古村治彦です。

 

 今回は『フォーリン・ポリシー』誌に掲載された今回の総選挙と小池新党に関する記事をご紹介します。記事はまず、安倍晋三首相による衆議院解散について、支持率の回復と野党の分裂を理由として挙げています。次に、小池新党について、自公連立政権に挑戦するために立ち上げられたとしています。

 

 しかし、安倍首相と小池百合子都知事はほぼ同じだという記事では述べています。「小池氏が首相になっても安全保障と外交は変更がない」という、テンプル大学現代アジア研究所のロバート・ドゥジャリクの分析を記事では紹介しています。

 

 私も安倍首相と小池都知事がほぼ同じであるという点に同意です。そして、重要なのは、記事の中で筆者のタムキンが、「安倍首相と小池都知事がほぼ同じであるので、小池氏が首相になっても安全保障や外交政策で変化がない」ということをアメリカ政府は留意しておくべきだと述べている点です。アメリカの国益にかなっている安倍首相はそのまま続投になるだろうし、続投できずに、小池氏が首相になっても(そのためには小池氏が国会議員にならねばなりませんが)、アメリカは困らないということです。私の主張している「米政翼賛会」体制はまさにこのことです。

 

 私は今回の総選挙で、自公250、希望150、第三リベラル65となり、自公と希望にできるだけ穏健派・中道派、自民党保守本流のような人々が増えて、第三リベラルと合わせて160名程度にならないだろうかと考えています。希望の党は、既に「寛容さ」を脱ぎ捨て、公認を拒絶している民進党の前議員たちが出ているということです。となると、第三リベラルの数がもっと増えて欲しいと私は考えています。100というのは厳しい数字ですが、これに近づいて欲しいと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

安倍首相は総選挙の前に日本の議会を解散(Abe Dissolves Japan’s Parliament Ahead of Snap Elections

 

エミリー・タムキン筆

2017年9月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/09/28/abe-dissolves-japans-parliament-ahead-of-snap-elections/

 

今週木曜日、日本の安倍晋三首相は日本の議会(衆議院)を解散した。これが解散総選挙の号砲となった。安倍首相は衆議院の人気の1年前に、「国難(national crisis)」を乗り越えるために議会を解散した。同時に、安倍首相は、スキャンダルが続いた夏が終わり、支持率が回復しつつあり、野党側が分裂しているように見えるこの時期に選挙で新しい委任を必要としているのだという結論に達した。

 

「のように見える」という言葉は重要な意味を持つ言葉だ。今週、東京都知事の小池百合子は新党「希望の党(Party of Hope)」を立ち上げ、日本政治を支配している自公連立政権に挑戦しようとしている。新党には安倍首相率いる自由民主党と野党である民進党からの離党者たちも参加している。小池氏は新党立ち上げについて「本当の意味で政治的しがらみのない改革勢力を必要としているからだ」と述べている。

 

フランス国際関係研究所のセリーヌ・パジョンは、小池氏の動きはゲームそのものを変化させてしまう可能性があると述べている。パジョンは「小池氏による新党立ち上げの前、野党側は混迷を極め、安倍首相の統治スタイルに対する不信任の声が高まっても安倍首相にダメージを与えることができなかった」と述べている。しかし、総選挙の投開票は2017年10月22日に予定され、希望の党が組織化し、候補者を立てるには数週間しか残されていない。希望の党にはまたきちんとした綱領(platform)が必要となる。パジョンは次のように語る。「希望の党は、反安倍姿勢を超えてきちんとした政治プロジェクトを持っているということを有権者に対して説得しなければならないだろう」。

 

このことは困難であろう。小池氏の発言のほとんどは安倍首相のスタイルと実質と同じであり、特に安倍首相の過半数の勢力を使って法律を強引に可決させる(railroad through legislation)という点は一致している。希望の党は日本の平和主義に対してリップサーヴィスをするにしても、彼女自身は現在の安倍首相と全く反対の存在ではないのだ。安倍首相は日本の平和主義に対して様々な変更を加えてきている。

 

テンプル大学現代アジア研究所のロバート・ドゥジャリクは、「政策に関しては、小池氏は安倍氏とは違わない」と述べた。これが意味するところは、小池氏が首相になっても、日本の国家安全保障と外交に関する政策には大きな転換はないということだ。これは、東アジア地域における恒常的な緊張関係と安全保障上の懸念が新しいレヴェルにまで増大しているこの時に、アメリカ政府が留意すべき点だ。

 

しかし、とにかく安倍首相は生き残るだろうとドゥジャリクは考えている。ドゥジャリクは本誌へのEメールの中で「小池氏は新党をスタートさせ、候補者たちを擁立するのに数週間しかない」と書いている。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12