古村治彦です。
米中貿易戦争によってアメリカ経済は景気後退していたが、秋から冬にかけて株価が持ち直し、失業率の低下と雇用創出によって景況感が改善している。これによって感謝祭からクリスマスにかけてのいわゆるホリデーシーズンの商戦シーズンで消費額が伸びているということだ。アメリカにとってまことに結構なお話だ。そして、その恩恵を受けているのがトランプ大統領だ、人々の支持が回復しつつあるというのが今回の話題だ。
感謝祭からクリスマスにかけての商戦シーズンで、アメリカ国民は家族や友人に対しての贈り物を購入するし、パーティーの準備をする。これが一年の中で最も重要な行事とも言えるだろう。テレビドラマにもなって日本でも長く放映されたローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』でもクリスマスの楽しそうな様子が描かれている。アメリカ人にとっては楽しい気分でクリスマスを迎えることが何よりも重要なことだ。
今年に入って米中貿易戦争のせいでアメリカ経済は減速し、夏ごろは大変なことになると思われていた。しかし、米中両国が歩み寄る姿勢を見せていることで、なんとなく落ち着いた感じがある。そうした中で株価が上昇し、景況感も改善し、人々の財布のひもも緩むということになる。そしてトランプ大統領への支持率が回復するということになる。
しかし、選挙まではまだ1年もある。その間に不測の事態で景気に大きな影響を与えることも考えられる。下の記事にもあるように、2020年のアメリカのGDP成長率の予測で1.9%が出ている。これは2018年の2.9%、2019年の2.3%に比べても大きな落ち込みだ。トランプ大統領の公約であるGDP成長率3%に届かない数字だ。
選挙まであと1年を切り、トランプ大統領としては何とか景況感が改善したままでいて欲しいということになる。再選のためにはアメリカ国内の景気が何よりも重要ということになる。外国から見ればこの点がトランプ大統領のアキレス腱となる。中国にとっては大きな交渉材料ともなるし、攻撃材料ともなる。
(貼り付けはじめ)
景気後退の恐怖感が薄らぎトランプ大統領の支持率が上昇(Recession fears recede in boost to Trump)
ニヴ・エリス筆
2019年11月28日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/finance/472078-recession-fears-recede-in-boost-to-trump
夏の景気後退を経て、消費者の消費額が年末の商戦シーズンを前にして復活しつつある。2020年の大統領選挙や連邦議員、各州知事の選挙まで1年を切って、株価も上昇し、景気後退に陥る恐怖感が薄らいでいる。
景況が改善することはトランプ大統領にとっての追い風となる。トランプ大統領の再選にとって経済は中心的な主張となっている。
最新の経済データは数か月前のデータと全く対照的なものとなっている。数か月前、経済学者たちは、製造業と投資が不振に陥ったので、次は消費者消費額に不振に陥るだろうと懸念を持っていた。
価格変動が大きかった株式市場、中国との貿易をめぐる緊張関係、債券市場が発する警告のために今年の夏は人々の動揺を引き起こした。こうしたことから2020年の初めには不景気に陥ることになるだろうと人々が考えるようになった。
秋が深まるにつれて、アナリストたちはハロウィーンの時期には消費販売が横ばいもしくは減少すると予測していた。そして消費者の信頼感がさらに悪化することになると見ていた。
しかし、休暇シーズン・商戦シーズンの消費販売データは予測を覆すものだった。
全国小売業協会会長兼CEOマシュー・シェイは「消費者は良い財政状態にある。そして、今年の休暇シーズンで特別大切にしている人々への贈り物により多く支出したいと考えている」と語っている。
「モーニング・コンサルト」社が毎日実施している調査によると、消費者の信頼も戻ってきつつある。
調査によると、消費者の信頼はここ4週間連続で上昇しており、アメリカ国民は現在の経済状況とこれからの先行きについて良い感情を持っている。
モーニング・コンサルト社は調査データの分析の中で、「消費者は、継続的かつ穏やかな賃金上昇と堅調な雇用創出が物価上昇を抑えており、その結果として1年前に比べて自分たちは財政的に良い状態にある、と考えている」と書いている。
ウォール街の専門家たちは経済の別の部門で楽観主義を示す兆候を見つけている。スタンダート・アンド・プアーズ・グローバル社の景気後退予測モデルは来年の景気後退の確率予測を低く発表している。
スタンダート・アンド・プアーズ・グローバル社のアメリカ国内経済専門チーフエコノミストのベス・アン・ボヴィノは次のように述べている。「今年11月中旬までの複数の重要な財政市場指数を基礎にした私たちの景気後退予測モデルが示しているのは、これから12カ月間にアメリカ国内で景気後退が起きる可能性は30パーセントにまで低下したということだ。8月の段階では35%だった」。
こうした経済をめぐるニュースはトランプ大統領にとって好材料となるだろう。中国との貿易戦争が続き、2017年に発効した減税法がもたらしたコスト高と不平等な利益についてトランプ大統領に対する批判は強まっている。しかし、好況感によってトランプ大統領に対する支持率は回復しつつある。トランプ大統領もこのことに気付いている。
株価の更なる上昇を受けて、月曜日、トランプ大統領は「株式市場の最高株価記録がまた更新された。皆さんにこの恩恵を受けて欲しい!」とツイートした。
しかし、経済のあらゆる分野や部門が上昇している訳ではない。経済学者たちは2019年全体の経済成長率は最終的には鈍化するものであると予測している。「カンファレンス・ボード」の予測では、今年2019年のGDPの伸び率は2.3%で、これが来年2020年には1.9%になるというものだ。昨年2018年の伸び率は2.9%だった。トランプ大統領はこれまで3%の経済成長率を約束してきたが、これらの数字はそれらの約束を全て下回っている。
トランプ大統領は中国との貿易戦争を鎮静化させるための予備交渉も妥結させてはいない。米中貿易戦争の第2回戦が起きるかもしれないという疑念もまだ残っている。
失業率の低下と賃金上昇が経済成長を示すものとなっており、消費者の信頼度は好転している。そうしたなかで、経済状況は2020年の大統領選挙に向けてトランプ大統領の背中を押す追い風になっている。
(貼り付け終わり)
(終わり)
アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ] 価格:1,400円 |
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著 価格:1,836円 |
コメント