古村治彦です。
今回は、アメリカ政治の重要論文をご紹介します。
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ランド・ポールにとっての秘密兵器:ヒラリー・クリントン(Rand Paul's Secret Weapon: Hillary Clinton)
もしヒラリーが2016年の大統領選挙出馬を早めに決定する場合、民主党支持と支持政党を持たない有権者たちが共和党の予備選挙に参加することになるだろう。そして、彼らはケンタッキー選出の連邦上院議員を支持するだろう。
ピーター・ベイナート(Peter Beinart)筆
2014年4月9日
ジ・アトランティック(The Atlantic)誌
http://www.theatlantic.com/politics/archive/2014/04/rand-pauls-secret-weapon-hillary-clinton/360409/
私はこのシリーズに関連する論稿をいくつか掲載してきた。私の主張は「ランド・ポールが共和党の予備選挙に勝利し、大統領選挙候補になるだろう。笑わないで欲しい」というものだ。
ランド・ポール
私はこれまで掲載した論稿の中で、ランド・ポールは、父親であるロン・ポールが成功したアイオワとニューハンプシャーでの予備選挙の戦い方と構造を受け継ぐことができると書いた。これは彼のライヴァルたちにはないものである。私は、ランド・ポールが共和党に高額の献金を行う支持者たちとインターネットで献金する少額の献金者たちの両方から多額の献金を集める能力があると書いた。そして、私は、予備選挙が早く行われる各州に住む共和党支持者たちは、ランド・ポールを急進的なリバータリアンではなく、保守本流であると考えているということも書いた。
ランド・ポールが持つその他の大きな、そして知られていない強みというものがある。それは、ヒラリー・クリントンの存在である。物事は常に変化し続けるが、2016年の民主党の大統領選挙候補者は、現職の大統領が出ない予備選挙の中で最も競争がない予備選挙で選ばれることになるだろう。ヒラリー・クリントンに挑戦する人物たちは、バーニー・サンダースやブライアン・シュバイツアーのようなドンキホーテのような人々になるであろう。挑戦者たちは政治的基盤や多額の献金を集める能力を持たない人たちとなるだろう。
ランド・ポールにとっては、これは僥倖となる。民主党支持と支持政党を持たない有権者たちの多くが共和党の予備選挙に参加することになるだろうからだ。彼らはヒラリーに対する反対のために何か行動を起こしたいと考え、その場所が共和党の予備選挙になる。そして、流れてきた有権者たちのほとんどがランド・ポールに投票することになるだろう。
経済における政府の役割というテーマに関して言うと、ランド・ポールの考えは民主党支持、もしくは民主党支持に近い有権者たちの考えとは真逆となる。しかし、共和党内の彼のライヴァルたちとも反対なのである。そして、ランド・ポールは、ライヴァルたちとの間で、政府によるスパイ活動、軍事介入、収容所への収容といった重要な諸問題についての考えが異なるのである。そして、ランド・ポールの考えは、民主党員の多くにとって受け入れられるものであるばかりでなく、支持できるものなのである。例えば、NSAの調査に関して言えば、ランド・ポールは、ワシントンにいる民主党の政治家たちの多くに比べて、リベラルなグラスルーツグループの活動家たちの多くの考えを代表していると言える。ランド・ポールは、ヒラリー・クリントンに比べて、米軍を死地に送り込むことを躊躇している。最近、公開された演説の中で、ランド・ポールは、ディック・チェイニーがイラク戦争を推進したのは、関係するハリバートン社に利益をもたらすためであったと述べている。
リベラルな人々が現時点でランド・ポールが彼らが支持できる考えを持っていることを知らないとしても、2016年までには知ることになるだろう。民主党の予備選挙が退屈なものとなると、マスコミは共和党の予備選挙に多くの時間を割くことになるだろう。ランド・ポールはライヴァルたちから、異端とも言うべき国家安全保障の考えに対して容赦ない攻撃を受けることだろう。しかし、彼の考えが明らかになることで、リベラルな民主党員や支持政党がない有権者たちから共感を得ることができるだろう。
最良のモデルとなるのが2000年の大統領選挙だ。この時、多くの点で典型的な共和党の政治家であるジョン・マケインが民主党員たちを刺激し、彼らの指示を集めたのである。マケインは選挙資金制度の改革を主張し、ジョージ・W・ブッシュの富裕層向けの減税計画を批判した。共和党内部のエリートたちがマケインを批判すればするほど、民主党員と支持政党を持たないリベラル派はマケインが正しいことをするだろうと考えるようになった。2000年のニューハンプシャーでの予備選挙に参加した有権者のうち、3分の1を占めたのが支持政党なしの有権者であった。彼らはマケインを支持しており、ブッシュとの差は42ポイントにもなった。ミシガン州の場合、それまで共和党の予備選の参加者の3割ほどが民主党支持や支持政党なしの有権者であったが、2000年の予備選では50%以上の参加者が民主党支持や支持政党なしの有権者であった。そして、彼らの第+がマケインを支持した。
2000年のジョン・マケインと2012年のランド・ポールとの間には相違点があるのは当然のことだ。マケインは大統領本選挙に出馬しても勝利する可能性がある強力な候補者になると考えられていた。共和党の既存の支持層にとってマケインの快進撃を止めることが難しかった。しかし、最終的には彼を候補者にすることを阻止することができた。ランド・ポールは対照的に、共和党版のジョージ・マクガヴァーン(George McGovern、1922~2012年)だと考えられている。ランド・ポールは経験不足のイデオローグであり、クリントンに負けてしまうだろうと考えられている。しかし、ランド・ポールがマクガヴァーンと違うところは、共和党内部に熱烈な支持者たちを一定数持っている。ティーパーティー運動が盛り上がったこの時代、15年前に比べて、共和党内部のエリートたちの力は弱まっている。
数年前から、専門家たちは、「帝国主義的な道徳を強制する右派(imperialistic,
morally coercive right)」に対抗する「リベラル・リバータリアン連合(liberal-libertarian alliance)」について研究し始めている。これまでのところ、このリベラル・リバータリアン連合というテーマは主要メディアで取り上げられず、個人のブログに書かれている程度である。しかし、2016年になれば、リベラル・リバータリアン連合が主要メディアに取り上げられることになるだろう。そして、このリベラル・リバータリアン連合の存在が、常識が間違っていることを示す理由なのである。ランド・ポールは、2016年の大統領選挙の共和党候補者となれる人物なのである。
(終わり)
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