古村治彦です。
andrewyang101

アンドリュー・ヤン
 今回は、民主党予備選挙候補者の一人、アンドリュー・ヤン(Andrew Yang)について詳述している記事をご紹介する。ヤンは政治家の経験が全くない、実業家であり、出馬当初は無名候補、泡沫候補であったが、これまで民主党全国委員会が実施する候補者討論会には2019年12月までの討論会に全て参加してきた(2020年1月の討論会には参加できなかった)。参加条件がどんどん厳しくなり、全国的な知名度のある有力政治家でも参加できない中で、第1回から第6回までの討論会に参加できた。第6回の討論会では、ヤンが唯一の非白人の候補者として登壇した(ヤンは台湾移民の息子)。

 ヤンはベイシック・インカム導入を主張して注目を浴びたが、その後、彼の様々な政策を支持する有権者数が増え、「ヤン・ギャング(Yang Gang)」と呼ばれて、積極的な支持活動を展開している。

 ヤンの支持率は一桁台であるが、政治家の経験など全くない、無名の実業家、アジア系アメリカ人の候補者がここまで選挙戦に残っていることは驚くべきことだ。これまでに、カーステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官(バラク・オバマ政権、民主党)、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)など全国的に知名度が高い、有力政治家たちが既に選挙戦から撤退している。

 ヤンの政策を読むと、ユニークなものがあり、中道派から左派に分類されるものとなっている。彼が民主党の予備選挙を勝ち抜いて民主党の大統領選挙候補者になる可能性はほぼないが、ここまで選挙戦を展開できたことで、彼を「ミラクル・ヤン」と呼んでも良いのではないかと私は考えている(「ミラクル・ヤン」については小説でアニメにもなっている『銀河英雄伝説』を参照してください)。

(貼り付けはじめ)

アンドリュー・ヤンは現在2020年大統領選挙民主党予備選挙に出馬している。この候補者について私たちが分かっていること全てと彼が予備選挙において積み重ねていることについて書いていく。(Andrew Yang is running for president in 2020. Here's everything we know about the candidate and how he stacks up against the competition.

グレイス・パネッタ筆

2019年8月1日

『ビジネスインサイダー』誌

https://www.businessinsider.com/who-is-andrew-yang-bio-age-family-key-positions-2019-3

・実業家アンドリュー・ヤンは現在2020年米大統領選挙民主党予備選挙に出馬している。ヤンのユニークな政策公約はここ数か月人々の注目をかなり集めている。

・ヤンは、アメリカ経済に対する自動化の衝撃について警告を発している。そして、「フリーダム・ディヴァイデンド(Freedom Dividend)」計画を提唱していることで知られる。この計画の内容は18歳以上の全アメリカ国民に毎月1000ドルを支給するというものだ。

・この記事は、あなたが知るべきヤンの選挙運動と約90の公約を網羅している。

●アンドリュー・ヤンはどんな人物か?

・現在の職業:実業家であり2020年大統領選挙候補者

・年齢:44歳

・家族構成:ヤンと配偶者イヴリン、幼い男の子2人

・出身地:ニューヨーク州スケネクタディ

・所属政党:民主党

・以前の職業:企業弁護士、医療部門の起業家、「マンハッタン・テスト・プレップ」社CEO、「ヴェンチャー・フォ・アメリカ」プログラム創設者・CEO

●民主党指名を得る争いで彼の直接の競争相手は誰になるのか?

私たちが繰り返し実施いている全国規模の世論調査の結果に基づくと、アンドリュー・ヤンと直接争うことになる候補者たちと民主党内部でのより幅広い競争者たちが明らかになった。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、民主党)とエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、ヤンを支持する有権者たちの間で、民主党支持の有権者全体の間でよりも、人気が高い。

ヤンを支持する人々の間で、ジョー・バイデン前副大統領は人気だ。しかし、一般的な民主党員や民主党支持の有権者たちのバイデンへの支持率よりも10%も低いものだ。

本誌は「サーヴェイモンキー・オーディエンス」を通じて全国規模の世論調査を複数回実施した。その中で特定の候補者を支持している有権者がどのように重なっているかを発見しようとしてきた。私たちは世論調査対象者に対して、「この候補者を知っているか」「党の指名候補としてこの候補者は満足できるか」という質問をし、また時には「この候補者はドナルド・トランプ大統領に選挙で勝てるか、もしくは負けるか」という質問も行った。

●アンドリュー・ヤンの政策について立場はどのようなものか?

・医療・健康管理について:

ヤンはメディケア・フォ・オールと単一支払者医療制度を支持している。単一支払者医療制度においては、医療に関しては民間の保険会社ではなく、政府がお金を出すということである。

2019年7月の2回目の討論会において、ヤンは次のように発言した。「自分で事業を行っている人間として、私は、現在の医療制度が人々を雇用しにくくし、病気の人々への対処に失敗し利益を与えていないということを率直に申し上げたいと思います。そのような医療制度のために、人々は転職をすることと事業を始めることに躊躇しています」。

ヤンは精神医療サーヴィスに対するアクセスを拡大したいとしている。また地方での医療サーヴィスの拡充、新しく母親になった人々の産後うつの医療費のカバーを保険会社に義務付けること、より高リル的な医療のためにAIの利用を動機づけすることを訴えている。

・移民について:

ヤンはアメリカに長年居住し、犯罪履歴ない不法移民に市民権を与える「18年」経路を支持している。

ヤンは「ドリーム」法案を法律にするために署名すると公約している。これは子供時代に親に連れられてアメリカに入国した不法移民を保護するものである。また、H1-BF-1ヴィザを拡大し、技術や知識を持った移民を惹きつけたいと主張している。

アメリカ南部国境の安全を更に確保するために新しい技術に投資をし、アメリカ合衆国税関・国境警備局の予算を拡充し、難民と移民に関する裁判の遅滞を減少したいと主張している。

・気候変動について:

ヤンは気候変動のペースを遅らせることが可能な、炭素隔離や地球工学のような最新技術に対するアメリカ政府の投資を支持している。

彼はまた化石燃料企業に対する連邦政府からの補助金やせいぜいにおける優遇を廃止し、炭素排出に税金をかけることを主張している。

ヤンはまた、環境保護局(EPA)を指導して、民間企業と地方政府と協力させ、気候変動に対する革新的な解決策を生み出すと訴えている。

・選挙資金・選挙に関する改革について:

ヤンは 「シティズンズ・ユナイティッド対連邦選挙委員会(FEC)」の判決を覆すことになる憲法修正を支持している。また、スーパーPACの禁止と選挙への公金投入の拡大を支持している。

ヤンは連邦最高裁判事の任期を18年に制限することを主張している。(訳者註:現在は終身)。

大統領に当選したら、投票に関する技術を向上させることで選挙に関わる社会資本を近代化し、補強すると主張している。

 

ヤンは自動化された有権者登録、投票日の休日化、ワシントンDCとプエルトリコの州への昇格、投票可能年齢の16歳への引き下げ、党派偏重のゲリマンダーの減少を支持している。

・妊娠中絶について:

ヤンは中絶を選択する権利と安価な避妊法へのアクセスを支持している。彼は大統領になったら中絶に対する法的保護を支持する人物を連邦最高裁判事に指名すると発言している。

LGBTQの諸権利について:

ヤンは、性的志向への差別からLGBTQの人々を守るために。連邦法による保護を拡大することを支持している。

彼はまた差別に直面して言えるLGBTQのアメリカ国民を支援するためのプログラムへの政府からの資金投入を増やすと主張している。

・教育について:

ヤンは全ての子供たちへの早期教育と将来商売の道に進みたい学生のために高校での実務教育の実施を支持している。

彼はまた2年制の短期大学の教育を無料、もしくは低い学費で受けられるようにしたいと望んでいる。また四年制大学に対して学費引き下げを求めるための様々な方法を実行することを支持している。

ヤンは高校と大学での技術・職業教育を促進する、もしくは拡大したいと考えている。

大学入学スキャンダルを受けて、ヤンは一流エリート大学の定員を拡大するための新しい政策を進めたいとしている。

カマラ・ハリス(後に選挙戦から撤退)をはじめとする候補者仲間と同様、ヤンは公立学校の教師の給与を引き上げることを支持している。

・銃について:

ヤンの選対のウェブサイトには、自動車免許が複数の手続きを経るのと同じく、新しい、複数の手続きを経る銃所持の免許システムについての詳細な計画を掲載されている。計画が実現すれば、銃所持の免許取得のために国民全員にバックグランドチェックを義務付けることになる。

ヤンは武器を放棄したい人向けには連邦政府が武器を買い上げるプログラムを導入したいと主張している。ヤンは連邦政府が国内一律の安全基準を制定し、銃の製造業者に向けては銃の安全性技術向上を進める動機づけを行うプログラムを導入したいと主張している。

・刑法犯罪対策改革について:

ヤンは

マリファナ合法化、元受刑者の社会復帰促進プログラムへの予算投入、再犯率の減少、現金保釈の段階的廃止、連邦政府の民間刑務所との契約の減少といった手段を通じて受刑率を減少させることを支持している。

少量の麻薬所持の非犯罪化と麻薬危機に関して責任があると彼が考える製薬会社への罰金を科すことを通じて麻薬危機と戦うとしている。

ヤンはまたアメリカ国内の警察官の身体に記録用のカメラをつけることに連邦政府が資金を投入することと衝突を激化させないようにするために「死に至らない」武器開発の投資に興味を持っている。

・貿易について:

「ベイシック・インカム・アース・ネットワーク」とのインタヴューの中で、ヤンはトランプ政権が中国との間で貿易戦争を始めたことを批判した。彼は、貿易戦争などは「生産的ではなく」、実業界にとっては頭の痛い問題だと発言した。

・外交政策について:

ヤンは大統領になったら、不介入スタイルの外交政策を実現するとしている。選挙陣営のウェブサイトで、ヤンは「大統領軍事力使用権限」を廃止し、宣戦布告権限を連邦議会に戻すと主張している。

アメリカとNATO加盟の同盟諸国の関係強化と国務省の外交努力とアウトリーチの強化を主張している。

・税制について:

ヤンは大企業に対する10%の税率の付加価値税を導入すること、金融取引に対する0.1%の課税、キャピタルゲインへの課税にある穴を塞ぐことを支持している。

ヤンは自動化された所得税申告、税金申告をより効率化するためのIRSの近代化、申告日の休日化を支持している。

・雇用と経済について

ヤンが主張する政策で最もよく知られているのは、「自由の配当(Freedom Dividend)」だ。これは、国民全員へのベイシック・インカム・プログラムである。アメリカ人の成人全員に毎月1000ドルを与えるというもので、その財源の一部は自動化によって利益を得ている各企業への課税を充てるとしている。

ヤンは学生への職業訓練とテクノロジー訓練を拡大することを支持している。また、仕事を探すために引っ越しをしなければならない人々にIRSが引っ越し代を払い戻すプログラムを支持している。

ヤンは「アメリカン・ジャーナリズム・フェローズ」プログラムを創設したいと主張している。このプログラムでは、記者たちに助成金を与えて、4年間地方の新聞で地方のニュースを報道する仕事に従事してもらうというものだ。2019年7月の第2回の討論会で、ヤンは次のように語った。「多くの人々は経済に置いていかれていると感じています。確かにGDPと株価は記録的な数字を叩き出しています。しかし、記録的記録とは一体何が記録しているでしょうか?自殺、違法薬物使用、精神的不安などが記録しているのです。私たちが選挙で勝利するための方法は、ここミシガン州や全米の人々のために経済的進歩を再定義することです」。

・技術・テクノロジーについて:

ヤンは大統領に当選したら、技術・テクノロジー長官と技術・テクノロジー省を新設すると主張している。この政府機関は人工知能やその他の最先端技術を規制するものだ。

医療関係の企業に対して新しく、革新的な医療技術開発のために動機づけをしたいと主張している。

ヤンは、暗号通貨取引とディジタル財産についての連邦政府による規制と基準の作成と暗号についての新基準を定めたいとしている。

ヤンのユニークな政策は、NCAAに所属する大学のスポーツ選手たちに賃金を支払うこと、全国民向けに無料の結婚相談サーヴィスを提供すること、高校生の国内交換留学プログラムを創設し、生活している場所とは全く違う場所で過ごし、会ったことがないような人たちと交流するというものがある。

●アンドリュー・ヤンのキャリアにおける最大の成功は何か?

2000年代中盤、ヤンは一流大学の試験準備提供企業「マンハッタンGMAT」のCEO(最高経営責任者)を務めた。ヤンと彼のパートナーはこの企業を2009年に「カプラン」社に売却した。

ヤンは続けて「ヴェンチャー・フォ・アメリカ(VFA)」を立ち上げた。このプログラムは大学の卒業生を金融危機が直撃した都市に送り起業させるというものだ。

ヤンによれば、VFAは500名の卒業生をアメリカ全土の都市に送り、2500以上の雇用を生み出した、ということだ。

2012年、ヤンはオバマ大統領から「チャンピオン・オブ・チェンジ・アワード」を贈られた。2015年にはオバマ大統領によって、グローバル・アントレプレナーシップ担当大統領特別大使に任命された。「ビジネス界の最も創造的な100名」リストを作成した。

●アンドリュー・ヤンはこれまでにどれくらい政治資金を集めたのか?

2017年10月から2018年12月までの間にヤンは65万9578ドルを集めたと公表している。ヤンの政治資金集めは、「ザ・ジョー・ローガン・エクスペリエンス」と「ブレックファスト・クラブ」に出演した後で急増した。それぞれポッドキャストとラジオの人気番組だ。

ヤンは、2019年2月と3月だけで8万人の献金者から合計で170万ドルを集めた。1人当たり平均で17ドル92セントだ。2019年第一四半期の合計では180万ドルとなった。

2019年4月1日から6月30日までの第二四半期において、ヤン選対は280万ドルを集め、手元に84万8000ドルを残していると発表した。ヤンは9月の討論会に出席するためには13万名以上の献金者を確保しなければならない。

●他の候補者と比べて、アンドリュー・ヤンは有権者に土曜に見られているか?

本誌は、予備選挙の候補者たちがどのように認識されているかを調べるために様々な世論調査を実施してきた。私たちはある世論調査で候補者たちを左派から右派まで位置づけするように質問した。ヤンは中道派に分類されるという結果になった。

ヤンはこれまで政治に関わってこなかったのでアウトサイダーの視点を持っている。そのため、私たちが世論調査で、候補者たちの公的な仕事や政府の仕事の経歴についての知識を基にして大統領になるための準備ができている順番に候補者たちをランク付けするように求め、ヤンは予備選挙候補者の中で最も経験の乏しいと認識されているという結果が出た。また、どの候補者が好ましい、もしくは信頼できるかという質問の結果、ヤンは後者の中で中位につけた。

●アンドリュー・ヤンはトランプ大統領を倒せるのか?

ヤンを知る民主党員や民主党支持の有権者たちは、ヤンについて、トランプ大統領に対してはより弱い候補者となるだろうと考えている。バイデンに比べて、トランプに対して勝利の可能性よりも敗北の可能性の方が高いと考えられている。

●民主党を支持している有権者たちはアンドリュー・ヤンが討論会の参加条件をクリアしたことについてどう感じているか?

本誌は有権者たちが候補者それぞれの特徴や職業などの強みについてどう感じているかを調査した。私は調査対象者たちに対して、職業や強みとなる特徴を列挙したリストを提示して、どの職業や特徴だと大統領選挙に投票し、投票しないかを答えてもらった。

例えば、民主党の予備選挙に参加すると答えた調査対象者たちの中で、19%が、候補者が大学教授であればより支持できると答えた。一方、支持できないと答えたのは4%だった。純粋な好感度はプラス15%である。そして、私たちは職業などの好感度と候補者たちの経歴を重ね合わせて検討してみた。

ヤンについていえば、複数の言語が使えること(プラス25%)、年齢が50歳以下であること(プラス23%)、移民の子供であること(プラス21%)、法律家であること(プラス3%)が強みとして認識された。

民主党員や民主党支持の有権者において、ヤンが持つ強みとはならない特徴としては、ビジネスオーナー(マイナス11%)、政治や行政での経験が少ないこと(マイナス22%)、企業弁護士(マイナス33%)、豊かな家庭で育ったこと(マイナス42%)が見られた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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