古村治彦です。

 

 今回は、アイルランド出身の女性歌手シニード・オコーナー(シュハダ・ダヴィット)のイスラム教への改宗の記事をご紹介します。

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 シニード・オコーナーは私が高校時代に日本でも流行った歌手です。同時期にはスザンヌ・ヴェガなんて人も流行りました。よく意味も分からずに彼女の歌を聴いていたことを思い出します。故プリンスの楽曲「ナッシング・コンペアズ・トゥ・ユー」のカヴァーが大ヒットしました。また、「サンキュウ・フォ・ヒーリング・ミー」という楽曲も良く知られています。





 頭髪を丸刈りにして、笑顔を見せずに歌う姿は、彼女の強さを表現するものですが、やがて大騒動を引き起こします。1992年にアメリカの三大ネットワークNBCの土曜日夜の看板番組「サタディ・ナイト・ライヴ」の歌のゲストとして登場し、リハーサルとは違う楽曲「ウォー」(故ボブ・マーレーの楽曲)をアカペラで歌い、最後に「ファイト・ザ・リアル・エネミー」と言いながら、当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ二世の写真を破り捨てました。これは、当時からスキャンダルとなっていた、カトリック教会の聖職者たちによる児童に対する性的虐待に抗議するための行動でした。これで大騒動となりました。

 

 その直後に、ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンで開催されたボブ・ディランのデビュー30周年記念コンサートに出演したのですが、観客からは大ブーイングを浴び、しばらく立ちすくみ、それからバンドの演奏もやめさせて、また「ウォー」を歌いましたが、さすがに歌い終わって涙を流していたシーンは今でも忘れられません。

 

 その後、1999年に、ローマ・カトリック教会に所属していないアイルランド系のカトリック教会から聖職者に叙せられました。ローマ・カトリック教会は、女性が聖職者になることを認めていません。その後もローマ・カトリック教会には批判的です。

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 ローマ・カトリック教会の抱えるスキャンダルは、聖職者たちによる児童に対する性的虐待問題です。この問題については、2015年の映画「スポットライト 世紀のスクープ」(アカデミー賞の脚本賞と作品賞を受賞)でも詳しく描かれています。私はこの映画について評論を行いました。

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 2000年代以降、シニード・オコーナー(シュハダ・ダヴィット)は精神的な病に苦しんでいたようです。自殺をほのめかして警察に捜索されたり、子供の親権争いで疲弊したりしていたようです。また、以下の記事では書かれていませんが、名前を変えたことについて、両親からの呪いから脱したかったと述べている点から、幼少期に虐待もあり、それでも苦しんでいたことが推察されます。今回、彼女はイスラム教に改宗したと発表し、話題となりました。


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 キリスト教、ユダヤ教、イスラム教は同じ神を信仰する訳ですが、シニード・オコーナー(シュハダ・ダヴィット)は、宗教について悩み苦しみ、考え抜いた結果、イスラム教に改宗するに至ったのでしょう。アイルランド生まれですから、生まれた時からカトリックの信仰が身近にありながら、それとの葛藤に苦しんだのでしょう。無宗教という方向に進まずに、イスラム教に改宗し、イスラム教共同体に入ったことで、救いがあったのでしょう。

 

 ローマ・カトリック教会とイスラム教について語る力は私にはありませんが、シニード・オコーナー、今はシュハダ・ダヴィットにとって心の平安がもたらされるであろうことに対しては喜ばしいことだと思います。

 今年8月にローマ教皇フランシスがアイルランドを訪問した際には、「小児性愛者を守っている」として、激しい抗議運動が行われました。以前であれば、このような動きは封殺されていたでしょうが、ローマ・カトリック教会に対する人々の怒りは大きくなっているのでしょう。今回のシニード・オコーナー(シュハダ・ダヴィット)のイスラム教改宗と併せて、ローマ・カトリック教会の権威の失墜と、偽善に人々が気付き始めているということが言えると思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

シニード・オコーナーがイスラム教に改宗、新しい名前をシュハダ・ダヴィットとした(Sinéad O'Connor converts to Islam, taking new name Shuhada' Davitt

―歌手シニード・オコーナーは「とても、とても、とても幸せ」で、イスラム教徒に歓迎してくれたことを感謝すると述べた。

 

ベン・ベウモント=トーマス筆

2018年10月26日

『ザ・ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/music/2018/oct/26/sinead-oconnor-converts-to-islam-shuhada-davitt

 

オコーナーはツイッター上で発表を行った。その中で、彼女の改宗は、「知性のある神学者の長い旅路の自然な帰結」と述べている。また、「全ての聖典の学びはイスラムに通じる。その他の聖典は繰り返しに過ぎない」とも述べている。

 

発表以降、オコーナーは彼女の新しい信仰について書いている。彼女は初めてのヒジャブを与えられた後は「とても、とても、とても幸せ」と書いている。そして、「全てのイスラム教徒の兄弟姉妹がイスラム共同体(ウンマー)に私を歓迎してくれた」ことに対して感謝を表明した。ウンマ―はイスラム共同体を意味する。彼女はユーチューブに、イスラム教の祈りの言葉を述べているヴィデオをアップしている。

 

オコーナーの新しい名前は、シュハダ・ダヴィットである。苗字のダヴィッドは2017年に自身の名前をマグダ・ダヴィットに変えた時のものだ。この当時、オコーナーは、「家族の奴隷としての名前から自由に、両親の呪いから自由に」なりたいと述べた。

 

ダヴィットはここ数年、精神的な病に苦しんでいるということを明らかにしてきた。2017年8月にフェイスブックにヴィデオを投稿した。その中に、自殺観念があると述べている、彼女は次のように述べている。「私は精神的な病に苦しんでいる数百万の中の一人だ。こうした人々は地球上で最も攻撃に対して弱い人間だ。私たちは私たち自身を助けることが出来ない。皆さんに助けてもらうしかない。私の人生は死なないということ、そして生きないということの間を行ったり来たりしていた」。2015年11月のヴィデオでは、「薬物を過剰摂取している」と述べ、2016年5月には、オコーナーはシカゴで行方不明になり、生存に対する懸念が高まり、警察が捜索する騒ぎとなった。

 

今週初め、オコーナーはツイッターで、健康管理アシスタントを解雇したと発表した。その理由として、「自分に対してメタンフェタミンを注射した」としている。

 

オコーナーは1999年にアイリッシュ・オーソドックス・カトリック・アンド・アポストリック・チャーチから聖職者に叙せられた。この教派は女性を聖職者に叙することを認めていないカトリック教会に公式には加盟していない。

 

オコーナーは、教会での児童に対する性的虐待スキャンダルが明らかになり、カトリック教会に失望していた。2011年に掲載されたある新聞記事の中で、オコーナーはヴァティカンを「悪魔の巣」と形容した。今年8月に発表された公開書簡の中で、オコーナーは、ローマ教皇フランシスに対して自分を破門するように求めた。また、これまでにもローマ教皇ベネディクトとヨハネ・パウロ二世にも同様のアピルを行ったと述べた。

 

今年8月には4年ぶりとなるアルバムを発表した。アルバム所収の楽曲「マイルストーンズ」は北アイルランドの音楽プロデューサーであるデイヴィッド・ホームズとの共作である。オコーナーは、ロックバンド「ポーガス」のヴォーカル、シェイン・マガワンの誕生日パーティーでホームズと出会った。オコーナーは現在、新しいアルバム「ノー・マッド、ノー・ロータス(泥がなければ、蓮の花は咲かない)」を製作中であるが、発売は2019年10月以降になると述べている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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