古村治彦です。

●アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の現状

 いよいよ来週からアメリカ大統領選挙民主党予備選挙が本格化する。各陣営が自分たちの長所と短所、強みと弱みを分析して、お金と人をどのように投入するかで鎬を削ることになる。各種世論調査の数字もいよいよ重要性を増していく。支持率低迷が伝えられたら、有力候補の座から滑り落ちてしまう。現在のところ、トップ3は、ジョー・バイデン前副大統領、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)だ。

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 4位の座をめぐって、インディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジとニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグが争っているという結果が出た。ブルームバーグは元々待望論があったのだが、一度は出馬を取りやめたが、2019年11月になって出馬表明、政治献金を受け取らず自己資金で選挙運動を行うことを表明した。世界的大富豪ブルームバーグの資産は約6兆円であり、1000億円使ってもそこまで大きな影響はない。有力候補者たちでも年間で100億円集めるのが大変なにに、その10倍くらいのお金はポンとすぐ出せるというのはやはり有利だ。

 実際、ブルームバーグは既に200億円以上を投じて全米規模でテレビ広告を放送している。他の陣営は手持ちの資金とにらめっこしながらどうすれば最も効果的に広告を放送できるかに頭を痛めている中で、物量作戦で圧倒している。2016年のヒラリー・クリントンでも集めたお金は200億円程度だったと記憶しているが、ブルームバーグの資金力は凄まじい。

ブルームバーグは民主党が左傾化し過ぎているという警鐘を鳴らして出馬したので、中道右派の候補者ということになる。彼の所属政党は「民主党→共和党→民主党」という変遷をたどっているのだが、「共和党では左派、民主党では右派」ということになる。

ブルームバーグは、「ロックフェラー・リパブリカン」に分類される。ロックフェラー・リパブリカンとは、ジェラルド・フォード大統領時代(1974-1977年)に副大統領を務めたネルソン・ロックフェラー(1908-1979年)のような穏健な共和党員を指す。最近で言えば2012年に共和党の大統領選挙指名候補となり、現在はユタ州選出の連邦上院議員であるミット・ロムニーがロックフェラー・リパブリカンに分類される。私はロムニーこそは、ドナルド・トランプ大統領が再選され、2期目となった場合に共和党内で反旗を翻す勢力の中心人物になるのではないかと考えている。共和党リベラル派と民主党右派は、それぞれ同じ党に属しているドナルド・トランプ大統領、進歩主義派や左派を嫌っている。

●全国規模ではバイデンがトップを維持でサンダースが追走、ブルームバーグが急上昇

 早い人物では2018年から有力候補たちは2019年初頭からアメリカ大統領選挙民主党予備選挙への出馬宣言と選挙運動を始めた。既に1年以上選挙運動を続けている候補者もいる。マイケル・ブルームバーグは2019年11月に出馬宣言をしたばかりで実質的には数カ月だ。各種世論調査は2019年から行われているが、全国規模の世論調査ではジョー・バイデンがずっとトップを走っている。2位になるのは、バーニー・サンダースかエリザベス・ウォーレンのどちらかという状態が続いている。下のグラフは「モーニング・コンサルト」社の世論調査の結果の推移を折れ線グラフ化したものだ。

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 モーニング・コンサルト社の世論調査は全米で1万人以上を対象に行われており、誤差の範囲も少ないので信頼性が高いと私は評価している。グラフを見れば一目瞭然、バイデンがトップを走り、サンダースが追走、ブルームバーグが急上昇ということが分かる。

 モーニング・コンサルタント社ではアイオワ州、ニューハンプシャー州、ネヴァダ州、サウスカロライナ州を「早期に予備選挙が実施される州」と規定して、これらの州での支持率も別に出している。それで見ても、バイデンが有利だが、サンダースとの差は縮まっている。サウスカロライナ州はアメリカ南部に位置し、アフリカ系アメリカ人有権者の割合が高く、またアフリカ系アメリカ人有権者は民主党支持の割合が高い。アフリカ系アメリカ人有権者の中でアメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領バラク・オバマに副大統領として仕えたバイデンの好感度は大変高い。サウスカロライナ州での世論調査では、バイデンが30%の支持を記録し、2位のサンダースは15%くらいということが多い。

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 こうして見ると、早期に予備選挙が実施される4州からサウスカロライナ州を除くと、バイデンとサンダースの差は縮まるか、逆転しているということが考えられる。2月3日のアイオワ州、2月11日のニューハンプシャー州での党員集会と予備選挙は大接戦で、サンダースが勝利する可能性は高いが、全米の傾向で言えばバイデンが有利ということになる。

 3月3日には全米15州とアメリカ領サモアで予備選挙と党員集会が実施される。この日はスーパーチューズデーと呼ばれており、予備選挙の大勢が決する可能性が高い。もしくは3月17日も重要な週での予備選挙が実施されるので、ここで大勢が決する可能性もある。モーニング・コンサルト社はスーパーチューズデーの各州での世論調査の結果も以下のように発表している。

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マイケル・ブルームバーグはスーパーチューズデーで予備選挙が実施される州で重点的にテレビ広告を放送し、支持率を伸ばしている。マイケルが中道派のバイデンに行くべき票を喰ってしまうということになると、サンダースが比較相対的に浮上するということが考えられる。

●年齢別では若い人たちほどサンダース、年齢が上がるとバイデン支持

 モーニング・コンサルト社では年齢グループ別の数字も発表している。「Z世代(18歳から22歳)」、「ミレニアル世代(23歳から38歳)」、「X世代(39歳から54歳)」、「ベイビーブーマー世代(55歳から73歳)」と4つのグループに分類している。一目瞭然で分かるのは、18歳から38歳までの若者たち世代ではバーニー・サンダースが圧倒的な人気であるということだ。23歳から38歳のミレニアル世代(景気後退と対外戦争で自分たちは厳しい時代を生きていると認識している世代)に属している候補者であるピート・ブティジェッジとトゥルシー・ギャバ―ド連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)の同世代からの支持率は高くない。ブティジェッジは世代交代を主張しているが、彼の属する世代の人々からの支持は高くない。アメリカの若者たちは、自分たちは親世代よりもついていないと認識しており、これまでのアメリカとは違うアメリカを作りたい、既存のエスタブリッシュメントを壊したいという謀反気を持っていることが分かる。

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Z世代のグラフ
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ミレニアル世代のグラフ

 年齢が高くなればなるほど、ジョー・バイデンの支持率が高くなっている。

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X世代のグラフ

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ベイビーブーマー世代のグラフ

 こうした人々からすれば、「若者は甘ったれており、恵まれていないなんて論外だ。世の中を革命的に買えるなんて危険すぎるんだ」ということになる。民主党にとっては若者たちの謀反気は大きな問題だ。若者たちが世の中にもまれて変革志向を捨てていけばよいが、そうでなければ民主党主流派にとっては大きな反省勢力を党内に抱え込むことになる。

●白人有権者はバイデン、アフリカ系アメリカ人以外の非白人有権者はサンダース支持

 人種的なグループ分けでも世論調査の結果が発表されている。「白人」「アフリカ系アメリカ人」「ヒスパニック系アメリカ人」「アジア系アメリカ人」「その他」に分類されている。

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アフリカ系アメリカ人有権者のグラフ
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ヒスパニック系アメリカ人のグラフ

これで見ると、アフリカ系アメリカ人ではバイデンが大きな支持を得ている一方で、ヒスパニック系アメリカ人ではサンダースが支持を集めていることが分かる。白人ではバイデン、アジア系アメリカ人ではサンダースがそれぞれ支持率トップとなっているが、その数字は大きくない。

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白人有権者のグラフ

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アジア系アメリカ人有権者のグラフ

(貼り付けはじめ)

最新の全国規模の世論調査でブルームバーグが支持率12%を記録し、ブティジエッジを追い抜く(Bloomberg hits 12 percent, surpasses Buttigieg in new national poll

ジュリア・マンチェスター筆

2020年1月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/480236-bloomberg-hits-double-digits-in-new-national-poll

民主党の大統領選挙民主党予備選挙の有力候補マイケル・ブルームバーグが火曜日に発表された「モーニング・コンサルト」社の最新の世論調査で二桁の支持率を記録した。2019年11月に選挙に出馬して以降、彼が支持を伸ばしていることが明らかになった。

今回の世論調査ではブルームバーグは支持率12%を記録し、支持率7%のインディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジ、5%の実業家アンドリュー・ヤン、3%のエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)を上回った。

ジョー・バイデン前副大統領は予備選挙の候補者の中でトップとなる支持率29%を記録し、続くバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の支持率は23%、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は3位となる支持率14%を記録した。

今回の世論調査の結果は、ブルームバークが広告を大規模に放送していることが各種世論調査の数字に表れており、効果を上げていることを明らかにしている。

ブルームバーグは世界有数の大富豪であり、政治献金を受け取っていない。しかし、予備選挙が始まる前に全米でテレビ広告を放送するために既に2億7000万ドル(約295億円)を使っている。

ブルームバーグ選対は月曜日から全米で民主党予備選挙に参加する予定の250万名の有権者に手紙を送り始めた。

ブルームバーグはアイオワ州とニューハンプシャー州では候補者として登録しておらず、その代わりにスーパーチューズデー(3月第1週の火曜日)に投開票が実施される各州に特に力を注いでいる。

ブルームバーグの出馬はかなり遅い時期となってしまったが、ブルームバーグ陣営はスタッフの数を増やしており、今月初めにはその数が800名にまで膨れ上がった。

ブルームバーグは連邦議員たちの間でも支持者を増やしている。月曜日には5人目の連邦議員がブルームバーグを支持推薦すると表明した。

今回のモーニング・コンサルト社の世論調査は2020年1月20日から26日にかけて民主党予備選挙参加予定の17836名の有権者の対象に実施された。誤差はプラスマイナス1ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側