審議が始まることになるでしょう。改憲はまだ先の話という考えが頭の片隅にありましたが、いよいよ待ったなしという状況になってきました。

 

 私たちはこうした重要な状況の中で偶然にも生まれて、判断をするということになります。これは私たちの前の世代、過去の世代の先輩たち、そして未来の世代に対して、きちんと責任を果たさねばならないめぐりあわせになってしまったということになります。

 

 安倍晋三首相は憲法9条の変更を行う考えのようです。憲法9条に自衛隊の存在を書き込むことで、「自衛隊が違憲ではないか」という考えが存在できないようにするということのようです。

 

 日本国憲法第9条の1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあり、2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」となっています。

 

 第2項の「前項の目的を達するために」という言葉を衆議院帝国憲法改正案委員小委員会の芦田均委員長が入れた(芦田修正)ために、個別自衛権のための防衛力、自衛戦力を保持することは可能になったという解釈がなされています。ですから、自衛隊の存在が合憲か、違憲かということは、難しい問題ですが、違憲ではないという判断を下すことができています。

 

 安倍首相は自衛隊の存在を憲法9条に書き込むと言っていますが、彼が狙っているのは、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という部分の変更だと思います。自衛隊を自衛のための戦力であり、かつこれを戦争に用いない(戦争はできないのだから)、国際問題の解決には使用しない、という現在の状況を大きく変更することは必要ありません。

 

 しかし、アメリカからの日本に対する「応分」の安全保障の負担、ということを考えると、自衛隊の海外派遣において、より積極的なアメリカに対する「貢献」を行うためには、上記の部分が邪魔になります。ですから、自衛隊の存在を書き込むというとにかこつけて、この部分の変更を行うであろうということは容易に想像できます。

 

 あと、私が気になったのは、安倍首相が2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催について、「日本人共通の大きな目標」と述べている点です。私は東京オリンピック・パラリンピックの現状での開催には反対です。ですから、開催に関して、法律を犯してまで反対することはしませんが、積極的に協力することはありません。従って、少なくとも私にとっては、東京オリンピック・パラリンピック開催は「日本人共通の大きな目標」ではありません。

 

 近代的な民主政治国家においては国家目標に反対する自由は保障されていますし、全員が一致して同じ方向に向かうことを強制されることはありません。ですから、私は近代的な民主政治体制を採用している日本に住む国民として、反対の意見を表明します。もちろん、オリンピック・パラリンピックに向けて努力している方々の努力を蔑ろにするつもりはありません、某元総理大臣をはじめとする無能な最高幹部、選手を蔑ろにしている競技団体のたち以外は、ですが。

 

 オリンピック・パラリンピックは都市開催が原則であり、過度なナショナリズムを煽るようなことに利用されるべきではありません。戦前のベルリン・オリンピックがナチスに利用されたことを考えると、「日本人共通の目標」という言葉は大変危険であると言わざるを得ません。

 

 安倍首相は、2020年を自分の政治人生のハイライト、花道にするつもりです。日本国憲法の改変と東京オリンピック・パラリンピックの開催を花道に引退するつもりでしょう。これらができれば日本の歴史に名前を残す大政治家となると考えていることでしょう。大叔父である佐藤栄作元首相のように、ノーベル平和賞までも狙えるとも思っているでしょう。

 

 安倍首相は1964年の東京オリンピックのことを念頭に置いて2020年の東京オリンピック・パラリンピックについて語っています。しかし、私は現在状況を考えると、2020年の東京オリンピック・パラリンピック前の状況は、1940年の幻となった東京オリンピックの頃の方がよく似ているのではないかと考えます。国民生活の苦しさ、ナショナリズムと排外主義、政党の堕落といった点は同じではないかと思います。ですから、2020年は安倍さん個人にとっては輝かしい未来が待っていると思えるかもしれませんが、残念ながら私にはそう思えないのです。

 

(貼りつけはじめ)

 

憲法改正「2020年に施行したい」 首相がメッセージ

 

朝日新聞デジタル 5/3() 14:17配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170503-00000034-asahi-pol

 

 安倍晋三首相は3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。首相は改正項目として9条を挙げて「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」との考えを示した。

 

 18年秋の自民党総裁選での3選を前提に、自らの悲願である憲法改正の実現に意欲を示した。野党の反発は必至だ。

 

 首相がメッセージを寄せたのは、日本会議が主導する美しい日本の憲法をつくる国民の会などの改憲集会。

 

 首相はメッセージで「憲法改正は自民党の立党以来の党是」とした上で、「憲法を改正するか否かは最終的には国民投票だが、発議は国会にしかできない。私たち国会議員は大きな責任をかみしめるべきだ」と強調。20年に東京五輪・パラリンピックが開催されることについて「日本人共通の大きな目標。新しく生まれ変わった日本がしっかり動き出す年」として20年に改正憲法の施行を目指す考えを示した。

 

 憲法9条について、首相は「多くの憲法学者や政党には自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。あまりにも無責任だ」として、自衛隊の根拠規定を9条に追加すべきとの考えを強調。さらに「改憲勢力」と位置づける日本維新の会が改正項目に掲げる教育無償化についても「一億総活躍社会を実現する上で教育が果たすべき役割は極めて大きい」と前向きな姿勢を示した。

 

 首相のメッセージに対して、米ハワイ・ホノルルを訪問中の自民党の二階俊博幹事長は2日午後(日本時間3日午後)、「総理がそういうことを熱烈に希望しているなら、安倍内閣を支持している以上、積極的に支持、協力していくことが当然ではないか」と同行記者団に語った。(藤原慎一、ホノルル=山岸一生)

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)