古村治彦です。

 

 このブログでもご紹介したピート・ブティジェッジ(アメリカでも難読苗字とされているようです)についての記事をご紹介します。

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 今回の大統領選挙民主党予備選挙には10名以上も出馬しており、私はこのピート・ブティジェッジ(本人はピート市長と呼んで欲しいと言っています)は泡沫候補ではないかと思っていましたが、彼の出ている番組の映像を見て、頭の回転の速さと話す内容に感銘を受けました。今回の大統領選挙で民主党の候補者指名を受けることは難しいにしても、これから全国的な知名度を上げていくでしょう。日本にもこのような政治家が出て欲しいものです。


 

 ブティジェッジについていろいろと調べ見ましたが、もしこれを計画的にやっていたとするならば、恐ろしい人だとすら思えるものです。高校生の時に、ケネディ財団が主催する論文コンクールに応募しました。その内容は当時無所属の連邦下院議員だったバーニー・サンダースを取り上げ、政治における寛容と統合について書いたものです。それで優勝したブティジェッジはボストンでの表彰式に出席し、ケネディ家の人々と会います。駐日大使を務めたキャロライン・ケネディやテッド・ケネディ連邦上院議員(故人)というケネディ家の中心メンバーと高校生の頃に既に会っています。

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キャロライン・ケネディとの写真(2000年) 


 大学はハーヴァード大学、言わずと知れた世界屈指の名門校です。ハーヴァード大学はボストン郊外にあり、ケネディ家のお膝元です。ジョン・F・ケネディも卒業生です。テッド・ケネディ上院議員の事務所で夏休みにインターンをしたのは、論文コンクールで優勝したことでつてが出来たからでしょう。その後は2004年の米大統領選挙ではジョン・ケリー、2008年ではバラク・オバマの選挙運動に参加しています。

 

 ブティジェッジが生まれ育ち、今は市長を務めるインディアナ州サウスベンド市はインディアナ州北部にあって、オバマの地元シカゴから遠くありません。舅インディアナポリスよりも距離としては近いようです。オバマとの関係も良好で、オバマはブティジェーグに「民主党の未来」という賛辞を送っています。彼はただの田舎町の市長ではなく、ケネディ家とオバマという民主党内部の重要な人脈の結節点につながりを持っています。

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帰還の際に両親からの出迎えを受ける(父は2019年初めに死去) 

 2009年に米海軍の予備士官となり、2014年に既に市長になっていたのですが、休職して7カ月間、アフガニスタンで軍務に就きました。これも大きいことです。実際に軍務に就いて海外に派遣されるというのはここ最近の大統領ではいません。これがあるおかげで、「あいつは弱虫だ」という批判は説得力を持たなくなります。2017年には民主党全国委員長選挙に立候補しますが、途中で撤退します。しかし、この選挙で民主党内部、特に各州レヴェルの幹部たちとの人脈を形成し、民主党内部の人々に「この読みにくい苗字の人は大したものだ」という印象付けをすることに成功した、ということです。

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選挙から撤退する際の写真。民主党の大物ハワード・ディーンが挨拶

 

 高校生の頃からこのような道を進むと決めておおまかにでも計画して進めてきたとすると恐ろしさを感じます。さすがにこのような想定は私の考えすぎかもしれませんが、市長となって以降の動きは計画性を感じます。インディアナ州サウスベンドは人口10万で周辺も含めると30万です。彼が市長になったのは29歳の時で、これは10万人以上の人口を持つ市の市長としては史上最年少だそうで、しかも共和党が強い保守的な地盤のところに、民主党から出て当選してしまうのですから、これもまた凄いことです。

 下の記事で書かれている、ブティジェッジの戦術は興味深いです。ある民主党系のストラティジストが「トランプ個人というよりもトランプ主義(Trumpism)を批判している」という指摘をしています。これは重要な指摘だと思います。トランプ大統領個人を攻撃することは、彼に投票した人々、熱心な人々からそうではない人々まで全てを攻撃することになります。自分が投票したことは誤った愚かな行動だったと言われているようなものだからです。ですから、そこを分離できるというのは頭の良さだと思いますし、他の候補者とは違う点なのでしょう。

 

 ピート・ブティジェッジからは目が離せません。

 

(貼り付けはじめ)

 

ブティジェッジは民主党の候補者の中から台頭している兆候を示す(Buttigieg shows signs of emerging from the Democratic pack

 

エイミー・パーンズ筆

2019年3月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/435696-buttigieg-shows-signs-of-emerging-from-the-democratic-pack?fbclid=IwAR1s2zO53adF968H7gNZgOUvDk0rZexgvaugQMgW5xKXMbGEQydpjs6vDFI

 

ピート・ブティジェッジインディアナ州サウスベンド市の市長ではあるが比較的無名の人物、今2020年米大統領選挙民主党予備選挙の有力候補として存在感を増している兆候が出ている。

 

37歳になるブティジェッジが大物候補者たちの一団に割って入るかもしれないという可能性を示した最初の動きは、今週末に発表されたエマーソン大学の世論調査であった。この世論調査で、ブティジェッジは、アイオワ州においてジョー・バイデン前副大統領とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)に続く第3位に入った。

 

ブティジェッジは、世論調査アイオワ州の民主党党員集会(予備選挙)に参加予定の人々の間でバイデンの25%、サンダースの24%に続いて支持率11%を獲得した。

 

大統領選挙の最初期のたった一つの世論調査の結果ではあるが、この世論調査が行われる数週間前からメディアでブティジェッジの名前は好意的に取り上げられてきた。ブティジェッジは、CNNのタウンホールミーティング方式の一般の人々との対話番組に出演し、民主党系のストラティジストや専門家たちに良い印象を残した。

 

ブティジェッジは、今回の大統領選挙で同性愛を公表している唯一の候補者である。そして、これまでいくつか人々の注目を集める場面があった。最も近いところでは今週末にもある出来事があった。ノルウェーからの取材者からノルウェー語を話してくれるように頼まれた。

 

ブティジェッジは7か国語を操る。彼は即座にノルウェー語で答えを返した。この時の様子はユーチューブ(YouTube)で人気を集めることになった。

 

この発音しにくい苗字を持つ田舎町の市長について懐疑的であった民主党関係者たちも今では注目するようになっている。

 

民主党系のストラティジストで長年にわたり民主党所属の連邦上院議員のスタッフを務めたジム・マンリーは「数週間前、私は彼に全く注意を払わなかった。それは彼に勝利する可能性など全くないと考えたからだ。しかし今ではどんどん興味がわいている」と述べている。

 

民主党系のストラティジストであるクリスティ・セッツアーは次のように述べている。「ブティジェッジのプチ・ブームは本物だ。彼は色々な場所に顔を出している。彼は本物で興味深い人物であり、論理的な話し方でメッセージを届けられる。こうしたことで、彼はメディアから引っ張りだこになり、予備選挙に参加する民主党支持者たちの注目を集めている」。

 

いまだ出馬表明していないバイデンとサンダースは2020年の米大統領選挙の初期段階である現在、複数の世論調査で上位に来ている。現在のところ、民主党予備選挙の候補者たちは2つの集団、もしくは3つの集団に分けられるような展開になっている。

 

カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)は多くの世論調査で3位につけ、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)も有力候補となっている。

 

このトップ5の有力候補者たちに続いてまた別の候補者の一団が続くという展開になっている。

 

ニューヨーク州民主党の幹事長を務めたバジル・スマイクルは、ブティジェッジの最近の露出は、オロークにとっては悪いニュースとなるだろうと分析している。オロークは今月初めに喝さいを浴びながら出馬宣言を行った。

 

ブティジェッジは全国規模の政治の舞台で知名度上昇のために動いているが、ここ数年、民主党内部での地盤固めを行ってきた。この動きは2年前に民主党全国委員会委員長選挙に出馬した時から始まっている。

 

スマイクルは「ブティジェッジはビトー・オロークの進むコース、レーンにある程度侵食してくる可能性がある。それはブティジェーグが選挙期間で既に多くの人々に好印象を与えたからだ。2年前の民主党全国委員会の選挙から各州の民主党幹部との関係を構築している」と述べている。

 

スマイクルは、ブティジェッジは有権者たちの共感を得る優れたメッセージを発していると述べている。

 

スマイクルは次のように述べている。「他の候補者たちがトランプ個人に敵対して選挙戦に出馬している一方で、ブティジェッジは自身の生い立ちで人々の関心を集め、マイク・ペンス副大統領とトランプ大統領を支援している人々が体現している共和党の偽善性に対抗して出馬しているということをアピールしている。これは、トランプ大統領自身というよりもトランプ主義を攻撃するという戦術であり、不平不満を持っている幅広い有権者たちにアピールする可能性を持つ」。

 

ブティジェッジの選対はエマーソン大学の世論調査の結果についてコメントをしないだろう。しかし、選対の報道担当リス・スミスは、最近の選挙運動とメディアへの出演が、ブティジェッジに対する支持の拡大につながっている、と述べている。

 

スミスは次のように述べている。「私たちは常日頃から多くの人々にピート市長を見てもらえばもらえるほど、好きになってもらえるはずだという確信を持っています。彼はミレニアル世代に属する中西部州の市長として、他の人々とは全く異なる言葉を皆さんに届けることができます。世代交代というピート市長の発するメッセージは予備選挙が早い段階で行われる各州とそれ以外の州に住む有権者の皆さんの共感を集めています。彼の発する言葉や行動に対する興味関心が高まっているのを私たちは感じています」。

 

ブティジェッジに懐疑的な人々もいる。ある民主党系のストラティジストはエマーソン大学の世論調査結果の複数の問題点について次のように指摘している。

 

このストラティジストは、世論調査の結果は偶然の産物にすぎない、それは誤差が6%もあるもので、数百人しか対象にしていないと指摘し、「ブティジェッジが台頭しているというのは馬鹿らしい話だ」と述べた。

 

他のストラティジストたちはエマーソン大学の世論調査には問題点があるにしても、ブティジェッジは好調だと述べている。

 

民主党系のステラティジストであるエディ・ヴェイルは次のように述べている。「ブティジェッジは長年にわたりよく計算して実行し努力してきたことの利益を今受け取っているという点が彼の最大の凄さと思う。彼はあらゆる場所に出ている。いろいろな人々に向けて話をしている。多くの集会に出席し、インタヴューを受けている。人々に大きな印象を与えている。これまでの努力の積み重ねが世論調査の数字に出始めているのだと思う」。

 

ストラティジストたちの間で共有されている疑念、それは、ブティジェッジが適切なタイミングで浮上してきたのか、というものだ。

 

セッツアーは「問題はブティジェッジのピークが6カ月前に来てしまっていることだ。それでも彼にとって何か良いニュースはないのかって?それなら、ビトーのピークは1年早過ぎたということかもしれないということだ」と語った。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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