古村治彦です。

 

 北朝鮮問題については「融和」ムードの中にありますが、イランに関してはにわかに情勢が緊迫してきました。アメリカがオバマ大統領時代にイランと結んだ核合意を破棄し、イランに経済制裁を科すということになりそうです。イランはアメリカ以外にもヨーロッパの英独仏とも核合意を結んでおり、この多国間の枠組みからアメリカが離脱するということになりそうです。


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アメリカの離脱に対して、イランは反発し、英独仏は慎重な対応を求め、新たな合意を結ぶことを提案していますが、アメリカもイランもこれには乗らないという状況です。

 

 アメリカ(トランプ大統領)の言い分としては、イランとの核合意では核兵器の廃棄には程遠く、結局イランが核兵器を持つことを容認しているので、現在の合意は意味がない、ということです。アメリカは、イランに対して宥和的な態度(appeasement policy)を改めて、対決姿勢を取り、核兵器放棄まで推し進めるということになります。

 

 ヨーロッパの英独仏は、イランを宥めて戦争を起こさせないということを考えています。現在の情勢で、中東で戦争が起きるとすれば、イランとイスラエル、イランとサウジアラビアとの戦争ということになりますが、イランとこれらの国々の間にはいくつかの国々が存在します。イランとサウジアラビアはペルシア湾を挟んで対峙しています。


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 そうなると、戦争となると、地上軍同士の戦闘ではなく、戦闘機による攻撃や爆撃、ミサイルを撃ち合うということになるでしょう。もしくはお互いの近隣諸国の敵対勢力を使ってのテロ攻撃ということになるでしょう。イランはイスラエルに敵対しているヒズボラを支援し、イスラエルを攻撃させています。

 

 中東ではイスラエル、イラン、サウジアラビアがそれぞれ資金を出して、それぞれの近隣諸国の民兵組織などを支援して、代理戦争状態を作り出して、自国の安全と安定を図っているように見えます。そうした中で、イランが核武装すると、状況が一気に不安定化することになります。

 

 国際関係論の中の理論であるリアリズムで考えると、イランが核武装をしたら、既に核武装しているイスラエルとバランスを取ることが出来るので状況は安定するということになります。ネオリアリズムという理論を打ち立てた大学者ケネス・ウォルツは2012年にイランの核武装を容認する論文を発表しました。国際関係論分野の学者の多くが言ってみれば彼の弟子、孫弟子、曾孫弟子となるので、ウォルツの論文は衝撃を与えました。

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ケネス・ウォルツ(1924-2013年)

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国際政治の理論 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 3)


 しかし、アメリカはイスラエルとは「特別の関係」にあります。このことを指摘したのは、リアリズムの学者であるジョン・J・ミアシャイマーとスティーヴン・M・ウォルトです。彼らの著書『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』は大きな話題となりました。

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イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1


 バラク・オバマ前政権はイスラエルとの関係が悪く、イスラエルが反対していたのですが、イランとの核合意を締結しました。イスラエルは自国内には800万程度の人口しかなく、国土も狭いのですが、国外のユダヤ人の物心両面からの支援を受けて存続している国です。また、核武装をしているというのが抑止力となっています。ですから、中東各国が核武装することは国家存続の危機と捉えます。

 

 現在のアメリカの外交政策で言えば、イスラエル重視に転換しているので、イランに対しての姿勢が厳しくなります。北朝鮮に対してと同じように、「完全な、検証可能な、逆戻りできない非核化」を求めることになります。この原則をアメリカは敵対する可能性がある国々に圧力をかけて守らせるという姿勢を取ることになります。

 

 北朝鮮とイランの非核化を行った後は、それぞれ中国とロシアに任せてアメリカは退くということになるのだと思います。しかし、この非核化までに道のりが平坦ではなく、両国がアメリカの意向に完全に従って、ほぼ無条件降伏するという形にならない場合には、爆撃や戦闘が行われる可能性があるということになります。

 

 楽観主義だけでは状況を大きく見誤ることもあります。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「米、イラン核合意離脱=「最高レベル」の制裁実施へ-北朝鮮や原油取引に影響も」

 

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050900129&g=prk

 

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は8日、ホワイトハウスで演説し、2015年に欧米など主要6カ国とイランが結んだ核合意から離脱すると発表した。合意維持を求めてきた欧州諸国との間に深刻な亀裂が生じかねない。イランは核合意に留まる意向を示したが、米国による制裁復活に今後対決姿勢を強め、中東情勢が緊張する事態に発展する可能性もある。

 

 トランプ氏は演説で、核合意を「一方的でひどい合意だ」と批判。「現在の合意の腐った仕組みでは、イランが核兵器を開発することを阻止できない」と主張した。合意で解除された制裁を再発動し、「最高レベル」の経済制裁をイランに科す方針を示した。追加制裁も検討しているもようだ。

 

 また、トランプ氏は、北朝鮮との核交渉を念頭に「きょうの措置は重大なメッセージだ」と強調した。「欠陥がある」と非難するイラン核合意を否定することで、6月初旬までに開催予定の米朝首脳会談でも「完全な非核化」の実現で妥協しない構えを示す狙いがある。

 

 トランプ氏は17年10月、核合意は米国の国益に見合っておらず、「イランは合意を順守していない」と認定。今年1月には、制裁の再発動は見送る一方、弾道ミサイル開発制限が盛り込まれていないことなど「合意の欠陥」の修正を欧州諸国に求め、今月12日までに修正できなければ離脱すると警告していた。

 

 トランプ氏は今回の離脱発表で「イランの核の脅威に対する包括的な解決策を見いだすために同盟国と協力していく」と強調した。だが、フランスのマクロン大統領らの説得を受け入れずに合意離脱に踏み切った経緯があり、実効性のある措置を講じることができるかは不透明だ。

 

 イラン産原油輸入目的でイラン中央銀行と取引する外国金融機関などへの制裁は核合意で解除されていたが、最大180日間の猶予期間の後に再発動される。日本や欧州の原油輸入に影響を及ぼす可能性がある。(2018/05/09-09:54

 

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●「イスラエル軍がシリアのイラン拠点攻撃=9人死亡、米合意離脱で緊張」

 

5/9() 8:55配信 時事通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180509-00000032-jij-m_est

 

 【エルサレム時事】在英のシリア人権監視団によると、イスラエル軍は8日、シリアの首都ダマスカス近郊の武器庫やロケットランチャーをミサイルで攻撃した。

 

 武器庫などはイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」のものとみられ、少なくとも9人が死亡したという。

 

 トランプ米大統領は攻撃直前、イラン核合意からの離脱を発表し、イランが反発。離脱を支持するイスラエルとイランの間でも緊張が高まっている。

 

 トランプ大統領の発表に先立ち、イスラエル軍は「シリアにおけるイラン軍の変則的活動を確認した」と表明。イランがシリア国内の拠点から、シリアと接するイスラエル北部の占領地ゴラン高原に攻撃を加える恐れがあるとみて、地元当局に避難施設を開放するよう指示した。 

 

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●「イラン核合意」

 

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050800189&g=tha

 

 イランの核開発をめぐり米国と英独仏、ロシア、中国の主要6カ国が2015年7月、イランと最終合意した「包括的共同行動計画(JCPOA)」。イランによる濃縮ウラン保有や遠心分離機稼働数を大幅に制限し、核兵器開発を一定期間難しくすることが柱で、見返りに欧米がイランに科していた制裁の解除を定めた。16年1月に合意履行が始まった。(ワシントン時事)(2018/05/08-06:34

 

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●「<イラン>核合意修正拒否 仏大統領「新提案」協議要請に」

 

4/30() 22:10配信 毎日新聞

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180430-00000058-mai-int

 

 【パリ賀有勇】フランスのマクロン大統領は4月29日、イランのロウハニ大統領と電話で協議し、2015年のイラン核合意を補う「新たな合意」について協議したい意向を伝えた。核合意の存続に向けてイラン側に直接働きかけた形だが、ロウハニ師は核合意の修正には応じない姿勢を崩さなかった。

 

 仏大統領府の発表によると、電話協議は1時間を超えた。マクロン氏は、現行の核合意を尊重することを確認するとともに、自身がトランプ米大統領に提案した「新たな合意」に盛り込まれた弾道ミサイル開発などに関する項目についても、協議を行いたい意向をロウハニ師に伝えた。

 

 だが、イラン側にとっては、国連安保理常任理事国(米英仏中露)にドイツを加えた6カ国と結んだ現在の核合意よりも不利な条件を受け入れることになる。AFP通信によると、ロウハニ師は「いかなる形であっても交渉しない」と述べて、修正を拒否した。

 

 マクロン氏は24日、合意からの離脱を示唆するトランプ氏と会談し、弾道ミサイル開発への規制▽核開発制限の期間延長▽シリアなど周辺国への影響力行使阻止--を盛り込んだ「新たな合意」を目指すことを提案。ミサイル開発が合意対象に含まれていないことなどに不満を抱くトランプ氏に配慮し、現行の核合意を実質的に修正する内容を示した。

 

 トランプ氏は5月12日を核合意の見直し期限としており、フランスとともに核合意に加わったドイツと英国も「新たな合意」の実現を目指す方針で一致している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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今の巨大中国は日本が作った


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真実の西郷隆盛

 
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迫りくる大暴落と戦争〝刺激〟経済