古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の候補者について、民主党指名の獲得の可能性に基づいたランク付けに関する記事をご紹介する。10位までランクはついているが、上位4名までは可能性があり、それから下の候補者たちは上位の候補者たちが失速しなければ可能性はないというような書き方がされている。

 現在のところ、ジョー・バイデンがトップ、バーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンが2位を争い、ピート・ブティジェッジが4位につけているが、上位3名には差をつけられているという展開だ。もっとも全米で最初に予備選挙(党員集会)が実施されるアイオワ州での各種世論調査ではブティジェッジが僅差ではあるがトップとなっている。

 アイオワ州での党員集会は2020年2月3日に実施され、3月3日にはスーパーチューズデーと呼ばれる多くの州での予備選挙が実施される。2月の早い段階で予備選挙が実施される各州で1位や上位となることで選挙戦に勢いがつく。ブティジェッジはそれを狙っている。その他の候補者たちも何とかアイオワ州やニューハンプシャー州で上位に食い込みたいと狙っているが、人気が下がるとメディアでの報道も少なくなり、そうなると世論調査での支持率も低下する、また政治献金も集まりにくくなる、そして、民主党全国委員会が主催する討論会(全米に完全生放送)の参加条件を満たせなくなり、出席できないとなると人気が下がるという悪循環に陥ってしまう。そうなると、全米各地に選挙事務所を開き、スタッフを雇ってそれらを維持することも難しくなり、最終的には選挙戦から撤退することになる。

 現在のところ、上位4名以外はスーパーチューズデーを超えて、意味のある選挙戦を続けることができる可能性は低い。上位4名のうち、ブティジェッジも全国的に見れば支持率は10%に届かない状況なので厳しい。そうなると上位3名に絞れられることになる。上位3名のうち、バイデンは中道派、サンダースとウォーレンは進歩主義派(左派)に分類される。単純にサンダースとウォーレンの支持率を足すとバイデンを上回ることになる。そうなると、最終的にバイデン対サンダースかウォーレンかの戦いということになる。

 最も重要なテーマになるのは、「当選可能性(electability)」となる。これは「現職のドナルド・トランプ大統領を本選挙で倒して大統領になれるのは誰か」ということである。ライトな共和党支持者、無党派層にアピールできるのは誰かということで、バイデンがその最有力の人物ということになる。

 それでは民主党の指名候補がバイデンになれば、トランプ大統領に勝てるのかということになるとこれは難しい。年齢が既に78歳で、2期目を目指す選挙の時には82歳になる。そうなると、「バイデンは一期しかできない」となると、最初からレイムダック化(無力化)することになる。後継指名などというのはアメリカでは好かれないとなると、バイデンは大統領に就任した時点で既に無力な大統領になってしまう可能性がある。私は以前にも書いたが、彼は2016年の大統領選挙に出るべきであった。

 現在のところ、トランプ大統領が外交問題などで大しくじりをしなければ再選の可能性は高いと言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

民主党候補者たちをランク付けする:党の指名を受ける機会を得ることが出来るのは誰か?(Ranking the Democrats: Who has best chance of winning nomination?

ナイオール・ストレンジ筆

2020年1月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/476340-ranking-the-democrats-who-has-best-chance-of-winning-nomination

アイオワ州党員集会を1か月後に控え民主党の指名をめぐる戦いは切迫感を増している。カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)をはじめ既に有名候補者も選挙戦から撤退しているが、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグが選挙戦に出馬している。

党の指名を受ける機会を得ることが出来るのは誰か?

第1位:ジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領(7月の順位:第2位)
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バイデンは2019年4月に立候補して以降、各種の全国規模の世論調査でトップを維持してきた。

彼のリードは4月以降、小さくなっているが、それでも大きなものだ。「リアルクリアポリティックス(RCP)」の世論調査の平均と「ファイヴサーディーエイト」のデータによると、バイデン前副大統領は第2位の挑戦者であるバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)に約10ポイントの差をつけている。

バイデンへの支持は多くの専門家たちが予測したよりも根強く復活力が強いものだ。これまでの世論調査でのパフォーマンスの出来が悪く、ライヴァルたちからの様々な攻撃、トランプ大統領からの批判があってもトップを維持している。

バイデンの支持率の高さには3つの柱が存在する。

一番目に挙げる最も重要な柱は、アフリカ系アメリカ人有権者の支持では他の候補者を圧倒している点だ。

第二に、各激戦州での世論調査では、バイデンがトランプ大統領を倒す可能性を最も持っている候補者であることが示されている。

第三に、バイデンの政治家としての長年のキャリアと中道派のイデオロギーは、トランプ政権下で次々と起きるドラマにうんざりしている有権者に快いアピールをするであろう。

バイデンはいくつかの深刻な挑戦にも直面する。

バイデンはアイオワ州とニューハンプシャー州の両州において世論調査で他の候補者の後塵を拝している。両州で勝利を収めることができなれば、トランプ大統領を打倒できる当選可能性についての彼の主張(私は当選できる)に何が起きるだろうか?

バイデンのアピールの一部分は知名度に依存していると言える。これから予備選挙に政治の底まで関心の高い有権者が参加するようになると、このバイデンの強みは活かせないことになる。

バイデンは比較的弱いトップランナーである。しかし、彼はとりあえずトップランナーではある。

第2位:バーニー・サンダース(Bernie Sanders)連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)(7月の順位:4位)
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2019年10月にサンダースは心臓発作で倒れた。この時、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が台頭する脅威にも直面し、彼の支持率は下がってしまう危険が存在した。

しかし、サンダースは活力と共に復活した。心臓発作の後に初めて公衆の前に姿を現すことになったオハイオ州での討論会で印象的なパフォーマンスを見せつけた。この時、ウォーレンはうまくいかなかった。

進歩主義派の象徴であるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)がサンダースを支持推薦したことで、プラスの衝撃を与えた。30歳の連邦下院議員オカシオ=コルテスは78歳になる連邦上院議員サンダースと一緒にいくつかの選挙集会に参加し、そのおかげで参加者が多く駆け付けた。

サンダースの支持者たちの熱意は政治献金額の数字にも表れている。

2019年第3四半期終了時点で、彼の陣営には現金で3370万ドルの資金が残っている。この数字は他の候補者よりも多い額となっている。2019年第4四半期の政治資金報告書がもうすぐ発表されるが、サンダースがトップを維持していることは容易に想像できる。

サンダースはニューハンプシャー州での各種世論調査の支持率の平均で僅差ではあるがトップに立っている。ニューハンプシャー州はアイオワ州に続いて全米で2番目に予備選挙が実施される。アイオワ州ではインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジを僅差で追いかける2位につけている。

サンダースもまた弱点を抱えている。2016年の大統領選挙予備選挙で長期間にわたり、最終的に党の指名候補となったヒラリー・クリントンと戦い、激しく批判し続けたことで、民主党内にサンダースを忌避する人々が多くいる。中道派の人々は、サンダースが大統領になったらアメリカを大きく左に寄せてしまう危険があるという懸念を頻繁に主張している。

サンダースがアイオワ州とニューハンプシャー州の両州で勝利を収めるにしても、党の主流派エスタブリッシュメントはそれでも彼の党指名獲得を阻止しようとし続けるだろう。

しかし、中道派が勝利を収める保証などどこにもない。サンダースが党の指名を獲得する可能性は十分にあるのだ。

第3位:エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)(7月の順位:第1位)
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ウォーレンは2019年10月までは明らかにトップだった。この時、アイオワ州とニューハンプシャー州の世論調査でリードし、全国規模での世論調査でバイデンに迫っていた。

彼女が台頭すると、彼女に対する詳しい調査が行われるようになった。そして、ライヴァルたちから激しい攻撃を受けた。その結果として彼女にとっての穏やかな日々は終わり、支持率が退潮傾向となった。

マサチューセッツ州選出連邦上院議員ウォーレンの「メディケア・フォ・オール」についての立場によって彼女の支持率は下落した。

ブティジェッジのようなライヴァルたちは、ウォーレンの「メディケア・フォ・オール」についての提案は有権者が望むよりもより大雑把な提案となっている。しかし、ウォーレンは自身の計画を就任3年目まで実行しないと発表したが、そのような譲歩をしても批判を鎮めることができなかった。

ウォーレンの支持者の一部がブティジエッジへと移っていることは明白だ。ブティジェッジはウォーレンよりも中道派色が強いが、両者は同じような人口学的な有権者グループの支持を争っている。それは高い教育を受けた白人有権者である。

ウォーレンを党指名の候補者から外すには早すぎる。

ウォーレンはアイオワ州の選挙戦を強力に推進しており、支持率も高くなっている。アイオワ州で勝利を収めることができれば、その勢いでニューハンプシャー州に進むことができる。ニューハンプシャー州はウォーレンの地盤マサチューセッツ州に隣接している。彼女の演説は評判が高い。

ウォーレンは左派における主導権を握るためにサンダースと戦っている。もし彼女がこの戦いに勝ったら、党指名獲得に大きく近づくことになる。

第4位:インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg(7月の順位:第5位)
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ブティジェッジは今回の大統領選挙における大きなサプライズだ。

中西部の中くらいの町の市長、しかも37歳の人物が党指名を争うビッグ4に入っているのだ。ハリスやカーステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)のような有名な連邦上院議員たちも既に選挙戦から撤退しているのだ。

ブティジェッジはメディアにおいて博識で落ち着いた姿を見せたことでアピールになっている。ブティジェッジはバイデンと同様に中道派の人材であることをアピールしているが、彼よりもずっと若く熱意に溢れていることを示している。

ブティジェッジは同性愛であることを公表した人物として初めて主要政党の大統領選挙指名候補者となろうとしている。これに社会進歩主義派の一部が引きつけられている。

ブティジェッジは現在アイオワ州での各種世論調査でトップに立っている。アイオワ州での勝利によって他州での支持獲得にも勢いがつくだろう。しかし、ブティジェッジはアフリカ系アメリカ人からの支持獲得に苦心している。全国規模の世論調査では彼は4位につけている。

現時点で4位だからと言ってブティジェッジが民主党の指名を獲得することが不可能ということにはならない。しかし、バイデン、サンダース、ウォーレンに比べてその道のりがより厳しく険しいものとなる。

第5位:エイミー・クロウブシャー(Amy Klobuchar)連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)(7月の順位:9位)
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ミネソタ州選出連邦上院議員クロウブシャーが党の指名候補となれるかどうかはアイオワ州での結果にかかっている。

アイオワ州でのクロウブシャーの支持率は約6%だ。全国規模もしくは早期に予備選挙が実施される各州での支持率はそれよりも低い数字となっている。

クロウブシャーはこれまでの討論会で存在感を見せてきた。しかし、彼女はバイデンとブティジェッジと中道派の中で争わねばならないし、支持率上昇を目指して苦闘している。

クロウブシャーは資金面でも苦労することになるだろう。2019年第3四半期終了時点で彼女の陣営には370万ドルしか現金がない状態だった。この額はサンダースの陣営の約10分の1に過ぎない。また、政治資金レースでは第8位となっている。

クロウブシャーが有力候補に浮上するためには、バイデンかブティジエッジが失速する必要がある。

第6位:マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長(7月の順位:なし)
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ブルームバーグが選挙戦に出馬したのは2019年11月末のことだった。彼はすぐに党指名を金の力で獲得しようとしているという批判のために逆風に直面した。

元ニューヨーク市長ブルームバーグの総資産は推定で5400億ドルだ。彼は世界で20位以内に入る大富豪だ。

ブルームバーグは既に選挙CMに多額の資金を投じている。その結果、RCPとファイヴサーティーエイトの両方が出している全国規模の各種世論調査の支持率の平均で第5位につけるようになっている。

ブルームバーグは早い段階での討論会に参加しない計画を立てた。その代わりに選挙戦後半の3月3日のスーパーチューズデーに選挙戦に本格参入する意図を持っている。

この戦術には危険を伴うように見える。民主党支持の有権者たちが、批判の多い警察の職務質問を長年にわたり支持している大金持ちの政治家を支持するようになるかどうかははっきりしない。

ブルームバーグは職務質問に対する支持を選挙戦への出馬直前に取り消した。しかし、それでも党の指名獲得に向けた道のりを現実的なものとして考えることは難しいままである。

第7位:アンドリュー・ヤン(Andrew Yang)(実業家)(7月の順位:なし)
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ヤンは既成概念にとらわれない思想家として支持を集めている。そして、人々の予測よりも「ヤン・ギャング」と自称する有権者の支持を集めるようになっている。

ヤンが民主党の指名候補になることなどは想像できない。しかし、自身の全国的な知名度と評価を高め、討論会の壇上で信頼感のあるパフォーマンスを展開している。

ヤンは、党指名候補の副大統領候補に指名されるには風変わり過ぎる。しかし、政治の世界で確固とした公約を掲げて進んでいる。

第8位:コーリー・ブッカー(Cory Booker)連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)
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ブッカーの選挙運動は今のところうまくいっていない。選挙戦序盤、ブッカーは有力候補として話題に上ることもあった。

彼は全国規模の世論調査で3%以下の支持率に苦しんでいる。また、早期に予備選挙が実施される各州で強さを見せられていない。ハリスが選挙戦から撤退したことで、選挙戦に残った唯一のアフリカ系アメリカ人の有力候補となったが、それが彼の支持率上昇にはつながっていない。

現在の時点では、ブッカーが少なくともアイオワ州での投信集会までは選挙戦にとどまる可能性は高いと言える。しかし、それ以降の選挙戦の継続は、ライヴァルたちから批判を受けることで続けられるかは疑問である。

第9位:トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)(7月の順位:第10位)
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ギャバードが民主党の指名候補になることはないだろう。彼女は因習打破の姿勢を保っている。2017年にシリアを訪問し、バシャール・アサド大統領に会談を持ち、トランプ大統領の弾劾に関しては「棄権」した。

しかし、ギャバードは現状に満足できない左派の支持を集めている。ニューハンプシャー州では、RCPの平均では約6%の支持率を集め第5位につけている。

ギャバードが第三党の候補者として大統領選挙を戦うという噂は消え去っていない。そのような動きを考慮などしていないと彼女は完全否定している。

第10位:トム・ステイヤー(Tom Steyer)(実業家)(7月の順位:なし)
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大富豪で長年にわたり環境保護運動に携わってきたステイヤーは大統領になろうと出馬した。

各種世論調査で熟練の政治家たちよりも上に来ている。しかし、党指名を争う有力候補になるまでの道のりは遠い。

その他の候補者たちは次の通りだ。マイケル・ベネット連邦上院議員(コロラド州選出、民主党)、フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官、ジョン・ディラニー元連邦下院議員(メリーランド州選出、民主党)、ディヴァル・パトリック元マサチューセッツ州知事、作家マリアンヌ・ウィリアムソンだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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