古村治彦です。

 アメリカで新型コロナウイルス感染拡大の最前線で指揮を執っているのは各州の知事だ。ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)やミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)は厳しい制限や在宅命令を出したが、支持率は上がっている。ドナルド・トランプ大統領も毎日記者会見を行い、感染拡大への対処をアピールしている。

 そうした中で、トランプ大統領の心配事は「経済活動の再開」だ。今年のイースター(2020年4月12日)までに経済活動を再開させることを目指していた。そのために連邦政府はガイドラインを出し、アメリカ国民に対して、ソーシャル・ディスタンシングや大人数での集会の禁止を推奨した。しかし、残念ながら、現在のところ経済活動の再開は実施されていない。

 各州の知事たちによる在宅命令やビジネスの閉鎖などの厳しい措置に対して、反発する声も出ている。実際に、「厳しすぎる」「自分たちの生活のことは自分たちで決める」「私の体は私のものだ」という主張を掲げて、抗議のデモ活動が各州で行われている。アメリカでも失業などによって経済不安が増大している。これに対しては各州の知事は憂慮を表明したが、トランプ大統領は「各州を“開放する(LIBERATE)”」ことへの支持をツイッター上で表明した。このトランプ大統領の支持表明に対して、各州の知事たちは、「自分たちで出したガイドラインに反することを人々が行うことを促しており、意味不明な行動だ、違法な行動だ」と反発している。トランプ大統領は特にミシガン州での抗議活動を支持しているが、これはウイットマー知事がトランプ大統領に対して批判的であることに対する攻撃であり、かつ今年の大統領選挙でミシガン州が重要な位置を占めていることを示している。トランプ大統領は何とかミシガン州で勝利を収めたいが、現在のところはウイットマー知事の人気もあり、厳しい状況であり、それを何とか挽回したいと考えている。そのために、自分が出したガイドラインに反する抗議活動であっても支持を表明するという矛盾した行動を取っている。トランプ大統領は矛盾の塊のような人物である。

 日本でも安倍晋三首相による緊急事態宣言が日本の全県に出されて以降、デパートやコーヒーショップチェインの休業が行われ、人々の生活は厳しいものとなっている。また、経済活動の停滞によって、景気後退の不安が大きくなっている。人々の接触を「8割減らす」というとてつもない(ほぼ実現不可能な)目標を掲げて、あと2週間を過ごさねばならない。その間に経済状況がどれほど厳しいものとなるか見当もつかない。現状は、新型コロナウイルス感染拡大防止と経済活動・社会活動との間のバランスが崩れている、と私は思う。手洗いやうがいの励行、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンシングは実行しながら、何とか現在の経済活動・社会活動の範囲を少しでも広げられないかどうかを検討すべきではないかと思う。

 リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人たち(恥ずかしながら私もその中の一人だ)の感染防止と重篤化防止が第一である。それでも経済活動ができなければ更に多くの人々が路頭に迷うということにもなる。ここは専門家の知見を利用しながら、何とか少しでも経済活動ができるようにしなければならない。新型コロナウイルスは既に日本国内に入ってしまって、根絶をさせることは不可能だ。これから特効薬やワクチンができるまで現在のような状況を続けることは難しい。それならば個人でできることをやりながら、何かしらの「ウイルスとの共存の」ための方策を考えるしかないと私は思う。

 アメリカ国内でトランプ支持派が経済活動を再開させろと主張している。そのためには連邦政府のガイドラインでは、感染者数が2週間減少を続けなければならないとされている。そして、この数をきちんと把握するためには十分な検査がされねばならないとされている。そのための資源が足りないと各州の知事たちは、連邦政府とトランプ大統領を批判し、支援を求めている。

確かにこのような重大な決定を下すためには正確なデータがあることが大前提だ。日本でも感染者数の減少が見られるようになれば、現在の流れも変わっていくだろうが、そのためには正確なデータがなければ正しい判断はできない。そのためにはある程度のサンプルを抽出し、検査をして統計学的に確からしさの高い結果を得る必要がある。

 慎重に行動することは良いことだが、過度な悲観も過度に楽観することは何事においても禁物だ。また、政府による更に厳しい手段を国民が求めるということも考え物だ。そのためには淡々と自分ができるだけのことをやるという単純なことしかない。ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』や「惨事便乗型資本主義」については本ブログでも既に紹介した。今回のコロナ禍についても、既に政府による監視や制限の強化が私たちの恐怖心を利用して導入されようとしている。ここで私たちが、「その方が楽で良い、そもそも何も悪いことをしていないのだから」と簡単に監視や制限を受け入れてしまえば、これはどんどんエスカレートする。
 また、現在は政府や地方自治体による「自粛要請」であり、本来であれば「自分で決める」べきもので、営業を行う店があっても良い。しかし既に警察や官吏ではなく、一般国民が「民間警察」「自警団」になって、貼り紙をしたり電話をしたりして、営業している店に対する妨害行為を行っている。これは過度な反応である。安倍首相や専門家会議がこのようなことが起きないように慎重な表現を選ばなければならないのに、あたかもそれを推奨するかのように、あまりにも危険を煽っていると私は思う。
 専門家会議は、一般の人々が「自分は新型コロナウイルスに感染したのではないか」と不安に思った場合には、まず「体温が37.5度以上が4日間続いたら医療機関に連絡せよ」という「お達し」を出した。これは医療機関に人々が殺到しないための措置であったはずだ。しかし、この「様子見」期間で症状が悪化して亡くなる人のケースが出ると、「そのような意図で述べたのではない」とし、「積極的に受診してください」という意味だった、と「受け取る方の受け取り方が悪い」「誤解だった」ということを言い出す。訳の分からない横文字を使い、このようなどうとでも意味が取れる表現を使うようでは、専門家たちの信頼性は薄らいでいく。「8割減」も本当か、できると思っているのか、ということになる。

 私が驚いたのは、知り合いの医者に「免疫力を挙げることだよ、そのためには食物繊維を取って腸内環境をよくすることだ」と言われたことだ。あんなに難しい勉強をしても、医学博士でございと威張ってみても、今回の騒ぎで私にできる助言がその程度でしかない。薬やワクチンがなければ医者でもこれくらいしか言うことがないのだ。それならば自分ができることをやりながら、淡々と日常を過ごしていくしかない。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領:コロナウイルスに関する制限において州知事の中には行き過ぎの者がいる(Trump: Some governors have gone too far on coronavirus restrictions

ブレット・サミュエルズ筆

2020年4月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/493601-trump-some-governors-have-gone-too-far-on-coronavirus-restrictions

日曜日、トランプ大統領は、全米各州でコロナウイルスの感染拡大の速度を弱めるための制限を設けているが、「やり過ぎている」州知事たちも中に入ると述べた。

ホワイトハウスでの記者会見の中で、トランプ大統領は、抗議活動を行っている人々に対して反対する考えを持っていないと述べた。抗議活動を行っている人々は、ソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインに反対し、各種の制限に対する肥満を表明している。各種の制限によって事業は閉鎖され、失業数が急増している。

トランプ大統領は次のように発言した。「中には行き過ぎている者たちがいる。州知事の中には行き過ぎている者たちがいる。これまでに起きていることの中には適切ではないことが含まれている。最終的には問題にはならないだろうと思う。何故なら私たちは各州の経済活動や日常活動を再開させつつあり、各州でそれらはうまくいくだろうからだ」。

トランプ大統領は続けて次のように述べた。「講義をする人々に関して言えば、私はあらゆる種類の事柄について講義する人々を見てきている。私は全ての人々と共にいる。私は全ての人々と共にいる」。

トランプ大統領は最初のうちは行き過ぎていると考えている知事の名前を挙げることを拒絶していたが、その後、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)とヴァージニア州知事ラルフ・ノーザン(民主党)の名前を挙げた。特にノーザンについては新しい銃規制に関する州法に署名したことについては抗議されるに値すると示唆した。

トランプ大統領は次のように述べた。「ミシガン州を例にとると、ミシガン州では必要とではない、もしくは適切ではないと私が考える物事が実行されている。これは全ての人々が分かっているはずだ。ミシガン州知事とはとてもうまくやっているし、そのことは知事も恐らく分かっていると思う」。

ウイットマーについては、今年の大統領選挙で民主党の副大統領候補として取りざたされるようになっているが、それによってトランプ大統領にとっては大きな攻撃目標となりつつあるようだ。

トランプ大統領はここ数日の間、全米各州において数百人単位で集まっている抗議行動を行っている人々に対して同情的である。抗議活動している人々はホワイトハウスがウイルス感染拡大に対処するために発表したソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインを無視している。このガイドラインは、アメリカ国民に対して10名以上の集まりを行わないように促している。

金曜日、トランプ大統領はミネソタ州、ミシガン州、ヴァージニア州で抗議活動を行っている人々への支持を表明した。抗議活動を行っている人々は、ウイルスの拡大を弱めるための在宅命令とその他の制限に反対するデモを行った。こうした人々はこれらの各州を「開放する」と主張している。これら3つの州は民主党所属の知事たちが運営している。

ここ数日の間で小規模の抗議活動がミシガン州、オハイオ州、ヴァージニア州、ミネソタ州、テキサス州、そしてフロリダ州で行われた。その他にもこれからの数週間で抗議活動が全米各地で計画されている。抗議活動参加者の中には、トランプ大統領の名前が入った旗を振り、名前の入ったTシャツを着ている人たちがいた。

トランプ大統領はマスコミの報道で抗議活動を見たと認め、抗議活動に参加している人たちは「私たちの国への愛」を示しているのだと述べた。

各州の知事たちは、トランプ大統領による解放を求める動きに対して懸念を表明している。知事たちはトランプ大統領の言動によって人々の間で不満を高め、デモ活動を激化させることになるだろうと心配している。公衆衛生の専門家たちは多くの人々が集まることによってウイルスの感染がさらに進むことになると警告を発し、ソーシャル・ディスタンシングの必要性をさらに強調した。

ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、日曜日の夜までに全米で75万5000名以上がウイルスに感染し、4万名以上が亡くなった、ということだ。

ホワイトハウスはアメリカ経済を段階的に再開する方針で、各州の知事たちにソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインをいつの時点で撤回できるかについて最終的な目標時期を設定するように求めている。しかし、トランプ大統領が抗議活動を受け入れていることで、州知事たちに対する敵意を煽動する危険性が高い。

ペンス副大統領は日曜日の記者会見で、「アメリカ国民は自分の住む州政府と地方自治体に注意を向けねばなりません」と述べた。

トランプ大統領は経済を再開する必要性について断固とした態度を示している。経済の再開は彼の再選を目指す選挙戦にとって中心的な柱となっている。しかし、トランプ大統領は日曜日、制限の撤回は安全を第一に考えねばならないと述べた。

トランプ大統領は次のように述べた。「多くの素晴らしいそして偉大な出来事が起きています。そして、私たちは私たちの国を開き始めようとしています。これは美しいパズルのようです」。

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抗議活動と検査に対する主張について知事たちがホワイトハウスに反撃(Governors push back against White House on protests, testing claims

ザック・バドリック筆

2020年4月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/sunday-talk-shows/493557-governors-push-back-against-white-house-on-protests-testing-claims

民主、共和両党に所属する知事たちは日曜日、トランプ大統領の在宅命令に対する抗議活動への明確な支持と全米でのコロナウイルスの検査は十分に行っているという主張に対して反撃した。

ワシントン州知事ジェイ・インスリー(民主党)は、ABCの「ディス・ウィーク」に出演し次のように述べた。「トランプ大統領はツイッターを通じて多くの州を“解放”するように抗議活動を行っている人々に訴えたが、これは“違法行為”を促進するものです。アメリカ大統領が人々に対して法律を破るように促しているのです。私はこの国で生まれ育ちましたが、このようなことが起きたことなど全く記憶にありません」。

インスリーは「これは本当に危険なことです。なぜなら人々の生命を救うことができる行為について人々に無視させることにつながるからです」と述べた。

ワシントン州はアメリカ国内において早い段階でウイルス感染拡大の中心地となった。ここ数週間、インスリーはカリフォルニア州知事ゲヴィン・ニューサム(民主党)とオレゴン州知事ケイト・ブラウン知事(民主党)といった西海岸の各州知事と協定を結び、地域の経済活動再開に向けての計画を作成しているところだった。州都オリンピアにあるワシントン州議会の建物の前での州知事の厳しい方策に対する抗議デモは日曜日に開催予定となっている。

メリーランド州知事ラリー・ホーガン(共和党)はより弱いトーンではあるが一連のツイートを批判した。CNNの番組「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、「デモを推奨することは有益なことだとは思いません。また、大統領自身の政策に反対するためにデモをすることを人々に推奨することも良いことではありません」と述べた。

ホーガンは経済活動の即座の再開を求めることは、トランプ大統領自身が発表した連邦政府のガイドラインに反することになると指摘した。ガイドラインによれば、経済活動再開のプロセスは、その地域でウイルス感染拡大が14日間にわたって減少するまでは開始されるべきではないとされている。

ホーガンは続けて次のように述べている。「従って、木曜日に、自分が作った推奨ガイドラインに即した計画に対して人々に抗議活動に参加するように促すことは、全く訳が分からないということになります。州知事と人々に対しては完全に矛盾しているメッセージを発しているのです。連邦政府の政策と推奨を無視するように求めているのです」。

オハイオ州知事マイク・デワイン(共和党)は、デモ参加者たちは抗議する権利を持っていると述べ、自分としては、参加者たちに対してソーシャル・ディスタンシングについてのガイドラインを尊重するように求めるだけだと述べた。

デワインはNBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、次のように述べた。「私たちは自分が正しいと考えることを行うだけのことです。それは、経済を再開しようとすることです。しかし、そのためには多くの人々を死に追いやることがないようにとてもとても注意深く実行する必要があります。しかし、私たちは経済や日常生活を再開させねばなりません。そして、私はその目標を5月1日に置いているのです」。

ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)もまた、彼女が出した在宅命令の正当性を擁護した。この命令はアメリカ国内でも厳しい命令の一つとなっている。ウイットマーはその成果は既に上がりつつあると述べた。

ウイットマーはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、次のように述べた。「ミシガン州は現在死亡者数の点において全米で第3位となっています。私たちの州の人口は全米で10番目です。こうした事実からミシガン州では独自の厳しい問題が起きているということが導き出されるのです。州の規模に比べて死者数が多いという問題が起きており、そのために私たちは人々を守るために独自のより積極的な行動を取る必要があるのです」。

ウイットマーは続けて次のように述べた。「現在、感染者数は徐々に兵站になってきつつあります。これが意味するところは、私たちは人々の生命を救っているということです」。ミシガン州の州都ランシングの州議会の建物の前での抗議活動に対して、トランプ大統領は特に支持を表明している。

ペンス副大統領は、フォックス・ニュースのキャスターであるクリス・ウォレスに質問された際に、トランプ大統領のツイートに直接言及はしなかったが、抗議活動について次のように述べた。「数百万のアメリカ国民はソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインを守ってくれていると思いますよ。人々が犠牲を甘受しているのは、各州の知事たちに経済の再開を、責任をもって安全に行える方法を見つけて欲しいと願っているからです」。

ペンス副大統領は「フォックス・ニュース・サンディ」に出演し、「アメリカ国民は全て、このアメリカ国内においてドナルド・トランプ大統領以上に経済活動や日常活動を再開させたいと望んでいる人間などいないことをよく分かっています」と述べた。

ホワイトハウスは各州には必要な検査を実施する能力がありと主張しているが、各州の知事たちはこの主張に反論している。ヴァージニア州知事ラルフ・ノーザムはこのような主張は「激しい思い込み」に過ぎないと指摘している。

ノーザムはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」で次のように述べた。「検査だけのことではないんです。信じていただけるか分かりませんが、私たちには十分な綿棒さえないのです」。

ノーザムはトランプ大統領の一連のツイートに触れ、次のように述べた。「私たちの大統領は検査能力を向上させることができていません。そして、今は抗議活動に注目することを選んでいます。しかし、今は抗議活動をする時ではありません」。

ノーザムは続けて次のように述べた。「現在は分裂し、いがみ合う時ではありません。立ち上がり、人々に共感をもたらす指導力を発揮する時です。今回の感染拡大で私たちの国でいったい何が起きているのかを理解できる指導者が必要な時です。そして、今は真実を述べるべき時で、人々をまとめる時なのです」。

専門家たちはアメリカの経済活動を再開するためには十分な検査能力が必要だと述べている。そして、検査ができなければ感染者数が実際に減少しているのかどうかを正確に判断することは不可能だと繰り返し強調している。

メリーランド州知事ホーガンは州の検査能力についての決めつけは「完全な誤り」だと述べた。

ホーガンは日曜日に「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し次のように述べた。「検査能力についてとりわけ強調し、各州には十分な検査能力があり、それを使うべきだとし、それなのに州知事たちは自分たちの仕事をしていないと主張することは、全くの誤りと言うしかありません」。ホーガンは、メリーランド州では先月だけで検査能力を5000%増させたが、各種事業を再開させることができるレヴェルにまではまだ到達していないとも述べた。

オハイオ州知事デワインは食品・医薬品局(FDA)が更なる行動を実行することが必要だと発言した。デワインは更なる支援があれば、「オハイオ州では一晩のうちに検査能力を倍増することは高い確率で可能であり、三倍増にすることも可能かもしれません」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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