古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領はやはり厳しいところを手練手管で生き延びてきたビジネスマンだなと思わせる記事をご紹介したいと思います。

 

 『ワシントン・ポスト』紙時代にウォーターゲート事件をスクープし、そのことが映画にまでなった、ボブ・ウッドワード記者トランプ大統領とトランプ政権についての最新作が刊行されました。その本にはトランプ政権の悪口、ネガティヴな内容が満載のようです。

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 刊行前からマスコミにはその内容の一部がリークされて、報道されてきました。その中には、金正恩暗殺計画という話も出ていました。今年6月には米朝首脳会談を行い、トランプと金正恩はマスコミの前で、笑顔で握手を交わしましたが、一度は殺そうと思った人物と笑顔で握手をするというのは何とも凄まじい世界です。

 

 ウッドワードの本の中身のリークで、トランプ大統領らしいエピソードだと私が思ったのは以下の記事で紹介された、アメリカ国債をもっと発行せよ、という発言です。共和党の政治家や政策立案者たち、更にはリバータリアニズムの信奉者たちにとって、健全な財政、国を無借金状態で運営するということは無誤謬の原理ということになります。そのためには行政の効率化(行政改革)を行うべし、そうすれば減税にもつながるということになります。

 

 しかし、トランプ大統領は当時の経済アドヴァイザーであったゲイリー・コーンに対して、借金を返さずに、もっと国債を発行しなくてはと発言し、コーンを驚愕させた、というエピソードがリークされました。「トランプ大統領は経済オンチ」「国債について何もわかっていない」という批判の材料にしようという反対派の意図が見えます。トランプ大統領に対しては、民主党は反対党だから当然として、共和党の体制派、主流派も攻撃を行っていると考えられます。トランプ大統領は一般庶民のアメリカ国民にとっては良い大統領ということになります。しかし、エリート層や知識人層にとっては理解できない人物ということになります。

 

 アメリカ国債については、発行残高は約20兆ドル(約2200兆円)で、アメリカ以外での保有額は約6兆ドル(約660兆円)です。日本は中国とほぼ同額で1兆ドル(110兆円)を保有しています。

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ソース:https://toukeidata.com/kinyu/beikokusai_hoyuukoku.html

 

 本来であれば、このアメリカ国債保有を武器として、アメリカと交渉が出来るはずですが、なかなかそうはいきません。アメリカとの貿易で黒字を得ながら、それをアメリカ国債とアメリカからの武器購入に充てる、これが日本の置かれている状況です。

 

 トランプ大統領はそのことが分かっていないのか、分かっていながら完全に無視をして、日本を敵視しています。もっとアメリカから輸出を増やせ、アメリカから武器を買え、貿易黒字を減らせ、という要求をしています。対米貿易黒字が減少すれば、アメリカを支えることも難しくなっていきます。しかし、このような理屈をアメリカ国内に宣伝する訳にはいきません。ですから、黒字を減らせ、アメリカから何でも買えということを言うしかない、そしてそれを二国間交渉で強圧的にやらせようとしています。

 

 トランプ政権になって、プラスとマイナスがあります。どのようなことにもプラスとマイナス、光と影はつきものです。日本から見てのトランプ大統領はプラスよりもマイナスが多い、ということになれば、対米関係、対トランプ政権との付き合い方ももう一度よく考えて行かねばならないでしょう。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

連邦政府の借金を消し去るためのトランプの計画は紙幣を刷ることである:ウッドワードの本から(Trump's plan to help eliminate the federal debt was to print money: Woodward book

 

アリス・フォーリー筆

2018年9月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/406085-trumps-plan-to-help-eliminate-federal-debt-was-to-print-money

 

トランプ大統領は昨年、経済問題首席補佐官に対して、政府は借金を消し去るためにより多くの紙幣を刷るべきだと提案したと報じられた。これはボブ・ウッドワードの最新刊からの引用で明らかにされた。

 

ウォーターゲート事件でスクープを連発したヴェテラン、ウッドワードは新しい本『恐怖:ホワイトハウスのトランプ』の中で、アメリカ合衆国国家経済会議の当時の委員長ゲイリー・コーンはトランプ大統領に対して、大統領任期の第一期期間中に連邦準備制度理事会が金利の引き上げを行いたいと考えていると述べた、と書いている。この引用部分を『ビジネス・インサイダー』が最初に報じた。

 

トランプはコーンの発言に対して次のように答えた。「私たちは多額の借金をし、それを返さないで、国債を更に売ってお金を作るようにしなければ」。

 

コーンはトランプ大統領の返事に「驚愕」した。トランプの返事はアメリカ国債がどのようなものかについて「基本的な理解」がトランプには欠如していることを示しているということになる。

 

このやり取りが行われた当時、トランプは大統領選挙に当選したばかりでまだ正式に大統領に就任した訳ではなかった。そして、選挙戦期間中に自分の大統領在任期間8年でアメリカ政府の負債を消滅させると公約していた。トランプは国の借金の返済方法を提示したと報じられている。その方法とは「印刷機を動かす、紙幣を刷る」というものだった。

 

ウッドワードは本の中で、コーンはこのやり取りの後、より多くの紙幣を刷ることはインフレーションを引き起こすと考えられること、アメリカの財政健全性にとって悲劇的な結果をもたらす可能性があることを説明した、と書いている。

 

ウッドワードは「トランプが、アメリカ政府の国債がどのように機能しているのかを理解していないことは明確になった」と書いている。

 

今週火曜日、コーンは声明を発表し、ウッドワードの本の中で描かれている自分の姿は不正確であると述べた。彼はどの部分が不正確かということを特定しなかった。

 

コーンは『アクシオス』誌に寄せた声明の中で次のように述べている。「本書は私のホワイトハウスでの体験を不正確に描写している。私はトランプ政権での私の行った仕事に就いて誇りを持っている。私は大統領と経済政策はこれからも支持し続ける」。

 

ウッドワードの本の引用が報道されるようになってから、トランプはウッドワードを口汚く罵るようになっていると報じられている。

 

今週月曜日、ホワイトハウスはウッドワードの著作について「浅はかな」内容であり、法的手段も視野に入っていると発表した。トランプ大統領はウッドワードを「嘘つき」と呼んでいる。

 

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●「極秘の金正恩氏暗殺訓練も トランプ政権の内幕本発売   ホワイトハウスの混乱描く」

 

2018/9/12  日経新聞 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35255240S8A910C1000000/

 

 【ワシントン=永沢毅】著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏がトランプ米政権の内幕を描いた「恐怖 ホワイトハウスのトランプ」が11日、全米で発売された。事前に伝わった内容でホワイトハウスの混乱ぶりを描いているとして出版前から話題を呼んでいるが、トランプ大統領は自身への「攻撃だ」と反発を強めている。

 

 トランプ米政権の内幕を描いた本が11日、全米で発売された。トランプ氏の奔放な言動と制御しようと苦心する周辺の動きなどを描き、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長暗殺訓練を極秘に実施していたことも明かした。

 

 内容はトランプ氏の奔放な言動と、それを何とか制御しようと苦心する周辺の動きが軸だ。例えば、2017年8月にトランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)や世界貿易機関(WTO)、米韓FTAからの離脱を画策。マティス国防長官やコーン前国家経済会議(NEC)委員長ら政権幹部が大統領執務室に駆け込み、その悪影響を説明して必死で引き留めたという。

 

 側近同士の抗争の記述も多い。あるときバノン前首席戦略官が、イバンカ大統領補佐官に対しトランプ氏の長女という立場を利用して大きな態度をとっていると非難。「おまえは単なる職員に過ぎないだろう!」と罵声を浴びせると、イバンカ氏は「私はスタッフじゃない。大統領の娘よ!」と応酬したとされる。

 

 トランプ氏の看板政策である貿易赤字の是正を巡っては、通商政策を担う強硬派のナバロ大統領補佐官と現実主義派のコーン委員長が対立。赤字を問題視しないコーン氏が「99.9999%のエコノミストは私と同じ考えだ」と主張すると、ナバロ氏は「ウォール街エリートの愚か者め」と反発した。

 

 政権が北朝鮮の核問題への対処に苦心している様子もうかがえる。北朝鮮の指導層への限定攻撃のオプションが取り沙汰されるなかで、1710月には米空軍が中西部ミズーリ州で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長を暗殺する訓練を極秘に実施していたことを明かした。北朝鮮と地形の特徴が類似しているとの理由で、ミズーリ州の高原が選ばれたという。ただ、この訓練では爆撃機などからの交信が周辺の住民に漏れる事態がおきたとされる。

 

 本の著者は1970年代にニクソン政権を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」をスクープしたことで知られるボブ・ウッドワード氏。トランプ氏は不満を強めており、10日にはツイッターで「匿名の情報源による私への攻撃だ。ホワイトハウスは円滑に運営されている」と改めて批判した。

 

 ただ、ウッドワード氏は11日、米紙ニューヨーク・タイムズに「枢要な政権高官から私に連絡があった。『書かれている内容が真実だということを私たちはみな分かっている。1000%正しい』ということだった」と自信を示した。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)