古村治彦です。

 

 先週、アメリカのドナルド・トランプ大統領はジェイムズ・コミーFBI長官を解任しました。その翌日、ホワイトハウスでロシアのセルゲイ・ラヴロフ外務大臣、セルゲイ・キシリアック駐米ロシア大使と会談を持ちました。この時に、イスラエルから提供された機密情報をロシア側に伝えたということで問題になっています。

 

 トランプとロシア外相らが会談した日、報道陣の前に姿を現したのはヘンリー・キッシンジャー元国務長官です。ホワイトハウスの記者団は、トランプとラヴロフ外相、キシリアック大使が一緒にいるところを取材することは許可されませんでした。そして、事前に通告されていなかったキッシンジャーとトランプが隣り合って座っている場所に招き入れられました。そして、この場でトランプが初めて肉声で、コミー長官解任について語りました。

 

 私はこのお膳立てがとても重要だと考えます。コミーFBI長官は、2月に辞任したマイケル・フリン前大統領国家安全保障問題担当補佐官とロシアとの関係について捜査していました。これは、トランプ選対とロシアとの間にはどれほどの関係があったのか、更には昨年の大統領選挙でロシアが影響を与えて、自分たちに都合が悪いヒラリー・クリントンの当選阻止を行ったのかどうかというところまで行きつく話でした。トランプが捜査に手心を加えるように求めたとするコミーのメモ書きがあるということで、これが大きな問題になると見られています。

 

 コミー解任とロシア外相らとの会談は直接は関係はないでしょうが、結び付けられたら、大きなインパクトになるということはトランプと側近たちも分かっていたでしょうが、敢えてコミー解任を断行したのは、ロシアとの関係を重視する、それは、外交で懸案のシリアと北朝鮮への対処で協力するということを鮮明に打ち出すという意味があったものと思われます。また、キッシンジャーがトランプと一緒にマスコミの前に姿を現したのは、意味があります。それは、トランプがキッシンジャーのリアリズム外交路線を堅持するということを表明することになったからです。

 

トランプと習近平・中国国家主席との首脳会談では、ヘンリー・キッシンジャーの後ろ盾を受けているジャレッド・クシュナーが準備をしていたことが明らかになっています。しかし、クシュナーとロシアとの関係は不明ですし、トランプの親族がロシア側と接触するのは難しいということで、キッシンジャーが直接おみこしをあげて出てきたということが考えられます。

 

 トランプは、ロシアをダシにしてトランプ攻撃をしている民主党やネオコン派に対して、自分は屈しないということを改めて鮮明に打ち出したということが言えると思います。

 

 イスラエルが入手した機密情報をロシア側に漏らしたということが問題視されていますが、これも小さな問題をさも重要な問題であるかのように報道して、トランプ攻撃をしようと主流派メディアの動きでしかありません。機密情報をロシア側に漏らした、と伝えたのは、ワシントン・ポスト紙、後追いで、この機密情報がイスラエルから伝えられたものだった、と報じたのはニューヨーク・タイムズ紙です。両紙ともヒラリー・クリントン支持を鮮明にしていた新聞ですから、トランプ攻撃のためにはどんな手段でも使うということになっています。

 

 両紙はトランプ憎しで、針小棒大な報じ方をしていますが、それが誰を利するかというと、ロシアや中国と衝突することをいとわない、人道的介入主義派(民主党)、ネオコン(共和党)であるということになります。トランプを倒して次に何が来るか、ということを考えない極めて浅はかな行動ということになります。

 

(貼りつけはじめ)

 

キッシンジャーを隣において、トランプはコミー解任について初めて肉声で語る(WATCH: With Kissinger at his side, Trump delivers first in-person response to Comey firing

 

ジョシュア・バラジャス筆

2017年5月10日

PBS

http://www.pbs.org/newshour/rundown/watch-kissinger-side-trump-delivers-first-person-response-comey-firing/

 

ドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスでロシア外相と会談を持ったその日、記者団は、トランプが大統領執務室でヘンリー・キッシンジャーと一緒にいる写真を撮影した。この日の前日、トランプはジェイムズ・コミーFBI長官を解任した。

 

記者団によると、記者たちは、ロシア外相セルゲイ・ラヴコフとトランプが一緒にいる写真が撮れるものと思っていたが、実際には、記者団はリチャード・ニクソン大統領の下で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーとトランプが一緒にいる部屋に招き入れられた。キッシンジャーがいることを記者団は事前に知らされていなかった。

 

トランプは、キッシンジャーと会談を持ち、「ロシアやそのほか様々な問題」について議論したと述べた。

 

記者団からコミー解任の理由を問われ、トランプは次のように語った。「彼はきちんとした仕事をしなかった。ただそれだけのことだ。彼はきちんとした仕事をしなかった」。これが、コミー解任の決断について、トランプが初めて肉声で語った言葉であった。トランプは火曜日の夜から水曜日の朝にかけて、コミー解任について自分の考えをツイートしていた。

 

トランプ大統領は、今日ロシアの外相たちと会談を持つのにあたり、コミーの解任は何か影響するかどうかと質問された。

 

大統領は、「一切何もない」と答えた。

 

トランプは、キッシンジャーについて、「長年にわたる友人だ」としている。2016年の大統領選挙の勝利の直後、トランプはニューヨークでキッシンジャーと会談を持ち、「世界中の事件や問題」について議論した。

 

記者団がトランプとラヴコフが会談をしている様子を見ることは許可されなかった。2人の会談の様子の写真はロシア政府が提供した。写真には、トランプがラヴコフと駐米ロシア大使セルゲイ・キシリアックが会談を持つ様子が写っていた。

 

ホワイトハウスは記者団から会談の様子の取材が出来ないことについての懸念を伝えられたが、これに対して、ホワイトハウスの職員は「ホワイトハウスの公式カメラマン、ロシア側の公式カメラマンがその場にいた。それで良い」と述べた。

 

トランプがコミーを解任した翌日、理由がはっきりしないFBI長官解任の理由について、ジャーナリストと政治家たちが様々な発信をして、解任の詳細を提供している。

 

ホワイトハウスのシーン・スパイサー報道官は、コミー解任についての質問を避けるために、事実を隠ぺいしたという報道もなされた。ロシア外相セルゲイ・ラヴコフはコミー解任について質問され、「彼が解任されたですって?・・・冗談でしょう」と答えた。

 

CBSの特派員が、ロシアのソチでホッケーをしているウラジミール・プーティン大統領が直接取材をし、コミー解任についての感想を求め、米ロ関係に影響があるかどうかと質問した。

 

プーティンは通訳を通じて次のように答えた。「影響はないだろう。あなたの質問は私にとって大変可笑しいものに感じる。このようなことを言って申し訳ないが、怒らないでほしい。私たちには何も関係ない」。

 

プーティンは「トランプ大統領は能力を発揮し、法律と憲法に従って行動している」と述べた。プーティン大統領は「今は、ホッケーファンとホッケーをやるだけだよ」と述べた。

 

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ロシアの情報機関がトランプの機密情報漏えい報道に「激怒」(Israeli intelligence ‘boiling mad’ over Trump disclosure: report

 

マーク・ヘンシュ筆

2017年5月16日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/333670-israeli-intelligence-boiling-mad-at-trump-report

 

トランプ大統領がイスラエルから提供された機密情報をロシアと共有したという報道を受けて、イスラエルの情報・諜報関係者たちは、「激怒し、アメリカ側からの回答を求めている」と報道されている。

 

火曜日、バズフィード誌の取材に対して、イスラエルの情報機関関係者2名は、イスラエルが、イスラム国が飛行機に爆発物を仕掛けたコンピュータを持ち込もうと計画しているという機密情報をアメリカと共有していたことを認めた。

 

イスラエル情報機関の関係者はバズフィードに対して次のように語った。「情報共有の分野で独特なシステムを我が国はアメリカと構築している。我が国は他の国とはそのような関係を持っていない」。

 

「私たちに通報しないで、機密情報を他国と共有するということはどういうことか?これは私たちにとって最悪の恐怖と言うことになる」とこの人物は語った。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は月曜日、トランプがロシア外相らに話した高度の機密情報はイスラエルからもたらされたもので、このことは、アメリカの情報機関に勤務する現役職員、並びに元職員が認めている、と報じた。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、ホワイトハウスでのロシア外相とロシア大使との会談中に共有した情報は、イスラム国が関与したテロ攻撃に関するものだと報じた。

 

イスラエルの情報機関とホワイトハウスは、機密情報がイスラエル発であったかどうかについて、肯定、否定両方とも拒絶した。

 

もう1人のイスラエル情報機関関係者は、トランプが機密情報をロシアと共有したことについて、バズフィード誌の取材に対して、「私たちは激怒しており、アメリカ側から誠意ある回答を求めている」と語った。

 

火曜日、米大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスターは「大統領は、ロシアの外相らとの会談中に、機密情報の情報源と収集方法を傷つけるようなことはしていない」と述べた。

 

マクマスター補佐官はホワイトハウスで記者団に対して、「大統領は情報がどこからもたらされたものか、知らなかった」と述べた。

 

月曜日、ワシントン・ポスト紙は、トランプが先週、ホワイトハウスで会談したロシア外相セルゲイ・ラヴコフと中米ロシア大使セルゲイ・キシリアックに対して機密情報を漏らしたと報じた。

 

トランプの「機密情報」漏えいは、イスラム国内部にアクセスできる情報源との関係を傷つけるリスクが存在する。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22