古村治彦です。
このブログでも以前にご紹介しました、北朝鮮に対する反体制グループ「千里馬民間防衛(Cheollima Civil Defense、CDI)=フリー・チョソン」が2019年2月に起きたマドリッドの北朝鮮大使館襲撃事件の裏にいた、という報道が出ました。
このグループは、故金正日総書記の長男で、マレーシアのクアラルンプールで殺害された金正男氏の息子である金漢率(キムハンソル、Kim Han-Sol、1995年―)氏を保護しているグループとされています。このグループは金漢率氏を保護した際の声明の中で、アメリカ、中国、オランダに謝意を表明しました。
金漢率
今年2月22日に、スペインのマドリッドにある北朝鮮大使館に正体不明の男たちが押し入り、大使館員たちを縛り上げ、数時間後にコンピューターと電話を持ち去って自動車で退去したという事件が起きました。北朝鮮はスペイン警察に被害届を出さなかったようです。
この襲撃事件の目的は、米朝の実務者レヴェル協議で、北朝鮮側を率いている外交官の金赫哲(キムヒョクチョル、Kim Hyok Chol)の情報を得ようとしてのことではないかと言われています。金赫哲は2017年まで駐スペイン北朝鮮大使を務めていたそうです。
金赫哲
そして、CDIに詳しいある人物は、『ワシントン・ポスト』紙の取材に対して、2月22日の大使館襲撃事件にはアメリカやその他の国々の情報機関は絡んでいない、特にアメリカはその後に2回目の米朝首脳会談を控えており、そんな時期の襲撃に躊躇したはずだ、と述べています。
しかし、多くの人々は、アメリカのCIAが絡んでいるのではないかという疑いを捨ててはいません。CIAが必ずしもドナルド・トランプ大統領の意向通りに動いているとは言えません。また、CIAの前長官は、現在の国務長官マイク・ポンぺオであり、ポンぺオとジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マイク・ペンス副大統領が北朝鮮に対する強硬姿勢を主張していることを考えると、アメリカ政府の一部にいるネオコン派、人道的介入主義派が何かしら関わっていることが考えられます。
金漢率氏を手元で保護しておいて、北朝鮮の現体制を崩壊させた後に、北朝鮮に送って、正統性のある指導者であるとする、そのための手駒にするというシナリオも実行されるかどうかは分かりませんが、準備されているでしょう。もちろん、このシナリオが実行されないこともまた十分に可能性があります。CDIはそのために利用されているということでしょう。
(貼り付けはじめ)
金委員長の転覆を目指す組織がスペインで起きた北朝鮮大使館襲撃の裏にいた:ワシントン・ポスト紙(Group seeking to overthrow Kim behind North Korea embassy raid in
Spain: Washington Post)
2019年3月16日
ロイター通信
https://www.reuters.com/article/us-northkorea-dissidents/group-seeking-to-overthrow-kim-behind-north-korea-embassy-raid-in-spain-washington-post-idUSKCN1QW2ZL
ワシントン発(ロイター通信)。『ワシントン・ポスト』紙は金曜日、北朝鮮の最高指導者金正恩を倒すことを目標としている反体制派組織が、先月のスペインにある北朝鮮大使館襲撃の背後にいた、と報じた。ワシントン・ポスト紙は、襲撃の計画と実行に詳しいある人物を取材した。
ワシントン・ポスト紙は取材源の素性について詳しく報じなかったが、「千里馬民間防衛(Cheollima Civil Defense、CDI)」、別名「フリー・チョソン(Free Joseon)」という名前を出している。ワシントン・ポスト紙は、2017年に金正恩の甥にあたる男性が命の危険を感じマカオから脱出した後に、CDIの存在が知られるようになったと報じた。
ワシントン・ポスト紙の取材に応じたCDIに詳しいある人物は、千里馬民間防衛はどの国の政府、アメリカの情報機関と協力して行動したのではないと述べた。また、アメリカの情報機関は今回の襲撃のことを知っていても、関与することを特に躊躇したに違いない、それは2019年2月27日から28日にハノイで開催される金委員長とドナルド・トランプ大統領との二度目の首脳会談の前という微妙な時期であったからだ。
スペインのメディアでは、スペイン外務省関係者が認めた話として、2019年2月22日にマドリッドにある北朝鮮大使館に複数の正体不明の男性たちが侵入し、大使館員たちを猿ぐつわを噛ませて縛り上げ、数時間後にコンピューターを持ち出して自動車で立ち去った、と報じられている。
今回の襲撃に関して犯行声明を出した存在はない。
ワシントン・ポスト紙が報じた反体制グループにコメントを求めることは出来ず、グループのウェブサイトには襲撃事件への関与について言及はなかった。
2019年2月25日、グループのウェブサイトに声明が掲載された。この声明によると、グループは、「ある西側の国にいる同志から救援要請を受け取った。私たちも極めて危険な状況にあるが、自分たちはこの要請に応えた」ということであった。このグループはその週のうちに重要な声明を発表するとしたが、いかなる行動に関する詳細について発表は今までのところなされていない。
マドリッドの北朝鮮大使館は、アメリカとの実務レヴェル協議の北朝鮮側の責任者である金赫哲(キムヒョクチョル、Kim Hyok Chol)が2017年まで大使を務めていた場所だ。
情報・張宝分野の専門家たちは、襲撃の際に持ち去られたコンピューターと電話機は外国の複数の情報機関が入手したいと考えていたもので、それらの中に含まれているであろう金赫哲の情報を入手しようとしたと考えられると発言している。
ワシントン・ポスト紙の報道に関して質問したところ、国務省はスペイン当局に問い合わせ中だと答えた。CIAはコメントを拒否した。
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●「北朝鮮の反体制団体関与か 大使館襲撃事件」
産経新聞 2019.3.16 21:38国際米州
https://www.sankei.com/world/news/190316/wor1903160031-n1.html
https://www.sankei.com/world/news/190316/wor1903160031-n2.html
【ワシントン=黒瀬悦成】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は15日、関係筋の話として、スペインのマドリードで2月22日に起きた北朝鮮大使館襲撃事件に「千里馬民防衛」を名乗る反体制団体が関与していたと報じた。
この団体は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄で、2017年2月にマレーシアで暗殺された金正男(キム・ジョンナム)氏の息子、金ハンソル氏らの身柄を保護したとされ、今月1日には「自由朝鮮」と改称し、金正恩体制打倒のための「臨時政府」の発足を宣言した。
同紙がスペインからの報道を紹介したところでは、事件はハングルを話すアジア系とみられる複数の人物が白昼、北朝鮮大使館に侵入し、館員らを縄で縛り上げて尋問したほか、館内のコンピューターや携帯電話を奪い、大使館所有の高級車2台に乗って逃走した。大使館は現地警察に被害を届けなかったという。
複数の専門家は同紙に対し、奪われたコンピューターや携帯電話には、北朝鮮による制裁逃れや欧州からの高級品密輸に関連する連絡先や文書が含まれている可能性があると指摘。これらの活動には最近まで駐スペイン大使を務めた国務委員会の金革哲(キム・ヒョクチョル)対米特別代表が関わっていたとみられるとしている。
関係筋は同紙に、襲撃犯らが事件当時の様子を撮影したビデオを近く公開する可能性があるとの見通しを明らかにしたという。
スペイン紙パイスは13日、捜査当局が襲撃犯と米中央情報局(CIA)との関連を調べていると報道。関係筋はポスト紙に、同団体は事件に関しどこの政府とも連携していないと語ったが、記事の筆者はツイッターで、「強奪品には金革哲氏に関する貴重な情報が含まれているとみられ、襲撃犯らが一流の各国情報機関にもてはやされるのはほぼ確実だ」と指摘した。
この団体は、今月11日にクアラルンプールの在マレーシア北朝鮮大使館の外壁にハングルで「金正恩打倒」などと書かれた落書きが見つかった件への関与を主張している。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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