古村治彦です。

 

 北朝鮮に関して、韓国の三星証券が報告書を出し、「北朝鮮は将来、自動車とITの生産拠点となり、かつ北東アジア地域の物流センターとなる」と結論付けているそうです。確かに地理的条件を考えると、韓国、日本、中国、ロシアとG20を構成する世界でも経済力の高い国々に囲まれており、それだけでも可能性を秘めているということが分かります。

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 韓国とは言葉の障壁はほぼない(方言や同じ物事を違う単語で言い表すなどで多少違うとは思いますが)ので、韓国にしてみれば、識字率が高く安い労働力や安い土地を利用して生産工場を数十キロ先(日本で言えば隣の町や県くらいの感覚)で確保できるという点で魅力的だと思います。三星証券の報告書の表紙には、朝鮮半島を虎に見立てたデザインがありますが、政治体制ではなく、経済体制で「南北合同」が実現すれば、中国、日本、何する者ぞ、という期待と気概が込められているように感じられます。

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 北朝鮮経済が「離陸」するためには外国資本による投資が必要不可欠です。特に韓国や中国からの投資は不可欠です。韓国や中国の企業は生産拠点として北朝鮮を見ているでしょうし、韓国からすれば、中国と陸路でつながるということも想定しているでしょう。しかし、北朝鮮のバラ色の未来は、今はまだ「絵に描いた餅」にすぎません。

 

 下の記事では、イランの事例が取り上げられています。イランではアメリカと核開発の合意を結んだ後に、経済制裁が緩和されて外国からの投資が増大するという期待が高まっていたそうですが、実際は期待以下で失望が広がっているのだそうです。イランに対する不安から外国企業が及び腰になったということです。

 

 石油輸出国であるイランですらこうなのですから、北朝鮮はもっと厳しいと考えねばなりません。外国からの投資を得るには、それこそ、アメリカがずっと求めている「完全な、検証可能な、後戻りできない非核化」を行い、その証明を得ることが必要です。

 

北朝鮮の非核化の証明はアメリカ政府にとってはアメリカ国民に対して「仕事をしています」という証明書になりますが、北朝鮮政府にとっては「核兵器に関して世界中にご迷惑とご心配をおかけしましたが今は一切持っていません」という証明書になって、この証明書が出て初めて外国企業も投資を検討できる、検討することを公表できるということになります。簡単に言ってしまえば予防注射を受けましたという証明書のようなものです。

 

 鄧小平が主導した中国の改革開放も外資導入が積極的に進められました。外資優遇と制度の明確化と厳格化が進められた訳ですが、北朝鮮もこれが必要となります。そのためには現在の体制ではまだ不安があります。少しずつでも変わりました、西洋諸国とまではいきませんがビジネスがしやすい環境になっています、ということを実現し、アピールしなければなりません。

 しかし、これが一番難しいことになります。北朝鮮の奇妙なスターリン主義的共産主義体制で、果たしてこんなことが出来るのか疑問に思います。外国からの投資や人の流入によって、北朝鮮人民に対して良い影響、悪い影響が浸透していくでしょう。金王朝とも呼ばれる個人崇拝の体制が継続できるのでしょうか。中東や中央アジアにも世襲制個人独裁体制の国々もありますが、現在のような個人崇拝と強制収容所、国民の貧困が共存している国はほぼないと言っていいでしょう。金一族が王族であるならば、個人崇拝も良いと思いますが、曲がりなりにも共産主義を標榜するということになると、そこに建前と本音のギャップが出て来て、そこから北朝鮮の変化が始まるということも考えられます。経済面においてのみ人々の自由な活動を最大限に守るということになれば、人々の生活が豊かになっていき、金正恩体制への支持が揺るがないということも考えられますが、経済活動の自由を得た人々がそれで満足し、それ以上を求めないということも考えにくいのです。

 

 朝鮮半島が統一して「虎」となるという理想が実現すればどんなに良いだろうとは思います。しかしその虎が、北朝鮮の持つ核兵器と韓国の持つ経済力が合同してできたものとなってしまってはいただけません。あくまで核兵器がない状態で、経済発展が出来るような状態になること、北朝鮮でも経済改革が進み、スターリン主義的な個人崇拝が緩和されることでの南北合同による経済発展であればどんなに良いだろうと思います。しかし、現在の状況では「虎」ではなく、「捕らぬ狸の皮算用」の狸になってしまっていると言わざるを得ません。

 

(貼り付けはじめ)

 

北朝鮮がいかにして隠者の王国から工場地帯に変化する可能性があるか(How North Korea Could Go From Hermit Kingdom to Factory Hub

―新たに発表された報告書で、経済制裁が解除された北朝鮮がいかにして豊かになるかについて詳細な見通しが示されている

 

エリアス・グロール筆

2018年6月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/06/28/how-north-korea-could-go-from-hermit-kingdom-to-factory-hub/

 

今月、シンガポールにおいて、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の指導者である金正恩委員長との間で首脳会談が行われた。トランプと金正恩がこれまで数十年行き詰っていた問題を解決し、世界で最も閉じられた経済を開放することができるという希望が大きくなっている。

 

このような考えは頼りない蜃気楼のような夢ではない、と北朝鮮の専門家たちが英語で発表した新しい報告書の中で述べている。韓国の三星証券による研究は、「米朝首脳会談と国際的な対北朝鮮経済制裁の終了によって、外国からの膨大な資本が北朝鮮に流入することで北朝鮮は隠者の王国から経済大国に変化する可能性がある」と結論付けている。

 

報告書で専門家たちは「韓国が国富と工業化のノウハウを北朝鮮の人的、物的資源と混合することで、南北両国の経済は長期間にわたり飛躍的進歩(quantum leap)を遂げることが可能となる」と書いている。

 

報告書は約200ページで、海外資本がいかにして北朝鮮の疲弊したインフラを復活させるか、鉱山業を強化するか、自給自足経済である北朝鮮が製造業と流通運輸の中心となるかについての青写真を提示している。北朝鮮は世界でも有数の経済力を持つ国々に囲まれているという地理的利点を持っている。三星証券の報告書のタイトルは、アメリカの北朝鮮の核兵器開発プログラムに対する「完全な、検証可能な、後戻りできない破壊(complete, verifiable, and irreversible dismantlement)」から借用し、「完全な、目に見える、後戻りできない繁栄(complete, visible, irreversible prosperity)」となっている。

 

報告書で検討された北朝鮮の可能性の実現にはいくつもの障害を乗り越えることが必要となる。まずは北朝鮮に対する多国間での経済制裁、不正なことが行われる経済に対して企業が参入することをためらってしまうこと、経済のほぼすべての面に対する国家の過剰な介入といったものが障害として挙げられる。

 

ワシントンにあるタカ派のシンクタンク「ディフェンス・フォ・デモクラシーズ」の経済制裁専門家ジョナサン・シャンザーは次のように語っている。「2016年にイランはアメリカとの間で核開発をめぐる合意を結び、その一環で経済制裁が緩和された。しかし、それでも海外からの投資は増えず、イランは失望している。イランの例は北朝鮮にも当てはまる」。

 

イランは、サイバー攻撃、人権侵害、中東における代理戦争のような様々な不正な活動を続けていた。そのためにイラン政府と合意内容の立案者たちが考えたようなレヴェルの海外投資を受けることはできていない。北朝鮮経済はイラン経済に比べてはるかに世界経済とのつながりを欠いており、海外からの投資を期待することはイランよりも難しいものとなるであろう。

 

シャンザーは「ならず者国家とビジネスを行う上での評判、法律、経済制裁などのリスクを何とかクリアできると外国企業が考えると想像するのは空想に過ぎる」と語った。

 

米朝首脳会談によって、長年閉じられた北朝鮮経済が再び復活する用意が出来るという希望が出て来ている。トランプ大統領は、アメリカとの緊張緩和によって、北朝鮮は「豊かに」なるだろうと約束した。また、北朝鮮の海岸線の不動産開発の可能性について金委員長に熱弁した。

 

トランプ大統領は金正恩委員長との首脳会談の後の記者会見で次のように語った。「北朝鮮には素晴らしいビーチがたくさんある。北朝鮮がミサイルを打ち上げるたびに素晴らしいビーチが映像に映るのをみんな見ているだろう。私は言ったんだ、“若者よ、君の国の海岸線の眺望に目を向けたまえ。最高級のコンドミニアムを建設したら素晴らしいじゃないか”と」。

 

金委員長自身も自分の政権では現在よりも少し開かれた経済というアイディアを受容する可能性があることを示す姿勢を示している。今年4月、金委員長は朝鮮労働党中央委員会で演説し、その中で「新しい戦略ライン」について示唆した。新しい戦略ラインは、核兵器を最重要視する姿勢から経済発展を最重要視する姿勢に変化するというものだ。

 

金委員長がシンガポールから帰国した直後、朝鮮中央テレビは45分間の驚くべきドキュメンタリー番組を放送した。このドキュメンタリー番組は金正恩委員長の経済改革を宣伝するものとなった。金委員長はシンガポール中心部のきらびやかな場所を歩き、代表団を引き連れてシンガポールのにぎやかな港をまわる姿が放映された。

 

三星証券の報告書は、北朝鮮が経済開放を進めれば持つであろう有利な点を強調している。北朝鮮は経済力を持つ国々に囲まれている。天然資源、特に地下資源が豊富にあり、識字率と技能の高い労働力が存在する。

 

最初に、海外からの資本はいわゆる経済特別区に流れ込んでくるだろう。金正恩政権はこの地区で実験的に限定的な経済自由化を行っている。経済特別区には金一族の故郷である元山も含まれている。金正恩は元山に観光客向けの施設を建設するように命じた。第一段階では、海外投資は北朝鮮国内の疲弊した社会資本(インフラ)の再建に集中せざるを得ない。発電所、鉄道、港湾の修繕が行われることになる。

 

報告書は、開城工業地域といくつかの観光地はすぐに再開されることになるだろうとしている。開城工業地域は南北の国境地帯に広がった韓国との合弁の工業団地である。

 

しかし、このような第一段階では十分ではない。CIAの東アジア分析官を務めたウィリアム・ブラウンによる分析には「北朝鮮を製造業の中心地に変えるためには、根本的な経済的改革が必要となる」と書かれている。経済改革リストの上位に位置づけられる項目は、信頼される貨幣と財政金融システム、所有権、「物価、賃金、利率、交換レートなどの国家が決めた数字と市場が決めた数字の大きな乖離を埋める、それぞれの単一の数字」である。

 

ブラウンは、このような経済改革への努力を続けることで、北朝鮮は世界貿易機関(WTO)に加盟するための道筋を進むことが出来ると主張している。そうなると世界との間での交易が拡大し、三星証券の報告書にある見通しが実現する可能性もある。三星証券の報告書には、「北朝鮮は自動車とITの工場と北東アジア地域の流通センターとなる」と書かれている。

 

しかし、こうした見通しはアメリカ政府と北朝鮮政府が現在行われている交渉を進展させるということに依存している。このような希望は以前に出たこともあったが、消えていった。これまでの数十年間、北朝鮮とアメリカは、北朝鮮の武器開発プログラムに対する国際社会の懸念を解決する寸前まで進んだこともあったが、結局、北朝鮮政府が尻込みし、悪い行いを続けることになって終わってしまった。

 

マイク・ポンぺオ米国務長官は来週ピョンヤンを訪問する予定だ。アメリカの外交官たちはシンガポールで署名された共同宣言の曖昧な内容を具体化させようとしている。トランプ大統領は北朝鮮の核兵器廃棄について急速な進展を公言しているが、ポンぺオ国務長官は期待値を下げようとしている。ポンぺオはCNNに対して、交渉のスケジュールの進展について何も言及しなかった。

 

ポンぺオは日曜日にCNNに対して、「私たちは物事を進展させるためにプロセスを進めることを希望している」と述べた。“

 

トランプ政権高官は、北朝鮮に対する経済制裁は続けられるが、シンガポールで開催された米朝首脳会談から続く良い雰囲気によって外交関係が開かれることになると強調している。史上稀に見る孤立の期間を経て、金正恩はこれからロシアのウラジミール・プーティン大統領をはじめとする世界の指導者たちとの首脳会談を行うことが期待されている。

 

ロシア政府はロシア東部と北朝鮮をつなぐ天然ガスパイプライン建設計画を検討することになるだろう。このプロジェクトの実現可能性については三星証券の報告書の中で詳細にわたって検討されている。

 

ロシアからのパイプラインのような諸計画は、外交関係の樹立と経済の自由化が同時に起きるであろうという希望を促進している。しかし、実現するには長い期間が必要となる。

 

前出のシャンザーは「長期的に考えればこうした希望が実現する可能性はあるが、中期、短期では厳しいと考えている」と述べている。

 

シャンザーは続けて次のように述べている。「健全な思考力を持った財政金融の専門家がこうした希望が実現するなどと楽観視しているとは想像しがたい」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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