古村治彦です。
本日は、副島隆彦先生の最新刊『日本人が知らない真実の世界史』(副島隆彦著、日本文芸社、2018年10月27日発売)をご紹介します。
本書は、世界史の定説に大胆に挑戦した内容になっています。まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にしていただいて、是非手に取ってご覧ください。よろしくお願いいたします。
(貼り付けはじめ)
はじめに──世界の歴史が大きく分かる
この本は、世界史を勉強するための本だ。世界史をできる限り分かりやすく、その全体像をつかまえて、分かるための本だ。そのつもりで私は書いた。
日本人が、世界史(=人類史)の全体像を、どこまでも徹底的に簡潔に概観(アウトルック)できることを目指した。私なりのその苦闘の表れだ。
世界の歴史を、たった1冊の本で大きく大きく理解するにはどうしたらいいか。大風呂敷を広げ、大丼を書いた。それでもなお、この本は世界史の勉強本(ハウツー本)である。それがうまくいったかどうか、読者が判断してください。
私の考えは、「帝国─属国関係」が世界史を貫いている、とするものだ(帝国─属国理論)。
世界史(人類史)5000年間(たったの5000年だ)は、世界各地に起ち上がったたくさんの小さな民族国家=国民の興亡である。そして、それらをやがて大きく束ねて支配した帝国(大国)の存在に行きつく。
そして帝国(大国)は、別の帝国と世界覇権を目指して激しく衝突する。この構造体(仕組み)は今もまったく変わらない。
私は、拙著『属国・日本論』(1997年刊。21年前。44歳のとき)で、「今の日本は、アメリカの属国(従属国、保護国)である」と書いた。以来、ずっと、私は世界は「帝国─属国」関係を中心に動いている、と主張し、論陣を張ってきた。
日本は原爆を2つ落とされて敗戦(1945年8月)した。この後の73年間を、ずっとアメリカの政治的な支配の下で生きてきた。今の日本国憲法(国)の枠組みをつくる最高法規)の上に日米安保条約(軍事条約)があるから、改憲も護憲も虚しく響く。
アメリカの支配の前は、幕末・明治以来、隠れるようにしてであるが、イギリス(大英帝国)の支配を受けた。
その前は、長く中国(歴代の中華帝国、王朝)に服属して(後漢帝国の時から)、その朝貢国(トリビュータリー・ステイトtributary state )であった。
今回は、日本史から離れて、私はもっと広く大きく世界史についての本を書くことにした。初めは、本書の書名を『「帝国─属国」理論から分かる3200年の世界史』にしようと編集長と話して、決めていた。
しかしこれでは、ちょっと意味が読者に伝わらない、ということで『日本人が知らない 真実の世界史』にした。
私の歴史観として、人間(人類)を貫く法則は、3つある、と考えている。まず、
1.食べさせてくれの法則。まず、なぜだか分からないが、50万人ぐらいの人間の群れがいる。この人々は、「私たちを食べさせてくれ。食べさせてくれ」と切望する。
そこへ「よし。私が食べさせてやる」と、企業経営者のような、暴力団の大親分のような人間が現れる。
そしてこの人物による厳しい統治と支配が行なわれる。これが国王である。
今の大企業(中小企業も)のサラリーマンたちと、経営者の関係もこれだ。「自分と家族が生きてゆく給料さえ、きちんと払ってくれれば、あなたの言うことを聞いて働きますよ」だ。これが私がつくった「食べさせてくれ理論」だ。
2.ドドドと遊牧民が北方の大草原から攻め下る。そして低地(平地)に住む定住民(農耕民)の国に侵入し、占領支配する。
50万頭ぐらいの馬や羊を引き連れて、このドドドと攻め下る遊牧民(騎馬隊)が世界史(人類史)をつくったのである。
中国の歴代の王朝(帝国)は、このようにして「北方(あるいは西方からの)異民族」である遊牧民によってつくられた。これが私がつくった「ドドド史観」である。
そして、日本はこの2000年間、中国文明(漢字の文明。黄河、長江〈揚子江とは言わない〉文明)の一部である。日本は、中国漢字文明の一部なのである。
私がこれを書くと、嫌われるのは分かっている。しかし大きく考えると、どうしてもこうなる。
中央アジアも、中東(アラブ、イスラム教世界)も、そして西洋(ゲルマン諸族という遊牧民の移動もその一つ)も、こうして「ドドドの遊牧民」によってつくられたのである。
16世紀(1500年代)から海(船)の時代(大航海時代)が来て、それは終わった。
西欧に近代が始まった。私たちはこれに支配された。だが圧倒的に強い西洋人のモダーン(近代)と言っても、たかが500年に過ぎない。そして現在に至る。
3.熱狂が人類史をつくる。あるとき、何だか分からないが、ドカーンと激しい熱狂が生まれて、多くの人が幻想に取りつかれて、その熱狂、熱病に罹る。それは地域を越えてワーッとものすごい速さで広がる。それが大宗教である。世界5大宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、儒教)だ。
人々は救済と理想社会の実現(顕現)を求めて、熱狂に取りつかれる。これで、大きな対外戦争までたくさん起きる。そしてそのあと、人間の救済はなくて、大きな幻滅が襲って来る。人間は、この大幻滅の中でのたうち回って苦しむ。人間(人類)の救済はないのである。
人類の20世紀(1900年代)に現れた、共産主義(社会主義)という貧困者救済の大思想も、この熱狂である。人類の5大宗教とまったく同じである。この共産主義(社会主義)に、恐怖、反発して反共思想も生まれた。これも熱狂の亜種である。
これが私がつくった「熱狂史観」である。
私は、自分が20年前につくった、この「人類史の3つの性質」(史観)を土台にして、この本では、さらに次の4冊の大著に依った。
1.『第13支族』──“The Thirteenth Tribe, 1976”──アーサー・ケストラー著。
2.『幻想(想像)の共同体』──“Imagined Communities: Reflections on the Origin and Spread of
Nationalism, 1983”──ベネディクト・アンダーソン著。
3.『ユダヤ人の発明』──“The Invention of the Jewish People, 2008”──シュロモー・サンド著。
4.『サピエンス(全史)』──“Sapiens: A Brief History of Humankind, 2014”──ユヴァル・ノア・ハラリ著。
この4冊である。
この近年(決して古い本ではない。すべて、最近の世界史の本だ)の優れた、かつ、世界中の優れた知識人、読書人層から注目されている4冊の大著から学び、使うことで、私はこの「世界史が簡潔に大きく分かる本」を補強した。
私が何をもって、今の日本人にとって「世界史の大きな分かり方」とするか。さらには「これまでの定説がいくつも覆される」とするか。それは、この本を読んでくだされば分かる。
ものごとは、大きく大きく、スッキリと分かることができなければ意味を持たない。大きな真実は小賢しい嘘と怯懦を、長々とこねくり回さない。巨大な真実をバーンとはっきり書かなければ、どうせ私たちの生活の役に立たない。
私が、書名を『日本人が知らない 真実の世界史』と銘打ったのは、前記4冊の本を使うことで、これまで私たちが習って(習わされて)教えられてきた「世界史の知識のたくさんのウソ」が大きく訂正、変更されるからだ。
「たくさんの定説が覆される!」と私が副題で明言したことが、決してただの宣伝文句や、虚仮おどしではないことが分かるだろう。こうやって、この30年間、ずっと停滞していた日本人の世界史理解が大きく前進するだろう。
この他の文献(教科書)として、私が16歳の高校2年生のときから、読んで使ってきた、山川出版社の『高校世界史B』がある。ここに、日本人の世界史勉強の国民的共通理解の土台がある。それと中央公論社刊の『世界の歴史』(全16巻+別巻1。文庫版は全30巻。1960年から初刊。各巻の改訂版は1998年から。文庫版は2009年から)がある。これらが私の世界史理解の出発点である。
この国民的知識の共通土台を大事にしながら、私たちは、次の新たなる最新の世界史(人類史)へと進んでゆかなければならない。その突破口に、この本は必ずなるだろう。
「はじめに」の後ろに、帝国─属国理論にもとづく「18の帝国がイスラエル=パレスチナを占領・支配した」の表を載せておく。随時、見返してほしい。
2018年10月 副島隆彦
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『日本人が知らない真実の世界史』
もくじ
はじめに 世界の歴史が大きく分かる︱1
第1部 副島隆彦が伝える世界史の「新発見」
●いくつもの定説が覆される︱26
●世界史を大きく理解する︱26
●捏造された旧約聖書と人類を不幸にした一神教︱32
言語と宗教は地域全体でつながっている︱32
三日月地帯に出現した特異な一神教︱37
ユダヤ人は「ユダヤ人によって、発明された」︱39
捏造された旧約聖書─アブラハムは存在しなかった︱42
士師とは、トランプ大統領のような指導者のこと︱45
旧約聖書が書かれたのは新約聖書のあと︱47
一神教が人類を不幸にした︱50
資本主義という宗教もやがては滅ぶ︱53
●チュルク人の大移動が世界史をつくった︱61
大草原の民・チュルク人の西方大移動︱61
東ローマ帝国の周りで生きてきた遊牧民・チュルク人(トルコ系)︱67
中国の歴代帝国もチュルク人がつくった︱71
中央アジア史を大きく理解する︱73
●カザール王国とノルマン人が西欧に打撃を与えた︱76
キリスト教は、本当は「ゼウス教」︱76
原始キリスト教団はエルサレムにいなかった︱78
ゲルマン民族を嫌った皇帝と教皇︱83
ヨーロッパ国家の始まりはみすぼらしい︱85
カザール王国を滅ぼしたノルマン人︱89
アシュケナージ・ユダヤ人とスファラディ・ユダヤ人︱96
マイモニデスとカバラー神秘主義︱100
すべての大宗教は2つの対立を抱え込んでいる︱102
●民族・宗教はすべて幻想の共同体だ︱105
ユダヤ教が成立したのはAD200年︱105
ラビたちは細々と研究をし続けた︱107
救済を説いたイスラム教の熱狂︱112
すべては幻想の共同体である︱116
聖典が出来た時に民族も出来る︱122
『共同幻想論』と『想像の共同体』は同じ︱124
アーサー・ケストラーの『第13支族』︱126
「インド=ヨーロッパ語族説」の害悪︱130
アーリア族などいない︱132
語族説を踏襲した映画『インディ・ジョーンズ』︱135
第2部 古代オリエント─三日月地帯から世界史が分かる
●イスラエル=パレスチナが世界史の核心部︱140
属国として生き延びてきたイスラエル=パレスチナ︱140
肥沃な三日月地帯から古代の世界が見える︱145
人類の「食べさせてくれの法則」︱147
メソポタミアを征服したエジプト王︱151
ハンムラビ法典は歴史学の対象︱153
ヒッタイト帝国を滅ぼした「海の民」︱155
●モーセの出エジプトからユダヤ民族の歴史が始まった︱157
「出エジプト記」の真実︱157
モーセたちはエジプトの〝屯田兵〟だった︱160
発明された「ヤハウェ神がつくった民族」︱163
先住民・ペリシテ人が今のパレスチナ人︱165
ユダヤ人の起源は戦場商人︱167
ユダヤ人は都合が悪くなるとヤハウェ神を捨てた︱171
●消えた10支族と王の友になったユダヤ人︱174
サウル王のとき、エルサレムを中心に定住︱174
ダビデとソロモンの栄華︱177
ユダヤ10支族はどこに消えたのか︱178
ネブカドネザル2世王とバビロン捕囚︱183
「王の友」となったユダヤ人王族たち︱186
アケメネス期ペルシアのバビロン征服とユダヤ民族解放︱188
バビロンに残った人たちがユダヤ教を守った︱189
ユダヤ人の「大離脱」はなかった︱195
●聖地エルサレムは3大宗教の争奪地帯︱197
強固な意志のユダヤ人とイスラム教化したパレスチナ人︱197
エルサレムを聖地にしようとしたイスラム教徒たち︱198
十字軍の侵攻は2文明間の衝突︱202
十字軍はアラブ世界への侵略戦争︱204
テンプル騎士団がフリーメイソンの原型︱206
ビザンツ帝国を滅ぼしたオスマン帝国の支配︱208
イスラエル建国とイスラム教徒になったパレスチナ人︱211
人類3200年の対立は続く︱212
第3部 ギリシア・ローマ─アテネ壊滅とギリシアへの憧憬
●ギリシアとフェニキアは一心同体だった︱216
重なり合っているギリシアとフェニキアの植民地︱216
ギリシア人とフェニキア人の同盟︱219
戦争の本質は「余剰人間」の処分︱221
驚くほど豊かだったアテネ︱224
「世界史を貫く5つの正義」とは?︱227
ギリシア文明はフェニキアから始まった︱230
●アレクサンドロス大王の「世界征服」の事実︱233
ギリシア王となったマケドニア人のフィリポ2世︱233
世界の中心・バビロンを目指したアレクサンドロス大王︱236
10年間動き回ったアレクサンドロス大王︱239
世界史のウナギの目は中東世界︱243
●ローマ皇帝とは大勝を強いられる戦争屋︱246
ギリシア語が知識人、役人階級の共通語だった︱246
ギリシアに頭が上がらなかったローマ貴族︱249
カエサルと並んで行進したクレオパトラ︱252
〝ゼロ代皇帝〟カエサルは戦争屋︱254
ローマは帝国か、共和国か︱257
戦争で人間を皆殺しなどできない︱258
●ローマ人のアテネ破壊が西欧最大の恥部︱260
ローマ人がパルテノン神殿を壊した︱260
ギリシア文化をドロボーしたローマ人︱264
おわりに︱268
世界史 年表︱24
=====
おわりに
世界史の勉強が小さなブームになっている。
中学、高校生だったとき以来、世界史の勉強のし直しなど普通の人はしない。みんな自分の人生(生活)の苦闘で精いっぱいだ。私たちは日々押し寄せる生活の荒波の中で、もがき、苦しんでいる。それでも、文化、教養を身に付けるために、私たちは世界史の知識を本から学び直すことは必要だ。
歴史の勉強は奥が深い。と言ってしまえば、それで何か言った気になる。歴史は、過去の人間たちの恥多き過ちの蓄積、集成の記録である。
「ああ、あのとき、あんなこと(決断、判断)をしなければ、よかった。そうすれば私は生き延びていただろうに」と、敗北して殺されていった権力者たちは思うだろう。私たちの人生の悔悟と似ている。
自分なりの世界史(人類史)の全体像を概観(アウトルック)する本を書こうと思い立ったのは、3年ぐらい前である。自分が16歳の時、山川出版社の『高校世界史B』の教科書で習って以来、自分の世界の歴史の知識を、私はずっと、自分なりに知識を増やし、組み立て直して、反芻して作り変えてきた。それをさらけ出して、世に問うべきだと考えた。
自分自身の独自の世界史の本を書こうと発起したら、私の頭に天から多くのことが降ってきた。高校2年(16歳)で世界史を習った時以来、自分の頭の中にずっと在った多くの疑問が、なんとか解明された。私の疑問は、中学2年生(13歳)の社会科の授業の時から始まっていた。
50年前の文部省検定済の社会科の教科書に、「現在の東欧(東ヨーロッパ諸国)はソビエト連邦の衛星国(サテライト・ステイト)である」と書いてあった。
私は、教師に、「それでは、日本はアメリカの衛星国ではないのですか」と聞いた。教師はおどおどして私の質問に答えることはできなかった。
この時から、私の頭の中で、「日本はアメリカの属国、従属国である」(『属国・日本論』 1997年刊)の萌芽があった。そしてそれから21年経ったこの本で、「世界史は、周りに従属国を従えた帝国と、別の帝国とのぶつかり合いだ」を描くことができた。
50年間、自分がずっと考え込んで分からなかったこと(疑問点)を、この数年で調べ直すことが多かった。この本を書き上げてみたら、当初の目論見だった「世界史の勉強をし直しの本」では済まなかった。多くの疑問点が、この本を書くことで解明された。
私は、「自分の思考に大きな枠組みを作ること」という言葉を大事にして長年、使ってきた。今回私は、世界(歴)史という既成の学問と出版分野の枠組みを企図せず使うことで、自分自身の「額縁ショー」を作ることができた。
この本で、私は、世界で通用している最新の世界史知識をたくさん書いた。世界で認められている現在の超一流の歴史学者たちの知見を、日本に初めて体系的に初上陸させ、紹介することができた、と自負している。
最後に。この本を完成するに当たって、日本文芸社の水波康編集長とグラマラス・ヒッピーズの山根裕之氏の多大な協力、ご支援をいただいた。水波氏が強く私の背中を押して強引に急かさなければ、この本は出来なかった。記して感謝します。
2018年10月_副島隆彦
(貼り付け終わり)
よろしくお願いいたします。
(終わり)
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