古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙がいよいよ始まる。実は共和党でも予備選挙が行われる。全く注目されないのは現職のドナルド・トランプ大統領が再選を目指して出馬表明しており、有力な対抗馬もいなので、共和党の指名候補にはトランプ大統領がなると決まっているからだ(重い病気や死亡となれば話は別だがその場合はマイク・ペンス副大統領が選挙に出ることになるだろう)。

 民主党予備選挙ではずっとジョー・バイデン前副大統領が支持率でトップを走り、本選挙で民主党の指名候補としてトランプ大統領と対決することになると考えられてきた。しかし、ここにきてバイデンにとっての不安要素が出てきている。それは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が支持率を伸ばしていること、そして、ニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグが台頭してきていること、である。

ブルーム―バーグは2月に予備選挙が実施される4州(党員集会が実施されるアイオワ州では候補者登録は必要ないが、予備選挙が実施される3州では立候補者登録が必要だがブルームバーグはしていない)を捨てる戦略を採っている。この4州合計の代議員数は153名だ。投票で選ばれる代議員数3977名のうちの3.85%に過ぎない。勝者総取りではないので、有力候補者たちで分け合う形になる。この4州に力を入れるのは報道が多いことと流れを作ることができるためだ。しかし、数字として見れば小さい。そこで、ブルームバーグはスーパーチューズデーに注力している。3月3日に投開票が実施されるスーパーチューズデーでは1344名の代議員が決まる。総代議員数の33.8%を占める。ここで勢いをつけようというのがブルームバーグの戦略なのだ。

 こうした戦略を採用した候補者がこれまでいなかったし、そのためにブルームバーグほどの資金(約200億円)を投じた候補者もまたいなかったので、そのような結果になるかは分からない。しかし、ブルームバーグの集中戦略によって、割を食うのは、バイデンだ。

サンダースの支持者たちは左派なので、「あんな金持ち大嫌い」ということでブルームバーグに支持が流れることはない。バイデンとブルームバーグは同じ中道派なので支持基盤が競合する。ブルームバーグが支持率を伸ばすということは必然的にバイデンの支持が食われるということになるのだ。

 今回紹介する記事でも、バイデンは大丈夫だ、という意見とバイデンには不安がある、という意見が紹介されている。初めてのケースということもあり、バイデン周辺は不安を持っているようだ。民主党予備選挙の情勢は3月が一つ目の山場ということになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

バイデンはブルームバーグを脅威として、サンダースにとっては恩恵として見ている(Biden sees Bloomberg as threat — and boon to Sanders

ジョナサン・イーズリー、エイミー・パーネス筆

2020年1月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/480592-biden-sees-bloomberg-as-threat-and-boon-to-sanders

ジョー・バイデン前副大統領の選対幹部たちはニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグについて懸念を募らせている。幹部たちはブルームバーグがスーパーチューズデーで予備選挙が実施される各州でバイデンを支持する中道派の有権者たちの支持を吸い上げ、結果としてバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が党の指名を勝ち取ることになると考えている。

バイデン選対の幹部たちはサンダースとの一対一の対決に自信を持っており、アイオワ州とニューハンプシャー州で結果を残せば、サンダースを上回ることができると考えている。この2州において、バイデンはインディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジとエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)と民主党中道派の主導権争いをしている。

しかし、バイデンの周辺人物たちの中にはブルームバーグがバイデンと対峙することになると怒りと不安を持っている人たちが出ている。

ブルームバーグは早期に予備選挙が実施される各州で候補者登録を行わず、その代わりにスーパーチューズデーで予備選挙が実施される各州に数百万ドルを投じて、多くのスタッフを派遣しテレビ広告を流している。今年のスーパーチューズデーは2020年3月3日に投開票が行われる。この日に予備選挙が実施される各州には代議員の総数の約3分の1が配されている。

各種世論調査の結果が示しているのはバイデンとブルームバーグの支持者が重なっているということだ。両者は民主党主流派エスタブリッシュメントと緊密な関係を持ち、民主党に長年大口献金を続けている献金者たちと関係を築いてきた。

バイデン周辺人物たちが持っている恐怖は、3月3日の投票でブルームバーグが中道派の票を割ってしまい、左派を活性化しているサンダースが漁夫の利を得て党の指名獲得まで進んでしまうのではないかというものだ。

バイデンを支持し、オバマ政権時代には外国への大使も務めたハワード・ガットマンは次のように語っている。「ブルームバーグが本気でトランプ大統領を倒したいと思っているのなら、重要な各州でジョー(・バイデン)から票を引きはがして、バーニー(・サンダース)を浮上させるようなことをするなんておかしいですよ。もしそんなことが起きれば、ブルームバーグはトランプ再選について最も責任が重いアメリカ人ということになります」。

ブルームバーグは昨年11月に大統領選挙予備選挙に出馬表明を行ったが、出馬理由としてバイデンが党の候補者指名を獲得できないのではないかという懸念があったからとしている。ニューヨーク市元市長ブルームバーグは、本選挙になって左派の候補者が民主党の候補となっていればトランプを倒すことはより難しくなると考えている。

ブルームバーグの側近スティーヴ・ラトナーは今週MSNBCの「モーニング・ジョー」に出演し、彼の考えを説明した。彼は、サンダースが早期に予備選挙が実施される各州で勢いをつけてスーパーチューズデーになだれ込んできた場合に、ブルームバーグは民主党にとっての中道派の頼みの綱となるだろうと述べた。

らトナーはまたバイデン支持者たちからの不平不満に次のように反論した。

ラトナーは「マイク・ブルームバーグがジョー・バイデンの運命を変えるなんてことはありませんよ。ジョー・バイデンの運命を変えるのはジョー・バイデンです」と述べた。

らトナーはまた次のように述べている。「バイデンはアイオワ州とニューハンプシャー州で勝利を収めるかもしれません。もしくはうまくいかないかもしれません。どちらの場合でもバーニー・サンダースを止めるためにしっかりとした中道派の選択肢が必要になります。スーパーチューズデーで30%以上の代議員が選ばれるのです。そうした中で私たち民主党員が中道派の候補者を持てないのなら、サンダース列車は止められなくなります。これがブルームバーグを支持する理由です」。

バイデンの側近の1人は、ブルームバーグの戦略について反対しないと述べた。彼はバイデンが過小評価されており、最初の投票でバイデンは民主党の指名獲得の強力な候補者として台頭してくるだろうと述べた。

この人物は「バイデンが最初の4州でしっかり結果を出せば、ブルームバーグは陣営に対して油断するなと引き締めを行うでしょうね。誰もブルームバーグに直接質問をできていなんですよ。彼は討論会にも出て来ていませんしね。彼はスーパーチューズデーまでただテレビ広告を流すだけ。私は、クロウブシャーとピート(・ブティジェッジ)への支持の多くがバイデンに流れると考えています」。

この人物は続けて「大統領選挙について、トランプ打倒について真剣に考えているのならば、誰が他のティームにとって妨害になるようなことをしますか?」と述べた。

民主党エスタブリッシュメント派の間ではサンダースの強さに対する警戒感があり、サンダースの勢いを止める方法について議論が多くなされるようになっている。

サンダースの勢いをどのようにして止めるかという難問は2016年にトランプ勝利を阻止したいと考えた共和党員の抱えた問題と同じだ。この時、共和党員たちはトランプの勢いを阻止するための候補者も戦略も選ぶことはできなかった。最終的にトランプは圧勝し、共和党の候補者指名を獲得した。

バイデンのために政治献金集めをしているある民主党員は次のように語っている。「ブルームバーグはバーニーの指名獲得のために更に速い速度で動いていると言ってよいでしょう。もしブルームバーグが数百万ドルを投じて、ジョー(・バイデン)から票を奪うなんてことになったら、それはバーニー(・サンダース)を助けることになるのは間違いありません。私は今でもマイク(・ブルームバーグ)がいくつかの州で勝利を収めることになるが、彼のスーパーチューズデーに集中するという戦略が機能するのかどうか誰にも分からないと考えています。そのようなことはかつて試みられたことがなかったからです」。

最新の各種世論調査の結果が示しているところでは、ブルームバーグはバイデンの強固な支持基盤を形成しているアフリカ系アメリカ人と年齢の高い有権者たちに切り込んできている。

モーニング・コンサルト社の世論調査ではブルームバーグの支持率は12%になっている。ブルームバーグ支持者の34%は2番目に支持する候補者としてバイデンの名前を挙げている。これは最も高い数字だ。

ブルームバーグの純粋な好感度(「好き」の数字から「嫌い」の数字を引く)はプラス5ポイントからプラス33ポイントに急上昇している。

ブルームバーグのアフリカ系アメリカ人有権者の間での純粋な好感度は28ポイントも上昇した。

サーヴェイUSAがカリフォルニア州で実施した世論調査の結果では、スーパーチューズデーで予備選挙が実施される各州の世論調査でブルームバーグの支持率はわずか6%だった。これらの各州にブルームバーグは資金を集中的に投入している。全体の支持率は低かったものの、この世論調査でも50歳以上の有権者の間では支持率11%を記録した。50歳以上の有権者はバイデンにとって重要な支持基盤となっている。

『ロサンゼルス・タイムズ』紙がカリフォルニア州で実施した世論調査では、ブルームバーグの支持率は2%から6%に急上昇した。ブルームバーグの支持者の70%が彼を支持する理由としてトランプ打倒のチャンスをブルームバーグが最も持っているからということを挙げている。

バイデンは選挙運動を通じて、自身がトランプ大統領に勝てる候補だという「当選可能性(electability)」を訴えの中心に据えている。

民主党系のある政治献金者は次のように述べている。「ブルームバーグに当選可能性がないことについては疑問の余地がありません。ブルームバーグは、バイデンが民主党の指名候補になっても本選挙でトランプを倒すことはできないと述べています。有権者はブルームバーグの根拠のない主張を聞き、バイデンの唯一の主張である“当選可能性”について疑問を持つようになっています。」

この政治献金者は更に「ブルームバーグは穏健派の有権者の支持をバイデンから奪っています。ブルームバーグが選挙戦に出馬していなければバイデンは更に支持を獲得していたことでしょう」と述べた。

この政治献金者はブルームバーグが採用した、最初の4つの州を捨てるという戦略を採用した候補者はこれまでいなかったので、この戦略が予備選挙の情勢にどのように影響するかは分からないと述べた。

この人物は次のように述べている。「バイデンが早期に予備選挙が実施される各州でうまくいかないとなると、ブルームバーグの戦略が奏功したということになり、彼はそれにこだわるでしょう。そうすればブルームバーグが予備選挙の行方をめちゃくちゃにすることになります。どのようになるかは全く分かりません」。

バイデンの周辺人物たち全員がブルームバーグについて懸念を持っている訳ではない。最初の4つの州は捨てるというブルームバーグの戦略は長い目で見てうまくいかない選択だと考えている人たちもいる。

バイデン選対のある幹部は次のように述べている。「スーパーチューズデーの時にだけ落下傘降下してピンポイントに着地するかのようにうまい具合に票を集めることができるなどとは考えられないですよ。私たちが早期に予備選挙が実施される各州で連勝すれば、ブルームバーグは終わりです。バイデンは弱いという主張など消えてなくなります」。

(貼り付け終わり)

(終わり)