古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙はジョー・バイデン、エリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダース、ピート・ブティジェッジがトップ集団を形成し、カマラ・ハリス、エイミー・クロウブシャー、コーリー・ブッカー、フリアン・カストロがそれに続く展開となっている。そこに食い込んでいるのがIT実業家アンドリュー・ヤンとトゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)だ。2人は国政レヴェルではアウトサイダーだが、有名な上院議員や元閣僚をしのぐ勢いを見せている。
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友に選挙運動を行うアンドリュー・ヤンとトゥルシー・ギャバード

 11月20日に民主党の討論会が開催される。11月13日までに参加条件をクリアしなければならなかった。参加条件は(1)政治献金者数16万5000人以上、20州以上から最低600名上の献金者を確保する、(2)9月13日から11月13日までの間に実施された世論調査のうち、民主党全国委員会が承認した世論調査の支持率の数字で、(a

)全国規模の世論調査で4回以上3%以上の支持率を記録するか、(b)予備選挙が早期に実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)の世論調査で2回以上5%以上を記録するというものだった。

 11月の討論会の参加条件をクリアしたのはバイデン、ウォーレン、サンダース、ブティジェッジ、ハリス、クロウブッシャー、ブッカー、大富豪のトム・ステイヤー、そしてヤンとギャバードだ。前閣僚のフリアン・カストロは政治献金者数の条件はクリアしたが、世論調査の数字に関する条件はクリアできなかったので参加できない。

 12月の討論会(12月19日)の参加条件は更に厳しくなり、献金者数は20万人以上、20州以上から800人以上、全国規模の世論調査で4回以上4%以上を記録するか、早期に予備選挙が実施される各州での世論調査で2回以上6%以上を記録しなければならない。期限は12月12日までだが、現在のところバイデン。ウォーレン、サンダース、ブティジェッジ、ハリス、クロウブシャーが条件をクリアしている。こうした人々に続くのがヤンとギャバードで、ブッカーとカストロは2人に置いていかれている。ヤンとギャバードは条件クリアまであと一息といったところだが、ブッカーとカストロは厳しい状況だ。

 ヤンとギャバードという非主流派と反主流派の候補者の人気が上がっているのはやはり民主党主流派に対する不満が人々の間に多くあることが理由だろう。2016年の大統領選挙で民主党全国委員会がヒラリー・クリントンを勝たせるために贔屓をしていたことが明らかになり、民主党に対する信頼は地に落ちた。その時の委員長だったワッサーマン=シュルツは今でもフロリダ州選出の連邦下院議員を続けられているというのは、民主党の腐敗体質を象徴するものだ。

 ヤンとギャバードが党の指名候補になることはないだろうが、これからどれだけ暴れることが出来るか注目だ。

(貼り付けはじめ)

名前が挙がらない非主流の候補者たちが有名な候補者たちを支持率で追い抜く(Outsider candidates outpoll insider candidates

ジョナサン・イーズリー筆

2019年11月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/470125-outsider-candidates-out-poll-insider-candidates

トゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)とIT実業家アンドリュー・ヤンはワシントンのインサイダーである有名政治家たちを支持率で追い抜くということが起きている。これは無名の非主流派、反主流派の候補者たちが国政の場で影響力を持って欲しいという人々の熱望を示すものである。

ニューハンプシャー州で実施された2回の世論調査でギャバードとヤンは、より知名度の高いカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)といった候補者たちに追いつく、もしくは追い抜いている。

民主党内部ではギャバードとヤンの台頭に気づき始め、2人がニューハンプシャー州でトップ集団を形成している候補者の中の一人を引きずり下ろす可能性があると噂し始めている。ギャバードとヤンの支持率を足すと10%に達している。

各種世論調査によると、ジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジがトップ集団を形成し、アイオワ州とニューハンプシャー州で地歩を固めようと奮闘している。

民主党内部ではギャバードもしくはヤンがトップ集団に挑戦するにたるだけの支持率を獲得できるかについて疑念を持っている。それでも2人の候補者たちは人々を驚かせ続ける。

しかし、ニューハンプシャー州の予備選挙は独立心の強い有権者による大番狂わせが起きる可能性がある。ニューハンプシャー州では民主党予備選挙に支持する政党を表明していない有権者と共和党支持の有権者が参加可能だ。

ニューハンプシャー州は特に独立心の強い州として知られている。サンダースは無党派と若い有権者からの支持を固めようと躍起になっているが、こういった人々はヤンにも注目しており、ニューハンプシャー州の有権者の特性はサンダースにとって脅威となる。

ニューハンプシャー州の有権者の特性はまたバイデンの支持を減らす可能性もある。バイデンは民主党内部の中道穏健派と保守派からの支持を必要としているが、こうした人々の中にはギャバードを注目している人たちもいる。

匿名のニューハンプシャー州の民主党系ストラティジストは「ニューハンプシャー州の予備選挙はいつも予測不可能なのだ」と述べている。

CNNとニューハンプシャー大学がニューハンプシャー州で実施した最新の世論調査でヤンの支持率は5%を記録した。クロウブッシャーと同率、ハリスとブッカーを追い抜く結果となった。また、キュニピアック大学のニューハンプシャー州での世論調査でヤンは支持率4%を記録し、クロウブッシャー、ハリス、ブッカーを追い抜いた。

IT実業家であるヤンはニューハンプシャー州とは太いつながりを持っている。ヤンはニューハンプシャー州の名門フィリップ・エクスター・アカデミーを卒業した。また、ニューハンプシャー州民主党の幹部は若い人たちの間でヤンを支持する熱意が広がっていると語っている。

キュニピアック大学の世論調査では、ニューハンプシャー州に住む18歳から34歳までの若い有権者たちの12%から支持を集めている。若い有権者層はサンダース選対にとって重要なグループである。

ヤンに関してはインターネット上で拡散されており、国民全員へのベイシック・インカムをはじめとする政策提案に関心が集まっている。これに人々は驚いている。

ヤンは12月の討論会の資金集めの条件を既にクリアしている。2019年第三四半期だけで1000万ドルを集めた。ヤンは同期の資金集めで6位につけ、5位のハリスの1160万ドルに肉薄した。

12月の討論会に参加するためには4つの世論調査の数字で条件をクリアしなければならないのだが、ヤンは2つの世論調査で条件をクリアしている。

ヤン選対責任者のザック・グラウマンは次のように述べている。「アンドリュー・ヤンは来る12月の討論会に参加することになる。アンドリューの“ヒューマニティー・ファースト・エコノミー”というメッセージがより多くの有権者に届いており、ヤンの支持率は各種世論調査で支持率を上げている」。

ギャバードはニューハンプシャー州の高速道路の近くに多くのサインボードが出ており、それ以外にも各地のビルボードが出ており、専門家たちの関心を集めている。

カリフォルニア州出身の民党全国委員会幹部のボブ・マルホランドは「私は9月上旬にニューハンプシャーを訪れたのだが、私が車を運転する道路全てにギャバ―ドの看板が出ているように感じた」と述べた。

ハワイ州出身のギャバードは民主党主流派に属する人々にとっては唾棄すべき人物となっている。2016年の大統領選挙民主党候補者ヒラリー・クリントンはギャバードを「ロシアのお気に入り」と呼び、第三党の候補者として大統領選挙に出馬して、トランプ大統領を勝たせるという秘密の計画があるのだと非難した。

ギャバードは連邦下院議員選挙での再選を目指さず、また無所属や第三党の候補者として大統領選挙に出馬することもないと明言している。

ヒラリー・クリントンがギャバードを非難したことは裏目に出た。ギャバードに対する関心が高まり、ニューハンプシャー州でキュニピアック大学の最新の世論調査では支持率6%にまで引き上げた。この数字はこれまでの世論調査の中で最も高い数字だ。

ギャバード選対の上級顧問マーク・バーグマンは次のように述べている。「民主党内部でどのような結果を引き起こすとしても彼女は正しいと確信することをこれからもやっていくニューハンプシャー州の有権者の皆さんが彼女のこのような姿勢に反応している。ニューハンプシャー州は独立心が強い場所であって、権力者に対して真実を語る候補者を評価しているのだ」。

キュニピアック大学の世論調査では、有権者登録をしている無党派の有権者たちの10%がギャバードを支持しているという結果が出た。これはサンダースにとって問題となる。2016年の大統領選挙民主党予備選挙でサンダースはニューハンプシャー州で楽勝であったが、立候補者が乱立している今回の予備選挙では苦戦している。

民主党系のストラティジストであるジョン・レイニッシュは次のように語っている。「ヤンとギャバードを支持する人たちはバーニーも支持している人たちだ。もし私がバーニーだったら、ニューハンプシャー州での2人の躍進についてきちんと分析するだろう」。

退役軍人であるギャバードは保守的もしくは中道穏健派だと自認している民主党員の9%の支持を得ている。潜在的にバイデンとブティジェッジの支持率を下げる可能性を持つ。両者は予備選挙で中道派からの支持を争っている。

もちろん民主党員たちは、2020年2月11日のニューハンプシャー州での予備選挙で実際の投票が実施される際に有権者たちがまだヤンとギャバードを支持するかどうか分からないが、2人はニューハンプシャー州のえっかに大きな影響を与えるだろうということを認めている。

2020年2月3日のアイオワ州の党員集会の結果で上位に食い込んだ候補者たちにギャバードとヤンの支持が流れる可能性はある。

それでも非主流の候補者たちはニューハンプシャー州の予備選挙で爪痕を残しているが、これは主流派への異議申し立てのエネルギーが民主党内で渦巻いていることを意味している。このエネルギーは2016年にサンダースのヒラリー・クリントンに対する挑戦と善戦以来はっきりとしている。

先月オハイオ州で開催された候補者討論会で、ヤンは人々の関心を集めた。ヤンは労働現場における自動化の影響に関してウォーレンと一対一でやりやった。他の候補者たちは、ヤンの「自由の配分」提案を革新的な提案だと指摘した。

民主党内では、デトロイトで開催された2回目の討論会においてギャバードがハリスを直接批判したことが、ハリスの支持率の低下を招いた可能性があると考えている。ハリスはそれまで上昇局面を迎えていたが、ギャバードがハリスはカリフォルニア州検事総長の権力を濫用したと批判して以降、選挙戦の勢いが衰えた。

当時、ハリスは、「トップ集団を形成する候補者」として、支持率の数字がゼロか1%しかない候補者からの攻撃に関して懸念を持っていないと述べていた。現在、ギャバードはいくつかの世論調査でハリスに追いつく、もしくは追い抜いている状況だ。

前述のレイニッシュは次のように述べている。「反主流派もしくは非主流派の候補者を求める有権者の欲望は確かに存在する。この点でニューハンプシャー州は特に際立っており、半主流派気質が強い場所だ。サンダースとウォーレンはこの反主流派気質にうまく取り入っているが、ハリス、クロウブッシャー、ブッカーといった候補者たちには厳しいものとなる」。

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11月の討論会の参加条件クリアしたのは誰だ(Who qualified for the November Democratic debate

―11月20日の討論会はMSNBCと『ワシントン・ポスト』紙が共同開催し、ジョージア州で開かれる

ケヴィン・シャウル筆

2019年11月14日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/politics/2019/10/14/who-has-qualified-november-democratic-debate/?arc404=true

10月の討論会に12名が参会したことに驚いた人たちも多いと思うが、恐れることはない。木曜日、民主党全国委員会は11月の討論会には10名が参加できると発表した。

トゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)が最後の条件クリアの候補者となった。締め切りの1週間前に参加条件をクリアした。フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官とビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)はこれまで全ての討論会に参加している。しかし、今回の討論会にはカストロは参加条件をクリアできず、オロークは11月1日に選挙戦からの撤退を表明した。

・それぞれの討論会で誰が条件をクリアしたか?

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新しいルールでは、候補者は民主党が承認した、9月13日から11月13日までに実施される世論調査のうち、4つの世論調査で支持率3%以上を記録するか、早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)の世論調査の中で2つの世論調査で支持率5%以上を記録しなければならない。候補者はまた少なくとも16万5000名の献金者、少なくとも20州で各600名以上を獲得しなければならない。

これまでの討論会と同様、候補者たちは献金に関する条件よりも世論調査の数字に関する条件をクリアすることに四苦八苦している。献金に関する条件をクリアした各候補者は支持率の参加条件をクリアできていないでいる。カストロは献金に関する条件をクリアしたが、世論調査に関する条件を全くクリアできていない。
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これまでの数か月、世論調査の結果はほぼ2日に1回発表された。指定の期間に32の世論調査の結果が発表された。

討論会の参加条件を厳しくしても、民主党が想定しているよりも討論会に参加できる候補者の数を絞ることができていないようだ。オロークとティム・ライアン連邦下院議員(オハイオ州選出、民主党)は11月の討論会参加条件対象期間中に選挙戦から撤退した。しかし、元マサチューセッツ州知事ディヴァル・パトリックは2019年11月14日に予備選挙に出馬を表明し、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグも出馬を検討している。

・訂正(10月15日);このレポートの前のヴァージョンでは、民主党が承認した14の世論調査のうち3%以上の支持率を記録していなかったと書いていた。この14の世論調査には入っていないが10月10日のフォックスニュースの世論調査では3%の支持率を記録した。

・今回のレポートについて:今回の分析は民主党全国委員会が設定した規則に基づいている。個人献金者数については各選対が発表した数字を使っている。世論調査の数字に関しては『ポリティコ』誌が掲載している数字を使っている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください

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