古村治彦です。
遅くなったが、2019年10月15日に開催された第4回アメリカ大統領民主党予備選挙候補者討論会の様子をまとめた記事をご紹介する。
全体としてはジョー・バイデン前副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の仲良しコンビにとってはマイナス、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)のリベラル左派・進歩主義派コンビ、そして中道派(新自由主義的傾向もある)インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジにとってはプラス、ということになった。発言時間もこの上位5名がやはり多かった。
バイデンはこれまでの討論会では見せ場がなく、「眠たげなジョー(Sleepy Joe)」という印象を強めただけであったが、今回もそれが続くことになった。それでもジョー・バイデンは支持率トップを続けているが、これは「オバマ政権時代は良かったな」という民主党支持の有権者たちの郷愁と投票率が高い高齢の有権者たちの支持によるものだ。また、アメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領となったバラク・オバマをよく支えた人ということで、アフリカ系アメリカ人有権者からの支持も高い。
ウォーレン、サンダース、ブティジェッジはアフリカ系アメリカ人有権者からの支持獲得で伸び悩んでいる。ウォーレンやブティジェッジは白人である上にアメリカの名門大学の集まりであるアイヴィー・リーグの先生だったり出身だったりで、アフリカ系アメリカ人たちからすると「自分たちとは関係のない人たち」ということになってしまう。ウォーレン、サンダース、ブティジェッジは白人のリベラル、大学の学位を持つ人々の支持は高いので、そこからどれだけ支持の幅を広げられるかということになる。
討論会での丁々発止、激しい批判に当意即妙の反論、切り返し、時に見せるユーモアを見れば、「ああやっぱり日本は遅れているなぁ」と思わされてしまう。カニやメロンを贈られて喜んでいる有権者のレヴェルにあった政治と言えばそれまでだが、これでは戦前から何も進歩も進化もしていないということになる。悲しいことだ。
(貼り付けはじめ)
オハイオ州での討論会での5つのハイライト(Five takeaways from
the Democratic debate in Ohio)
ナイオール・スタンジ筆
2019年10月16日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/the-memo/466013-five-takeaways-from-the-democratic-debate-in-ohio
火曜日に第4回アメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者投函買いが開始された。オハイオ州ウエストヴィルで12名の候補者たちが争った。
火曜日の討論会の5つのハイライトは何だろうか?
●ウォーレンは批判の矢面に立つ(Warren in the firing line)
エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は最近の各種世論調査でトップに躍り出ている。ライヴァルたちが彼女をターゲットにして攻撃したことで、ウォーレンは新たな先頭走者になったのだということが強調される結果となった。
他の候補者たちは彼女の勢いを弱めなければと躍起になった。
インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ(民主党)とエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)は候補者たちの中で、最もウォーレンを攻撃した候補者ということになる。ブティジェッジとクロウブッシャーは討論会の冒頭からウォーレンを攻撃し、それからカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)が攻撃に加わった。
ウォーレンは攻撃によって崩れることはなかった。しかし、彼女はこれまで経験したことないほどに防御に回った。
彼女の「メディケア・フォ・オール」計画について、ブティジェッジはこの計画では選択を制限するものだと主張した。一方、クロウブッシャーは計画の財源には税金の引き上げも含まれるとウォーレンが認めることを拒絶しことを攻撃した。
税制についてウォーレンは、「有権者はコスト全体について懸念を持っている、税金が上がってもそれは相殺される、何故なら民間保険の保険料を支払う必要がなくなるからだ」と主張している。この主張は論理的には正当化できる。ライヴァルたちは、ウォーレンの税金についての曖昧に見えるところを利用して攻撃するようになる。
マサチューセッツ州選出連邦上院議員であるウォーレンは、討論会が進むにつれて、より過ごしやすそうにしているように見えた。「民主党には“アメリカが抱える深刻な諸問題をおざなりにする“のではなくより野心的な政策が必要なのだ」というウォーレンの基本的な立場は進歩主義的な考えを持つ有権者を惹きつけている。
ウォーレンは最初に批判の集中砲火を浴びたがうまく生き延びた。しかし、選挙に関心を持つ人々は、火曜日の夜の討論会での集中砲火によって彼女の前進が遅くなっているのかどうか、これから出てくる世論調査の数字を注目している。
●バイデンにとっては再び悪夢の夜となった(A bad night for Biden
— again)
これまでの3回のジョー・バイデン前副大統領の討論会でのパフォーマンスは良くないものだった。これが問題であった。そして、火曜日の夜でもこのような流れを覆すことができなかった。
76歳のバイデンはウエストヴィルにたくさんある小麦の収穫後の刈り後に溶け込んでいった。バイデンにスポットライトが当たりながらも、彼の答えはまたもことごとく平凡で鋭さやパンチ力に欠けるものとなった。
バイデンはバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)よりも2歳若いが、バイデンの答えはことごとくより時代遅れの言葉が使われ続けた。火曜日、バイデンは「株式市場で多くの債権をクリップしている(clipping coupons in the stock market)」人々について語ったが、この表現は数十年前に使われていたが、今は使われていないものだ。
バイデンの支持者たちは、「バイデンへの支持はより年齢の高い、より中道派の民主党員からのもので、トランプを倒すための最強の候補者だ」と主張するだろう。
火曜日夜の討論会でのバイデンのパフォーマンスは場を支配するとは程遠いものだった。
●バーニーの復活、AOCの助けを借りて(Bernie bounces back — with AOC’s help)
今回の討論会でサンダースには彼の健康について真剣な疑問が寄せられた。78歳になるサンダースにとって心臓発作で倒れてから初めての大きな舞台への登場が討論会だった。
サンダースはこのような懸念を、いつも通りの激しいパフォーマンスをすること払しょくした。熱意やスタミナが欠けている兆候は微塵もなかった。
長年民主社会主義者であることを貫いてきたサンダースの勢いをつける最大の要素が討論会の会場の外からもたらされた。
ウエストヴィルでの討論会が終わりに近づく中、『ワシントン・ポスト』紙が速報として、サンダースに対して、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)が土曜日にニューヨーク市のクイーンズ地区での集会で推薦することを発表するだろうと報じた。それからすぐに、イルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)とラシード・タリブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)も彼を支持することになるだろうというニュースが流れた。
オカシオ=コルテス議員からの推薦というニュースは火曜日の討論会の壇上で起きたいかなることもよりも大きなニュースとなった。左派のアイコンで若手のオカシオ=コルテス議員からの推薦それ自体は何も驚くべきことではない。2016年の大統領選挙で、オカシオ=コルテス議員はサンダース陣営のヴォランティアのオーガナイザーをしていた。オカシオ=コルテス議員の推薦がこれ以上にないタイミングで報じられたことで、サンダース選対は熱狂に包まれた。これはウォーレンにとっては失望となるだろう。それはオカシオ=コルテス議員は以前ウォーレンを称賛したこともあったからだ。
●ブティジエッジは上昇局面を掴んだ(Buttigieg seizes his
moment)
ブティジェッジは火曜日の討論会で唯一素晴らしい出来だった候補者だ。 彼はウォーレンを攻撃した。討論会において重要な序盤で素晴らしいパフォーマンスであった。彼はリベラル派以外の有権者ともつながることが出来る候補者として、彼の主張を幅広く主張できた。
ブティジェッジはこれまでテレビで有効なパフォーマンスをしてきた。そして政治献金集めで強さを見せている。
しかし、ブティジェッジはこれらの強みを世論調査の支持率の数字の上昇につなげることに苦労してきた。
37歳の市長であるブティジェッジの前には、ウォーレンとサンダースが代表している民主党内の進歩主義派に対抗する中道派の現実主義者としてバイデンを追い越すという大きな壁が立ちふさがっている。
ブティジェッジは火曜日には出にアピールすることが出来た。そして、バイデンが弱さを見せていることを利用し、それに突けこむことが出来た。
●ハリスのウォーレンに対する攻撃は不発だった(Harris misfires with
Warren attack)
ハリスは6月末にマイアミで開催された初めての候補者討論会で輝いた。しかし、それ以降、支持率は下がっていった。
ハリスは火曜日の討論会の序盤で目立っていた。一般的な医療問題から女性の出産する権利に話題が転換するときに彼女は議論をリードした。これはホール内の観衆を感動させ、おそらく民主党支持の有権者たちの多くも感動させるものだった。
ハリスにとって悪い意味で目立ってしまったのは、それからあとのトランプ大統領のツイッターアカウントを話題にしてのウォーレンとのやり取りだった。
ハリスは、ウォーレンに対して、「私がトランプ大統領にSNSの使用を禁止させようとしていることにあなたが支持を表明していないのはどうしてですか」と攻撃をかけた。しかし、ウォーレンはハリスからの攻撃に対して、「私はトランプをホワイトハウスから追い出すことに集中しています。ツイッターからだけのことではないのです」と述べてハリスの攻撃を軽く退けた。
ハリスはあくまでウォーレンと対峙することにこだわったが、その結果はウォーレンよりもハリス自身にマイナスとなった。カリフォルニア州選出連邦上院議員ハリスは狭量でけち臭く見えた。
ウォーレンとのやり取りは、余裕がないように見えたハリスにとって良くない瞬間だった。
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ウォーレンは討論会において発言時間でリードした(Warren leads in
speaking time during debate)
ジャスティン・コールマン筆
2019年10月15日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/466009-warren-leads-in-speaking-time-during-debate
エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、火曜日の第4回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会において発言時間で候補者たちをリードした。
CNNの発言時間測定者によると、ウォーレンはトップ集団に入っている候補者であるが、ライヴァルたちから頻繁に攻撃され、それに対する反論する時間が与えられたので3時間の討論会において約23分の発言時間が与えられた。ジョー・バイデン前副大統領はウォーレンよりも6分半短い、16分半の発言時間が与えられた。今回の討論会はCNNと『ニューヨーク・タイムズ』紙が共同で主催した。
キュニピアック大学の世論調査の最新結果では、ウォーレンはバイデンに対して3ポイントの差をつけている。デラウェア州選出の連邦上院議員だったバイデンをウォーレンがリードするという結果が出る世論調査がいくつかあり、今回の世論調査はその1つだ。
ウォーレンはマサチューセッツ州選出の連邦上院議員であり進歩主義派だ。最近の各種世論調査で支持率を上げている。ウォーレンの「メディケア・フォ・オール」計画と富裕層への増税に対して批判が集中した。ウォーレンは名指しで批判されたので、司会者たちは彼女に反論の機会を与えたので、彼女の発言時間は増える結果となった。
エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは約13分間の発言時間が与えられた。
カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は12分半の発言時間が与えられ、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州、民主党)には12分弱の発言時間が与えられた。
IT実業家アンドリュー・ヤン、前住宅・都市開発長官フリアン・カスロト、トゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)、大富豪のトム・ステイヤーの発言時間は10分以下だった。社会事業家でもあるステイヤーは選挙戦出馬が遅くなり、今回が初めての討論会参加となった。ステイヤーが候補者の中で発言時間が最も短く、7分強だった。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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