古村治彦です。

 

 今回は、SNSI研究員である石井利明(いしいとしあき)氏のデビュー作『福澤諭吉 フリーメイソン論』(石井利明著、副島隆彦監修、電波社、2018年4月16日)を皆様にご紹介します。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

 

 石井利明氏は私たちの仲間で、これまで出した論文集の中で、福沢諭吉についていくつも論稿を発表してきました。今回、石井さんの福沢諭吉(1834-1901年)研究の集大成が一冊にまとまり、世に出ることになりました。

 

本書の最大最重要の特徴は福沢諭吉とフリーメイソンとの関係を明らかにしたことです。このことについて、著者の石井氏は「日本を属国の一つとして扱う英国に対抗して、勃興する新興大国であるアメリカの自由思想と、アメリカ革命に深く関わったフリーメイソンたちを自分たちへの支援勢力とした。福澤諭吉は、フリーメイソンたちと手を携えて、日本国が、着実に自立してゆくために知識、思想、学問で闘い続けた」と簡潔に書いています。

 

 私の個人のお話で申し訳ないのですが、私は早稲田の出身で、学生時代から野球の早慶戦に行っています。慶應の応援は力強く、また華麗なものです。私もいつの間にか、慶應義塾の塾歌(校歌)や有名な応援歌「若き血」を歌えるようになりました。

 

慶應義塾にはほかにも多くの素晴らしい応援歌がありますが、私が個人的に好きなのは「我ぞ覇者」です。その一番の歌詞は「雲を破りて 世を照らさんと 見よや見よ自由の 先駆われ 独立友呼べば 自尊と我応え おお 共に起たん 吾等が義塾」です。この歌詞こそ福澤諭吉が慶應義塾を創設した精神「自由」「独立自尊」がよく表現されていると思います。

 

 以下に推薦文、まえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にしていただき、是非手に取っていただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 

(貼り付けはじめ)

 

推薦文

                                   副島隆彦

 

 本書『福澤諭吉フリーメイソン論』は、誰よりもまず慶応義塾大学出身の皆さんに読んでいただきたい。

 

 福澤諭吉(一八三四~一九〇一、天保五~明治三四)は真に偉大な人物である。幕末と明治期の日本が生んだ、本当にとびきり一番の、大人物である。だが、福澤先生のなにが偉大であり、なにが賞賛に値するのかを、いまの私たちはまったく知らない。誰も教えてくれない。何も教わっていない。

 

 非礼を承知で私は書くが、慶応大学出で の人々であってさえ、福澤先生の偉大さの理由と根拠を知らない。入学当初から、誰からも教わっていない。『学問のすすめ』と『福澤翁自伝』を読め、読めと言われるだけだ。福澤先生の「日本国の独立自尊(どくりつじそん)」の思想を、今に受け継ぐ人々が今の日本にいるのか。

 

 この本を読んでいただければ、いろいろなことがわかる。真贋(しんがん)の判定は、この本を読んでくださった読者がする。何故(なにゆえ)に、福澤先生は日本が生んだ大(だい)学者、碩学(せきがく)にして行動者、実践家、温厚な教育者にして大実業家であったか。これらのことが、この本にすべて書かれている。

 

 著者の石井利明君は慶応出でではないが、一所懸命にあらゆる文献を読み、深く調査して福澤諭吉の思想の真髄にまで迫って、この偉人の真実を掘り当てている。この本を読んでくださればわかる。そして、私と一緒に驚いてください。福澤諭吉の生い立ちから人格形成期、そして晩年の大成者としての実像(六七歳で逝去)までを見事(みごと)に描ききっている。

 

 石井利明君は、私が主宰する学門道場およびSNSI(副島隆彦国家戦略研究所)の創立時からの人であり、研究員としても高弟であり古参である。

 

 思い出せば、もう七年前の、二〇一一年三月一一日の東日本大震災、そして福島第一原発の爆発事故の直後一九日に、私は死を覚悟して、とりあえず石井君ひとりを連れて現地を目指した。そして原発から七キロメートルのところで目視しながら放出された放射線量を現場で正確に計測した。それがごく微量であることを知った。このことを即刻、インターネットで発信し、日本国民に知らせた。「日本国は救われた」と。このあともほかの弟子(研究員)たちも引き連れて三度、福島第一原発正門前に到達して随時、放射線量を正確に測った。口はばったい言い方だが、あの時の私たちは、一八三七(天保八)年二月、大阪で決起した大塩平八郎中斎(ちゅうさい)一門の覚悟と同じだった。「とにかく大事故の現場に行って、自分の目で真実を見極めなければ。国家と国民の存亡の危機に際しては我が身を献げなければ」の一心だった。これらの事績(じせき)の記録と報告はすでに数冊の本にして出版している。

 

 どんな人にとっても目の前の日常の逃げられない生活の苦労がある。石井君にも私にもある。それでも誠心誠意、緻密な真実の福澤諭吉研究を、一〇年をかけて石井利明君がやりとげ、書き上げてくれて、私は心底嬉しい。私が全編にわたってしっかり朱筆を入れたので、私、副島隆彦との共著と考えてくださっていい。

 

 日本人は、真に日本国の偉人福澤先生の実像と学門の高さの真実にいまこそ触れなければ済まない。万感の想いをもって本書推薦の辞とする。

 

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はじめに

                                    石井利明

 

 福澤諭吉は世界基準(ワールド・ヴァリューズ)で評価すべき人物である。

 

 この一点において、今までの、数多ある福澤諭吉の人物評伝は片手落ちである。

 

 このことは、世界史と日本史が学問分野で分かれているための構造的な問題である。江戸末期から明治維新に活躍した人物や起った事象を真に理解するには、西洋史、中国史、日本史に橋を架けなければならない。

 

 しかし、市井の学者たちには、この橋が架けられない。だから、書くものがつまらない。事実に肉薄できない。ここに、歴史学者ではない石井利明が、10年の歳月を費やしてたどり着いた考えをまとめた、この本の大きな意義がある。

 

 慶応義塾大学で学んだ卒業生たちは、まずは、この本を読んで世界基準の福澤諭吉の偉大さを理解して下さい。

 

 福澤諭吉の人生のハイライトは、日本を属国の一つとして扱う英国に対抗して、勃興する新興大国であるアメリカの自由思想と、アメリカ革命に深く関わったフリーメイソンたちを自分たちへの支援勢力とした。福澤諭吉は、フリーメイソンたちと手を携えて、日本国が、着実に自立してゆくために知識、思想、学問で闘い続けた。ここに福澤諭吉の生涯の大きな意義がある。この大きな世界基準の枠組みが理解できれば、福澤諭吉の一生が大きく理解できる。と同時に、フリーメイソンに対する、我々日本人の理解が、いかに表層的で浅はかなものであったのか、も理解できる。福澤が生きた19世紀のフリーメイソンは、断じて、闇の勢力などではない。それは間違った理解だ。

 

 福沢諭吉は、生涯にわたって自らが唱えた日本国の「自立自尊」の道のど真ん中を歩んだ人物である。こんな日本人は、福澤の後にも先にも居ない。後にも先にもいないということは、副島隆彦氏が提唱した「帝国・属国」関係が、それだけ厳しいことの現れだ。

 

 この厳しい現実は21世紀に生きる、我々日本人が現在直面している大きな課題である。福澤諭吉の生涯を正しく理解することは、日本国がこれからどのように歩むべきかの大きな道標になる。

 

=====

 

福澤諭吉フリーメイソン論 大英帝国から日本を守った独立自尊の思想

 

推薦文 副島隆彦 

 

はじめに 

 

第一章 世界規模のフリーメイソン・ネットワーク

 

●諭吉の父、福澤百助

●諭吉が憎んだ幕藩体制は親の敵

●福澤諭吉の先生たち

●攘夷論者の野本真城から、開国派の白石(しらいし)照山(しょうざん)へ 

●中津藩の蘭学研究 

●オランダ語の化物、前野良沢(まえのりょうたく) 

●『解体新書』翻訳の真相 

●長崎出島のカピタン(オランダ商館長)たち 

●日本に来た最初のフリーメイソン 

●日本を開国しようとした田沼(たぬま)(おき)(つぐ) 

●開国和親派と攘夷主義の暗闘

 

第二章 長崎出島と幕末の開国派ネットワーク

 

●開国か攘夷か、揺れる中津藩 

●黒船来航で攘夷に傾く世論 

●長崎出島と密貿易の巨大利権 

●諭吉もスパイとして長崎に送り込まれた 

●大坂、緒方洪庵の適塾時代 

●日米修好通商条約と尊王攘夷 

●アヘン戦争の本当の原因 

●アヘン戦争と幕末維新の共通性 

 

第三章 ユニテリアン=フリーメイソンとアメリカ建国の真実

 

●渡米を熱望した諭吉 

●東アジアの貿易戦争で大英帝国を破ったアメリカ 

●諭吉のアメリカ行きを支えた人たち 

●ジョン万次郎の帰国とペリー来航 

●万次郎を育てたユニテリアン=フリーメイソン 

●ユニテリアン、そしてフリーメーソンリーとは何ものか? 

●アメリカ独立革命を戦ったのはユニテリアン=フリーメイソン 

●諭吉が理解したアメリカ建国の真実 

 

第4章 文久遺欧使節の諭吉とフリーメイソンの関係

 

●アメリカから帰国し、幕府に出仕 

●文久遺欧使節としてヨーロッパへ 

●フランスでの諭吉とフリーメイソン 

●英国での諭吉とフリーメイソン 

●諭吉、ロシアでスパイにスカウトされる 

 

第5章 攘夷の嵐を飲み込む大英帝国の策謀

 

●攘夷派の動向と一八六三年の福澤諭吉 

●下関事件と薩英戦争 

●文久三年の政治状況 

●一八六四年の福澤諭吉 

●四カ国連合艦隊下関砲撃 

●一八六五年からの福澤諭吉 

●第二次長州征伐の真実と諭吉の対応 

 

第6章 明治維新と慶応義塾設立

 

●一八六七年、幕府最期の年の福澤諭吉 

●福澤塾の移転と慶応義塾の誕生 

●戊辰戦争と幕府内部のイギリス勢力 

●日本の自立に必要なものは経済力 

●『学問のすすめ』刊行 

 

第7章 福澤諭吉と宣教師たちの本当の関係

 

●福澤諭吉とユニテリアン医師・シモンズ 

●宣教師A・C・ショーの正体 

●半開の国と定義された明治日本 

●福澤諭吉が尊敬したフリーメイソン、ベンジャミン・フランクリン 

 

第8章 日本の独立自尊と近代化のために

 

●日本の中央集権化に対抗した福澤諭吉 

●西南戦争は反逆ではなく、明治政府の内戦 

●交詢社設立の真の目的とは? 

●国際社会に認められる文明国の条件 

●憲法草案と明治一四年の政変 

●息子二人のアメリカ留学 

●ユニテリアン教会の宣教師ナップの招聘(しょうへい) 

●ユニテリアン教会の修道院として始まったハーヴァード大学 

●慶応義塾とハーヴァード大学の連携と大英帝国からの独立自尊の大戦略 

●アメリカの変質と、その後の福澤とユニテリアンの関係 

●晩年の福澤は帝国主義の思想を持っていたのか? 

 

おわりに

 

福澤諭吉年譜

 

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おわりに

 

 本書『福澤諭吉 フリーメイソン論』の書名にギョッとする人は多いだろう。それでも、この本を手にとって読んでくださる方々に、私は、心からの敬意を表します。

 

 私の福澤諭吉研究は、二〇〇八年に、「これまで知られていない福澤諭吉の真実の姿を、石井くん、丹念に調べて描いてみなさい」と、私が師事している副島隆彦先生から言われたことから始まった。

 

 福澤諭吉という偉大なる人物を私ごときが簡単に扱あつかえるのか、大きな不安があった。しかし、私はこの大人物の、これまで日本社会でまったく知られていない、知られざる側面を大胆に表に出した。

 

 二〇〇一年から始まった福澤諭吉の脱亜入欧(だつあにゅうおう)論をめぐる「安川・平山論争」が続いていた。私の考えは本文でずっと説明したが、「日本の昭和のアジア侵略まで福澤諭吉のせいにするな!」である。一九〇一年まで生きた人であり、民間人であることを貫いた福澤諭吉に、その後の日本の帝国主義の責任まであるとする安川寿之輔と、彼の意見に同調する人々は元々精神の歪んだ人々である。

 

 安川氏に丁寧に反論して文献を挙げて説明し、論争に勝利した平山洋氏を私は支持する。と同時に、私は碩学(せきがく)丸山真男と、小泉信三が福澤諭吉を上品に「自由」と「愛」の体現者であったように描いたことにも反対する。福澤諭吉が生きた一九世紀(一八〇〇年代)の自由や愛は、西洋近代の啓蒙(けいもう)(エンライトンメント)を受けて光り輝きながらも、幕末以来の血生臭いものだった。この辺りの感覚が理解できないと福澤諭吉の実際の生涯はわからない。

 

 私は福澤諭吉を研究してみて、さらに彼を深く尊敬する。彼の表おもて裏うらのない、綺麗事や偽善とは対極にある生き方に感服した。こんな真っ正直な日本の知識人を私は、福澤諭吉以外に知らない。この余りの真っ正直さが、あれこれと誤解も招いたのである。

 

 これまで出版された福澤諭吉の自伝、評伝からは、真実の福澤諭吉の姿が伝わってこない。

ここに、学者ではない私が、福澤諭吉の評伝を書く意味がある。この本には、私がコツコツと自力で掘り起こした諸事実によって照らし出される真実の福澤諭吉が詰まっている。私は、真実の福澤諭吉の姿を皆さんになんとしてもわかってほしい。この明治開国期の日本の偉人の本当の姿を文献証拠から味わっていただき、国民的課題として大きく福澤先生を見直してゆきたい。福澤の人格形成とともにあったのはアメリカ、そしてヨーロッパのフリーメイソンの思想である。日本の学者たちは勇気がないから、福澤先生と三田会(みたかい)、フリーメイソンの関連をあえて遠ざけて無視しようとする。これでは、フリーメイソン思想と福澤諭吉の深いつながりから見える明治期の全体像がわからない。

 

 天主教(てんしゅきょう)(ローマ・キリスト教会。隠れキリシタンたち。その中心が耶蘇[やそ]会=イエズス会)の伝統とはまったく別にあったフリーメイソン思想の日本への伝来は、一七七〇年代に遡ることができる。フリーメイソン=ユニテリアン思想は、豊後(ぶんご)中津(なかつ)や大阪堂島の交易人の系譜の人である福澤諭吉にまで伝わったのだ。

 福澤諭吉とフリーメイソン組織の深いつながりを、こうして微力な私が掘り当て、捜し出したことで日本人が世ワールド・ヴァリューズ界基準の歴史、思想を理解する一助になるだろう。読者をこの知的冒険に誘いざなうことができるなら私の本望である。

 

 この本を苦心して書き上げる上でSエスNエヌSエスIアイ学門道場主催者の副島隆彦先生と電波社書籍部編集長の岩谷健一氏にたいへんお世話になった。この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。

  二〇一八年二月一〇日                        石井利明

 

(貼り付け終わり)


※私が学生時代に所属していましたサークル(地方学生の会)の先輩でお世話になっている森和也氏の書籍が発売されました。ぜひ手に取ってお読みください。 よろしくお願いいたします。

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