古村治彦です。

 2019年6月から大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会が毎月1回のペースで実施されている(8月以外)。1回目(6月)と2回目(7月)の討論会の参加条件は、民主党全国委員会が承認した世論調査で3回以上1%以上の支持率を記録するか、政治献金者を6万5000名以上か各州最低200名以上を20州以上記録することだった。1回目、2回目の討論会には20名が参加となり、それぞれ2晩に分けて開催された。 

 3回目(9月)、4回目(10月)の討論会の参加条件は厳しくなり、民主党全国委員会が承認した世論調査で4回以上2%以上の支持率を記録し、政治献金者を13万名以上が各州400名以上を20州以上で記録することだった。9月の討論会の参加条件をクリアしたのは10名だった。10月の討論会の参加条件をクリアしたのは、12名となり、2晩に分けて実施するか検討中だということだ。democraticpresidentialdebateseptember2019001

9月の討論会の様子

 5回目の討論会の条件は更に引き上げられた。世論調査の支持率では9月13日から討論会の1週間前(正式な日取りは決まっていない)の間で、民主党全国委員会が承認した全国規模もしくは各州の世論調査で3%以上の支持率を4回以上、加えて早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)での世論調査で支持率5%を2回以上記録することとなった。政治献金の面では政治献金者16万5000名以上、各州600名上を20州以上記録することとなった。この両方をクリアすることが必要になる。

 献金者数の条件は倍々ゲームで増えていたが、今回は増加幅が小さかった。9月の討論会参加条件締め切り期限である8月28日の時点で13名の候補者が13万人以上という条件をクリアしていたので、9月と10月で3万5000人を増やすことは大変ではあるが、献金者数の条件はクリアしやすい。支持率に関する条件は難しい。候補者の戦略も絡んでくる。少ない資金とスタッフをどう使うかということにかかってくる。早期に予備選挙が実施される4州を重点的に回っている候補者の場合は、5%を2回という条件のクリアに欠けることになる。全国各地を回っている候補者でも4州に重点を移す人も出てくる可能性がある。あまり条件を厳しくし過ぎると、「候補者を排除しようとしている。どの候補者が生き残るかどうかを決めるのは民主党全国委員会ではなく、有権者だ」という批判が出るのを民主党全国委員会が避けようとしている。

 トップ5のジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジはこの条件を早々にクリアするだろう。

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左からブティジェッジ、サンダース、バイデン、ウォーレン、ハリス 

 しかし、中位グループからは脱落者が出るだろう。9月の討論会の際に10名が条件をクリアしたが、下半分の5名の中でどれほどの候補者が条件をクリアできるか注目される。下位5名には、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)、フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官(民主党)、エイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、IT経営者のアンドリュー・ヤンが入った。

 10月の討論会は9月の討論会と参加条件が同じで、9月の時に登壇できた候補者たちは自動的に登壇できる。更に、あと少しのところで条件を満たせなかった富豪のトム・ステイヤーとトゥルシー・ギャバ―ド連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)が10月の討論会の参加条件を満たしたので、登壇者は12名となる。

 下位5名に更に2名が加わった7名から11月の討論会へ参加できるかどうかで脱落者が出る。12月の討論会への参加条件が今回発表されなかったので、更に厳しい条件が課せられることになり、11月の討論会に参加できなかった候補者は最高のアピールの場に参加する機会を失う。 

 予想外の健闘を見せているアンドリュー・ヤンは11月の討論会の参加条件をクリアする可能性が高い。トム・ステイヤーも早期に予備選挙が実施される各州での世論調査で数字を上げているので条件をクリアする可能性が高い。問題は中途半端に知名度と人気があり、全国を回る選挙運動を展開している中位の候補者たちだ。自分の持っている資金力と人力を冷静に判定してどのように投入するかを判断しなければ条件クリアできないということになる。ブッカー、オローク、クロウブッシャー、カストロといった人々は難しい選択を迫られることになるだろう。

 討論会に出られるかどうかは、選挙運動を続けられるかどうか、負け犬イメージがつくかどうかという点で重要だ。各候補者の戦略が注目される。

(貼り付けはじめ)

民主党全国委員会は5回目の討論会の条件を引き上げ(DNC raises qualifying thresholds for fifth presidential debate

マックス・グリーンウッド筆

2019年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/462633-dnc-raises-qualifying-thresholds-for-fifth-presidential-debate

民主党全国委員会は月曜日、5回目の大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会の参加条件を発表した。11月の討論会に参加したいと望んでいる候補者たちに対するバーは引き上げられた。

5回目の討論会に参加するための条件として、候補者は16万5000人以上の政治献金者、少なくとも20州以上で1つの州600名以上を集めるというものが設定された。

また、民主党全国委員会が承認した全国規模もしくは各州の世論調査で少なくとも4回以上3%以上の支持率を集め、加えて早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)での世論で少なくとも2回以上5%以上の支持率を獲得することという条件も設定されている。これらの条件を満たすための世論調査は2019年9月13日から11月の討論会の1週間前に発表されたものが対象となる。

民主党全国委員会はこれまで厳しい討論会参加条件を課してきた。3回目と4回目の討論会の参加条件は政治献金者の数が13万、支持率2%以上を4回以上記録することとなり、最初の2回の討論会の参加条件から倍増となった。

月曜日に発表された新しい条件は複数の候補者たちが予測していたような厳しいものとはならなかった。ここ数週間、多くの選対が政治献金者の数に関する条件が既存の13万人から倍増されるだろうと警戒していた。これだと参加条件として政治献金者の数は26万となる。

新しい参加条件には、民主党全国委員会が抱える大統領選挙民主党予備選挙を進めるにあたっての複雑な思惑が反映されている。

民主党全国委員会は歴史上類を見ない多数のしかも多様性に富んだ候補者たちを監督しながら党の指名候補までもっていかねばならない。しかし、民主党全国委員会の幹部たちは、「民主党全国委員会は有権者が候補者を選択する前にその数を絞ろうとしている」という批判を避けようともしている。 現在のところ、大統領選挙民主党予備選挙には19名が立候補している。

複数の候補者たちが討論会参加に苦闘した末に大統領選挙民主党予備選挙から撤退した。

ワシントン州知事ジェイ・インスリー、前コロラド州知事ジョン・ヒッケンルーパー、カースティン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はこの秋の民主党討論会に参加することはできないことが明らかになって選挙から撤退した。ニューヨーク市長ビル・デブラシオは同じ理由で先週選挙戦から撤退した。

新しい参加条件の中で最も重要な変化は、世論調査の支持率の条件が2つになっていることだ。候補者たちは全国規模もしくは各州の世論調査で支持率3%以上を4回以上記録するか、早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)での世論調査で支持率5%以上を2回以上記録するかという条件になっている。

新たに出された政治献金者の条件を既にクリアしている候補者の数はまだ少ない。ジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは政治献金者の数に関する条件を既にクリアしている。

2019年9月13日以降に民主党全国委員会が承認した世論調査の結果は3つしか発表されておらず、自動的に支持率の条件をクリアしている候補者はいないということになる。

新しい条件設定は複数の候補者たちにとって新たな困難となる。10月の討論会に参加するにあたり、条件をそこまでぎりぎりではない状態でクリアした候補者たちにとっても厳しいものとなる。

ここ数週間、候補者たちの中には民主党全国委員会が討論会参加女権を引き上げることが予想されることを、政治献金依頼の文面に反映させている人々がいる。新しい参加条件が発表されて数分後に、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は支持者に向けた献金依頼のEメールを送り、その文面がニュースとして取り上げられた。

ブッカーは次のように書いている。「今回新たに発表された16万5000という数は、私たちが皆さんに正直でなければならない理由を改めて認識させてくれます。16万5000人の政治献金者今回のレースで飛び越えねばならないバーの高さはまた引き上げられ、これからも上がっていくことでしょう。これは民主党全国委員会が提示する条件ということにとどまりません。私たちの選挙運動は選挙戦にとどまり、当の指名を勝ち取るために規模を拡大していく必要があります」。
(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論