古村治彦です。

 

 2017年もあと少しで終わり、2018年を迎えます。2018年における重大な関心事はやはり北朝鮮問題ということになるでしょう。北朝鮮はこれからも核兵器とミサイル開発プログラムを推進するのか(これは間違いなく進めるでしょう)、アメリカはこうした動きにどのように対処するのか、北朝鮮と関係が深い中露はどのように対処するのか、ということが焦点になります。より簡潔に述べるならば、「アメリカは北朝鮮を攻めるのか」ということが最大の関心事ということになるでしょう。

 

 ドナルド・トランプ米大統領は激しい言葉遣いですので、米軍の北朝鮮侵攻があると考える人も多いと思います。しかし、トランプ大統領は激しい言葉遣いをしながらも、行動は慎重である場合が多いです。そもそもアメリカが海外の問題に首を突っ込みすぎると言って当選した人ですから、アメリカの安全に大きな脅威がなければ外国のことはほっておけ、もしくは近くの大国が責任を負うべきだと考える人です。ですから、北朝鮮に関しては、ロシアと中国が責任をもって何とかすべきだと考える人です。

 

 北朝鮮がアメリカに到達するミサイルを開発しようとしているのだから、これを止めるということはトランプもやるでしょう。そのやり方をめぐって、話し合いか、そうでなければ軍事行動かということになります。下にご紹介するのは、軍事行動は良くないとする論稿ですが、これは非常にナイーヴというか、「戦争になったら大変なことが起きる」ということを強調しています。ですから、封じ込めと話し合いで何とかすべき、ということを述べています。

 

 北朝鮮は、ぎりぎりのジェンガをプレーしているかのように、慎重にかつ大胆に行動します。ジェンガが崩れてしまわないように、しかし、アメリカに舐められないようにという行動のように見えます。トランプ大統領の首席ストラティジストを務めたスティーヴ・バノンが「北朝鮮は賢い、レッドラインは超えない」と発言しているのも分かります。

 

 しかし、北朝鮮を封じ込めることはできず、より厳しい完全封鎖のような経済制裁を行えば暴発するかもしれず、しかし、中途半端な制裁ではミサイル開発を進めてしまうということになると、ミサイル開発を放棄させるにはより強制力の伴った方策が必要になります。

 

 米軍が陸海空の各軍を動員しての大規模な作戦を展開するかと言うと、これは難しいように思います。北朝鮮は中国とロシアに隣接していますので、中露両国は反対するでしょう。そうなれば、中露両国も巻き込んでの強制的な方策ということになります。中露が強制的な関与を行うとなると、北朝鮮の中ロ国境を封鎖し、米軍が空爆、その後に中露軍で侵攻、治安回復、治安維持、新体制樹立、中露軍の撤退ということになるでしょう。そして、北朝鮮は米中露韓日に囲まれた緩衝地帯、国全体が非武装地帯とされ、中国型の社会主義市場経済を採用、海外からの投資を積極的に受け入れるという形で経済発展を行うということになるのではないかと思います。

 

 金正恩については中国かロシアへの亡命と海外資産の一部を金一族に与える、現在の北朝鮮のエリート層に対する取り扱いは、ごく少数を犯罪者として裁判にかけ、それ以外は国家再建に当たらせる(戦後の日本のように)となるのではないかと思います。

 

 大規模戦争による完全な破壊ではなく、できれば金正恩と最高幹部たちだけを追い落として、緩やかな体制変更を行い、国家再建を行うというシナリオが望ましい、そのためには、限定的な軍事力行使が良いのだろうと思いますが、限定的というシナリオがうまく運ぶ保証がない、偶発的なことが起きて、結局、周辺諸国にも被害が出て、北朝鮮が完全破壊という結末になってしまうということが怖いということになります。

 

 そうしたことにならないためには、アメリカや中国が今のうちから北朝鮮人民軍の中に協力者を多く仕立てておくことが必要でしょう。米中による介入に対して、大規模な報復や反撃がないようにするには、北朝鮮人民軍の中に協力者を作って、金正恩からの命令に対してサボタージュをしてもらわねばなりません。わざと負けるように動いてもらわねばなりません。そのための準備が今行われ、来年に北朝鮮情勢に関して大きな変化が起こるのではないかと私はそんな風に感じています。

 

 2017年にはいろいろとお世話になりました。ありがとうございます。2018年もどうぞよろしくお願い申し上げます。2018年が皆様にとりましてより良い1年となりますように祈念申し上げます。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプの対北朝鮮戦略そのものが大いなる脅迫的言辞でしかない(Trump’s entire North Korea strategy could be a giant bluff

 

ハリー・J・カジアニス筆

2017年12月26日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/opinion/national-security/366498-trumps-entire-north-korea-strategy-could-be-a-giant-bluff

 

北朝鮮が彼らにとっての古典的な策略に戻っているという報道がなされている。ミサイルの試験発射を「衛星」と言い換えている。これはミサイル発射テストをより恐怖感を与えない名称にしているのだ。一つのことは確実に言える。北朝鮮危機は終わっていない。

 

実際、トランプ政権の高官たちと彼らの代弁者たちは毎日「軍事的オプション」を支持する発言を行っている。彼らの発言は曖昧で、金政権の行っている核兵器とミサイル開発に対する、予防、先制攻撃、衝撃と恐怖を与える攻撃といった内容が混ざっている。しかし、はっきりしていることは、トラブルは少しずつ大きくなっているということだ。ワシントンを拠点とする専門家たちの多くは、北朝鮮が核兵器とミサイルを放棄しない、もしくは武器の実用テストをすぐに止めて交渉の席に戻らない、ということが続くだろうという懸念を持っている。

 

本当にそうだろうか?トランプ政権は、「」「」One of the possible policy options is that the Trump administration, with its talk of “fire and fury,” that the regime would be “will be utterly destroyed” in a war or that “we will have no choice but to totally destroy North Korea” if forced to defend our allies” might not be ready poised to strike at all.これ以外の政策は可能ではないということになる。

 

実際、私は専門家たちの多くとは異なる考えを持っている。激しい言葉遣いは脅し文句であって、北朝鮮に対する軍事行動の脅威はこの脅し文句の効果を高めるためのものだ、と私は考えている。

 

現在の東アジアの軍事的な状況を見るだけでも、このような脅し文句で相手を屈服させるという戦略があるということを示す明確な証拠は見つかる。トランプ政権が真剣に北朝鮮に対する軍事行動を考慮しているとするならば、北東アジアにおいて大規模な米軍の編成がなされていなければならないが、そんなものはどこにあるだろうか? トランプ政権が金正恩政権の核兵器とミサイル開発プログラムをストップさせる、もしくは完全に放棄させるために軍事行動を考慮しているのならば、北東アジア地域における大規模な軍の編成替えが見られるはずなのだ。

 

もし攻撃が決定されていれば、空母を中心とした戦闘群をはじめとする各種艦艇が北東アジア地域に向かっているはずだ。B1爆撃機、B2爆撃機に多数のF22、F35ステルス戦闘機が同行するだろう。北朝鮮が報復として韓国への侵攻を決定すれば、地上軍の編成も行われるだろう。しかし、実際には極めて標準的な訓練と行動以上のものは見られない。

 

攻撃力に加え、北朝鮮による反撃からアメリカの同盟諸国と北東地域にいるアメリカ市民を守るための行動を取っているはずだ。たとえば、アメリカ国民は日本と韓国から退去することになるだろう。アメリカ政府は韓国政府と日本政府に対して、パトリオットミサイルとTHAAD(サード)ミサイルの防衛システムの増強を受け入れるように圧力をかけるだろう。防衛システムは、北朝鮮による核兵器、化学兵器、生物兵器を搭載したミサイルによる反撃を避けるためのものだ。繰り返しになるが、アメリカ政府がこのような準備を進めている兆候は全く見当たらないのだ。

 

公平に見ると、戦争のタイミングについては、春までの発生の可能性については疑問符が付く。来年は韓国で冬季オリンピック大会が開催される。この場所は非武装地帯と北朝鮮の砲撃陣地とミサイル基地からわずか60マイル(約100キロ)しか離れていない。実際のところ、トランプ政権はオリンピックが終わることを待っているというのは戦争が起きる場合にはありそうなことではある。

 

アメリカが北朝鮮国内から大量破壊兵器を一掃するために軍事攻撃を行うと決断する場合に、何が起きるのかを研究する人たちにとっては、世界規模での危機を生み出しながら、北朝鮮の大量破壊兵器を一掃することに失敗することが懸念の対象になっている。北朝鮮は核兵器とミサイル開発プログラムに対する攻撃はいかなるものであっても存在を脅かす脅威ととらえ、核兵器の一部を地中深くに秘匿する動きを加速するだろう。北朝鮮は残存しているあらゆる武器を使って反撃に出る可能性が高い。ソウルや東京のような巨大都市に対する核攻撃の可能性もある。ソウルの都市圏には2500万人が暮らし、東京の都市圏には3500万人が暮らしている。

 

戦争終了後、この場合北朝鮮は戦争に敗れているのは間違いないところだが、数百万の人々が遺体として安置されているだろう。何兆ドルもの資金は北東アジアの広い地域の再建のために必要となる。北朝鮮は悲惨な状況に置かれ、巨額の財政的支援を必要とする。2人の学者は、敗戦直後の北朝鮮は世界史史上最大規模の国家建設の最初のページとなるだろうと述べている。

 

北朝鮮との戦争を選択することは深刻な誤りとなるであろう。数百万の人々の生命が失われるだろう。従って、金政権による核兵器とミサイル開発プログラムについては、封じ込めと抑止政策が最も現実味を持つ。トランプ政権が脅し文句を多用する口先だけの強硬姿勢を止め、真剣に対処するのは今だ。

 

ハリー・J・カジアニス:「センター・フォ・ザ・ナショナル・インタレスト」防衛研究部長。「センター・フォ・ザ・ナショナル・インタレスト」は1994年にリチャード・M・ニクソン元大統領によって創設された。カジアニスはセンターの出版部門である『ナショナル・インタレスト』誌の上級部長でもある。 カジアニスは2016年の大統領選挙でテッド・クルーズ連邦上院議員の外交政策ティームに参加した。また、ヘリテージ財団外交政策コミュニケーションマネジャー、『ザ・ディプロマット』誌編集長、戦略国際問題研究センター(CSIS)研究員を歴任した。本稿の主張はカジアニス自身のものである。

 

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夏にも空爆か 軍事オプションしかなくなる対北朝鮮Xデー

 20171230>> バックナンバー

 

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/220482/1

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/220482/2

 

 金正恩に振り回された2017年。18年は、北朝鮮問題にケリをつける一年になる可能性が高い。アメリカにとって残された時間がわずかになっているからだ。

 

 北朝鮮は、1年以内にアメリカ全土を射程圏内に入れる“核ミサイル”を実戦配備する可能性が高いとみられている。実際、6回の核実験と、年間15回のミサイル発射によって北朝鮮の技術力は急速に上がっている。北朝鮮が核ミサイルを完成させたら手遅れになる。トランプ大統領が、その前に北朝鮮を攻撃しようとするのは間違いない。

 

「2018年、アメリカが軍事オプションに動く可能性はかなり高いと思う。もはや、話し合いでは北朝鮮が核を放棄しそうにないからです。アメリカは北朝鮮と水面下で接触し、外交交渉を重ねてきた。国連のフェルトマン事務次長も訪朝しています。それでも効果がなかった。時間だけが費やされ、その間に北朝鮮の核・ミサイル技術が向上しているのが実態です。北朝鮮が7度目の核実験に踏み切るか、再度ICBMを発射したら、トランプ大統領は容赦しないのではないか」(元韓国国防省分析官で拓大研究員の高永テツ氏)

 

米朝開戦のXデーは、3月20日以降だ。2月9日~3月18日は「平昌オリンピック・パラリンピック」が開かれる。さすがに、アメリカも「平和の祭典」の真っ最中に戦争はやらないだろう。さらに、3月18日にはロシアの大統領選が行われる。北朝鮮を攻撃したら、“外交的解決”を訴えているプーチン大統領のメンツを潰し、大統領選にも影響を与えかねない。ロシアゲートを抱えるトランプ大統領が、プーチン大統領を怒らせるはずがない。

 

「2018年、アメリカの最大の政治スケジュールは11月に行われる中間選挙です。トランプ大統領は中間選挙で勝利し、2年後の大統領選で再選されることを考えているはず。北朝鮮への空爆が中間選挙に有利となると判断したら、夏に空爆する可能性もあるでしょう」(高永テツ氏)

 

 米朝の軍事衝突が勃発したら、日本も大打撃を受けることは避けられない。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)