古村治彦です。

 

 9月に入り、アメリカ連邦議会は夏休みが終わり、いよいよ忙しくなります。債務上限の引き上げで政府機関の機能停止を避けること、そして、税制改革が重要な課題となります。債務上限引き上げについては連邦議員の多数はやむを得ないと考えていますから、これは成立するでしょう。と、本文を書いた後、2017年9月6日に、トランプ大統領と連邦議会で債務引き上げで合意がなされ、政府機関の閉鎖はなくなりました。

 

 一方、税制改革に関しては、企業税の減税、富裕層への減税、中間層世帯の減税といったところが焦点となります。トランプ大統領は企業税の減税を選挙公約としてきました。オバマケアに関しては失敗してしまい、連邦議会の立法過程の複雑さと大統領の権限に制限がある(三権分立が機能している)ことが改めて認識されました。ですから、連邦議会内に橋頭堡となる勢力が必要となります。税制改革における企業税減税とこれによる投資の増加での景気浮揚はトランプ政権の肝ですから、失敗できません。ですから議会対策をしっかりしなければなりません。

 

 オバマケア代替法案の議会での審議と採決の時、影響力を発揮したのが急進保守派の共和党議連「フリーダム・コーカス」です。フリーダム・コーカスは連邦議会共和党指導部の言うことを聞かない勢力となっています。ここを敵に回るといろいろと厄介です。トランプ大統領としては良好な関係を築いておきたいということになります。

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マーク・メドウズ
 

 そこで、議連の会長マーク・メドウズ連邦下院議員の資金集めにジャレッド・クシュナーを出席させました。クシュナーはトランプ大統領の側近として外交面で活躍していますが、このように政権の基盤固めにも奔走しています。

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ジャレッド・クシュナー
 

 9月からのアメリカ政治も目が離せません。

 

(貼り付けはじめ)

 

クシュナーが「フリーダム・コーカス」の会長を資金集めに出席(Kushner attends fundraiser for Freedom Caucus chair: report

 

ジュリア・マンチェスター筆

2017年9月1日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/348835-kushner-attends-fundraiser-for-freedom-caucus-chairman-report

 

トランプ大統領の義理の息子でアドヴァイザーであるジャレッド・クシュナーが、連邦下院の議員連盟「フリーダム・コーカス」会長マーク・メドウズ連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)の資金集めに出席した、と『ポリティコ』誌が報じた。

 

『ポリティコ』誌によると、クシュナーは木曜日の夜にノースカロライナ州で開催された資金集めに私人の資格で出席した。

 

メドウズは多くの問題に関してトランプの同盟者である。しかし、今年初め、メドウズがオバマケアの廃止と代替に関する連邦下院共和党提案の法案について多くの修正を加えようとしたことで、トランプとメドウズは衝突した。

 

保守派議員グループの指導者として、メドウズは共和党指導部と長年にわたり衝突を繰り返してきた。8月の休暇を終えて連邦議員たちは来週になればワシントンに戻ってくる。9月は重要な月となる。連邦議会は債務上限を引き上げ、政府機能の停止を避けるために政府支出法案を可決し、ハリケーン・ハーヴェイからの復旧予算のための財源を探さねばならない。

 

メドウズとクシュナーは両者にとって重要課題であるイスラエル政策について議論したと報じられている。

 

メドウズは過去に大統領の娘で、クシュナーの妻でもあるイヴァンカ・トランプと有給家族介護休暇について議論したことがある。

 

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クシュナーがマーク・メドウズのために資金集め(Kushner fundraises for Mark Meadows

 

2017年9月1日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/story/2017/09/01/kushner-fundraises-for-mark-meadows-242244

 

●スクープ

 

ジャレッド・クシュナーは昨夜、密かにノースカロライナ州に向かい、マーク・メドウズ連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)の非公開の資金集めに出席した。メドウズは連邦下院の議連「フリーダム・コーカス」の会長である。これは資金集めについて取材した複数のメディアが報じている。メドウズとクシュナーは、クシュナーが関心を持ち、メドウズにとって重要課題であるイスラエルについて議論した。メドウズは有給休暇についてイヴァンカと議論をした。有給休暇については長年にわたり連邦議会共和党は難色を示してきた。クシュナーは私人の資格で参加した。

 

●この何が問題か

 

簡単なことだ。メドウズは長年にわたり共和党指導部にとっての頭痛の種となってきた。そして、連邦議会において有力者となっている。メドウズはトランプ大統領の重要な同盟者で、連邦下院の保守派議員とホワイトハウスをつなぐ仲介者となっている。クシュナーがノースカロライナ州に向かったのは、メドウズとトランプ政権のメンバーたちとの関係を象徴している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12