古村治彦です。

 

 2019年4月26日に副島隆彦先生の最新刊『絶望の金融市場──株よりも債券崩れが怖ろしい』が発売になります。

 

 以下にまえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にしていただき、是非手に取ってお読みください。

 

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 絶望の金融市場 株よりも債券崩れが怖ろしい


(貼り付けはじめ)

 

まえがき

 

私は、『「トランプ暴落」前夜』を前年10月に書いて予言を当てた。そして今年である。

 

トランプが「株高[かぶだか](だけ)は死守せよ」に動けば、その周まわりに危機(危険)がはみ出す。

 

株ばっかりを、政治の力で無理やり吊つり上げると、ジャンク債ボンド(ボロくず債[さい])市場が崩れる。ジャンク債ボンドとは、ハイイールド債(さい)であり、各種の高危険[こうきけん](ハイリスク・ハイリターン)債である。日本も含めて投資家たちは、株の儲(もう)けに飽(あ)き足らずに、これらの高ハイリスク危険の仕コンポジット組み債(さい)に手を出している。これらは、株式(ストック)のお化ばけ、である。ETF[イーティーエフ](上場投資信託)やら「インデックス型投信」やら、「BB(ダブルビー) 格(かく)以下の低(てい)信用債券」と言ったりもする。

 

今の世界の金融・経済は、アメリカのトランプ大統領の決断で動いている。彼がズルズルと引きずり回している。

 

年明けにトランプが、FRB[エフアールビー](アメリカの中央銀行)のパウエル議長を、脅し上げて政策金利(短期金利)の利上げをやめさせた(1月30日)。この日からすべてがガラリと変わった。

 

2月27日には、パウエル議長は、議会証言で「(2019年の)年内で、FRB資産の縮小計画を終了する」と言った。すなわち、「FRBが抱える米国債の売却方針を撤回して、このまま抱(かか)え続ける」と発表した。パウエルは今にも泣き出しそうな顔だった。いじめっ子のジャイアンのトランプに、教室でカツアゲを喰くらったノビ太くんのような感じだ。

 

これは米トランプ大統領による〝トランプ独裁(どくさい)〟だ。

 

世界の金融・経済の流れがガラリと大きく変わった。今年の1月からだ。トランプがもの凄すごい剣幕でジェローム・パウエルを脅迫して「コラー、利上げするな。量的引き締め(クオンティテイティブ・タイトニング、quantitative tightening)もするな。緩和[かんわ](イージング・マネー)を続けろ」「私に逆らうと首を切るゾ」と本当に圧力をかけた。前代未聞(ぜんだいみもん)の激しさであった。

 

このために、FRBのそれまでの、①利上げと②通貨量(マネーサプライ)引ひき締しめへの転換の大方針が、ひっくり返った。2015年初めからのFRBの大だい方針が大だい転換した。

 

FRB(連邦準備制度理事会)は、政府から独立した組織である、ということになっている。民間銀行です、というフリまでする。政府の銀行ではありません、と。ここに秘密がある。ここへ豪腕(ごうわん)大統領から、「お前たちが利上げを公表する度(たび)に、株(かぶ)が暴落するじゃないか。それで景気が悪くなる。利上げをやめろー、これ以上景気が悪くなるのを喰くい止めるんだ」と怒鳴られるものだから、FRBの理事や各[かく](全米に12行ある)連銀(れんぎん)の総裁たちが、この剣幕(けんまく)にすっかり脅おびえてしまって、ホワイトハウスに屈服してしまった。

 

昨年12月20日に、パウエルは「来年は予定通り2回、利上げをする」と威厳をもって発表した。

 

そうしたら、12月24日に、クリスマス・イブ暴落が起きた。NY株は3000ドル落ちた。顔色(がんしょく)を無くしたパウエルは、1月30日に、FOMC[エフオーエムシー](米連邦公開市場委員会)のあとの記者会見で、ボッキリと背骨を折られて、利上げと量的引き締め政策を放棄した。

 

アメリカは景気がいい。そしてその頂点(ピーク)にある今のうちに、どんどん金利を上げて、景気を引き締めて過剰資金(加熱した投機、バクチの資金。すなわち過剰流動性[かじょうりゅうどうせい])を、金融市場から奪い取らなければいけないのである。FRBにしてみれば、何も間違った金融政策の舵取りはしていない。おかしいのはトランプの方だ。確かにそうなのだ。トランプの方がメチャクチャだ。だが、このトランプの商売人(都市開発デベロッパー) 上(あが)りの、ドウ猛な決断にも一理ある。アメリカの景気をここで崩したら、あとが大変なことになる。空(カラ)の、見せかけの景気回復であるが、トランプが、この2年間で、自力(じりき)で手塩(てしお)にかけて無理やり作ってきた景気だ。

 

2月27日のパウエル議長の議会証言は、2014年まで続けていた(前の前のバーナンキ議長の)金融緩和[かんわ](イージング・マネー)の方針を復活させる。これからアメリカは、ジャブジャブ・マネー(QE[キューイー]政策)に戻ることを意味する。利上げどころか、利下げをするだろう。ジャブジャブ・マネーの市場への放出もする。「行くところまで行けー」だ。そしてそのあと、この危険な政策が、どのような激しい副作用を起こして、大きな歪(ゆが)みがどこに出てくるか。私たちは凝視するべきだ。行け、行け、どんどんは有あり得えない。調子に乗ると、また、ハシゴを外はずされる。

 

トランプたち(彼への助言者たちも)は、「株価さえ吊(つ)り上げておけば、アメリカ国民は安心する。景気がいいという気持ちになる。FRBよ、邪魔するな」とFRBを脅した。

 

金融引き締めをやらないで、現状のまま金融市場に溢(あふ)れ返る余(あま)った資金で、巨大な金融バクチを、ヘッジファンドどもや、HFT(エイチエフティー)、超(ちょう)高速度株(かぶ)取引業者たち(後述する)に続けさせる。株価をハネ上げ(急上昇)させたり、急に下落させたりして、これで市場参加者(ステイク・ホールダー)たちに儲(もう)けさせる、ことを続ける。

 

“トランプ独裁”の決断は、政治の力で株価を操作、操縦[そうじゅう](マニュピュレイション)しながら、見せかけのアメリカの繁栄をなんとか続けることである。

 

しかし、それでも世界経済は暗雲が立ち込める。今にもどこかで金融危機(ファイナンシャル・クライシス)が起きそうだ、と投資家たちがソワソワして不安がっている。この動物的な心理と反応が正しい。

 

私は、逆張り人間のヘソ曲がり(contrarian、コントラリアン)であるから「反対に反対する」という考え方をいつもする。すると、どういう結論になるのか。元に戻るのか。いや、そうではない。ただちには分からない。私は権力者(支配者)と世の中の大勢(たいせい)が言うことを信じない。自分が持つ予知(よち)能力(近[きん]未来を予言する力)を信じて、次々と押し寄せる新しい事態に、慎重に備える。

 

この国で、ずっと、もう20年間、「もうすぐ金融危機が来る。大恐慌が近づいている」と、書いてきたのは私だ。この私が、大きく態度を変えて、「日本もアメリカも、経済(景気)はしばらく大丈夫です。安心して、さらに値上がり利益を待ちましょう」と言う訳(わけ)がないだろう。私は、「金融市場に対する根本的(根源[こんげん]的) 悲観(ひかん)主義者」だ。

 

私は、「そろそろ危ない。危機が迫っている。用心しなさい」と、本に書いて、金融崩れ、株崩れを事前に警告を発してきた。だから、私の新刊本を買ってササッと読む賢明(けんめい)な人々は、早めにポジション(建たて玉[ぎょく])を手仕舞(てじま)って、大損(おおぞん)を出さないで、ここまで生き延びてきた。

 

だから、今の私は、トランプが号令をかけるアメリカの「行け、行け、どんどん、どこまでも」に反対はしない。あいつらにやらせるしか、ないではないか。どこまでもドンドンやりなさい、その先に地獄が見えるだろうから、と私は唱える。かつ、日本国内でもどうせトランプに追随するから、私が強く主張するのは、「政府や日銀は、金融市場への規制を強めるべきだ」ではない。その反対に「規制をするな。一切するな。全くするな」である。「このままドンドン、ガンガン、行けるところまで行け。地獄まで行け」だ。

 

市場取引に規制をかけると、投資家心理が冷え込んで、株が下落して、それでさらに景気が悪くなる。と、政府(財務省)も日銀もトランプに右に倣ならえ、で思っている。大勢[たいせい](=体制) 順応が彼らの習性だからだ。アメリカのトランプ独裁の影響で、日本もゼロ金利(長期金利市場なら「マイナス金利」)を継続し、金融引き締めをしない(ジャブジャブ・マネーのまま)だ。

 

私が守ればいいのは、私の本を買って読んでくれる人(読者、お客さま)だけだ。

 

私は自分の読者だけをひたすら守る。彼らに間違った判断をして大損をすることをさせない。そうやって、20年間、ここまで、地道に築いて来た自分の信用だ。私は自分の読者(お客)だけは何があっても守る。

 

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絶望の金融市場──株よりも債券崩れが怖ろしい[目次]

 

まえがき─2

 

第1章 〝トランプ独裁〟が経済を変えた

 

アメリカの金融崩れが阻止された─22

フラッシュ・クラッシュの激震が為替市場を襲った─25

これからは債クレジット券市場が危ない! 32

バフェットまでもが株で大損した─44

ヘッジファンドが〝踏み上げ〟を喰らった─54

ニューヨークの株式市場は大爆発寸前で生き延びた─58

ロシアは米国債を売却して金(ゴールド)を買い増した─62

〝トランプ独裁〟で金融緩和の再開が決まった─65

私たちは危険な投資の時代に突入している─67

 

第2章 金融理論はみんなゴミだった

 

金融理論は全部ゴミくずだったことがバレた─70

トランプは若い頃から民主党リベラル─74

ジャブジャブ・マネーの洪水に呑み込まれる世界─80

もうすぐ何か巨大なことが起こる─103

 

第3章 株よりも債クレジット券市場の崩落が恐ろしい

 

レバレッジをかけてパワーアップした株もどきの金融仕組み債─106

ノックイン債でノックアウトされる恐怖─112

あまりにも危険な不動産担保抵当証券が平気で売られている─114

企業の債務不履行リスクをも対象にする金融派生商品CDS 122

“ヘッジファンドの皇帝”が鳴らす警鐘─124

 

第4章 ボロくず債の暴落から恐慌突入

 

ボロくず債崩れが国債市場をぶち壊す─130

パウエルFRB議長はジャンク債の暴落が怖い─136

日銀黒田総裁は誰と闘っているのか─141

「それでも金融市場は、しばらくは大丈夫。狼狽えるな」─146

ソフトバンク株の上場は二重評価のインチキだ─148

粉飾決算をしてでも株価を維持しようとする社長たち─151

買えなくなるから、今こそ金を買い増すべきだ─154

人騙し業界人のポジション・トークに乗せられるな─160

本当に危険なのはトランプの任期が終わる2024年─166

大戦争か大恐慌か──80年周期で大きな危機が来る─172

 

第5章 経済学はYイールド= Mマネーですべて分かる

 

経済学の理論はたった一つの公式で説明できる─180

「フィッシャーの交換方程式」がマネタリズムを生んだ─185

ケインズの偉大さは過剰生産の発見にある─191

Y = C + I という人類の大原理─197

 

第6章 「政府マネー」は間違っている

 

貨幣数量説は嘘っぱちのインチキ理論─204

マネタリズムに屈服したニューケインジアン─207

インタゲ論は完全に敗北した─210

スイスの国民投票で否決された政府マネー─214

米ドルの信用力が落ちてきた─224

通貨発行は中央銀行の役割でなければならない─227

皇帝や将軍たちも金貸し業をやっていた─233

国民負担率が5割を超したら江戸時代の「五公五民」だ─236

やっぱりケインズが偉大だ─241

第7章 アメリカは北朝鮮を押さえ込む

 

2月28日の米朝会談(トランプと金正恩)の決裂、もの別れ─248

ディールとネゴシエイションの違い─259

トランプはじわじわと金正恩を追い詰める─263

 

あとがき─269

 

【特別付録】隠れたお宝のモノづくり企業 厳選14銘柄─272

 

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あとがき

 

私の最新作の、この『絶望の金融市場 株よりも債券崩れが怖ろしい』を書き上げる時に、私は大きな謎をひとつ解いた。

 

アメリカは、自国の景気(経済)を必死で維持するために、〝トランプ独裁〟で無理やり利下げと量的緩和[りょうてきかんわ](イージング・マネー。ジャブジャブ・マネー)の再開に舵(かじ)を切った。

 

現代の欧米経済学の根底にあるのは、①実じつ物ぶつ経済(もの、財[ざい]の市場)と②金融(おカネ)経済との関係をどのようにとらえるか、である。

 

私はここで、Y=Mというたったひとつの数式(公式)で、理論経済学はすべてを書き表わしてきたのだ、という秘密を大発見した。

 

Y(もの)=M(お金)という一行の式(方程式)で、経済学(エコノミックス)なるものの謎は解けた。このことを本書の第5章で、大急ぎで書いた。

 

マネタリズム(シカゴ学派)も、ケインジアンも、マルクス経済学も、すべてY=Mで出来ていた。

 

このことが分かれば、日本人の鋭い、生来頭のいい人たちは、「理論経済学という暗黒大陸(あんこくたいりく)」に踏み込んでゆける。日本人にこの100年間、解けなかった西洋人の近代学問(サイエンス)というものの真髄に触れることができる。私が勢い込んで何を一体、書いているのか、分からなくていいですから、どうか、第5章の私の大発見を読んでください。

 

本書をたった一カ月の急ごしらえで(構想には半年かかっている)作るに当たって、徳間書店学芸編集部の力石幸一氏から、いつもながらの強い支援をいただいた。記して感謝します。

 

2019年4月

 

副島隆彦 

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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