古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプは2017年1月に正式に米大統領に就任しました。そして、トランプ政権が発足しました。政権発足後、2年が経過する訳ですが、様々な出来事があり、これまでの政権の中でも、中身の「濃い」政権発足後の2年間であったと思います。

 

 様々な出来事の中には人事異動も含まれています。これまでに多くの辞任、解任がありました。下にご紹介する記事は、外交政策、国家安全保障政策に関するポストの人事異動について簡潔にまとめたものです。簡潔にまとめたとは言いながら、たくさんの人たちの名前が出てきます。政権発足後2年(米大統領の任期は4年間)で人事異動が多く行われました。まずアメリカの閣僚級の仕事はそれだけタフでありまたハードで、大統領と副大統領以外は4年続けることは大変なことです。大統領と副大統領がハードではないということではありませんが、この2人は「疲れたから」「自分と家族のための時間を確保したい」などという理由で代えることはできません。

 

 この記事を読むと、そう言えばそういうこともあったなぁと思い出すことばかりです。経済関係の閣僚ではここまで大きな人事異動はないのとは対照的に、国家安全保障関係、外交関係で人事異動が目立ったのは、トランプ政権では、トランプ大統領のイニシアティヴが強く、彼についていけない、彼の考えとは合わないということで辞任するケースが多くなっているということが言えると思います。トランプ大統領の対外政策は一言で言って、アイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)であり、アメリカの世界における役割を縮小していこうという立場ですから、国家安全保障関係、外交関係の人々は戦々恐々としているでしょう。その間に立つ閣僚級の人々のストレスもまた大変なことでしょう。

 

 これからの2年間は2020年米大統領選挙が最大のテーマとなります。トランプ大統領は再選を最大の目標として動いていくでしょう。アメリカ国内の景気を何とか持たせることが最大の施策であり、それ以外は二の次ということになるでしょう。外交で何かやるとすれば、中国とは何とか妥協して、景気がこれ以上悪化しないようにしつつ、アメリカに投資しろ、アメリカ製品(武器)を買え、と迫ることになるでしょう。高尚な国際政治や理想主義的なことなど語っていられない、ということで、こうした時期にトランプが大統領であるというのは、歴史の必然ということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプの国家安全保障ティームは常に不安定さをもたらしている(Trump's national security team is constant source of turnover

 

モーガン・チャルファント筆

2018年12月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/422792-top-national-security-posts-with-turnover-under-trump

 

ジェイムズ・マティス国防長官の辞任の決断は、トランプ政権が常に不安定であることを示す最新の具体例となっている。

 

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トランプとジェイムズ・マティス

 

トランプ大統領は日曜日、マティス長官が年末に辞任すると発表した。マティスは2019年2月に辞任すると発表していたが、それよりも早くなってしまった。マティスは政権内の国家安全保障政策・外交政策の最高幹部クラスの中で最新の退任者となった。

 

数人は辞任し、数人は解任され、数人は政権内で人事異動となった。

 

2019年、トランプ大統領の国家安全保障ティームの顔ぶれは全く違うものとなるだろう。

 

これからはトランプ政権において人事異動があった国家安全保障に関連するポジションについて見ていく。

 

●国家安全保障問題担当大統領補佐官

 

トランプのホワイトハウスにおける国家安全保障と外交の諸問題についての担当補佐官にはこれまで3名が就任している。

 

陸軍の三ツ星の将軍で、トランプの大統領選挙陣営に参加していたマイケル・フリンを、トランプは2016年の選挙直後すぐに、国家安全保障問題担当補佐官に指名した。

 

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マイケル・フリン

 

フリンの任期は極めて短かった。フリンは就任して1カ月もしないうちに辞任せざるを得なくなった。フリンは、マイク・ペンス副大統領に対して、政権移行期に駐米ロシア大使との接触について誤った情報を与えたことが暴露され、辞任に追い込まれた。フリンは、駐米ロシア大使との接触についてFBIに対して有罪であると認め、ロシアの2016年米大統領選挙への介入についてのロバート・ムラー特別検察官に協力している。

 

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ロバート・ムラー

 

トランプはHR・マクマスター陸軍中将をフリンの後任に指名した。マクマスターはトランプ政権の中でより穏健な人物だと見られ、様々な問題についてトランプと衝突を繰り返したと言われていた。2015年のイランとの合意もその中に含まれていた。トランプは大統領選挙期間中、この合意について常に非難していた。

 
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 HR・マクマスター

 

マクマスターの任期も長くはなかった。2018年4月、トランプはマクマスターを解任し、ジョン・ボルトンを後任に据えた。ボルトンはジョージ・W・ブッシュ政権に参加し、中国とイランに対して強硬な考えを持つタカ派である。

 

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ジョン・ボルトン

 

FBI長官

 

トランプは2017年5月にジェイムズ・コミーFBI長官を解任する決断を下した。コミーの解任はトランプ政権において最も議論を巻き起こした出来事であった。

 

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ジェイムズ・コミー

 

コミー解任は、ロシア政府が2016年の米大統領選挙に介入するためにトランプ選対の幹部たちが協力したのかどうかについてFBIが捜査していることを、コミーが公式に認めてからわずか数か月後のことであった。

 

コミーの解任は、司法省がヒラリー・クリントン元国務長官の私的Eメールサーヴァー使用に関する捜査の指揮からコミーを外すように勧告した時点で予想がされていた。一方、後にトランプはNBCニュースとのインタヴューの中で、「ロシアに関する出来事」はコミー解任の決断の参考になったとも述べている。コミー解任についてムラー特別検察官は、トランプ大統領が司法の執行を邪魔したのかどうかについて、コミー解任の敬意を詳しく調査したと報じられている。

 

コミーは解任後、何度もトランプを批判することになった。また、連邦上院で、大統領がコミーに対してFBIによるフリンの捜査を取り止めるように要求したかどうかについて証言を行った。

 

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クリストファー・レイ

 

連邦上院は、コミーと同じくジョージ・W・ブッシュ政権に参加していたクリストファー・レイのFBI長官就任を承認した。

 

●司法長官

 

ジェフ・セッションズ前司法長官は、選挙期間中にトランプと親密な関係を築き、信頼できる側近として政権に参加した。

 

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ジェフ・セッションズ

 

しかし、アラバマ州選出の共和党所属の連邦上院議員だったセッションズとトランプとの関係は、セッションズが選挙期間中にセルゲイ・キスリャクと接触を持っていたとし、ロシアに関する捜査の指揮を行わないと発表したことで、悪化してしまった。キスリャクはその当時駐米ロシア大使を務めていた。

 

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トランプとセルゲイ・キスリャク

 

セッションズは、不法移民と犯罪集団に対する取り締まりを強化するとしたトランプの公約を実行しようと積極的に動いた。トランプは公的な場で、多くの場合はツイッター上で、セッションズを数カ月にわたり激しく非難した。2018年9月には「ヒルTV」に出演し、「自分の政権には司法長官は存在しない」とまで発言した。

 

セッションズは、中間選挙投開票日の翌日、トランプから辞任するように言われて辞任を決めた。トランプは、セッションズ司法長官の首席補佐官を務めたマシュー・ウィッテカーを臨時長官に任命した。それから、トランプ大統領は、司法長官にジョージ・HW・ブッシュ(父)政権で司法長官を務めたウィリアム・バーを指名した。ウィッテカー、バー両者ともにムラーのロシアの選挙介入に関する捜査に対して批判的な態度を取っている。

 

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ウィリアム・バー

 

●国土安全保障長官

 

退役した海兵隊将軍であるジョン・ケリーは、トランプ政権に最初国土安全保障長官として入閣した。ケリーの働きはすぐにトランプから尊敬され、関心を持たれることになった。そして、2017年夏に大統領首席補佐官に異動することになった。

 

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ジョン・ケリー

 

トランプはラインス・プリーバスに代わってケリーを大統領首席補佐官に就けるという決断を行った。これはトランプ大統領の日常的な行動の具体例を示している。それは、既に政権内で高位の職にある人物を空いたポジションに就けるというものだ。

 

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ラインス・プリーバス

 

こうした行動の結果として、旅行禁止や国境警備の手法といったトランプ大統領の議論を巻き起こす政策を実行するにあたり中心的な役割を果たす省庁のトップがしばらく空位になってしまった。

 

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キリステン・ニールセン

 

トランプは最終的にキリステン・ニールセンを後任に選んだ。ニールセンはジョン・ケリーの次席を務め、またジョージ・W・ブッシュ政権にも参加していた。しかし、2018年秋になりすぐに、トランプは11月の中間選挙後にニールセンを更迭する意向だという報道が数多く出るようになった。

 

●国務長官

 

トランプは、エクソンモービル社CEOであり、自身が選んだ最初の国務長官だったレックス・ティラーソンとたびたび衝突したことは既に知られている。イラン問題からパリ気候変動合意まで多くの点で衝突した。ティラーソンは昨年、国防総省で開催されたある会議の席上でトランプのことを「愚か者」と呼んだと報じられた。

 

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レックス・ティラーソン

 

今年3月にトランプがツイッターを通じてティラーソンを解任したことに誰も驚かなかった。トランプはツイッター上でイランとの核開発を巡る合意の放棄について両者の意見が合わなかったと述べた。

 

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マイク・ポンぺオ

 

トランプはすぐにCIA長官だったマイク・ポンぺオを次の国務長官に指名した。外交政策についてタカ派的な考えを持つ元カンザス州選出連邦下院議員だったポンぺオを政権の中でより人の目に晒される地位に就けた。ポンぺオは、北朝鮮の核兵器開発プログラムの停止に関して、北朝鮮を交渉のテーブルに引き出す試みにおいて推進役を担った。

 

CIA長官

 

ポンぺオの国務長官就任によって、CIA初の女性長官が就任する道が開かれた。ジナ・ハスペルは長くCIAに勤務したヴェテランで、トランプによってCIA長官に指名され、2018年5月に連邦上院において54対45で人事を承認され、CIAを率いることになった。

 

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ジナ・ハスペル

 

ハスペルの就任承認は平穏にはいかなかった。911当時多発テロ事件以降のテロ容疑者たちに対する尋問には批判も出ており、こうした尋問についてのハスペルの関与について様々な角度からの調査が行われた。

 

ハスペルは歴代のCIA長官と同じく、就任以降、目立たないようにしていた。しかし、アメリカを拠点にして活動していたジャーナリストのジャマル・カショギがイスタンブールのサウジアラビア領事館で殺害された事件についてCIAが情報を掴んでいたことがマスコミで報じられたことで、ハスペルはスポットライトの当たる場所に再び引きずり出されることになった。

 

●米国連大使

 

2018年10月、ニッキー・ヘイリーは2018年いっぱいで米国連大使を辞任すると突然発表を行った。

 

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ニッキー・ヘイリー

 

サウルカロライナ州知事を務めたヘイリーは、トランプ政権発足後からすぐに、政権の外交政策における重要な人物となった。そして、国際問題についてのトランプの行動を支持してきた。早い段階でヘイリーはトランプからの尊敬を勝ち取り、トランプとの間で合意ができない場合でも、独立した姿勢を貫き続けた。

 

ヘイリーの辞任の発表は、共和党所属の連邦議員たちと保守派の人々の間に失望をもたらした。

 

ヘイリーは2020年の米大統領選挙に出馬しトランプに挑戦するために大使を辞任するのではないかという憶測を否定し、公的な仕事から退いて「休息を取りたい」と述べた。

 

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ヘザー・ナウアート

 

トランプは、フォックス・ニュースのキャスターを務め、国務省報道官を務めているヘザー・ナウアートをヘイリーに後任に指名した。しかし、国連大使の地位を閣僚レヴェルから引き下げることをトランプは計画している。

 

●国防長官

 

先週、マティスはワシントンに衝撃を与えた。マティスは2019年2月に辞任すると発表した。その中で、彼はトランプ大統領と政策面で合意が出来なかったことを示唆した。辞任の決断は、トランプ大統領がシリアから米軍を撤退させると発表してから数日後に行われた。トランプ大統領の米軍撤退の発表は幅広い層から批判を受けた。

 

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ジェイムズ・マティス

 

多くの人々は、マティスこそは、無秩序に陥りつつある政権を安定させる存在であり、第二次世界大戦後のアメリカの同盟関係を守る人物であると考えた。民主、共和両党はマティス辞任のニュースを受けて狼狽した。これ以降、トランプと連邦議員で彼を擁護してきた人々との間で亀裂が生じることになった。

 

連邦上院院内多数派総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は木曜日、「アメリカの世界における指導力に関するいくつかの重要な点」について大統領と合意できない点があったのでマティスは辞任するということを知り、「酷く動揺」したと述べた。

 

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ミッチ・マコーネル

 

トランプは外部からの批判と、トランプとマティスとの間の相違を明らかにしたマティスの辞任についての書簡に苛立ったと報じられている。そして、日曜日に、マティスは2018年の年末までに辞任すると発表した。

 

トランプはツイッターを通じて、マティスは、アメリカが、アメリカの納税者の犠牲の上に、「多くの」富裕な国々の軍隊に対して「実質的に補助金を支給し続けている」ことを認識していないと述べた。トランプは更に、マティスを二カ月も早く追い出して、臨時の国防長官にパトリック・シャナハン国防副長官を任命した。

 

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パトリック・シャナハン

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)