古村治彦です。 
democraticpresidentialdebate4thoctober2019001

 4回目のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会がオハイオ州で開催された。出席者は12名で、ボイコットを示唆していたトゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)も出席した。今回の討論会は最近支持率を上げているエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)に対する攻撃が目立つ展開となった。

元々、「ウォーレン議員は計画立案者タイプであって、計画を実行するタイプではない」という批判が根強くある。ウォーレンは様々な政策提案を数多く行っている。前歴がハーヴァード大学法科大学院教授ということもあるのか、レポートや報告といったたぐいのものを出すのを苦にしないタイプなのかもしれない。しかし、それが「政治は実行することが大事だ」という批判を招いている。

 民主党予備選挙の争点は、「メディケア・フォ・オール」だ。これは簡単に言えば、国民皆保険を導入するということだ。連邦政府が健康保険を主管するということである。この計画の主導者であるバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、単一支払者制度を主張している。これは政府が税金で資金を集めて健康保険を実施するというものだ。これに対して、民間の保険会社の制度も残すという主張を行っているのがインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジだ。

 このような「社会主義的」な政策には、中道派や右派であるジョー・バイデン副大統領やエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)が非現実的だとして攻撃している。政府が健康保険分野で民間を圧迫するなという主張をしている。一方で、若者たちを中心に、高い保険料を徴収して、健康保険で莫大な利益を挙げている民間会社に任せるべきではない、という考えからサンダースを支持する人々も多い。「ヨーロッパ諸国や日本はそうやっているのに」という主張をしている。

 メディケア・フォ・オールを実施するとなるとコスト面が心配だ、結局増税につながるというのが反対派の主張であり、サンダースやウォーレンは、税金は上がるが、それまで払っていた保険料はなくなる訳で、家計全体で見ると負担は減ると反論している。

 アメリカのエネルギーを持続可能なものに移行させるという「グリーン・ニューディール」についても左派であるサンダースとウォーレンに対して、中間派や右派から非現実的だと批判が起きている。特に、連邦政府が雇用保障をするという点が夢物語だという批判に対して、サンダースは2000万人分の雇用が生み出されると主張している。

 アメリカ軍のシリアからの撤退というドナルド・トランプ大統領の決定については、アメリカ軍の撤退は支持するが、無計画性のためにクルド人が犠牲になっているという批判を各候補が行った。アフガニスタンでの従軍経験があるブティジェッジは少数の特殊部隊は残しておくべきで、アメリカは約束を破ったので名誉が傷ついたと主張した。一方、イラクとアフガニスタンで従軍経験があるギャバードは、そもそもシリアで政権転覆のための戦争をさせたことが問題なのだ、と述べた。

 ウクライナ疑惑に関しては、バイデンが討論会の壇上で、「自分も息子も何も間違ったことはしていない」と述べた。仕事についてはきちんと分けていたのだから、と述べている。しかし、バイデンの主張に対しての疑念はずっと残り続けるだろう。

 今回の討論会は左派対中道派・右派の構図で、トップとなったウォーレンに対する攻撃が激しかった。

 次回は討論会についてのより詳しい分析と評価についての記事をご紹介したい。

(貼り付けはじめ)

ウォーレンは、「メディケア・フォ・オール」のコストについてライヴァルたちから攻撃を受けた(Warren takes fire from rivals on cost of 'Medicare for All'

ピーター・サリヴァン筆

2019年10月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/healthcare/465979-warren-takes-fire-from-rivals-on-cost-of-medicare-for-all

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は火曜日夜の討論会で他の候補者たちから攻撃を受けた。ウォーレンの「メディケア・フォ・オール」政策と中流階級への税率を引き上げるかどうかについて答えを明確にしていないことについて批判を受けた。

ウォーレンは、ここ数週間、多くの世論調査で支持率の数字を伸ばしている。ウォーレンは自身の「メディケア・フォ・オール」政策の財源として中流階級への税率を引き上げるのかという質問にはっきりと答えなかった。ウォーレンは自分のスタンスは保険料と控除が廃止されることで中流階級のコストは下がるということを考慮に入れていると繰り返した。

しかし、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは、「イエスかノーかの質問でイエスともノーとも答えない」と批判した。ブティジエッジは民間保険と公的保険を選べる選択制の制度を主張し、進歩主義派の支持者たちを取り込もうとしている。

ブティジェッジは「ウォーレン上院議員は全てのことに対して計画を持っていはいるが、メディケア・フォ・オールのように署名だけしている、実際には自分では作っていない計画というものがある」と述べた。ウォーレンは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の作ったメディケア・フォ・オール計画を支持はしているが、自分自身の計画を作っていないと攻撃した。

ブティジエッジはメディケア・フォ・オールによって「民間の保険は消えてなくなってしまう」だろうと述べた。

ウォーレンは完全なメディケア・フォ・オール計画を強く擁護することで反撃した。ウォーレンはブティジエッジの選択の余地の残すアプローチについて「支払いが出来る人だけのメディケア・フォ・オール」と揶揄した。

ウォーレンは「メディケア・フォ・オールは譲れない基礎だ」と述べ、「支払いが出来る人だけのメディケア・フォ・オールを支持しない」と付け加えた。

一方、中間派のエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)はメディケア・フォ・オールを「煙のように消えてしまう夢」と切って捨てた。

メディケア・フォ・オールの作成者であるサンダースは、ウォーレンから話を引き取って「税金が上がるであろうということを分かっておくのは重要だ」と述べた。しかし、サンダースは同時に保険料と控除が廃止されると中流階級のコストは下がることになるとも付け加えた。

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バイデンはウクライナでの息子の仕事を強く擁護した(Biden forcefully defends son's work in Ukraine

ジョナサン・イーズリー筆

2019年10月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/465977-biden-forcefully-defends-sons-work-in-ukraine

ジョー・バイデン前副大統領は火曜日、トランプ大統領からの攻撃の最中にある、息子のウクライナでの仕事について強く擁護した。トランプ大統領はウクライナの検事総長の更迭をバイデンが促したのではないかと疑義を呈している。

オハイオ州ウエスタ―ヴィルで開催された4回目の民主党予備選挙候補者討論会で、バイデンは「いいですか、私の息子は何も間違ったことはしていません。私もまた何も間違ったことをしていません」と述べた。

バイデンは「私は、ウクライナの腐敗を根絶するというアメリカ政府の政策を実行したのです」と続けた。

ハンター・バイデンは火曜日、父ジョー・バイデンがオバマ政権の対ウクライナ政策の中心人物であった時に、ウクライナのエネルギー関連企業の取締役に就任するという誤った判断をしてしまったと述べた。

利益相反について批判している人たちがいるが、ジョー・バイデンとハンター・バイデンが何か間違ったことをしたことを示す証拠は存在しない。

バイデンは次のように述べた。「私が息子とウクライナについて何かを議論したことなども1回もありません。私が息子と議論したこととする証拠を示している人は誰もいません。私たちは親子の間で仕事の面で完全に分離していました。利益相反の可能性など起こるはずもありません。私の息子は彼自身で判断しました。私は彼が述べたことを誇りに思います。皆さん、重要な問題に目を向けましょう。トランプの腐敗こそが重要な問題なのです。私たちはこの問題にこそ集中すべきです」。

バイデンはトランプがバイデンの疑惑を集中的に取り上げているのは、大統領選挙本選挙でバイデンと戦うことを恐れているからだと述べた。

バイデンは「トランプ大統領は私が民主党候補者になって欲しくないのです。彼は、私が民主党の指名候補となったら、彼を完膚なきまでに叩きのめすことを分かっているのです」と述べた。

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サンダース:「私たちは全てのアメリカ人に仕事を与えることができる」(Sanders: 'Damn right we will' have a job for every American

ジョン・バウデン筆

2019年10月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/465983-sanders-damn-right-we-will-have-a-job-for-every-american

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は火曜日の民主党予備選挙候補者討論会で、全国民向け雇用保障を求めていることを擁護した。サンダースは視聴者たちに対して、彼が推奨している「グリーン・ニューディール」計画は、仕事を探しているアメリカ人のために雇用を創出すると訴えた。

労働力となっている全ての成人に連邦政府が仕事を与えることが出来るのかと質問され、「私たちは当然できる」と答えた。

「私たちは当然できる」とサンダースは答えた。続けて「私が訴えているグリーン・ニューディールで、化石燃料から持続可能性に移行することで、2000万人分の雇用を創出できる」と述べた。

サンダースは民主党予備選挙候補者の中でグリーン・ニューディール計画を支持している一人だ。グリーン・ニューディール法案は、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が提出したものだ。この計画では、アメリカ国内のエネルギー網を持続可能的な形式に急速に移行させ、同時にアメリカ国内のインフラを改良し、アメリカ国内の交通網をエネルギー効率の良い形に向上させるというものだ。

グリーン・ニューディール計画は今年初めに発表された。その中には連邦政府による雇用保障も含まれている。これについてアンドリュー・ヤンが批判した。ヤンはユニヴァーサル・ベイシック・インカムの支持者である。

ヤンは討論会でサンダースを批判した。ヤンはサンダースの計画は専業主婦である自分の妻のような人たちについて考慮していないと述べた。ヤンの妻は自閉症の男の子を含む、子供たちの世話をするために専業主婦になっているということだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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