古村治彦です。

 

 メラニア・トランプ大統領夫人は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領のローラ夫人、バラク・オバマ前大統領のミシェル夫人に比べて影が薄い存在です。お子さんがまだ小さいので、子育てが忙しいということもあるとは思いますが、ローラ夫人やミシェル夫人に比べて表に出ることは少ないです。モデル出身なのでメディア映えするとは思いますが、英語が母国語ではないということもあって少し引っ込んでしまっているのだろうと思います。

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アフリカ訪問中のメラニア夫人
 

 そのメラニア夫人が公式に、ホワイトハウスの人事に対して口を出したということで、アメリカでは話題になっています。ミラ・リカーデル国家安全保障問題担当大統領次席補佐官への介入要求を大統領夫人オフィスが正式に声明として発表しました。大統領夫人がホワイトハウスの人事に関わることを公式に発表することは極めてまれなケースです。

 
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ミラ・リカーデル

 今回はこのことを報じる記事をご紹介します。記事では今回のメラニア夫人によるリカーデル解任要求の背景が紹介されています。ミラ・リカーデルについては、このブログでもご紹介したことがあります。

※本ブログで紹介した当該記事へはこちらからどうぞ。

 リカーデルはジョージ・W・ブッシュ政権で国防総省に勤務し、また、ボーイング社でも副会長を務めた人物です。行ってみれば、組織の中で偉くなっていった人物であって、そういう人物は手続きや規律にうるさいということは容易に想像できます。これに対して、トランプ政権にはそういうタイプの人物は少ないし、「官僚的な」人物との付き合いもこれまでなかったでしょうから、ワシントンに来て初めて一緒に仕事をすることになって戸惑っているでしょう。

 

 トランプやメラニア夫人、イヴァンカ、クシュナーは自分が言うことに反対する、拒否する人物が周囲にいないのでしょう。企業経営者として自分が一番上なのですから、そういう人物を遠ざけることは可能です。しかし、複雑なワシントンの構造の中では、組織をどう動かすかに長けている人物が必要で、何事もトップダウンという訳にはいきません。

 

 メラニア夫人のアフリカ訪問にあたり、夫人側が国家安全保障会議の持つ資料の提供を要求、これに対して、リカーデルが自分か他のスタッフが同行しないので、資料は渡せないと拒否したことが今回の解任要求声明発表の原因となったようです。

 

 大統領夫人には儀典や旅行などを担当するオフィスがあり、公的な存在ではありますが、もちろん行政に関与することはできません。昔のエレノア・ルーズヴェルトやヒラリー・クリントンのように実質的に行政に関与することになった夫人たちはいますが、それはあくまで夫である大統領のバックがあったからで、法的には何も力はありません。今回、このような声明を公式に出すということは極めて異例で、批判の対象となることはメラニア夫人側も分かっているでしょう。それでも敢えて出したということは、よほどのことがあるのだろうと思います。これ以上は推測の上に推測を重ねることになるので控えます。

 

 今回の出来事は極めてトランプ政権らしい話だと思います。ワシントンの「プロ」なら絶対にしないことが起きるというのは、アマチュアだという批判を招くことになりますが、ワシントンに染まっていないということも示しているからです。

 

(貼り付けはじめ)

 

メラニア・トランプがボルトンの次席リカーデルは更迭されるべきだと発言(Melania Trump Says Bolton Deputy Ricardel Should Be Ousted

 

ジェニファー・ジェイコブス、ジャスティン・シンク筆

2018年11月14日

『ブルームバーグ』誌

https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-11-13/melania-trump-says-bolton-deputy-ricardel-should-be-ousted

 

・メディアの報道によると、大統領は政権内の人事交代を考慮中であるようだ。

・ニールセン国土安全保障長官は政権から去ると報じられている。

 

メラニア・トランプ大統領夫人は火曜日、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官の次席であるミラ・リカーデルの更迭を要求した。この要求は、ドナルド・トランプ大統領が政権内の人事交代を近々行うという報道がなされる中で行われた。
 

メラニア・トランプ大統領夫人の報道担当官ステファニー・グリシャムは、大統領夫人がリカーデルの更迭を求めているのではないかという疑問に対する答えとして声明を発表し、その中で「大統領夫人オフィスの立場は、彼女(訳者註:ミラ・リカーデル)はホワイトハウスで勤務するという光栄にもはや値しない、というものだ」と述べた。

 

リカーデルはボルトン補佐官の次席を務めている。先月、メラニア夫人はアフリカを訪問した。その際、夫人側のスタッフとリカーデルが衝突した。リカーデルは、自分か他の国家安全保障会議(NSC)のスタッフが同行しない限り、NSCの持つ資料を渡すことはできないと強く主張した、とこの問題に詳しいある人物が匿名で証言した。

 

大統領夫人がウエストウイング(大統領執務室)の決定に関して公に介入することは極めて稀である。しかし、大統領夫人側のスタッフと大統領側のスタッフが衝突した際に、大統領側のスタッフが更迭されることは多く起きている。上級のスタッフでもこうしたことは起きている。1987年、ロナルド・レーガン大統領の首席補佐官ドナルド・リーガンはナンシー・レーガン大統領夫人と衝突した後に更迭された。

 

2000年には、独立委員会が、当時のヒラリー・クリントン大統領夫人が、夫ビル・クリントン大統領のホワイトハウスの旅行担当の複数のスタッフの更迭に関与したことについて、虚偽の証言を行ったと報告している。

 

アフリカ訪問中、メラニア夫人はABCニュースのインタヴューに応じた。その中で、夫人はトランプ大統領に対して、自分が信頼できない複数の人物が大統領の下で働いているとこれまでに進言したと述べた。彼女は「そうですね、中にはホワイトハウスで全く仕事をしていない人たちもいますね」と述べた。

 

NSCの報道担当官ガレット・マーキス、ホワイトハウスの報道担当官サラ・ハッカビー・サンダースは、グリシャムの声明に対するコメントの要求に応じなかった。リカーデルには連絡できなかった。火曜日の朝、リカーデルはホワイトハウスで行われたインドのヒンズー教のお祭りディーワーリーに出席した。ディーワーリーではトランプ大統領の演説も行われた。

 

メラニア・トランプ大統領夫人の声明を受けてすぐにリカーデルが解任されるとした『ぉーるストリート・ジャーナル』紙の報道について、あるホワイトハウスの高官は強く否定した。別の高官は午後4時時点でリカーデルはホワイトハウス内にとどまっていると述べた。

 

ボルトンは今年4月にそれまで商務省に勤務していたリカーデルを次席補佐官に抜擢した。リカーデルはジョージ・W・ブッシュ元大統領時代に国防総省に勤務していた。

 

トランプ政権内の複数の高官によると、ボルトンはリカーデルを評価しているが、ホワイトハウスのスタッフの間では嫌われているということだ。リカーデルは融通が利かず、手続きに拘泥する人物と評価され、リカーデルのせいでNSCと他の省庁との間の強力が難しくなっていると不満を表明する政府高官も少なからず存在する。

 

●ニールセンも更迭の危機

 

グリシャムの声明が発表されたがこれは、ドナルド・トランプ大統領が政権内の人事交代を大幅に行うことを考慮中だと複数のメディアが報じている中での出来事となった。人事交代の対象には、国土安全保障長官キルステン・ニールセンも含まれている。先週水曜日に『ワシントン・ポスト』紙が最初にニールセンの更迭を報じた。トランプ大統領はアメリカ南部国境における移民「危機」と呼ぶ状況に対してのニールセンの対応に不満を持っていると報じられた。

 

ワシントン・ポスト紙の報道に対して、国土安全保障省報道官テイラー・ホウルトンは声明の中で次のように述べた。「長官は国土安全保障省に勤務する人々を率いる光栄を与えられ、全ての脅威からアメリカ国民を守るという大統領の安全保障政策を実施するために尽力している。そしてこれからも尽力を続ける」。

アメリカ南部国境を越える不法越境者の数が急増していることについて、ニールセンは強い非難を受けている。国土安全保障省は、今年10月だけで5万1000人が不法に国境を越えたとして逮捕された、そのうちの2万3000人以上が家族だと発表した。2017年10月に比べて、逮捕された不法越境者の数は2倍となり、同行する家族の数は4倍上に増加した。

 

ニールセンは首席大統領補佐官ジョン・ケリーと近い関係にあり、ニールセンの国土安全保障長官就任を進めたのはケリーであった。ケリーは、トランプが再選を目指す2020年の大統領選挙まで首席補佐官を務めると発言しているが、ニールセンの更迭はケリーの更迭を誘発する可能性を秘めている。

 

トランプが、先週の中間選挙後の夜の集会でマイク・ペンス副大統領の首席補佐官ニック・エイヤーズと話しているところを2人の人物が目撃している。この目撃証言から、エイヤーズがケリーの後任となるという噂がトランプの側近たちの間で広まることになった。

 

ペンスの側近たちはこうした噂を否定している。エイヤーズは今週の副大統領のアジア訪問に同行していない。ペンス副大統領はトランプ大統領のシンガポールとパプアニューギニア訪問には同行する予定となっている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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