古村治彦です

 インターネット上でも話題になっているが、昨年アメリカ政府が「中国で新型インフルエンザウイルス感染拡大が発生し、アメリカではシカゴで初めて感染が確認されて以降、パンデミックに発展する」という想定で、シミュレーション、演習が行われた。その結果は、国家レヴェルで対応がなければ1億1000万人が感染し、770万人が入院、58万6000人が死亡する、というものだった。

 トランプ大統領が「全米で10万から20万の人が死亡する」と発表したが、これは国家レヴェルでの対応を行った上での予測であって、何も対応をしなければ220万人が死亡するという数字を挙げていた。昨年のアメリカ政府が行ったシミュレーションでも何も対応をしなければ58万という数字が出ており、10万から20万という数字は大雑把ではあるが、信憑性の高い数字ということになる。

参考までに書くと、シカゴ市は人口が217万人、イリノイ州は1283万人だ。2020年4月1日時点でのシカゴ市での感染者数は3123人、死亡者数は40人、イリノイ州での感染者数は6980人、死亡者数は141人となっている。全米では感染者数は18万6101人、死亡者数は3603人となっている。シカゴ市やイリノイ州で特に感染者や死者数が多いということはない。

 シミュレーションと言えば、戦争や軍隊に絡むものである。日本海軍で伝統として行われてきた「兵棋演習(へいぎえんしゅう)」もシミュレーションである。アメリカに駐在武官として赴任した秋山真之が日本海軍にもたらしたもので、英語ではWar Time Simulationという。図上演習ともいう。ある回線を想定し、あらゆる条件を決めて、戦闘を行ってみる。日本海軍の場合は、太平洋戦争では物量的にも不利ということもあり、条件に手心を加えたり、改ざんを加えたりして、無理やり勝利すると医師也を作っていた。シミュレーションは客観的に行わなければ、実態にそぐわないただの作り話になってしまう。

 アメリカ政府は昨年、パンデミックが起きた際のシミュレーションを行った。これは現在の大勢のどこに欠陥や不足があって、どのような結果になるか、最悪の結果を回避するためにはどのような準備が必要かということを客観的に明らかにするためのものだ。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大はシミュレーションで見つかった穴を塞ぐ前に発生してしまったようだ。アメリカ政府も日本政府と同様に対応が後手に回ってしまったようであるが、得意の物量作戦で何とか挽回しようとしている。トランプ大統領は今年の大統領選挙で再選を目指しているが、対応を間違えば落選の憂き目にあうことになる。今のところ、大統領の支持率は落ちてはいない。しかし、支持率が上がっている訳でもない。

 シミュレーションは日本でも自然災害に関しては行われていることはマスメディアでもよく取り上げられている。恐らく大規模疾病に関してもシミュレーションは行われていただろうし、日本政府はそこで何が足りないか、どこに穴があるかを把握していたはずだ。もし、そのようなことがなされていないとするならば、国家経営上の危機だ。是非、日本政府もシミュレーションを実施して、危機的状況に対する備えに役立てるべきだ。

(貼り付けはじめ)

Surviving The Trump Eraサム・ポトリッキオ

新型コロナを予言?米政府「的中シナリオ」が占う大統領選

20200324日(火)1600

https://www.newsweekjapan.jp/sam/2020/03/post-45_1.php

https://www.newsweekjapan.jp/sam/2020/03/post-45_2.php

<リークされた米保健当局の想定演習が現実に。混乱するアメリカ社会で国民が求めるリーダーは誰か>

米政府は201918月に、ある演習を実施した。「クリムゾン・コンテイジョン」というコードネームで呼ばれたこの演習は、中国で発生した新型呼吸器系ウイルスが航空機の乗客によって世界中に瞬時に拡散されるという、恐ろしいシナリオだった。

「アメリカではシカゴで最初に感染者が確認され、その47日後にWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的大流行)を宣言した。だが、対応は遅過ぎた。米国内の感染者は11100万人に上ると予測され、770万人が入院し、586000人が死亡するとみられた」

米保健福祉省は、今月リークされたその演習の報告書で、治療法がないウイルスと生死を懸けて闘うには、連邦政府は資金も準備も調整も「不十分」であることが分かったとしていた。演習は学校の休校をめぐって連邦政府と地方の足並みがそろわず、ウイルスとの闘いに必要な医療設備も十分に用意できないことを露呈した。

このシナリオが今、ほぼ現実のものになっている。アメリカの街は不気味なほど静かで、学校は休校になり、バーやレストランは営業を停止した。国民は有能な政府がいかに重要であるかを痛感している。

トランプ米大統領は、多くの前任者にない「チャンス」を手にしていた。パンデミックに真正面から立ち向かえば、大きく株を上げられたはずだ。ところが彼は危機の深刻さを見くびり、国を苦境に追い込んだ。

アメリカと韓国は、いずれも国内初の新型コロナウイルス感染者を120日頃に確認した。韓国では既に感染拡大のピークが過ぎたが、アメリカは危機への備えを始めたばかり。韓国に先見の明があったというより、アメリカに能力が欠けている。

危機は人の本質をあぶり出す。いまアメリカが目の当たりにしているのは、大統領の器の小ささだ。36日に米疾病対策センター(CDC)を訪れたトランプは、選挙運動用のキャップをかぶっていた。ウイルスの犠牲者が多いワシントン州の知事を「ヘビ野郎」と呼び、ウイルス検査について「必要な人は誰でも受けられる」と嘘を言った。第2次大戦以降で最大の危機より、自分の再選を気にしていた。

1カ月ほど前のトランプは、楽に再選を果たせそうだった。民主党の対抗馬はリベラル過ぎるという懸念が党内にもあるバーニー・サンダースになりそうだったし、株式市場は好調で、失業率は50年ぶりの低水準だった。

今は違う。米経済は大不況の崖っぷちにあり、トランプの大統領就任以降3年分の株価の上昇分は吹き飛んだ。過去10年、米経済はほぼ継続して拡大してきた。だが08年前後の大不況以降で初めての重大な危機を迎えた今、もう国民は面白くて新奇な指導者を求めてはいない。テレビでドタバタ劇を見たがる時代は終わり、関心は有能な指導者が今より希望を持てる未来に人々を導けるかどうかに移った。

大統領選は、候補者が時代の求める人物かどうかを測る場だ。その意味で今の危機的な状況は、民主党の大統領候補指名争いでトップを走るジョー・バイデン前副大統領にほぼ完璧な条件をもたらしている。

バイデンは50年にわたって公職を務め、息子を病で失った悲しい経験から他人に共感する能力も高い。オバマ前政権で副大統領を務めたことから学んだ安定感もある。バイデンは忘れっぽく失言も多い。だが態度を決めかねている有権者のほぼ全員が同意できるのは、彼が自分より他人の事情を考えられるということ。すなわち、トランプとは真逆の人間だということだ。

そしてアメリカ人は大統領選で、現職とは真逆の候補者を選ぶ傾向にある。時代はバイデンに味方している。

<本誌2020331日号掲載>

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1

=====

「“クリムゾン・コンテイジョン・2019”シミュレーションはアメリカ国内でのパンデミックの」 ‘Crimson Contagion 2019’ Simulation Warned of Pandemic Implications in US

―2019年のパンデミックに関する演習は州政府と連邦政府の役人たちに対して懸念のある分野を指摘した

キャロル・マリン、ドン・モーズリー筆

2020年3月24日

NBCシカゴ』

https://www.nbcchicago.com/news/local/crimson-contagion-2019-simulation-warned-of-pandemic-implications-in-us/2243832/

2019年8月、シカゴにおいて、連邦政府の諸機関が集まり、アメリカがいかにしてある疾病の爆発的感染拡大(パンデミック、pandemic)に対処するかについて把握するための演習(シミュレーション)を実施した。この疾病は世界的な観戦爆発を起こしながら、治療法がまだ見つかっていないという設定で演習は実施された。この演習によってパンデミックに対するアメリカの全国規模での欠点や欠如している点が数多く見つかった。その中には医療物資が十分に準備されていないということも含まれていた。

この演習は「真紅の伝染病感染2019年版機能実験(Crimson Contagion 2019 Functional Exercise、クリムゾン・コンテイジョン・2019・ファンクショナル・エクササイズ」」と呼ばれ、結果が一般に公開されているものではない。『ニューヨーク・タイムズ』紙がこの演習についていち早く報じた。

この演習はインフルエンザについてのもので、コロナウイルスについてのものではなかった。しかし、中国で始まり、シカゴに上陸するという架空の感染流行を想定すると、いくつも問題を抱える分野が見つかったと関係文書では指摘されている。

2019年8月13日、イリノイ州とアリゾナ州やコネチカット州といった11の州、連邦政府、州政府、地方政府の役人たちが集まり、4日間の演習を実施した。

シナリオは以下の通りだ。

新型インフルエンザの大規模感染が中国で始まり、急速に感染拡大が起き、アメリカではシカゴで最初に検出され、人と人との接触によってパンデミックにまで拡大するという想定がなされた。

演習では現在のワクチンの貯蔵量ではウイルスを封じ込めることはできないとされた。

この国家規模の演習には次の機関が参加した。

・19の連邦政府の諸機関(19 federal agencies

・12の州(12 states

・74の地方の医療衛生部局(74 local health departments

・87の病院(87 hospitals

報道によると、ホワイトハウスの国家安全保障会議の幹部たちは演習中に簡潔な報告を受け取っていた、ということだ。

主張な発見は以下の通りだ。

インフルエンザのパンデミックに対して連邦政府は十分な予算を持っていない。

国防生産法をどのように適用するかについての混乱がある。

現在の医療資材供給チェインと生産能力は需要を満たすことはできないだろう。

世界規模の製造業の能力では、アメリカ国内の個人の防御装置や付随の装置の需要を満たすことはできないだろう。

アリソン・アーワディは演習に参加し、演習の結果を受けてシカゴ市の対応能力を引き上げてきた。アーワディ博士はシカゴ市が取った行動と同じ行動を連邦政府の諸機関が取るかどうかについてはコメントしなかった。

シカゴ市長ローリ・ライトフットは記者たちとの電話を通じた会見で雄弁に語った。

市長は「私にとって明白なことは、連邦政府は私たちを助けてはくれないということです。あの人たちは、最後の最後でさっそうと現れる騎兵隊(cavalry)ではないのですよ」と述べた。

シカゴ市公衆衛生局、緊急事態対応・コミュニケーション室、イリノイ州健康衛生部、緊急事態対応庁も演習に参加した。

ニューヨーク・タイムズ紙の報道とアーワディ博士は連邦政府の諸機関が協力し、対応戦略を構築していることを称賛しているが、パンデミックを想定した演習では、恐ろしい結果を予想している。国家レヴェルでの協力した対応がなければ、アメリカ国内で1億1000万人の感染、770万人の入院治療、58万6000人の死亡が出るという予想である。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側