古村治彦です。

 今回はウクライナ疑惑について、より短い記事をご紹介する。前回は長い記事を何本もご紹介したので読みにくいものとなってしまった。

  今回アメリカで大きな議論となっているウクライナ疑惑について、簡単に言うと、「今年の7月25日にトランプ大統領がウクライナ大統領に電話をして、自分の大統領選挙での再選にとって強敵となるジョー・バイデンと息子についての振りとなる情報を見つけるために捜査をして欲しいと述べた。そして、捜査をさせるための圧力として、アメリカがウクライナに与える国家安全保障援助を停止してみせた。これには大統領周辺の人物も絡んでおり、個人弁護士のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長もウクライナに働きかけを行った。7月25日の通話記録は国家機密など含まれていなかったが、外に漏れることがないように、より厳しい管理をするようにホワイトハウス高官たちが働きかけた」というものだ。簡単に書いてもこのように長くなってしまう。

  ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナに関わり、バイデンの次男ハンター・バイデンはウクライナの天然ガス会社ブリズマの取締役となった(2014―2018年)。これら「バイデン家」とウクライナとのかかわりの中で、ジョー・バイデンの選挙戦にとってマイナスの情報がないかをトランプ大統領がウクライナ政府に探させようとした、ということになる。これが事実ならば権力濫用であり、内政干渉であり、極めて重大な問題だ。

 内部告発者からの告発の書簡の公開をトランプ政権が拒否したことで、連邦下院民主党は弾劾に向けた調査を正式に開始すると発表した。その後、告発書と通話記録の要約が公開された。既に書いたように、弾劾が成立する可能性は今のところ低い。それでも民主党としては今回の話が筋の良いものであると考えているようだ。また、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っているバイデンを狙ったものということで、受けて立つということにもなったのだろう。

  トランプ大統領陣営がバイデンを大統領選挙で脅威に感じているということはあるだろうが、スキャンダル探しを外国政府に圧力をかけてまでやらせようとするだろうかということは前回も書いたが今でも疑問に思っている。

 バイデンの名前が出たことはバイデンにとっては痛手となる。日本のことわざで言えば「火のない所に煙は立たぬ」なのか「痛くもない腹を探られる」ということなのかは分からない。しかし、バイデンを支持しない人々(共和党支持者と民主党支持者で他の候補者を支持している人たち)には何かしらのイメージを与えることになる。

 バイデンのマイナスは民主党の他の候補者、特に三強を形成しているエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースにとってはプラスとなる。トランプ大統領にとって誰が与(くみ)しやすしとなるかと言えば、ウォーレンかサンダースとなる。全く根拠のない想像での話でしかないが、トランプ自身がこのスキャンダルを仕掛けたのではないかとさえ思えてしまう。

 そして、私は、バイデン家とウクライナの関係の具体的内容について関心を持っている。このことについては近いうちに調べたことをご紹介できればと思う。

(貼り付けはじめ)

バイデンの2020年大統領選挙に対する家族の問題(Biden's 2020 family problem

マイク・アレン、マーガレット・タレヴ、アレクセイ・マクカマンドアップ筆

2019年9月27日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/joe-biden-family-hunter-ukraine-donald-trump-2020-93dec9f4-cd1b-4235-b538-7d902a81ba89.html

ジョー・バイデンの出馬を押しとどめていたのはジョー・バイデンの家族だった。現在、バイデンの家族がバイデンの足を引っ張る可能性が出ている。

何が問題か:エリザベス・ウォーレンが各種世論調査の支持率で追いつている中で、ジョー・バイデン前副大統領は家族に関する疑惑と論争について答えている。

父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、次男ハンター・バイデンはウクライナのガス会社の有給の取締役を務めた(現在は退任)。

民主党最高幹部たちはウクライナをめぐるスキャンダルがバイデンにとっての大きな妨げになることを懸念している。なぜならばバイデンが人々の間で不人気な問題とプロセスに関係することになり、ハンター・バイデンに関する質問も避けることはできないからだ。

事実確認記事や「確かな話」を掲載する記事が出ても、巻き添えで負ってしまう損害(collateral damage)を避けることはできないだろう。

今回大統領選挙には関係していないある民主党系ストラティジストは、ハンター・バイデンをめぐる問題は、ウクライナでの彼のビジネス活動に限定されているだけではなく、彼の全ての個人的、ビジネス上の問題に及んでいる、としている。

ハンター・バイデンに関しては全て7月に発行された『ニューヨーカー』誌に掲載されたアダム・エントスの記事で詳述されている。エントスはハンター・バイデンとバイデン選対から多大な協力を得ていた。エントスは記事の中で次のように書いている。「ハンター・バイデンは父の選挙運動を危機に晒すことになるのか?ジョー・バイデンの息子ハンターのビジネス上の取引と騒がしい個人生活について様々な調査がなされている」。

民主党系のストラティジストたちは口を揃えて、「トランプは冷酷に、ハンターに関するスキャンダルを歪めながら利用するだろう」と指摘している。

トランプの計算は心理学上の効果を狙ってのものだ。トランプ大統領はバイデンが彼の息子に関して懸念していることを分かっている。

バイデンにとってプラス面となるのは、トランプ大統領がこのように挑発的な言動をしているのは、トランプ大統領にとってバイデンが最も強大な脅威となっていることを裏付けているというものだ。

ヒラリー側からの視点:ヒラリー・クリントンの長年の側近フィリップ・レインズは本誌に対して、この光景は以前にも見たことがあると述べた。

レインズは次のように述べた。「これは経験、人生、過去の現実とは何も関係していない。人々は自分たちが望む形でイメージを作るものだ。これは誇張などを超えたものだ」。

バイデン選対の思惑:バイデンは何も悪いことをしていない。

バイデンの顧問の一人は私に対して、ウクライナスキャンダルからの巻き添えによる損害は小さいものとなるだろうと述べた。この人物はその理由として、バイデンは副大統領だったので、何も悪いことをしていなくてもこのようなスキャンダルに巻き込まれやすいものだ、と人々は考えるからだとしている。

バイデン選対は資金集めに関して、選挙運動開始2週間目以来最高の資金を今週集めたと発表した。

バイデンはこれからも医療制度、気候変動、銃規制について主張し続ける予定だが、トランプ大統領について無視することはない。

結論:弾劾に関する調査から最大の政治的利益を得るのはエリザベス・ウォーレンということになる。

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内部告発者は、トランプ大統領が権力を濫用して、外国への介入を強要したと告発した(Whistleblower alleges Trump abused power to solicit foreign interference

ザカリー・バス筆

2019年9月26日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/trump-ukraine-whistleblower-complaint-released-e2524316-fb2f-

418e-ae57-51892e709a4c.html

トランプ大統領とウクライナに関する論争の中心には内部告発者からの告発がある。内部告発者はトランプ大統領が「2020年の大統領選挙について外国からの介入を誘うために大統領としての権力を利用」したとし、ルディ・ジュリアーニとビル・バー司法長官もこの行為に関与しているようだと指摘している。

何故問題なのか:トランプ政権は最初告発書を後悔することを拒否した。その結果、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は火曜日に正式に弾劾に向けての調査を開始するという決定を行うことになった。ペロシ議長の決定の発表からの圧力を受けて、トランプ政権は告発書とその前にトランプ大統領とウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーとの間の7月の通話記録の要約を公開した。

要点:内部告発者は告発した行動を分類している。この行動について、政府高官たちは、「アメリカの国家安全保障に関しリスクを高め、アメリカの国政選挙に対する外国からの介入を防ぐためのアメリカ政府の努力を台無しにする」ものだと考えていると内部告発者に述べた。内部告発者は行動を4つに分類している。

1. 7月25日の大統領による電話:複数のホワイトハウス高官が内部告発者に語ったところによると、彼らはウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとトランプ大統領との間の電話の内容を知り、「大いにショックを受けた」ということだ。通話の中で、トランプは「ウクライナ大統領が2020年の大統領選挙で再選を助けるような行動をとるように圧力をかけようと」した。

2.この通話の記録へのアクセスを制限する行動:内部告発者は次のように述べている。7月25日の電話の後、ホワイトハウス高官たちは「この通話に関する全記録、特に逐語的に文字起こしされたデータを“厳重に保管”するように介入した」。ホワイトハウスの弁護士たちは、ホワイトハウスのスタッフに対して電子データにした通話記録を、機密情報を含むデータを保管するために使われる別のシステムに移すように指示した。通話記録には国家安全保障に関連する内容は含まれていなかった。

告発書の脚注で言及されているところでは、「トランプ政権が“国家安全保障上微妙な情報を守るからではなく、政治的に微妙な情報を守ることを目的として”、別のシステムを利用しており、今回が初めてのことではない」ということであった。

3.継続される懸念:この通話がなされた後、駐ウクライナ米公使カート・ヴォルカーとEU駐在米大使ゴードン・ソンドランドはウクライナ政府高官たちと会談し、彼らに対してトランプ大統領からの要求にいかにして「対処」すべきかに関し助言を与えた。トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニはマドリッドに飛びゼレンスキー大統領の補佐官と面会し、その他のウクライナ政府高官たちと接触し、7月25日の通話に関する「直接的な補足」を行った。

4.7月25日の大統領の通話に至るまでの状況:内部告発所の中で内部告発者が最も多く言及しているのは、ウクライナの検事総長ユーリー・ルツェンコ(2019年8月29日に退任)が2019年3月にジョー・バイデンを含むアメリカ政府高官たちに対する汚職事件の捜査をどのように遂行していたかの詳細だった。この告発が出た後に、ジュリアーニがルツェンコに2度面談し、2020年の大統領選挙でのトランプの再選に関連して捜査を求めるために5月にはウクライナを訪問する計画を立てていた、というニュースが出た。

複数のアメリカ政府高官たちは内部告発者に対して、ジュリアーニの国家安全保障政策決定プロセスを迂回していることに対して「深く憂慮」していると語ったと述べている。

複数のアメリカ政府高官たちはまた内部告発者に対して次のように語ったと述べている。「ウクライナ政府の高官たちは、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との間で電話か会談が行われるかどうかは、ルツェンコとジュリアーニによって話し合われた諸問題について“協力”姿勢を見せるかどうかにかかっているということを信じるようになっていった」。

7月中旬、内部告発者はトランプ大統領が行政管理予算局に対してウクライナ向けの国家安全保障援助を全て一時停止するように命令した。行政管理予算局の高官たちはその命令の根拠については分かっていなかった。

明記すべきこと:内部告発者は今回の告発内容について自分で直接目撃していない。しかし、内部告発者に語った政府高官たちの言葉は正確だ、「それは、ほぼ全てのケースで、複数の高官たちが個別で話す内容はそれぞれ一貫していた」からだとも述べている。

情報機関の監察官マイケル・アトキンソンもまた内部告発の内容は信頼性があると述べている。

内部告発から新しい詳細が出ることでこの話は更新されている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論