古村治彦です。
11月に入って、パラダイス文書(Paradise Papers)と名付けられた文書が流出し、その内容が報道されるようになりました。これはICIJという世界各国の報道機関が加盟している国際組織が文書を入手し、加盟報道機関が世界各国で同時に報じるという形になっています。日本では朝日新聞が加盟し、報じています。ICIJには世界各国のクォリティ・ペーパーが加盟しているようです。
パラダイス文書にはイギリスのエリザベス女王、世界的な人気ロックバンドU2のヴォーカルであるボノ、マドンナと言った人たちの名前が出ています。日本からは鳩山由紀夫元首相の名前も出ました。ウィルバー・ロス商務長官やゲイリー・コーン国家経済会議議長といったトランプ政権の最高幹部たちの名前も出ています。
これはリベラル系の報道機関によるトランプ政権攻撃ということがまず考えられます。しかし、もっと深読みをすると、これはトランプ政権と共和党が進める税制改革を補強する動きであるとも考えられます。
租税回避地に会社を作って自分が住んでいる、国籍(市民権)を持っている国の税金を回避する、という動きは世界各国の富裕層なら誰でもやっていることです。税金逃れという批判はできますが、違法ではありません。しかし、ここ最近、世界各国政府、特に高度経済成長が見込めない先進諸国の政府は懐具合が厳しくなっている中で、貧困層や中間層からこれ以上搾り取れないということで、富裕層への課税、徴税を何とかしたいと考えるようになっています。資源に恵まれている国々や経済成長が著しい国々ではこうした動きは起きていません。
そうした中で世界各国政府の徴税部門は富裕層の財産の把握と徴税を何とかしたい、ということで足並みをそろえています。そして、彼らの考えることは、富裕層の財産を自国に戻させよう、そして、これまでのような累進性の高い課税を少し緩めて、彼らにより多くの税金を払ってもらおうということです。
アメリカの連邦議会では現在、税制改革の議論が進んでいます。富裕層に対する減税案だという批判も出ていますが、財産を海外に持ち出されて、まったく納税されないという現状を変えるためには、現状を緩くしてアメリカに資金を戻してもらって、課税に応じてもらう、納税してもらうということが重要です。そのための株高でもある訳です。
今回のパラダイス文書暴露はトランプ政権攻撃でありながら、同時に富裕層に自国に戻ってもらって、資金を戻してもらって、納税をしてもらうための動きでもあると思われます。
(貼り付けはじめ)
リークされた文書によってトランプ政権の最高幹部たちのオフショア取引が暴露される(Leaked
documents reveal offshore dealings of top Trump officials9
ジュリア・マンチェスター筆
2017年11月5日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/358865-leaked-documents-reveal-offshore-dealings-of-top-trump
報道機関の国際機関が報じた一連の大量の文書に、トランプ大統領につながっている複数の人物の名前が出ている。彼らは自分たちのビジネス投資を法的に守ったり、彼らの顧客と企業の資金を租税回避地(タックス・ヘイヴン)に逃避させる政策に影響を与えたりできる立場にある。
1300万点の文書は「パラダイス文書」と名付けられた。これらはバミューダを拠点とする法律事務所アップルビーをはじめとする様々な企業から流出した文書だ。パラダイス文書について最初に報じたのはドイツの新聞『南ドイツ新聞』紙だった。そして、調査報道ジャーナリスト国際連合(ICIJ)の加盟各社が報じ始めた。ICIJには、『ザ・ガーディアン』紙、BBC、『ニューヨーク・タイムズ』紙などが加盟している。パナマ文書暴露の際にもバックにいたのはICIJであった。
パナマ文書の時と同様、パラダイス文書もまた世界のエリート層の人々によって作られたオフショア金融の問題を炙りだしている。
NBCニュースは、パラダイス文書には世界各国の120名以上の政治家と王家のメンバーの名前が出ていると報じた。彼らはオフショア金融に関係していると報じられた。
パラダイス文書にはトランプ政権の最高幹部たちの名前が出ている。
ウィルバー・ロス商務長官は政権入りした後も、ロシアのウラジミール・プーティン大統領のインナーサークルとビジネス上のつながりと利益を維持していた、とニューヨーク・タイムズ紙が入手した文書によって明らかにされた。ニューヨーク・タイムズは、彼らはプーティン大統領の義理の息子が共同所有者になっている企業の生産する天然ガスを運送する、多額の利益を生み出す海運業に投資していた。
商務省報道官はパラダイス文書を入手したNBCの取材に対して、大西洋上の海運に関連する諸問題にロス長官自身は関与していない、「最高の倫理基準を確保する」ために倫理に関する商務省の部局と連絡を取り合っている、と語った。
報道官は更にロス長官がロシアに対する経済制裁に「概ね」賛成していると述べたが、声明の中では、NBCニュースが報じたロシアとロス長官との関連については言及がなかった。
ガーディアン紙は、トランプ政権の国家経済会議議長で経済担当補佐官を務めるゲイリー・コーンは、2002年から2006年にかけてバミューダにおけるゴールドマンサックスの関連22社の最高幹部を務め、レックス・ティラーソン国務長官は1997年にバミューダのある企業の経営責任者を務めていた、と報じた。
ガーディアン紙によると、レックス・ティラーソン国務長官はまた、1997年にバミューダに拠点を置いていたマリブ・アップストリーム・カンパニー社の経営責任者を務めていた。
ティラーソンは1997年にエクソンモービル社のイエメン支社の責任者を務めていた。パラダイス文書によると、エクソンモービル社イエメン支社はマリブと深い関係にあった。
「シティズンズ・フォ・タックス・ジャスティス」は昨年、エクソンモービル社は、ケイマン諸島、バミューダ、バハマといった複数の場所に35の子会社を所有していた。
スティーヴン・ミュニーシン財務長官はパラダイス文書に名前が出ていない。しかし、彼が副会長を務めた銀行ゴールドマンサックスは、上客に対してプライヴェートジェットの経費を支払うということを行っていた、とガーディアン紙は報じている。
パラダイス文書には駐ロシア米大使ジョン・ハンツマンはパラダイス文書に掲載された企業の共同所有者であったと報じられている。また、住宅都市開発長官ベン・カーソンが経営していた(現在は引退)あるバイオ技術企業はオフショアで複数の企業を設立していたということも報じられている。
大統領のインナーサークルには大富豪の実業家カール・アイカーンとトム・バラックが含まれているが、2人ともパラダイス文書に名前が出ていると報じられている。
本誌はホワイトハウスにコメントを求めている。
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●「パラダイス文書って何? 鳥山明さん、鳩山由紀夫・元首相の名前も タックスヘイブンなどでの経済活動を暴露」
2017年11月06日 13時23分 JST | 更新 29分前
安藤健二
ハフポスト日本版ニュースエディター / 「知られざる世界」担当
http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/05/paradise-papers_a_23267613/?ncid=fcbklnkjphpmg00000001
タックスヘイブン(租税回避地)が絡む経済活動に多くの著名人が関わっていることが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パラダイス文書」で明らかになった。
■パラダイスの由来は?
産経ニュースによるとタックスヘイブンは美しい島国に多いほか、フランス語などで「税の楽園」と表現することからICIJは「パラダイス文書」と名付けた。パナマ文書と同様に、ヨーロッパの有力紙「南ドイツ新聞」が入手し、ICIJと共有した。情報源を一切明らかにされていない。
文書数は1340万件で、データ量は1.4テラバイト。「史上最大のリーク」と呼ばれた2016年のパナマ文書と比べデータ量では少ない一方、資料数は190万件多いという。
朝日新聞デジタルによると、パラダイス文書の内訳は、バミューダ諸島などにある大手法律事務所アップルビーの内部文書683万件と、シンガポールの法人設立サービス会社「アジアシティ」の内部文書56万6000件、マルタなど19の国・地域の登記文書604万件だ。
パラダイス文書に掲載された各国の政治家・君主らの名前は、47カ国127人。カナダのトルドー首相やイギリスのエリザベス女王らが掲載されていた。芸能人では歌手マドンナさんや、ロックバンド「U2」のボノさんの名前もあった。
日本からも「ドラゴンボール」で知られる漫画家の鳥山明さんや、鳩山由紀夫元首相の名前が掲載されていた。各社の報道を元に情報を整理すると以下のようになった。
■鳥山明さん、アメリカの不動産に出資
共同通信によると鳥山明さんを含む日本人12人が2000年、アメリカに設立された不動産リースの投資事業組合に出資していた。
鳥山さんは同社に「日々多忙のため、税務面はおまかせにしていますのでお話しできることはありません」と書面で回答したという。
■鳩山元首相、バミューダ諸島に設立された資源会社の役員に
産経ニュースによると、鳩山由紀夫元首相はタックスヘイブンに設立された法人の役員に就任していた。
バミューダ諸島に設立され香港を拠点にする資源会社「ホイフー・エナジーグループ」の名誉会長を政界引退後の2013年から務めている。
鳩山元首相は「名前だけでも連ねてくれと要請された。名誉会長で実質何も意味はない」と経営への関与を否定した。
■「U2」のボノさん、マルタの会社に出資
英紙ガーディアンによると、ロックバンド「U2」でボーカルを務めるボノさんは、タックス・ヘイブンとして知られるマルタ共和国に拠点を置くヌード・エステートという会社に投資していた。この会社が、リトアニアのショッピングモールを580万ユーロ(約7億7000万円)で買収していた。
ボノさんの広報担当者は「ボノは主要な投資家ではなく、積極的に関わってない。2015年に解散するまで、会社は合法的に登記されていた」とコメントした。
■マドンナさん、ポール・アレンさんらの名前も
ICIJによると、マドンナさんはカリブ海のバミューダ諸島の医薬品関連会社の株を保有していた。
起業家も多く、ネット競売大手イーベイを設立したピエール・オミディア氏はケイマンの金融商品に投資。マイクロソフト共同創業者のポール・アレンさんは、豪華ヨットや潜水艇を租税回避地に登記していたという。
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●「「パラダイス文書」にエリザベス女王やマドンナ、ボノの名前も ローマ・カトリック教会の聖職者がバミューダ諸島に会社を持っていたことも判明」
2017年11月06日 11時47分 JST | 更新 2時間前
http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/05/the-paradise-papers-elizabeth_a_23267575/
英女王・マドンナ・中東の王妃... 「税の楽園」集う大物
大手法律事務所「アップルビー」などから流出した膨大な「パラダイス文書」には、英国のエリザベス女王といった数々の著名人や、米アップル社など世界的に事業を展開する多国籍企業の名が載っていた。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の取材で、タックスヘイブン(租税回避地)での経済活動の一端が明らかになった。(疋田多揚、軽部理人)
パラダイス文書の一つに、こう題された文書があった。日付は2008年6月12日。本文はこう続く。「みなさまに3千万ドル(約34億円)の分配金をお知らせいたします」
受益者の中には、エリザベス英女王の個人資産を表す名称があった。
それによると、女王は05年、タックスヘイブンで有名な英領ケイマン諸島のファンドに750万ドル(約8億6千万円)の個人資産を投資。3年後に36万ドル(約4100万円)の分配金の知らせを受け取った。
女王のお金はこのファンドを通じ、別の会社へ投資された。英国の家具レンタル・販売会社「ブライトハウス」を支配下に置く会社だ。ブライト社は、一括払いができない客に年率99・9%の高利を求める手法が、英国議会や消費者団体から批判を浴びていた。
女王の資産は、英国内での運用は一部が明らかになっているが、英国外での運用は知られてこなかった。女王の広報担当はICIJに「ブライト社へ投資されたことは知らなかった。女王は個人資産やその運用で得た所得税を納めている」とコメントした。
ローマ・カトリック教会の聖職者がバミューダ諸島に会社を持っていたことも文書でわかった。メキシコ出身の故マルシアル・マシエル神父。「キリスト軍団」という修道会を創設し、「カトリック最大の資金貢献者」と称される一方で、神学生への性的虐待容疑で告発された人物だ。カトリック教会は、その資産を運用する団体がマネーロンダリング(資金洗浄)などの不正に長年かかわってきたと指摘されている。
またヨルダン前国王の妻ヌール王妃は、英王室属領のジャージー島にある二つの信託会社から利益を得ていた。ブラジルの中央銀行総裁も務めたメイレレス財務相は、「慈善目的」でバミューダ諸島に財団を設立していた。約30年の独裁体制を強いたインドネシアのスハルト元大統領の2人の子どもも、アップルビーの顧客リストに載っていた。
文書からは「セレブ」の資産運用も垣間見える。米歌手のマドンナ氏は医療用品販売会社の株を持っているほか、ロック歌手ボノ氏は、マルタに登録された会社の株を所有していた。
米投資家で、ICIJに慈善団体を通じて寄付しているジョージ・ソロス氏もタックスヘイブンに置いた組織の運営に関し、アップルビーを利用していた。
世界最大規模の米ネットオークションサイト「eBay(イーベイ)」創設者のピエール・オミディア氏がケイマン諸島の金融商品を所有していることもわかった。
(貼りつけ終わり)
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