古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙は来年11月3日が本選挙の投開票日だ。約1年を残すのみとなった。共和党では現職のドナルド・トランプ大統領が2期目を目指して出馬している。民主党ではこのブログでもしつこいくらいに追いかけているが、ジョー・バイデン前副大統領とエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が争っている。来年2月3日から予備選挙(党員集会と予備選挙)が始まり、3月3日に多くの州で予備選挙が実施されるスーパーチューズデーがあり、7月には全国党大会があり、候補者が決まる。

 「トランプ大統領が再選されるのか、はたまた民主党がホワイトハウスを取り返すのか」ということが最大の関心事である。これまでの大統領選挙を見れば、現職大統領が敗れるということは少なかった。最近の例で言えば1992年の大統領選挙で、共和党のジョージ・HW・ブッシュが民主党のビル・クリントンに敗れたということがあった。この時はブッシュの支持率はもともと高かったのだが、経済指標が悪化したことで人気が下落してしまった。また、第三党の候補者として保守系のロス・ペローが人気を高めたこともあり、共和党表が分裂してしまった。大統領選挙ではその時の経済状態が非常に重要な要素となる。

 下の記事で紹介しているように、これまで2016年を除いたすべての大統領選挙で結果を正確に予測してきたムーディーズ・アナリティカ社の予測では、2020年の大統領選挙ではトランプ大統領の再選の可能性が高いという結果が出ているということだ。ムーディーズ社の分析は、「人々の自分たちの経済状態の認識」「株価の動き」「失業率の動き」を基盤としたモデルを3つ作り、予測を出している。現在の指標がそのまま続けばトランプ大統領が勝つという結果が出るようだ。

 ここで問題なのは、「経済に関する指標が現在のままで大きな変動がなければ」ということだ。逆に言えば、何か大きな出来事が起きてしまえば、この予測は外れてしまうということになる。もちろん、明日になって何が起きるかは分からない。多くの出来事や経済指標が予測可能になっているとは言え完璧ではない。

 これからの1年間で経済指標を下げてしまうような出来事、たとえば株式の下落や国際的大企業の破綻が起きれば、トランプ大統領の再選可能性は低くなる。彼が現在仕掛けている米中貿易戦争も終息させねばアメリカ経済に大きな影響が出る。農業分野では妥協が出来たようだが、共和党の支持基盤である農業州の中で変動があれば勝利は覚束ない。

 1992年の大統領選挙で、ビル・クリントン陣営は「It’s the economy, stupid(問題は経済なんだよ、間抜けが)」というスローガンを生み出して勝利した。経済状態は大統領選挙に大きな影響を与える。大統領選挙の状況を見ていく上では経済指標を見ていくことが必要だ。

(貼り付けはじめ)

これまで正確な予測を出してきた選挙モデルはトランプが再選の道を進んでいると示している(Historically accurate election model shows Trump on his way to reelection

タル・アクセルロッド筆

2019年10月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/466028-historically-accurate-election-model-shows-trump-on-way-to-easy-reelection

「ムーディーズ・アナリティクス(Moody’s Analytics)」社は大統領選挙の測定のために3つの異なった経済モデルを使ったところ、トランプ大統領が来年再選される可能性が高いという結果が出た。

ムーディーズ社のモデリングは1980年以来、1回を除いて全ての大統領選挙の予測を的中させている。トランプ大統領は、2016年のアメリカ大統領選挙本選挙で、選挙人数304対227で勝利を収めた。トランプ大統領は2020年にこの結果を容易に上回る可能性があると予測されている。

3つの異なったモデルでは、トランプ大統領の選挙人獲得数はそれぞれ、289、332、351で、相手を上回ることを示している。これらの結果は、消費者が自分たちの置かれている経済状況をどのように感じているか、トランプ政権かでの株式市場の株価増進、失業率の見込みがそれぞれ予測の基礎になっている。

ムーディーズ・アナリティクス社の首席エコノミストで報告書の共同執筆者であるマーク・ザンディはCNBCの取材に対して次のように答えた。「これから1年間の経済が現在と同じ、もしくはだいたい同じであるならば、現職であることの強みは大きく、トランプ大統領の選挙での勝利の確率は高い。特に民主党支持者たちが熱心ではなく、選挙に行かなければトランプ大統領の当選可能性は高まる。全ては投票率次第だ」。

これら3つの経済モデルの中で、「お財布」測定のモデルで最も良いパフォーマンスを示している。これは人々が自分たちの置かれている経済状態をどのように感じているかを測定するものだ。

報告書の中では次のように書かれている。「私たちの“お財布”モデルは3つの経済モデルの中で最も経済によって動かされるものだ。もし有権者が自分たちの経済状態を第一にして投票するならば、トランプ大統領は選挙戦で圧勝することになるだろう。これが示しているのは、次の選挙で勝利するためには家計レヴェルの経済に関する認識を高めることが重要ということになる」。

報告書では投票率が高くなれば民主党候補に有利に働き、歴史的に見て最高の投票率ならば民主党候補が僅差でトランプ大統領に勝つと示している。

今回の報告書はトランプ選対にとっては歓迎できるニュースである。トランプ選対は経済状況の良さを強調して、連邦下院が大統領弾劾のための調査を進めるなどその他の多くの問題を相殺しようとしている。

先週トランプ大統領は次のようにツイッター上に書きこんだ。「何を理由に弾劾をするというのか?私たちの国の歴史で最も偉大な経済を作り上げようとしているからか、アメリカ軍を最強にしようとしているからか、減税を進め過ぎたからか?」。

再選の可能性を高めるために、トランプ選対は資金集めマシーンとしても機能している。トランプ選対は火曜日、共同政治資金委員会と共和党全国委員会は2019年第三四半期で1億2570万ドルを集めたと発表した。

ムーディーズ社の使っている様々なモデルは1980年の大統領選挙にまで遡って各大統領選挙で勝利者を正しく予測してきた。しかし、2016年だけは例外だった。この時は僅差で民主党候補者ヒラリー・クリントンが僅差で勝利するとしていた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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