古村治彦です。

 

 今週末、2日間にわたり、アメリカのマイク・ポンぺオ国務長官が北朝鮮の首都ピョンヤン(平壌)を訪問し、北朝鮮政府高官たちと複数回にわたり、会談を行いました。金正恩朝鮮労働党委員長とは会談を行いませんでした。

 

 予定の会談が終了し、北朝鮮外務省は声明を発表し、会談は「アメリカが一方的に非核化を求めるばかり」で、先月シンガポールで開催された米朝首脳会談の「精神を裏切る」ものとなり、「残念な」ものとなったと批判しました。また、非核化に向けた北朝鮮の意向は首脳会談後に比べて弱まっているとも述べました。

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 一方、ポンぺオ国務長官は会談は生産的で、両方にとって進展があった、と記者団に述べました。北朝鮮外務省とポンぺオ長官の会談後の発言内容は全く違ったものとなっています。

 

 アメリカや世界各国では、米朝首脳会談、共同声明発表後から、「中身に具体性がない」「アメリカが譲歩しすぎて、北朝鮮に有利すぎる内容になっている」という批判が出ていました。それに対して、トランプ政権では細かい内容は今後詰めていくということで、早速実務者協議ということになりました。

 

 交渉事は、まずお互いの最大の利益(自分の利益が100で、相手の利益は0)のところを言い合い、そこから始まるものです。日本ではあまり値段交渉はしませんが、外国旅行で、値段交渉をして、慣れないことで疲れてしまったという経験をした人は多くいると思います。それと同じで、ポンぺオ長官はまずはアメリカの最大の利益となるところを述べたものと思います。これが実現できれば最良の結果ですが、その可能性は低いということは分かっていて述べたものと思います。

 

 北朝鮮としてはそれが分かっていて、それで牽制のために、強い言葉でアメリカ側を批判したということになります。非核化の意向が弱まった、などという言葉を使うのは強すぎるかなと思いますが、お互いが非難し合っても最後は米朝首脳会談を実現できたという実績があるので、思い切った表現を使ったものと思われます。

 

 アメリカとしては無条件の安全の保証を北朝鮮に与えることは既に合意し、トランプ大統領も署名しているので、北朝鮮は攻撃される心配はありません。そこから更に北朝鮮の利益をということになると、経済制裁の解除にとどまらず経済支援(アメリカはこの条件を飲んでおいて日本に出資させるでしょう)、しかも北朝鮮の政治体制や経済体制に口を出さないことを求めることになるでしょう。しかし、現体制を全く改革することなしに外国企業が北朝鮮に進出することは難しいです。やはり、人権状況が悪く、公開処刑や強制収容所が存在している以上、株式会社が進出した場合に、北朝鮮に対して批判的な株主や消費者たちから訴訟を起こされる可能性もあります。また、資本主義経済体制ではなく、所有権や税制も他国よりも確立しているのか不明な状況では進出しにくいということもあります。

 

 北朝鮮としては経済制裁の解除をまずは何よりも優先したいところです。非核化の交渉はぶらかし引き延ばしをして、その間に外国からの、特に韓国、中国、ロシアからの資本の流入を行って、できれば「核兵器を保有したまま」で経済支援を得たい、ということになるでしょう。しかし、これでは米朝共同宣言の条項に反することになります。ですから、非核化の交渉を引き延ばして、非核化を餌にして、どんどん追加の条件を付け加えたいというところです。しかし、アメリカとしては、非核化の道筋、スケジュールと方法が明確に決定されないうちは経済制裁を解除しないということは譲れない線ですから、ここで平行線になります。しかし、ここは北朝鮮も思案のしどころです。アメリカの求める方法とスケジュールで、完全に核兵器とミサイルの廃棄を行って、「証明書」をアメリカに発行してもらうことで、外国資本の流入の質と量が変わってくると思います。「非核化」を実現したというアピールになって、イメージの改善につながります。そうすれば、及び腰の外国企業も北朝鮮への進出を検討することになるかもしれません。

 

 実務者協議はまずは始まったばかりですから、これからどうなっていくか分かりませんが、アメリカはもう攻撃をしないと言っているので、北朝鮮としてはこの点を利用して、様々な方法で交渉を引き延ばし、自分に有利な条件を獲得しようとしてくるでしょう。アメリカはどこまで原理原則を明確にして臨むことになりますが、なかなか困難な道のりになるでしょう。北朝鮮には何より、「アメリカの攻撃を受けない」「中国と韓国の強力な後ろ盾がある」というカードがあるのですから。

 

(貼り付けはじめ)

 

北朝鮮はポンぺオとの会談を「残念な内容」と述べた(North Korea says talks with Pompeo 'regrettable': report

 

エイヴェリー・アナポール筆

2018年7月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/international/395925-north-korea-says-talks-with-pompeo-regrettable-report

 

 

北朝鮮はマイク・ポンぺオ国務長官との会談を批判し、土曜日に終了した2日間にわたる複数回の会談は「残念な内容」であったと主張した、と報じられている。

 

北朝鮮外務省の名前を明かしていない報道官は声明の中で、アメリカが北朝鮮に対して一方的に非核化を行うように圧力をかけ、先月ドナルド・トランプ米大統領と金正恩委員長との間で行われた米朝首脳階段の「精神を裏切るもの」だと批判した。

 

北朝鮮外務省の声明では、ポンぺオ長官と北朝鮮の政府高官たちとの複数回の議論は「懸念が残るもの」となっており、北朝鮮政府としては合意締結後に比べて核兵器を放棄するという考えが持てなくなっているとしている。

 

ポンぺオ長官は2日間にわたる議論について、北朝鮮政府とは異なった考えを示した。ポンぺオ長官は記者団に対して、会談は「生産的」で「誠意をもって行われた」ので、「大きな進展があった」と述べた、とAP通信は伝えている。

 

国務省のヘザー・ニュート報道官はツイッター上で、「ポンぺオ国務長官は記者団に対して、“我々は重要な諸問題のほぼすべてを進展させた”と語った」と述べた

 

今回の議論は、トランプ大統領と金委員長が共同宣言に署名して数週間後に行われた。共同宣言は、朝鮮半島の非核化と引き換えにアメリカが北朝鮮に対して無条件の安全の保証を与えるという内容であった。トランプ大統領に対して批判している人々は、合意が北朝鮮にあまりに有利な内容になっており、アメリカの安全が十分に保障されていないと主張している。

 

米朝合意には具体的な内容が含まれていなかった。今週末のポンぺオ国務長官の平壌訪問は合意の具体的な内容について議論することを目的としていた。ポンぺオは複数の北朝鮮の最高幹部と会談を持った。その中には金委員長の右腕であり北朝鮮の政府高官である金英哲も含まれていた。しかし、訪問中、ポンぺオが金委員長と会談を持つことはなかった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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