古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の有力候補ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)が選挙戦からの撤退を発表した。また、トップ集団につけているカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は予備選挙が全米で最初に実施されるアイオワ州に持てる力を集中するために、ニューハンプシャー州内のスタッフを減らし、選挙事務所も複数閉鎖すると発表した。このように、民主党予備選挙が本格化している。
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 オロークは2018年の中間選挙で共和党の現職テッド・クルーズに対抗して出馬し、肉薄した人物だ。分断ではなく融和と統合を訴えたオロークの任期はうなぎのぼりで、日本でも「ケネディの再来」「オバマの再来」として報道されたほどだった。落選後には、「2020年の大統領選挙を目指すのか、それとももう一度連邦上院議員を目指すのか」と人々の関心が集まっていたが、今年3月に雑誌『ヴァニティ・フェア』誌上で大統領選挙出馬表明を行った。しかし、全体としては選挙戦に勢いが出ず、支持率も伸び悩み、政治資金集めも思うに任せず、遂に選挙戦からの撤退という決断に至った。

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 トップ5の中に何とか入っているカマラ・ハリスは支持率で4番手のインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジに差をつけられつつある。トップ3を今から追いかけることは大変なことだ。そうした中で、予備選挙が最初に実施されるアイオワ州(アイオワ州は党員集会)に全精力を傾けるという決断を行った。最初の予備選挙ということで全米の注目が集まる中で好成績を収めることが出来れば浮上のきっかけとなる。しかし、現状でトップ3に大きく置いていかれている状態では、この賭けは実らない可能性が高い。アイオワ州でも5番手に甘んじるようなことが起きた場合、次のニューハンプシャー州には力を入れていないので更に順位を落とす可能性もある。そうなれば一気に状況が悪くなるということもある。それでも、一発逆転ホームランを狙ってアイオワ州に注力するという決定を下した。これからアイオワ州での世論調査が重要になってくる。

 民主党予備選挙はサヴァイヴァルレースの様相を呈しており、トップ5内であっても厳しい状況に陥っている。トップ3のジョー・バイデン、エリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダースの優位は動かない。まだ選挙戦は続いていくだろうが、私としてはウォーレンとサンダースの連携に注目したい。

 

(貼り付けはじめ)

オロークは大統領選挙を終了(O'Rourke ends presidential bid

マックス・グリーンウッド、リード・ウィルソン筆

2019年11月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/468618-orourke-ends-presidential-bid

ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)は金曜日、大統領選挙から撤退すると発表した。オロークは2020年の民主党予備選挙をリードするとひとたびは考えられたが、昨年の連邦上院議員選挙で集めた人々の熱意と熱狂を今回も集めることに失敗した。

オロークは、ウェブサイト「メディアム」に掲載した文章の中で、選挙運動を継続するための手段を持っていないことが明白になったと述べた。彼はここ数カ月間経済上の苦闘に直面していたことを認めた。

オロークは次のように書いた。「アメリカに対する私の奉仕は予備選挙候補者もしくは党の指名候補者ということではなくなる。このことを今認めることは選挙運動に参加している人たちにとっての最善の利益となる。また、党の指名候補者の周囲にまとまることを目指している民主党にとっても最善の利益でもある。そして、アメリカにとっても最善の利益である」。

オロークは金曜日の夜、民主党予備選挙に対して彼の影響力を行使しようとした。アイオワ州デモイン市内のデモイン川近くの公園に200名ほどの支持者が集まる中、オロークは演説を始めた。オロークはアイオワ州民主党主催のリバティ・アンド・ジャスティス・ディナーに出席するためにアイオワ州を訪問していた。

オロークはハグをしたり、涙を流したりしている支持者たちに「私たちはこの時点でこれから選挙戦を成功の中で進めるのに十分な手段や資源を持っていないことを直視しなければなりません」と述べた。

オロークは、より厳しい銃規制法制、気候変動に対するより明確なアプローチ、大統領選挙候補者たちが通常見落としているアメリカ全土の都市部での選挙運動を行う努力といったことを要求することで選挙に影響を与え続けると述べた。

オロークは「これが選挙戦の終わりとなりますが、私たちは戦いの真っただ中にいます。私は私たちを一つにするための様々な大義全ての一部としてこれからも存在し続けます」と述べた。

公園での演説を撮影し、撤退表明を生中継することになるテレビカメラの設置場所が壊れたのでスタッフたちが修理しなければならず、そのためにオロークの選挙戦からの撤退に関する公式表明は、数分間遅れてしまった。

オロークの声明によって選挙戦は比較的静かなうちに終了した。7カ月以上前に選挙運動が始まった時には大きなファンファーレと歓声に包まれていた。

元連邦下院議員のオロークは3月に大統領選挙への出馬を正式に表明した。それまでの数か月、オロークは大統領選挙への出馬するのか、それとも2020年の連邦上院議員選挙で現職のジョン・コーニャン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)に挑戦するのかということで人々の関心を集めた。

しかし、オロークの大統領選挙の選挙運動は2018年にテッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)と激しく争った時のような高揚感を得ることはついにできなかった。

オロークは彼の地元テキサス州エルパソで起きた大量銃撃殺傷事件が起きた8月以降、選挙戦を勢いづかせようと努力を重ねてきた。銃規制のようなリベラル派の立場を取り、進歩主義者の候補者よりもさらに激しい主張を行うようになっていた。

ここ数か月、全国規模、早期に予備選挙が実施される各州での世論調査での数字が伸びやなんでいる中で、オロークの選挙戦は勢いを失っていった。彼の選挙資金をめぐる状況も厳しさを増していった。2019年第三四半期での支出は650万ドルで、集まった献金は450万ドル以下にとどまった。

第三四半期が終わった時点で彼の選対の口座には約330万ドルの資金しか残っていなかった。トップ集団の候補者に比べてかなり少ない金額となった。同時期、バーニー・サンダース連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は3370万ドル、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は2340万ドル弱の資金を残していた。

同時に、オロークは11月と12月の民主党予備選挙候補者討論会に参加できないというリスクを抱えていた。

オロークは今年になって選挙戦から撤退した5名ほどの人物たち、ワシントン州知事ジェイ・インスリー、カースティン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、ニューヨーク市長ビル・デブラシオなどの仲間入りをした。

オロークの支持者たちはアイオワ州民主党のリバティ・アンド・ジャスティス・ディナーに参加するオロークを歓迎するために集まっていた。支持者たちは雨模様の空の下、お互いに慰め合っていた。支持者たちは夜明け前から集まって歓声を上げていた。オロークが選挙戦からの撤退を発表した後、ヴォランティアスタッフの中にはデモイン市内中心部の歩道に数百ヤードにわたって設置していたポスターなどを回収して回る人たちもいた。

オロークが次に何をするのかは明らかになっていない。彼は2020年の連邦上院議員選挙には立候補しないと述べている。現職連邦上院議員のコーニュンに挑戦するために、民主党予備選挙には既に複数の立候補者が出ている。

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ハリス選対はアイオワ州を見据えてニューハンプシャー州内のスタッフを削減(Harris campaign slashes staff in New Hampshire with eye on Iowa

タル・アクセルロッド筆

2019年11月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/468608-harris-campaign-slashes-staff-in-new-hampshire-with-eye-on-iowa

カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の大統領選挙選対は、予備選挙で重要な位置を占めるニューハンプシャー州内に配置しているスタッフの数を大幅に削減し、持てる資源を「アイオワ州に全て投入」しようとしている。

ハリス選対は本紙の取材に対して、ニューハンプシャー州ナシュア、ポーツマス、キーンの設置している選挙事務所を閉鎖し、マンチェスターにあるニューハンプシャー州本部の常駐のスタッフの数も削減する予定であることを認めた。選対はニューハンプシャー州内の全ての地域オーガナイザーを解雇し、ハリス自身の訪問も取りやめると述べた。

ハリス選対のニューハンプシャー州本部のコミュニケーション担当部長ネイト・エヴァンスは声明の中で次のように述べた。「ハリス連邦上院議員とこのティームは一つの目標に向かって一緒になって進んでいます。それは2020年の本選挙の党の指名候補になり、ドナルド・トランプを倒すことです。そのために、選対はリソースを全てアイオワ州に投入するという戦略的な決断を行いました。そのためにニューハンプシャー州内の選挙事務所の閉鎖、スタッフの配置転換と削減を実施します。選対では引き続きニューハンプシャー州内にスタッフを配置しますが、現在もそしてこれからもアイオワ州に集中します」。

エヴァンスは続けて「ハリス議員は11月6日と7日予定されたニューハンプシャー州訪問を取り止めます。しかし、彼女の名前は予備選挙の投票用紙には記載されます」と述べた。

エヴァンスは本紙の取材に対して

エヴァンスは本紙の取材に対して選対から20名以上のスタッフが解雇される見通しであることを認めた。

本誌が入手したメモによれば、選対はメリーランド州ボルティモア市に設置しているハリス選対全国本部のスタッフ数十名の解雇の準備を進めており、経済的な懸念が残る中で相生亜州での態勢の立て直しのために本部からスタッフを異動させることになる。

選対責任者フアン・ロドリゲスはメモの中で次のように書いている。「これらの決断は困難なものであった。しかし、選対はこれからの数か月、アイオワ州ので地盤を固め数百万ドルをかけてメディアでのキャンペーンを実施しなければならない」。

ロドリゲスは続けて「2004年のジョン・ケリー、2008年のジョン・マケインのように、予備選挙で勝利する州を増やし、党の指名を得るためには厳しい決断をしなければならない。これには例外は存在しない」と書いている。

ハリスの支持率は低下し、選挙運動の支出は収入の1.25倍に達する中で、ハリスはトップ集団に残るために奮闘している。そうした中でスタッフの配置転換が実施される。

ハリス選対は予備選挙での勝利のための死生を決する場所としてアイオワ州の党員集会を設定している。10月にはハリス議員は可能な限りの機会をとらえてアイオワ州を訪問したが、その回数は出馬して以降の6カ月でのアイオワ州訪問の数と同じになったほどだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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